遙かなる時空の中で6(遙か6)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『遙かなる時空の中で6(遙か6)』とは、コーエーテクモゲームス(ルビー・パーティー)制作の女性向け恋愛アドベンチャーゲームである。『遙かなる時空の中で』シリーズの第6作目で、シリーズ15周年の記念作品でもある。平凡な高校生活を送る主人公は、ある日突然「黒龍の神子」として異世界である帝都東京に召喚され、人々を苦しめる怨霊を倒す使命を与えられる。主人公は元の世界に戻るため、帝国軍と鬼の一族、2つの抗争に巻き込まれながらも仲間とともに戦い世界を救うストーリーである。

『遙かなる時空の中で6(遙か6)』の概要

『遙かなる時空の中で6(遙か6)』とは、コーエーテクモゲームス(ルビー・パーティー)制作の女性向け恋愛アドベンチャーゲームである。人気シリーズ『遙かなる時空の中で』のナンバリング第6作目で、シリーズ15周年の記念作品でもある。平成最後に発売された『遙かなる時空の中で』シリーズ作品である。キャラクターデザインは歴代作品と同じ、水野 十子(みずの とうこ)が担当した。
発売日は2015年3月12日で、対応ハード機はPlayStation Portable(通称PSP)、PlayStation Vitaの2つで販売された。その後2016年12月22日に続編『遙かなる時空の中で6 幻燈ロンド』を発売し、2019年3月14日にNintendo Switch用ソフト『遙かなる時空の中で6 DX』が発売された。『遙かなる時空の中で6 DX』は本編・続編の両方を収録したボリュームたっぷりの内容となっている。
本作は漫画としても連載され、「ARIA」「少年マガジンエッジ」にて2015年から2019年まで掲載された。講談社より単行本として全7巻で出版されている。作者はキャラクターデザインを務める水野 十子である。また舞台化もされており、2015年11月27日~12月6日に舞台『遙かなる時空の中で6』、2017年5月4日~10日に舞台『遙かなる時空の中で6 幻燈ロンド』として全労済ホール スペース・ゼロにて上演された。さらに女性キャストのみでの公演となる、演劇女子部『遙かなる時空の中で6 外伝 〜黄昏ノ仮面〜』として舞台化され、2019年6月6日〜16日にサンシャイン劇場、2019年6月22日・23日にメルパルクホール大阪にて上演された。

『遙かなる時空の中で6 』は、これまでの『遙かなる時空の中で』シリーズとは異なる2つのポイントが注目された。まずゲームの舞台がシリーズ初の近代設定だということ。『遙か』シリーズ作品は和風の世界観を特徴としており、これまで平安時代、鎌倉時代などの和を強調する作風で仕上げていた。しかし本作は、明治・大正時代の東京に似た「帝都東京」を舞台としており、和風の世界観に近代化を感じさせる洋風の要素をプラスし、和と洋が入り混じるノスタルジックな世界観を作り出した。
さらに重要な注目ポイントは、主人公が「黒龍の神子(こくりゅうのみこ)」だという点である。これまでの『遙かなる時空の中で』シリーズでは、主人公は必ず「白龍の神子(はくりゅうのみこ)」と設定されていた。白龍の神子は自らを守護する8人の男性を八葉(はちよう)として選び、その八葉たちと恋愛をするという流れがシリーズ作品の定石だった。そしてシリーズ作品内での黒龍の神子は、鬼の一族(おにのいちぞく)側に属して主人公と敵対したり、味方としてサポートする脇役としてしか登場していなかった。しかし本作はこの黒龍の神子に主人公を据え置くことで、男性に護られるべき存在である白龍の神子という設定から抜け出し、キャラクターたちとの関係性を一変させた新しい作品となった。主人公を黒龍の神子とすることで、敵として描かれていた鬼の一族へ濃密に関わらせ、また鬼を敵とみなす人間側キャラクターを客観的な視点で見られるようなストーリー展開となっている。ストーリーには中立の立場のキャラクターも存在し、鬼、人間、中立の3つの立場にいるキャラクターから恋愛相手を選ぶことができる、深みのあるストーリーとなっている。

本作のあらすじは主人公の高塚 梓(たかつか あずさ)が、異世界である帝都東京を救うために龍神の神子として召喚されるというストーリーである。帝都東京には怨霊(おんりょう)と呼ばれる異形の存在がはびこり人々を苦しめていた。帝都を守る帝国軍によって召喚された梓は、一時的に鬼の一族とともに過ごしながらも、帝都の危機を救うべく怨霊を倒していく。帝都東京で帝国軍と鬼の一族、2つの抗争に巻き込まれながらも、絆が芽生えた仲間とともに戦い世界を救うストーリーとなっている。
帝国軍と鬼の一族を二極化した波乱な展開を多く含む物語のシナリオや、キャラクターひとりひとりの設定描写が非常に細かく描かれており、それに基づく人間関係がおりなす濃密なストーリーが魅力となっている。恋愛キャラクターそれぞれに物語や目標があり、発生するイベントストーリーにも力を入れていることがわかる説得力のあるネオロマンスならではのストーリーに仕上がっている。

『遙かなる時空の中で6(遙か6)』のあらすじ・ストーリー

選ばれた龍神の神子

異世界に召喚された梓(右)は、ダリウス(左)に連れ去られてしまう

16歳の平凡な女子高生、高塚 梓(たかつか あずさ)は、いつも通り祖母のお見舞いのため病院に向かっていた。すると突然頭の中に鈴の音が鳴り響き、目の前に黒い龍が現れたかと思うと、身体が光に包まれ浮き上がりいつの間にか気を失っていた。梓が目を覚ますと、知らない場所でたくさんの軍人に囲まれていた。ここは帝都東京(ていととうきょう)。彼らは帝都東京を守るための組織である帝国軍(ていこくぐん)の軍人で、梓は時空を超え、異世界である帝都東京に飛ばされたのだった。混乱する彼女を落ち着かせようと、星の一族である萩尾 九段(はぎお くだん)が近づいた瞬間、突然その場に乱入者が現れ帝国軍と戦闘を始める。乱入者は鬼の首領であるダリウス、彼の眷属(けんぞく)であるルードハーネ、雇われ用心棒の本条 政虎(ほんじょう まさとら)だ。彼らは梓をその場から連れ去り、蠱惑の森(こわくのもり)にあるダリウスの自邸へ連れ帰ったのだった。
連れ帰られた梓は、ダリウスから自分が龍神の神子(りゅうじんのみこ)のうちのひとりである黒龍の神子(こくりゅうのみこ)という存在であること、怨霊(おんりょう)の声を聞き従える力があること、その怨霊を倒し帝都を救うために帝国軍によって自分がこの世界に召喚されたことを知らされる。異世界に召喚された梓は当然身寄りも行き場もない。そのため彼女はとりあえずダリウスたち鬼の一族と共に過ごすことに決めたのだった。
一方帝国軍は、敵対組織である鬼の一族の手に落ちた梓を取り戻すため、帝国軍精鋭部隊(ていこくぐんせんえいぶたい)の隊長、有馬 一(ありま はじめ)と副隊長の片霧 秋兵(かたぎり しゅうへい)に梓の行方を探すよう命じたのだった。

怨霊退治の理由

数日後、梓はダリウスたちに連れられ帝都の散策に出かけた。梓は街で、帝都では怨霊(おんりょう)が現れて人々に被害が出ており、帝都に住む人が日々怯えながら暮らしていることを知る。そこで梓は、黒龍の神子として各地の怨霊を鎮めることに決める。ダリウスたちは「帝国軍から怨霊の出没を鬼の一族のせいにされている。帝都の危機は鬼の一族のせいじゃないと証明したい」と協力的で、梓は彼らと共に各地の怨霊の声を聞き鎮めていくことにした。梓はダリウスから「怨霊を祓うことで龍神の力が高まり、本来の力を取り戻す。そうすれば龍神の力で元の世界へ戻れる」と聞いていた。梓は苦しむ街の人々を救うため、そして元の世界へ戻るために日々怨霊退治に力を入れるのだった。
ある日、梓帝都に憑闇(つくやみ)と呼ばれる謎の病が流行っていることを知る。人間が突然自我を失い、正気を失ったように暴走するという恐ろしい病だという。梓たちは怨霊退治の最中、憑闇に冒されながら自我を保っている青年と出会う。突然苦しみ気を失った彼をそのままにしておけず、ダリウスの自邸へ連れて帰るが、目を覚ました青年は自分の名前も誰なのかも覚えていなかった。梓は琥珀色の瞳を持つ彼に「コハク」と名を授け、コハクを仲間として引き入れたのだった。
また別の日ダリウスと街へ買い物に出かけた途中で、里谷 村雨(さとや むらさめ)と出会う。情報屋である里谷は、軍内の様々な秘密に通じており、梓が召喚され現れる日にち・時間・場所などをダリウスに情報提供した張本人だった。ダリウスは里谷から、次に召喚されるはずの白龍の神子(はくりゅうのみこ)の情報を仕入れる。梓が問うとダリウスは「白龍の神子は龍神の神子の2人のうちの1人で、梓の対の存在だ。召喚されたら彼女も攫う(さらう)つもりだ」と明かす。梓はダリウスの不穏な言葉に不安を感じるも、自分の対の存在に会えることに嬉しさを感じ、白龍の神子が召喚される日を待つことにした。

裏切りの作戦

召喚の儀に乗り込んできた鬼の一族(中央)に対抗する帝国軍の有馬(右)と片霧(左)

白龍の神子を攫う決行日。夜も深まる闇夜の中、梓とダリウスは里谷から仕入れた情報をもとに、召喚の儀式の場所へ到着した。儀式の場には強力な結界が張られており、また帝国軍側が警備を強化していて簡単に近づけそうにない。するとダリウスは自身の力を使って梓を操り、梓の力を使って強力な破壊の力を持つ黒麒麟(くろきりん)を呼び出す。ダリウスは黒麒麟によって帝国軍の結界を破り、ルードハーネ、コハク、虎とともに周りの帝国軍を蹴散らしながら、梓をその場に残して儀式の中心へ向かってしまった。計画とは違う行動をとるダリウスに混乱する梓だが、とにかくダリウスたちを止めなければという直感が働き急いで彼の後を追う。
ダリウスの本当の目的は白龍の神子を攫うことではなく、龍の宝玉(りゅうのぎょく)の破壊だった。龍の宝玉は、白龍の神子を守護し力となる八葉(はちよう)を選ぶために必要なもの。ダリウスは梓の力で黒麒麟を呼び、その強大な力で龍の宝玉を破壊し、八葉のいない無力な白龍の神子を作りあげようとしたのだ。そしてダリウスの計画通り、龍の宝玉は黒麒麟の力で破壊されてしまった。さらにその場には黒麒麟の気配に引き寄せられた怨霊たちが集まり、あたりは混乱の場と化す。ダリウスは混乱に乗じて白龍の神子である駒野 千夜(こまの ちよ)を攫おうとするが、精鋭分隊の有馬と片霧に阻止される。分が悪いと考えたダリウスは、ひとまず目的は果たしたとばかりに自分を追いかけてきた梓を連れて自邸へ戻ったのだった。
ダリウスに連れられ邸へ戻った梓は自分を騙していた彼を非難するが、ダリウスは「真実を話すと目的が達成できなかった」と気にする様子はない。それどころか彼は梓に「黒龍の神子は怨霊を呼び、その力を行使できる神子だ。君には先ほどの黒麒麟を召喚する力をつけてもらうため、怨霊を倒して陰の気を高めさせていた」と告げる。ダリウスは白龍の神子を無力にし、神子頼りの帝国軍を破滅へ導くため、最初から梓の力を利用する計画だったのだ。傷ついた梓だが、自分が呼んだ黒麒麟でたくさんの人を傷つけたことを悔やみ、自分を利用したダリウスたちの元へはもういられないと宣言する。邸を出ようとする梓だが、ダリウスは許さず彼女を部屋に軟禁する。

白龍の神子との出会い

邸に軟禁された梓は脱出の計画を立てる。そしてコハクと本条の計らいによって部屋からの脱出に成功する。ひとまず事を穏便に進めようと、梓はダリウスとルードハーネが邸を不在にしている間のみ外出して情報収集を始めたのだった。
梓、コハク、本条の3人は、まず情報屋の里谷がいるカフェ「ハイカラヤ」へ行き、帝都の現在の様子や先日召喚された白龍の神子である千代はどこにいるのかなどを尋ねる。千代は帝国軍に保護され安全な場所で過ごしていることを知った梓は安堵し、そして「千代に会ってみたい」と強く思ったのだった。さらに3人は情報集めと並行して怨霊退治を続け、夜は一旦邸に帰る生活を続けた。
梓は千代に会いたいという気持ちから、千代がいる邸にやってきた。邸の警備をこっそりかいくぐって中へ入り、千代に会えた瞬間、安全なはずの邸に憑闇が現れて梓と千代に襲いかかる。千代が浄化の力を使って事なきを得たが、騒ぎから警備が集まってしまい、梓は千代と言葉をあまり交わすことなくその場を去ったのだった。その後梓は、一瞬だったが千代と会い、そして外の世界を見て、このままダリウスの元にいられないと決心が固まる。こっそり邸に戻った梓だが、部屋を脱出して外出していたことがダリウスにバレてしまう。迫るダリウスに梓は恐ろしさを感じ、「誰か助けてほしい」と強く願うと、急に梓の体が宙に浮き光に包まれる。梓の強い願いと、千代の「梓を助けたい」という願いが共鳴し、2人の龍神の神子の力によって梓は千代の元へと飛ばされたのだった。気がつくと梓は千代がいる帝国軍の邸の一室におり、ダリウス達の元から離れられたのだ。

帝国軍の企み

帝国軍に抗議する結実ナキ花の集団

龍神の力によって千代の元へ飛んだ梓は、千代とたまたま部屋にいた萩尾に歓迎される。梓は今まで鬼側の主張を聞いていたが、帝国軍の話も聞いてみたいと思い、そして自分の身の振り方を相談するため、千代と萩尾の3人で帝国軍の参謀本部へ向かう。参謀本部には参謀総長である片霧 清四郎(かたぎり せいしろう)がおり、梓は今まで鬼側についていたことを問い詰められるも「怨霊を倒して龍神の見守る平和な世にしたい」という自らの思いを伝える。梓はひとまず帝国軍の一員として迎えられ、梓のお目付役として有馬、片霧と行動を共にし怨霊を倒すことになった。初めは梓に懐疑的だった2人だが、帝都を守りたいという梓の真摯な態度を認め、和解し共に怨霊討伐を続ける。
ある日、帝都の警護にあたっている帝国軍新兵が憑闇になり、暴走して民間人に襲いかかる事件が起こる。梓と千代の力でその場は収められたが、帝都を守る帝国軍でさえ憑闇になってしまうことに帝都の人々は危機感を募らせる。新兵の憑闇暴走事件からすぐ、参謀本部から今後の軍事方針として強兵師団(きょうへいしだん)の設置が発表される。強兵師団の兵は軍の命令だけを聞き、まるで自分の意思を持たないような行動をする不気味な兵たちだった。帝都を怨霊や憑闇から守るためと銘打たれてはいたが、強兵師団のために男手を徴兵された街の人から不満の声が広がっており、梓は市民の間に広がる戸惑いと反感を肌で感じた。
そんな帝国軍に、「結実ナキ花(けつじつなきはな)」という反対勢力からの怪文書が届く。内容は強兵計画の中止を要求する脅迫文で「中止しなければ計画が行われている場所を襲撃する」と記されていた。帝国軍は結実ナキ花を必死に調査するも尻尾はつかめず、ついに結実ナキ花が動き出す。結実ナキ花の暴動が始まった一報を受け、梓たちが急いで参謀本部に向かうと、軍部の前には数百人以上の大勢の民衆が集まり徴兵撤廃を要求するデモが起きていた。そしてその中心には結実ナキ花の統率者として、なんと情報屋の里谷の姿があった。帝国軍と結実ナキ花の抗争が始まるが、梓たちの働きによって騒ぎの被害は最小限に収まった。しかし里谷は気づいたらその場からいなくなっていた。

襲われた千代

千代は密かに、強兵師団の兵士たちが気になっていた。心がないような、まるで人間らしさが失われたおかしな態度をとる彼らの存在が気になり、千代は真夜中に1人で参謀総長の片霧 清四郎に会いに行く。翌朝、梓の元に「千代が路地で何者かに襲われ、現在昏睡状態だ」という連絡が入り、急いで病院に向かうと、顔色が悪く横たわる千夜の姿があった。千代の護衛から「昨夜千代が1人で参謀本部に行った」と聞いた梓は、参謀本部の片霧 清四郎の元に行き「千代が何をしにここに来たのか」と問いただす。彼は何ともない話をして解散したと答えたが、梓は片霧 清四郎を疑い始める。
千代が目を覚まさないまま数日が過ぎ、梓は帝国軍が主催するパーティーに参加していた。「龍神の神子として姿を披露し、帝都は龍神の神子の力によって心配ないということを周囲に伝えたいう」という片霧 清四郎の命令があったからだ。パーティーの雰囲気に馴染めない梓がバルコニーに出ると、そこには懐かしいダリウスの姿があった。驚く梓に、ダリウスは声をひそめながら「コハクの記憶喪失の謎が解けた」と言う。彼曰く、コハクが街で強兵師団の姿を見て怯えたため、先のデモの現場へとコハクを連れて行ったのだという。そして改めて強兵師団を見たコハクは、自分は帝国軍によって強兵計画の実験台にされたことを思い出したというのだ。コハクは強兵師団を作り出す実験から命からがら逃げてきたが、代償に記憶を失ってしまっていたのだという。ダリウスは「帝国軍の根城は、帝都にある凌雲閣(りょううんかく)だ。その地下で怪しい実験が行われており、真相が隠されている」と言う。強力な結界が張られており自身は近づけないと語るダリウスは、調べるかそのままにするか、判断を梓に任せて姿を消す。
病院から千代が目覚めたとの連絡が入り、梓たちが急いで向かうと、顔色は悪いが意識はしっかりした千代が体を起こしていた。皆目を覚ました千代に喜ぶも、彼女は「襲われたことは何も覚えていない」と言い、どこか言葉が少ない。そして傍らにいた梓に、千代がそっと手紙を渡す。手紙の中には「見張りのせいで皆の前で話せない。帝国軍に気をつけて。なにか危険を秘めていると私は疑っている。有馬には言わないで」と書いてあった。梓は手紙の内容を、中立の立場である萩尾に見せ、パーティーでのダリウスからの言葉も合わせて説明する。すると凌雲閣の結界は、帝国軍に別の理由をつけて萩尾が張ったものだった。自身では結界が解けない萩尾は、結界を破壊するため怨霊ではなく四神(ししん)の力を借りることを梓に勧める。梓は結界を解き凌雲閣の内部に入るため、四神に認められるよう各地を巡ることを決める。四神への旅路は、これまで会った帝国軍側の有馬、片霧、鬼側のダリウス、ルードハーネ、コハク、本条、そして萩尾と里谷、皆が梓に協力してくれた。そして全員が力を貸してくれたことで梓は無事四神の力を手に入れ、凌雲閣へ向かい真相を確かめに行くのだった。

地下室に眠る真相

凌雲閣へは、梓、千代、そして四神の力を手に入れるため手伝ってくれた8人の、計10人で向かった。梓が四神の力を使って結界を破壊し中へ入ると、地下には広々とした空間が広がり、おびただしい数の不気味なガラス容器がズラッと並んでいた。そしてそのガラス容器の中は液体で満たされており、人間と禍々しい徒花(あたばな)の花びらで満たされていた。実はこのガラス容器は強兵計画のための兵士を作るための装置で、徒花の蜜を人間の体に入れることで兵士を作り出していた。そして憑闇こそ強兵計画の失敗作だった。憑闇を生んだのは帝国軍で、その原因を鬼になすりつけていたことが分かる。さらに、ダリウスが自身の知る真実を話し出す。
ダリウスは鬼の一族と共に隠れ里で暮らしていたが、3年前に里に帝国軍が攻め込み「平穏が欲しければ帝国軍に手を貸せ」と脅してきたのだと言う。一族のため、ダリウスは「カグツチ」という名の徒花を輸送する役目を担ったのだという。ただ花を渡すだけの簡単な役目だと思っていたが、実は帝国軍の強兵計画に加担させられ、さらに怨霊や憑闇の出現を鬼の一族のせいにされていたのだ。ダリウスは帝都の腐敗の元である帝国軍を潰すため、軍の反対勢力である結実ナキ花の里谷と協力し暗躍していたと言うのだ。
真実を知った梓たちの目の前に、すべてを指揮した元凶である片霧 清四郎が現れる。強兵師団を使って排除しようとする彼に、梓たちは真っ向から立ち向かう。戦闘は梓たちに有利に進み、あと少しで倒せるところまで追い詰めると、片霧 清四郎は自ら徒花の蜜を身体に取り込み肉体を強化してしまう。そして彼の精神を乗っ取り依代(よりしろ)とし、世界を破壊しようと企む邪神、禍津迦具土神(まがつかぐつちのかみ)が姿を表したのだった。

最後の戦い

白龍と黒龍、それぞれの力を使う千代(右)と梓(左)

帝国軍が使った「カグツチ」という名の徒花(あだばな)は、禍津迦具土神(まがつかぐつちのかみ)の棲家である火山に生息していたものだった。徒花を使いすぎたことで凌雲閣の地下室に瘴気が溜まり、火山の下に眠る禍津迦具土神をいつのまにか帝都に呼び寄せていたのだ。禍津迦具土神に操られる片霧 清四郎を助けるため、千代が白龍の神子としての最後の力を振り絞り、体から禍津迦具土神を退散させる。体から抜け出した禍津迦具土神は外に逃れ、千代は光に包まれ消えてしまった。驚く梓に、萩尾が「弱りすぎてこの世界では体がもたない千代を、白龍が別の世界に飛ばしたのだろう」という。千代との急な別れに悲しみながらも、残された梓たちは外に逃れた禍津迦具土神を追う。
本体を現した禍津迦具土神は、帝都の空を覆うような強大な姿を見せつけていた。圧倒的な力を見せつけ地上を破壊しようとする禍津迦具土神に立ち向かう梓の前に、壊したはずの龍の宝玉が現れ、この場にいる8人の男性、有馬、片霧、ダリウス、ルードハーネ、コハク、本条、萩尾、里谷を八葉として選び、彼らに龍神の力を授けてくれた。そして8人の八葉として覚醒した力と梓の黒龍の神子の力によって、禍津迦具土神は倒されたのだった。
強大な敵との戦いが終わり、安堵する梓の頭の中に鈴の音が響く。そして目の前に黒龍が現れ「帝都を救った今、褒美に願いを一つ叶えよう」と告げる。梓は迷わずこの世界、そして帝都東京と共に戦った皆の平和を祈る。そして黒龍の力によって梓は元の世界へ戻ったのだった。ふと梓が気がつくと、いつの間にか病院の屋上で寝ていた。梓は元の世界に戻る代償として帝都で過ごした記憶を無くしており、何か忘れているような気がしながらも、急いで祖母のお見舞いに向かったのだった。

各キャラルート・エンディング

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