チェンジワールド(南月ゆう)のネタバレ解説・考察まとめ
『チェンジワールド』とは、南月ゆうによるボーイズラブ漫画作品。商社勤務のサラリーマン伊藤要祐は、高校時代から想っていた有村郁央と交際し始めてから1年になる。互いの仕事の関係で会える日が少ないため、同棲する案も出ていた。そんなとき、要祐の会社に出向中の社員で、郁央の大学時代の先輩でもある穂積匡人が要祐と郁央の両方に関わり始め、ふたりの間に不協和音が生まれる。恋が愛に変わるまでのドラマが細やかに描かれている。
『チェンジワールド』の概要
『チェンジワールド』とは、南月ゆうによるボーイズラブ漫画作品。初版発行は2017年。新書館の月刊漫画誌『Dear+(ディアプラス)』コミックスに2017年4月から掲載された。『チェンジワールド』はオーディオドラマ化され、2018年10月26日にCDが発売開始となり、2021年10月6日より電子版も配信された。単行本は上下2巻である。また、『チェンジワールド』は『サヨナラゲーム』シリーズ全9冊のなかの一作品である。シリーズ1作目にあたる『サヨナラゲーム』は、主人公、伊藤要祐と有村郁央の恋愛のなれそめについての物語であり、本作はその続編にあたる。『チェンジワールド』のスピンオフ『ラブネスト』と『ラブネスト2nd』にも、さらにスピンオフ『エンゲージ』がある。『サヨナラゲーム』は、ディアプラスコミックスから2016年9月発売で全1巻、『ラブネスト』は2019年6月発売で全2巻、『ラブネスト2nd』は2021年3月発売で全2巻、『エンゲージ』は2022年8月発売で全2巻である。
商社に勤める伊藤要祐(いとうようすけ)は、同じくサラリーマンでデパート勤務の有村郁央(ありむらいくお)と交際し始めて1年になる。郁央と要祐は、高校時代はともに野球部に所属しており、郁夫は2歳年上の先輩だった。要祐にとって郁央はその頃から片思いしていた相手だ。ふたりとも仕事が忙しく、会える日が少ないため、できるだけ一緒にいられるようにと、要祐は郁央から同棲しないかともちかけられるが、要祐は郁央との共同生活なんてドキドキしすぎて耐えられないと断る。そんななか、要祐は自分の会社に出向中のSEである穂積匡人(ほづみまさと)が、何かと絡んでくるので、対応に困っていた。じつは、穂積は郁央の大学時代の先輩でもあった。あるとき穂積は、町中で偶然、要祐と郁央が一緒に歩いているところを見かける。ふたりの様子から関係を察した穂積は、要祐と郁央の両方にちょっかいを出し始めた。穂積はゲイであることを隠し続けており、過去にノンケ(ゲイではない人のこと)との恋愛で傷ついた経験があったため、要祐と郁夫の交際が気に障り、邪魔せずにはいられなかった。郁央は要祐に絡む穂積に嫉妬し、要祐は穂積から自分の知らない郁央を知らされて不安な気持ちになる。そこに追い打ちをかけるように、要祐にアメリカ赴任の話が持ち上がるのだった。要祐と郁夫が、互いの気持ちを確かめあい、危機を乗り越えるまでが描かれる。両思いでありながら、すれ違うふたりが切なく心揺さぶられる作品である。
『チェンジワールド』のあらすじ・ストーリー
冒頭からふたりの順調な交際の様子
伊藤要祐(いとうようすけ)は高校の先輩だった有村郁央(ありむらいくお)と付き合うようになって、1年になる。要祐は、手に入らない太陽のように憧れていた人が自分を好きだと言ってくれることを、奇跡のように感じている。目下の悩みは、仕事の関係で会える日が少ないことだった。要祐は郁央から同棲をもちかけられていたが、一緒に生活するなんてドキドキしすぎると承諾できずにいた。そんななか、要祐は、職場の先輩である穂積匡人(ほづみまさと)からしょっちゅう、ちょっかいを出されて対応に困っていた。
ある時、要祐は郁央の家族に会うために自宅を訪問することになった。要祐は、優しい郁央の父親を見て、郁央の将来の姿を見るようだと感じる。そんな郁央の様子を見て、郁央は自分の父親に少し嫉妬する。要祐と郁央の恋愛は上手くいっていた。郁央との恋愛は上手くいっており、彼の好きな物を作って一緒に食べたいと考えていた要祐は、高校時代の友人の松(まつ)から料理を教わる。松は自宅の小料理屋を手伝っているので料理が得意だったのだ。その後、要祐は、とつぜん家を訪れた郁夫に手料理を振る舞う機会に恵まれた。
交際を穂積匡人に知られた後
要祐が郁央に誘われて飲みに行った際、2人は町中を歩いているところを、偶然、近くにいた穂積匡人に見られた。穂積匡人は、2人の後についていき、飲みに行った席に無理矢理加わる。要祐にとっては、職場の先輩である匡人は、じつは郁央にとっては大学の先輩であり、郁夫とも知り合いだった。その席で穂積は、郁央の大学時代の女性関係の話を話して要祐を複雑な気持ちにさせる。生き生きとした表情で穂積と思い出話をする郁央を見て、要祐は自分が知らない世界も郁央にはあると気づいて不安になる。その飲みの席は、要祐が明日も仕事があるから帰ると言ってお開きとなる。郁夫は、自分が要祐を送っていくと穂積に告げる。店で会計する際、穂積は、郁央が要祐が会社で大事そうに使っていたボールペンと同じものを使っていることに気づいた。要祐は郁央と2人で帰る途中で、自分の部屋に寄っていきませんかと郁央を誘うが、郁央には断られる。郁夫は嫉妬と束縛したい気持ちで一杯になっている自分に戸惑っていた。
ふたりはそれぞれの想いに悩み新たな関係へ
その後、要祐は会社で穂積から「郁央に惚れているのだろう」と図星を指された。穂積は自分もゲイだからわかるが郁央と付き合っても要祐が傷つくだけだ、自分ならずっと要祐と一緒にいてやれると言う。
その後、郁央の勤務先のデパートを穂積が訪れ、要祐が持っていたのと同じボールペンを買いたいと言う。郁央が勧めた別のデザインの物をあっさりと受け入れた穂積は、郁央を飲みに誘う。穂積は、要祐と話したことや、要祐と郁央の関係を知っていることを郁夫に言う。昔、郁央が次々に女と付き合っていたことを指摘し、自分と違ってノンケ(ゲイではない人のこと)である郁央は信用できないと言う。さらに、穂積は郁夫に宣戦布告した後、要祐に海外赴任の話が出ていることを告げた。それを聞いた郁央が、不安になって要祐の家を訪ねたところ、後輩の松に出迎えられた。要祐は松に料理を教わっていたという。松は2人の様子を見て、気を利かせて帰る。郁央は、要祐が作った料理を食べて美味しいと感想を言う。嬉しそうな顔をする要祐を見て、郁央は嫉妬ばかりする自分を情けなく感じた。郁央が、海外赴任の話について要祐に問うと、海外赴任の話はまだ打診の段階だった。しかし、郁夫は、要祐が郁央との交際について穂積からアドバイスされたと聞き、いつか捨てると要祐自身からも思われているのかと怒って要祐を問い詰め、激情をぶつける。翌朝、郁央は少し頭を冷やす時間が欲しいと要祐に言う。
要祐は会社で穂積に会い、郁央に何を言ったのかと問いただすが、穂積には郁央にハッパかけただけだとかわされた。その日、要祐は友人の松の実家である小料理屋を訪れる。松は、要祐の家で郁央に会った日に、2人が交際していることに気づいたと言う。要祐が高校時代から郁央を想っていたことを知っている松は、要祐が郁央と付き合うようになったことに感心する。
要祐は、また穂積に飲みに誘われ、要祐の郁央に対する気持ちは、郁央には重いのではないかと言われる。その上穂積は、快楽に身を任せろと言って、要祐に迫った。要祐は独自に穂積のことを調べてあったため冷静に対応する。要祐は、穂積がかつてゲイであることをカモフラージュするために交際していた黒田真理恵(くろだまりえ)から穂積について話を聞いたのだった。じつは穂積は郁央に好意を持っていて、そのために要祐と郁央の間を裂きたいのではないかと、要祐は穂積に指摘する。穂積はなおも要祐に迫ろうとした。しかし、要祐は、携帯電話が真理恵につながっており、会話が筒抜けであることを伝える。穂積は要祐に手を出そうとするのを諦めた。要祐は郁央を失いたくないという自分の気持ちを穂積に告げて、その場を去った。その後、要祐は郁央に会い、郁央には女性と結婚して子どもを作るという、誰からも祝福されそうな未来があるのではないかと、不安に思っていたと打ち明ける。郁夫のほうも、要祐を束縛しようとする自分の気持ちに戸惑っていたことを伝えた。郁央は要祐には彼自身の思い通りの人生を生きて欲しいと言う。要祐は、海外赴任としてアメリカに行く決意をし、待っててくれるように郁央に言う。2人は互いの気持ちを確認しあい、ともに生きていく決意を固める。2年半後、要祐は海外赴任を終えて帰国する。
『チェンジワールド』の登場人物・キャラクター
主要人物
伊藤要祐(いとうようすけ)
CV : 古川慎
四友商事に勤務する23歳のサラリーマン。マーケティング部で分析作業をしている。高校時代は野球部で郁央の後輩だった。クールで口下手。郁央への想いは一途で、美味しいものを食べて欲しいと料理を覚えようとするほど。
かつて、郁央の妹、奈々の家庭教師をしていた。
有村郁央(ありむらいくお)
CV : 興津和幸
デパートに勤務する、要祐の恋人。年齢は25歳。明るく前向きな性格。高校時代は野球部で、要祐の先輩だった。後輩である松(まつ)によると、一度これと決めたことは脇目も振らずがむしゃらになれるタイプ。女性にとてももてる。
穂積匡人(ほづみまさと)
CV : 斉藤壮馬
要祐の勤める四友商事に出向中のSE。年齢は27歳。隠れゲイ。過去にノンケとの恋愛で傷ついた経験があるため、要祐と郁夫の恋愛にちょっかいを出さずにはいられない。じつは郁央の大学時代の先輩だった。
家族
有村奈々(ありむらなな)
大学二年生。郁夫の妹。昔、要祐に片思いしていた。要祐と郁夫が付き合っていることを知っている。
タグ - Tags
目次 - Contents
- 『チェンジワールド』の概要
- 『チェンジワールド』のあらすじ・ストーリー
- 冒頭からふたりの順調な交際の様子
- 交際を穂積匡人に知られた後
- ふたりはそれぞれの想いに悩み新たな関係へ
- 『チェンジワールド』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 伊藤要祐(いとうようすけ)
- 有村郁央(ありむらいくお)
- 穂積匡人(ほづみまさと)
- 家族
- 有村奈々(ありむらなな)
- 有村郁央の父親
- 友人やその他の人物
- 松(まつ)
- 加藤(かとう)
- 黒田真理恵(くろだまりえ)
- 『チェンジワールド』の用語
- 四友商事(よつともしょうじ)
- バッティングセンター
- 小料理屋「松」
- ノンケ
- 『チェンジワールド』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 有村郁央「……俺は、この一瞬の連続が先に繋がってると思うから、今を大事にしたいです。未来ばっか見て悲観的になって、気がついたら足下が崩れてるなんて、意味がない」
- 松「そもそも伊藤は何を一番守りたいわけ? 自分? 世間体? それによって、答えは変わってくるかもしんないな」
- 有村郁央の父親「価値観の違う他人同士が長くそばにいる為には、愛情だけじゃ少し足りないんだよ。僕とママはね、いつか同じ景色をみたいと思っているんだ」「互いに近づけようと思うなら、相手が何をどんなふうに感じるのか、何を望んでいるのかを知る必要があるんだよ」
- 伊藤要祐「偶然と必然で成り立っているこの世界で、時に言葉で説明できない『奇跡』のようなことが起こったとしても、それは想いを積み重ねて築き上げた結果に過ぎない。俺たちにとって『運命』とはきっとそういうものだ」
- 『チェンジワールド』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 本作のスピンオフ『ラブネスト』の主人公は穂積匡人
- 伊藤要祐はピーマンが苦手