遙かなる時空の中で6(遙か6)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『遙かなる時空の中で6(遙か6)』とは、コーエーテクモゲームス(ルビー・パーティー)制作の女性向け恋愛アドベンチャーゲームである。『遙かなる時空の中で』シリーズの第6作目で、シリーズ15周年の記念作品でもある。平凡な高校生活を送る主人公は、ある日突然「黒龍の神子」として異世界である帝都東京に召喚され、人々を苦しめる怨霊を倒す使命を与えられる。主人公は元の世界に戻るため、帝国軍と鬼の一族、2つの抗争に巻き込まれながらも仲間とともに戦い世界を救うストーリーである。

ダリウス

梓(左)は目が覚めたダリウス(右)と結婚式を挙げる

白龍の神子を襲って帰ってきた一行。梓は自分の力を利用して黒麒麟を呼び出したダリウスのことが許せなかった。そして彼女は、自分を部屋へ閉じ込めるダリウスに不信感を持つ。ダリウスは機嫌を取るように美味しいお菓子やアクセサリーを贈るが彼女はそれを拒否し、ダリウスのどんな言動にも怯えるようになる。そして梓はダリウスから逃げるように帝国軍側へ転がり込む。帝国軍へ来た梓はダリウスと離れたことでやっと冷静になり、彼の言葉に耳を傾けようと思い直す。梓はダリウスに会おうとするが、彼は「梓にはもう帝国軍の居場所があり、鬼の首領である自分と会わないほうがいい」と彼女を拒否する。
ある日「怨霊や憑闇の原因は鬼のせいだ」と糾弾し、鬼の一族に敵意を持つ民衆が蠱惑の森を焼き払おうとする事件が起きる。鬼だからという理由だけで敵だと決めつけ彼らの意見も聞かず、根拠もなく責め続ける民衆を見て、梓は自分の身に覚えのあることだと気づく。ダリウスが梓を邸に閉じ込めたとき梓はダリウスの言動を拒否しつづけ、彼を理解しようとはしなかった。梓はダリウスが誰からも理解されず孤独な立場であることに気づき、彼のことを心から想うようになった。
一方、ダリウスも梓を利用したことに苦悩していた。ダリウスは先の作戦で梓を傷つけ信頼を失うことが分かっていたが、鬼の首領としての重要な使命である帝国軍の撲滅を果たすことを優先したのだった。ダリウスがなぜ帝国軍に対して敵対心を持っているのか、それは参謀総長である片霧 清四郎に騙されたことが原因だった。ダリウスは、いつの世も鬼の一族が迫害されることに憤りを感じていた。そんなとき片霧 清四郎から「この国のため、ぜひ帝国軍に鬼の一族の優れた知性と力を貸してほしい」とお願いされる。ダリウスは「この鬼の力を役に立てられる時が来た」と勘違いし、帝国軍に言われるまま徒花を渡してしまう。その結果、帝国軍の実験によって憑闇が出現し、あろうことか怨霊や憑闇が出現する原因を鬼の一族にされてしまったのだ。ダリウスは帝国に騙されたのは自分の責任だと深く自分を責め、自分の身を犠牲にしてでも帝国軍を滅ぼし帝都を護ることを決意したのだった。
禍津迦具土神との最後の戦いで、ダリウスは鬼の一族に代々伝わる禁忌の仮面を使用する。仮面の力のおかげで無事に禍津迦具土神を封印できたが、禍津迦具土神は仮面を通してダリウスの精神を蝕み始める。仮面が外れなくなってしまったダリウスは「意識を完全に乗っ取られてしまう前に、どうか愛する君の手で死なせてほしい」と梓に願う。梓は危険を顧みず世界のために力を使ったダリウスを心から尊敬し、彼を救うと決意する。そして梓は黒龍の神子の力をすべて使ってダリウスの仮面だけを撃ち抜き破壊する。無事ダリウスを傷つけずに救出できたが、ダリウスの意識は戻らなかった。
最後の戦いから1年ほど経ち、梓は帝都に残って目を覚さないダリウスの世話をしていた。眠り続けるダリウスに梓はたまらずそっとキスをすると、ダリウスがやっと目を覚ます。そして2人はお互いの気持ちを伝え合い、周囲に祝福されながら結婚式を挙げたのだった。

ルードハーネ

教え子たちに見守られながらキスするルードハーネ(左)と梓(右)

ダリウスに邸に連れてこられた梓を世話したのはルードハーネだった。ルードハーネは梓を甲斐甲斐しく世話する中で、いつしか彼女を守ってやりたいという気持ちが芽生えた。怨霊と戦ったり二人で出かけたりするうちに二人の仲は急速に縮まり、ルードハーネは梓への恋心を自覚するのだった。しかし白龍の神子の召喚場所への襲撃によって、梓と鬼の一族との間に溝が生まれる。ルードハーネは鬼の首領であるダリウスを深く忠誠を誓っており、梓ではなくダリウス側に味方する。しかし梓への想いは途切れることなく、ルードハーネは梓が帝国軍にいってしまった後も陰から彼女のことを見守りつづけた。
ある日、梓は不慮の事故に巻き込まれ生き埋めになってしまう。「生き埋めになったらもう助からない。見捨てるしかない」とダリウスはルードハーネにその場を離れるよう命令をするが、「私は残ります。ダリウス様の従者として失格であっても!」とルードハーネは初めてダリウスの命令に背き、生き埋めになっている梓を助けるためになりふり構わず現場に向かう。ルードハーネによって梓は無事助け出され、ルードハーネは梓が自分の使命よりも大事なかけがえのない存在であることを深く自覚する。
禍津迦具土神との最終決戦後、黒龍の神子としての使命を終えた梓は帝都に残っていた。実は梓は戦いの前にルードハーネから告白されており、彼と共に生きることを決めていたのだ。「あなたが好きです。あなたをとられたくないんです。ダリウス様にも、誰にも渡したくない」と情熱的に告白してくれた彼に、梓も自分の想いを返し、二人でこの帝都で生きていく事を決めたのだった。

本条 政虎(ほんじょう まさとら)

現代で梓(左)に強引に迫る本条(右)

梓はいつでも自分をからかい横暴な態度をとる本条 政虎(ほんじょう まさとら)を苦手に思っていた。彼はいつも金を稼ごうとしており、梓にも頼み事の報酬に金銭を要求する。梓は本条に「何でそんなに金が必要なの?」と聞くと、本条は「親父の死の真相を暴くために、情報屋に馬鹿高い依頼料を支払わなくてならないから」と話す。本条が子供の頃、母親は早くに亡くなり父親と二人で暮らしていた。しかしある日突然父親が帰って来ず、本条は翌日父親が火事に巻き込まれて亡くなったことを知る。しかし新聞には「鬼の一族の者が放火し、あげくに自分ひとりで焼け死んだ」とまるで父親を馬鹿にするような悪意の報道がされた。本条は父親は誰かに殺されたと考え、父親の仇に復讐するため今まで生きてきたのだった。その後、本条はやっとの思いで情報屋に依頼できたが、事件の真相はなんと「父親は火事の中から子供を救出し、逃げ遅れて死んでしまった」というものだった。やっと突き止めた父親の仇はおらず、本条は行き場のない怒りがつもる。しかし梓は「お父さんは放火犯なんかじゃなく、子供を助けたヒーローだった。息子がそのことを知っただけでお父さんは喜ぶんじゃないかな」と彼を励ます。梓のその言葉で、本条は少し救われたような気持ちになる。本条の父親は強く優しい人間で、常日頃から「力に相応しいことをしろ。誰かを助け守る男になれ」というのが口癖だった。本条は父親の口癖通り積極的に梓を助けてくれるようになる。そして2人は徐々に距離を縮め、本条からの告白によって二人は恋人になった。
禍津迦具土神との最後の戦いで、禍津迦具土神は力尽きる寸前にあの世行きの道連れにするために梓を一呑(ひとのみ)にし、梓はあの世とこの世の境である異界に飛ばされてしまう。本条は仲間の引き止める声も忠告も聞かず、梓のいる異界へすぐに向かう。異界に飛ばされた梓は出口に向かって歩き続ける。ついに出口にたどり着くが、通路をピッタリ塞ぐように大岩が転がっており彼女の力では動かせそうにない。絶望した梓は力尽きてその場に倒れ、本条のことを想い泣きながら眠りに落ちてしまう。一方本条は梓の靴跡を辿りながら後を追い、ふて寝している梓のもとへ辿り着く。虎は泣いている梓を背負い通路を塞ぐ大岩をどけ、異界を抜けて梓が元いた現代へ帰還した。
梓とともに現代に帰還した虎は、梓と一緒に祖母のお見舞いに行ったり梓の家族に会ったりと、周囲にすっかり溶け込んでいた。本条は自ら仕事も見つけて生活の基盤を整えた上で、梓に「早く嫁に来い」と彼らしく強引に迫るのだった。

有馬 一(ありま はじめ)

想いを伝え合い恋人になった有馬(左)と梓(右)

帝国軍精鋭部隊の隊長を務める有馬 一(ありま はじめ)は、責任感が強く自分にも他人にも厳しい男性だ。鬼側から帝国軍に来た梓を警戒するが、梓が怨霊を倒す一生懸命な姿勢に心打たれ態度をあらためてくれる。そして有馬は梓を無事に故郷に返すと約束し、事あるごとに梓を守ってくれるのだった。
有馬は人間にもかかわらず戦闘能力が高く、怨霊を倒せる特殊な力を身につけていた。彼が力を身につけたきっかけは、幼少期に故郷の山で出会った蛇神の影響だった。霊力を持った蛇である蛇神は人語を話せたため、有馬は蛇と友達になって毎日のように言葉を交わした。人間界を知ることで蛇神はどんどん知識をつけ、さらに成長と共に邪悪な力も身につけ、人間世界に恐れられるほどの力を持つ邪神である禍津迦具土神に成長したのだった。帝国軍の計画により凌雲閣の地下深くに潜んだ禍津迦具土神は、有馬の精神に介入し、彼に「同じ一日が永遠にループする」という呪いをかける。呪いによって幻惑の世界に閉じ込められた有馬は、精神世界から現実に戻れなくなってしまう。有馬の身体から邪悪な気を感じ異常に気づいた梓は、有馬を助けるため龍神の力を借りて自ら呪いに飛び込む。呪いの中へ飛び込んだ梓を、有馬は精神世界でさえも彼女を守ろうとする。しかし梓は「ここまで来てまだ私を守るつもり?有馬さんはいつだってその背中で私を守ってくれたけど、私だって有馬さんを助けたい」と訴える。梓の言葉に心打たれた有馬は「馬鹿、無粋な真似はするな。淑女なら、男の気持ちを汲んで守られていろ」と照れた様子だが、二人で力を合わせて禍津迦具土神に挑む。二人は協力プレーで禍津迦具土神の意識体を倒し、無事呪いから脱出できた。この事件をきっかけに二人の仲は急速に深まる。そして梓は、元の世界に帰ることで有馬から離れてしまうことを寂しく想い始めていた。
禍津迦具土神との最後の戦いで、梓は禍津迦具土神に身を囚われてしまう。天高く昇った禍津迦具土神から梓を助けるため、仲間たちは飛行機で梓を奪還する計画を立てる。有馬は仲間に「自分は高塚のため命を賭す覚悟ができている。高塚のために命をかけるのは、他の誰でもなく俺でありたい。行かせてくれ。ただひとりの女を守り、生還するのは、愛した者の務めだ」と訴える。仲間は梓の救出を有馬に託し、有馬は飛行機で梓を無事救出し、地上の仲間と共に禍津迦具土神を倒したのだった。
梓が元の世界に帰る日、有馬は別れの挨拶に来てくれた。元の世界に戻ることを祝福し、引き留めてくれない有馬に梓は悲しくなる。梓は有馬に「さよならを伝えるのに私はずっと悩んで苦しかったのに、有馬さんはさらりと笑って別れを告げてしまうなんて。私のことなんてひとかけらも想っていないんですね…!」と気持ちをぶつけ、思わず泣き出してしまう。梓は半ばヤケになって黒龍を呼び出し元の世界へ帰ろうとするが、そんな彼女を有馬は「高塚、行くな!」と抱きしめて強引に引き止める。有馬は梓が元の世界を恋しく思っていたこと、自分と共にいても面倒な役目をともに背負うだけだと、自分の心を押し殺していたことを伝え、二人はやっとくっついたのだった。

片霧 秋兵(かたぎり しゅうへい)

帝都で結婚生活をおくる梓(左)と片霧(右)

帝国軍へ来た梓は、優しく穏やかな片霧 秋兵(かたぎり しゅうへい)が気になっていた。彼は梓を気分転換に遊びに連れ出してくれたりと気が利き優しく、常に梓を気にかけてくれる。いつしか2人はお互いを想うようになっていた。
片霧は父である片霧 清四郎のことで悩んでいた。彼は参謀総長を務める厳格な父が自分の意見を聞き入れてくれないこと、存在を認めてもらえていないことに悲しさと劣等感を感じていた。そして強兵計画によって帝国軍への反感が高まり、軍とそれを指揮する父を倒すムードが広まった帝都で、片霧はどうしても父を恨みきれず倒す覚悟を決められないでいた。梓は気持ちが追い込まれている片霧を励まし、片霧はそばで寄り添ってくれる梓に恋をし二人は恋人になる。
禍津迦具土神との最後の戦いで、片霧 清四郎が邪神に精神を乗っ取られてしまう。片霧は帝都への被害を考え、「父は人の心をなくした罪人です。父はもう邪神と融合してしまっていて、救う手立てはないんです。罪なき兵を憑闇に変え帝都を危機に陥れたのは、すべて父が犯した過ちです。禍津迦具士神と共に葬り去られることになっても当然の報いと言わざるを得ません」と、唯一の肉親である父を倒す作戦を立てる。しかし梓は片霧の父親を助けたいという本心に気づき、彼の背中に寄り添い、「ひとりきりでつらい思いを抱えこむのはもうやめてください。せめて私だけでも…そばにいさせてください。気持ちを共有させてください」と伝える。梓がそばに寄り添ってもらったことで迷いを振り切った片霧は、父を倒す覚悟を決める。そして戦いが始まり、千代の力によって父は禍津迦具土神から離れ、父を倒すことなく禍津迦具土神を撃破できたのだった。
禍津迦具土神を撃破し黒龍の神子の使命を果たした梓は、黒龍に元の世界に戻るよう迫られていた。片霧との別れを拒否する梓だが、片霧は「僕はもう大丈夫です。僕は一生分の恋をしました。君への想いがあればこれからの人生、色あせることはないでしょう」と梓を元の世界に送り出す。強制的に元の世界へ転送された梓は片霧を忘れられず、本来の世界を捨て黒龍の力で再び時空を越えて帝都へ飛んだ。片霧は驚くが、「離れてしまったご家族の分も君を慈しみ、愛すると誓います」と梓に結婚を申し込んでくれたのだった。

萩尾 九段(はぎお くだん)

現代で暮らす梓(左)と萩尾(右)

優しい性格の萩尾 九段(はぎお くだん)は、星の一族であるという役割を忠実にこなす誠実な青年だった。彼は優しく素直で紳士で、ダリウスの邸から飛んできた梓のことを一番親身になって気にかけ支えてくれた。梓は萩尾のことが気になりつつあるが、白龍の神子として召喚された千代は萩尾の幼馴染で二人の仲はとても良く、二人の仲を勘繰ってモヤモヤした気持ちが生まれてしまう。萩尾は未来を予知する能力があるのだが、ある日彼は千代の身に降りかかる不吉な未来が視えてしまう。不吉な未来を防ぐため不自然なほど千代の身を案じる萩尾を見て、千代に気があると落ち込む梓。しかし萩尾は梓にきっぱりと「千代は良い仲間だが好きではない」と言い切り、ふっきれた梓は九段に想いを寄せるのだった。千代はそんな仲睦まじい二人を見守る良き友人だった。そんな千代が何者かに襲われ入院する事件が起こる。以前萩尾が視た千代の身に降りかかる不幸とはこのことだったのだ。神子を護るという星の一族の使命一筋で生きてきた萩尾は、この結果が視えていたにも関わらず何もできなかった事を悔やむ。しかし萩尾は同じくショックを受けたであろう梓に気を遣い、自身は泣き言ひとつ言わない。そんな彼の辛い本心を想い心が締め付けられた梓は、萩尾の代わりに涙する。萩尾はそんな梓を愛しく思い、二人の距離は少しずつ縮まっていくのだった。
しかしその後、萩尾は参謀総長である片霧 清四郎に洗脳されてしまう。萩尾は強兵計画について探っていたことで、帝国軍に歯向かわないように禍津迦具土神の鱗を頭に埋め込まれてしまう。萩尾は禍津迦具土神の力により洗脳され、思考を操られて強兵計画を怪しんでいたことさえも忘れさせられてしまう。
そして禍津迦具土神との最終決戦で、萩尾は自由を奪われ、片霧 清四郎を守るため結界をはらされてしまう。洗脳によって命令に逆らえない萩尾に、梓が「あなたの使命はなんですか?!守りたい未来はどうしたんですか?!」と必死に訴えかける。その言葉に萩尾は星の一族の使命を思い出し、自ら洗脳を打ち破る。そして星の一族の力の全てと引き換えに千代と梓を護り、無事禍津迦具土神を撃破したのだった。
禍津迦具土神との戦い後、元の世界へ帰らなければならない梓に対して萩尾は悲しむそぶりを見せない。梓は「私と別れるのは淋しくないの?」と不安になるが、なんと萩尾は現代に帰る梓についていく算段だった。萩尾は千代と梓を救うために星の一族としての力は使い果たしてしまい、この帝都でもう出来ることもないと言い切る。そして彼は「役目や使命、星の一族の力にとらわれず、物語の主役のように自由に生きてみたい。自らの居場所を自らで選ぶ。役目を終えた今ならば、それが許されるはずだ」と新しい決意をあらわにし、仲間に別れを告げ、梓と二人で現代へ帰ったのだった。

コハク

現代で再会した梓(左)とコハク(右)

梓とコハクが出会った頃、コハクは記憶喪失で自分の出自や名前さえも忘れていた。「コハク」という名は梓が彼の琥珀色の瞳を見て名付けたもの。コハクは拾って看病し、救ってくれた梓になつき忠犬のように従う。梓のことを「女神様」と呼び、梓が邸から抜け出すことにも積極的に協力してくれた。
ある日コハクは偶然訪れた遊郭で、自分が花街育ちだった事を断片的に思い出す。コハクの母親である遊女が花街でコハクを生み、何とか食いつなぐために遊郭の雑用をやらせてもらっていたのを思い出したのだ。しかし彼は毎日こき使われて病気にかかり、追い出され、そして憑闇になってしまったという。コハクは昔の壮絶な暮らしを思い出すのが嫌になり、記憶をすべて取り戻すことを諦めかけしまう。しかし梓は「一生懸命生きてきた過去ならそれを恥じる必要なんて無い。コハクはいつでも優しくて明るくて立派に生きてる。自分で自分のこと不幸だなんて思わないで」と励ます。梓に勇気づけられたコハクは、記憶探しを続けることを決心する。そして梓もコハクが過去を知るまでそばで一緒に見守ることを決意する。
コハクは自分を救ってくれた梓に恋をしていたが、梓が元の世界に帰ってしまうことも理解していた。そして彼は梓に恋心を告白しながらも返事を求めず、「あなたがいつかもとの世界に帰っても、おれを覚えていてくれたら嬉しい。おれの名前だけでも、あなたの記憶に残してほしい」と無理矢理に笑う。梓を困らせないよう初めから返事を求めないコハクに、梓の心も揺れる。
最終決戦で追い詰められ弱った禍津迦具土神は、憑依先に梓を選ぶ。邪悪なオーラが梓を襲うが、コハクは自分の身を盾にして彼女をかばう。禍津迦具土神は無事倒したが、コハクは重症を負い今にも命が消えようとしていた。息も絶え絶えなコハクのそばに寄り添う梓の元に黒龍が現れ、梓は黒龍に「コハクを助けてほしい」と願い、代償として梓はコハクの事もろとも大正の時代で過ごした日々の記憶を失ってしまうことを了承する。そして梓はコハクと一緒に過ごした幸せな日々の記憶を捨て、元の世界に帰ったのだった。
現代で日常生活を送っていた梓は、ある日不思議な青年と出会う。彼は自分の名前を「コハク」と紹介し、知らない人物のはずなのに梓は愛しさで胸が痛む。実は最終決戦で黒龍に助けられたコハクは、自分も黒龍に頼み込んで梓がいる世界に飛ばしてもらったのだ。再会した二人だが、彼がどこの誰なのか、自分との間にどんな思い出があったのか、梓は思い出すことができない。しかしコハクは「今度はあなたの記憶を取り戻す旅だ」といい、梓に手を差し出す。梓は幸せな記憶を垣間見ながら彼の手を取ったのだった。

里谷 村雨(さとや むらさめ)

街中でキスを交わす梓(左)と里谷(右)

ダリウスの紹介で、梓は情報屋の里谷 村雨(さとや むらさめ)と出会う。ある日梓が里谷の手帳を拾うと、手帳には梓が写った写真が挟まっていた。写真には制服で病院に入っていく梓の後ろ姿が写っており、この写真はどう見ても元いた世界で撮られたものだった。梓が里谷に問うと、実は里谷は梓と同じ世界からやって来た現代人だということが分かる。梓が異世界に飛ばされそうになったとき、偶然その場に居合わせた里谷は梓を助けようと手を伸ばし、そのまま一緒に時空を飛ばされてしまったのだ。里谷は梓が到着する二年前の帝都に飛ばされ、梓と会ったときにはすでにこの世界に馴染んでいたのだ。「自分のせいで…」と落ち込む梓だが、里谷は「飛び込んだ俺が悪い」と梓を励ます。また里谷は現代から来た自身の経験を活かし、元の世界を模した美しく幻想的な小説を売り出し、人気小説家として生計を立てていた。梓は彼の逞しい生き方や、冷静かつ大人の余裕がある生き方に惹かれ好きになる。そして梓から里谷に何度も好きとアタックし、二人は恋人になる。
里谷は帝都を救うために召喚された龍神の神子という存在に疑問を感じていた。龍神の神子は毎日体に鞭打って怨霊を倒し帝都のために動いているのに、民衆は彼女たちにただ頼り、また神子の役目だと押し付けて知らんぷりするのみ。帝都の運命という重責を少女二人に背負わすことはおかしいと考えたのだ。里谷は帝都の危機も民衆が力を合わせて立ち上がれば、少女二人だけが危険にさらされることもなく未来を変えることができると主張する。そしてその一つとして反政府勢力を引き連れ、帝国軍の強兵計画に反対するデモを引き起こした。デモは鎮圧されてしまったが、民衆が一つになるきっかけとなる事件だった。
禍津迦具土神との最後の戦いで、地上に出てきた邪神は瘴気放ち、帝都の空を赤黒くに染目上げていた。異様で恐ろしい光景に帝都の市民は我先に脱出しようと駆け回り、街は混乱を極める。梓は禍津迦具土神との戦いで、帝都のどこかへ飛ばされてしまう。仲間たちは「早く梓を見つけて助け出さないと禍津迦具土神に喰われてしまう」と焦るが、戦いに集まったメンバーだけでは帝都中を探して回るには範囲が広すぎる。そこで里谷は市民の力を借りることを思いつき、力を貸してほしいと市民に助けを求める。自分のことだけで精一杯、駆け回る市民たちはなかなか耳を傾けてくれないが、梓と帝都の未来を助けてほしいという里谷の訴えに聞き入る。「俺たちはただの人間だ。でも神子もみなと同じごく普通の人間だ。そしてまだたった16歳の娘だ。帝都を守ろうとした娘が今にも犠牲になろうとしている。我らはそれを見過ごしてよいのか!」と言う里谷の演説に人々の足は止まり、賛同し、協力して梓の居場所を探して無事救出する。そして無事禍津迦具土神を倒すことができたのだった。
禍津迦具土神討伐後、里谷は梓に「あんたに正式に結婚を申し込みたい」とプロポーズする。梓はプロポーズを受け入れ、街中にもかかわらず二人はキスを交わし、周りを囲む民衆は二人を祝福したのだった。

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