チェンジワールド(南月ゆう)のネタバレ解説・考察まとめ

『チェンジワールド』とは、南月ゆうによるボーイズラブ漫画作品。商社勤務のサラリーマン伊藤要祐は、高校時代から想っていた有村郁央と交際し始めてから1年になる。互いの仕事の関係で会える日が少ないため、同棲する案も出ていた。そんなとき、要祐の会社に出向中の社員で、郁央の大学時代の先輩でもある穂積匡人が要祐と郁央の両方に関わり始め、ふたりの間に不協和音が生まれる。恋が愛に変わるまでのドラマが細やかに描かれている。

郁夫は穂積に飲みに誘われて二人でバーに行く。そこで穂積から、郁夫は基本的にノンケだから、その気になれば結婚もできるはずだと言われる。さらに、恋心が落ち着いた後も要祐と上手くやっていけるのか怪しいと責められる。
それに対して郁夫は、「……俺は、この一瞬の連続が先に繋がってると思うから、今を大事にしたいです。未来ばっか見て悲観的になって、気がついたら足下が崩れてるなんて、意味がない」と言う。郁夫が要祐との将来を決意していることをはっきりと言い表したセリフ。

松「そもそも伊藤は何を一番守りたいわけ? 自分? 世間体? それによって、答えは変わってくるかもしんないな」

郁央と自分が付き合っていることに松が気がついていると知った要祐は、郁夫の相手が男の自分でいいのか自信がないと松に打ち明ける。そんな要祐に対して松は、「郁央は自分で選んだことを後悔するような人ではないし、覚悟は決めているはずだ」と言う。そしてさらに、要祐に「そもそも伊藤は何を一番守りたいわけ? 自分? 世間体? それによって、答えは変わってくるかもしんないな」と問いかける。自分にとって大切なものは何かを、要祐にあらためて気づかせるきっかけとなったセリフ。

有村郁央の父親「価値観の違う他人同士が長くそばにいる為には、愛情だけじゃ少し足りないんだよ。僕とママはね、いつか同じ景色をみたいと思っているんだ」「互いに近づけようと思うなら、相手が何をどんなふうに感じるのか、何を望んでいるのかを知る必要があるんだよ」

悩んでいる郁央に父親がどうしたのかと声をかける。どうしたら親父と母さんみたいにずっと一緒にいられるのか悩んでいると言う郁夫に対して、父親は、価値観の違う他人同士が長くそばにいる為には、愛情だけじゃ少し足りないこと、一緒にいるためには相手のみている世界に自分の世界を近づける必要があることを話す。
この後、父親が、「ただ少なくとも、僕がみてる世界は確実に変化して愛子さんに近づいてる。そう思えるときが僕が幸せを感じる瞬間かな」と言うのを聞いて、郁夫ははっとする。郁夫はこれまでの要祐の言葉の数々を思いだし、自分と要祐に見えている世界について思いをはせる。題名の「チェンジワールド」という言葉につながる言葉。

伊藤要祐「偶然と必然で成り立っているこの世界で、時に言葉で説明できない『奇跡』のようなことが起こったとしても、それは想いを積み重ねて築き上げた結果に過ぎない。俺たちにとって『運命』とはきっとそういうものだ」

2年半のアメリカ赴任終了の辞令が下りた要祐の独白。もうじき帰国して郁夫に会えると思いつつ、要祐は内心で「偶然と必然で成り立っているこの世界で、時に言葉で説明できない『奇跡』のようなことが起こったとしても、それは想いを積み重ねて築き上げた結果に過ぎない。俺たちにとって『運命』とはきっとそういうものだ」と言う。運命をネガティブなものではなく、想いを積み重ねて築き上げた結果とポジティブにとらえた頼もしいセリフ。

『チェンジワールド』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

本作のスピンオフ『ラブネスト』の主人公は穂積匡人

2019年6月に発刊された『ラブネスト』は、『チェンジワールド』のスピンオフ作品で、匡人が主人公である。匡人は、ひょんなことから、行きつけのゲイバーのオーナーの別宅に住むことになる。そこには、自分とは正反対でずぼらな先住者の旭がいた。旭の距離は次第に縮まっていき、匡人はやがて恋に落ちる。『ラブネスト』では、穂積匡人がひょんなことから、行きつけのゲイバーのオーナーの別宅に居候することになり、そこに先住していた旭(あさひ)に当初は苛々させられながらも、次第に惹かれていく様が描かれる。『チェンジワールド』は、主人公、伊藤要祐と有村郁央の恋愛のなれそめについての物語である『サヨナラゲーム』の続編にあたるが、『チェンジワールド』のスピンオフ『ラブネスト』と『ラブネスト2nd』にも、さらにスピンオフ『エンゲージ』がある。

伊藤要祐はピーマンが苦手

伊藤要祐(上)は松(右下)から料理を教わる。

チェンジワールド上巻の巻末にあるプロフィールによると伊藤要祐はピーマンが苦手だが克服中である。本編中でも、松からピーマンの肉詰めの作り方を教わっている。郁夫の母親が、ピーマン嫌いの奈々にピーマンを食べさせるために作ったピーマンの肉詰めが、郁夫の好物である。
ただし、本編中でピーマンの肉詰め作りは上手くいっておらず、その後、郁夫から、松から料理を教わって何を作ったのか訊かれた際に、要祐は「ピーマンの皿に乗ったハンバーグです」と答えている。

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