勇者、辞めます(次の職場は魔王城)のネタバレ解説・考察まとめ

『勇者、辞めます(次の職場は魔王城)』とは、2017年1月12日から2月7日まで小説投稿サイト「カクヨム」に連載された小説。及びそれを原作とした漫画、アニメ作品。作者はクオンタム。
機械文明時代に作られた生体兵器レオが3000年後の世界を舞台に、心に埋め込まれた呪縛から自分を解き放ち、勇者としての生き方を辞めて新たな存在意義を見出すまでのプロセスを描く。レオが物語で語る仕事術は作者が実際の仕事を通して手に入れたものであり、アニメの中だけにとどまらず日常でも活かせる有益な情報である。

アカシックエンジン機能仕様書

世界のどこかにある賢者の石の取扱説明書。これがないと賢者の石を正しく取り扱えない。

デモンハートシリーズ

魔族らの力を解析して作られた12体の生体兵器で、見た目は人間そのもの。現在、レオのみが生き残っている。12星座をモチーフとした国際コードネームがつけられているが、運用時には製造国の言葉による愛称で呼ばれた。

DH-01-Aries[アリエス]
製造国:アメリカ
デモンハートシリーズを統括し、メンテナンスを担当した。

DH-02-Taurus[タウラス]
製造国:アメリカ
コンセプト:超火力
魔族の力を解析して得られた自己強化呪文が常にかけられており、全ての障害を殴って粉砕する。

DH-03-Gemini[ジェミニ]
製造国:中国
コンセプト:超スピード
超加速により得られた運動エネルギーを活かして障害を破壊する。

DH-04-Cancer[キャンサー]
製造国:ロシア
コンセプト:超重装甲
防御呪文が常時かけられており、戦闘時には他の防御呪文を上乗せして鉄壁の防御となる。

DH-05-Leo[レオ]
製造国:日本
コンセプト:超成長
初期の戦闘力は低いが、関わった相手の技術を模倣することで無限に成長する。
レオのみが生き残った。

DH-06-Virgo[ヴァルゴ]
製造国:インド
コンセプト:超再生
魔族が用いる回復呪文を電子化して記録しており、それらを無詠唱で発動できる。

DH-07-Libra[リーブラ]
製造国:アメリカ・EU
コンセプト:物量作戦
マシンゴーレムとリンクして戦闘集団を指揮する。地中に埋もれたマシンゴーレムは魔王城の炭坑からも発見された。

DH-08-Scorpio[スコルピオ]
製造国:イタリア
コンセプト:友愛・諜報
相手の心を操る呪文で戦わずして勝利する。肉体的には12体の中で最も脆い。

DH-09-Sagittarius[サジタリウス]
製造国:ドイツ
コンセプト:超長距離砲撃
離れた場所を見ることができ、長距離砲撃で敵を粉砕する。

DH-10-Capricorn[カプリコーン]
製造国:EU
コンセプト:?
あらゆる動物の遺伝子を持っており、変身の呪文と組み合わせることで様々な魔獣に姿を変えられる。

DH-11-Aquarius[アクエリアス]
製造国:イギリス
コンセプト:全自動反撃
氷雪系呪文の使い手であり、戦闘が始まると周りに超低温フィールドを展開して敵を凍らせる。

DH-12-Pisces[パイシーズ]
製造国:イスラエル・エジプト・サウジアラビア
コンセプト:超猛毒
毒系の呪文を得意とし、人里離れた場所で活躍した。

架け橋のエイブラッド

人間と魔族の共存を主張したエイブラッドの逸話をまとめた本。エキドナとレオの愛読書。エイブラッドは、2060年の東京に現れた大霊穴を通って魔界から来たインプ族である。

大霊穴(だいれいけつ)

魔界と人間界をつなぐ穴。数百年に一度だけ開く。維持するためには多数の魔術装置とそれに魔力を供給できる者が必要。

対勇者拘束呪アンチレオ

勇者レオの力を封じるために魔王の1人が編み出した呪文。魔王から魔王に伝えられる呪文であり、試行錯誤や改良を重ね、エキドナの代でようやく実用化にまで至った。アンチレオで拘束された勇者は攻撃、防御、回避、再生などを封じられる。魔王の負担も大きく、魔力全てを消費してしまう。それでも勇者を無力化できる時間はごくわずか。

『勇者、辞めます(次の職場は魔王城)』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

レオ・デモンハート「いいか、仕事ってのは1人でやるもんじゃない」

シュティーナ(右)の仕事を減らすと宣言するレオ(左)。

エピソード2”明日の自分が楽になる仕事をしろ”におけるレオのセリフ。

勇者レオとの戦いに敗れた魔王軍は深刻な人材不足に陥っていた。戦いで傷ついた幹部級魔族の大部分が魔界で療養しており、彼らの仕事は四天王に割り振られている。その中には魔将軍シュティーナしかできない仕事が多く含まれていた。手順書を作る時間もなければ人材を育成する余裕もない。まじめな彼女は1人で仕事をこなしており、過労で倒れる寸前まで追い込まれていたのだ。
そんな状況を改善するため、仮採用の元勇者は魔力炉への魔力の供給を他の魔族でも行えるようにした。本来、魔力炉への魔力供給は作った本人にしかできない。製作者の魔力波長しか受けつけないからである。他の者が魔力を供給すると魔力炉は壊れてしまう。その問題の解決策として、レオはシュティーナの魔力波長を石に記憶させた。石を体に身につければ彼女と同じ波長を出せるようにしたのである。てっきり本人が魔力供給を行うと思っていた魔将軍は驚きを隠せない。そんな彼女に「いいか、仕事ってのは1人でやるもんじゃない」と元勇者は忠告する。能力の高い者が単独で頑張るよりも、力は小さくても他の者に仕事を任せれば大きな組織の運営は上手くいく。
魔王エキドナのために自分の体を限界まで酷使するシュティーナ。そんな彼女を気遣うレオの優しさが分かる名セリフ。

元勇者レオが自分の過ちを反省する

ひと晩かけて考えた仕事効率化のアイディアをレオ(右)に説明するリリ(左)。

エピソード3”ちょっとした気付きが仕事の効率を上げる”における名場面。

ラルゴから魔王城への物資の供給を任された獣将軍リリであったが、その仕事ぶりは子供の遊び。この調子では仕事は終わらず、食料尽きかけの魔王城は深刻な状況に陥ってしまう。頭を悩ませた元勇者レオは故意に毒蛇に噛まれることで少女を動揺させ、山に薬草を採りに行くよう仕向ける。その道々に彼女1人では乗り越えるのが難しい試練を設置し、仲間と協力することの大切さに気づかせようとしたのだ。
しかし神狼フェンリルに姿を変えた獣将軍は単独で次々と試練を突破。慌てたレオは吟遊詩人に姿を変え、断崖で足止め中の神狼少女の前に現れ歌で仲間の協力を得るよう促した。アドバイスに従い走り去る少女に元勇者は胸をなでおろすが「川を泳いで渡ればいい」という助言を受けた彼女は1人で試練をクリア。残りの試練も失敗に終わり、疲れ果てたレオは意識を失う。
翌朝、目を覚ました元勇者にリリは1枚の紙を差し出す。そこには部下の魔族を上手く動かすことで任務を遂行する方策が書かれていた。少女は仲間と協力することに気づいたのだ。言葉で説明しても理解できないと決めつけていたレオは「バカなのはリリではなく、この俺だ」と深く反省する。
少女のひたむきさと、自分の過ちを素直に認める元勇者の潔さが視聴者の心を温かくする名場面。

レオ・デモンハート「仕事だろうがプライベートだろうが、会話で必要なのは思いやりの心だ」

会話の極意をメルネス(左)に伝えるレオ(右)。

エピソード5 ”仕事を辞めたくなったら一度相談しろ”におけるレオのセリフ。

メルネスからコミュニケーションの指導を頼まれたレオは魔王城の食堂にてアルバイトを始める。接客業にはコミュニケーションの基本が詰まっているとの考えからだ。理由がわからず不満をこぼす口下手な少年に元勇者は説明を続ける。
会話は人との共同作業であり、相手の言葉を受けとり投げ返すことで「話をちゃんと聞いています」とアピールできる。投げ返す言葉の選択肢はいくらでもあり、正解をつかむには相手の気持ちを汲みとる能力が必要だ。そして「仕事だろうがプライベートだろうが、会話で必要なのは思いやりの心だ」と語る。つまり相手の立場から考え、相手が欲しがっている話題を振ることが大切なのだ。
そんな人生の先輩のアドバイスであったが、暗殺ギルドで「思いやりは捨てろ」と教育された少年には上手くのみ込めない。しかし、この言葉をヒントにメルネスは人を思いやることを意識し始める。ありふれた言葉であるが、1人の少年の生き方を変えた言葉には力がある。

Arisaccc8
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@Arisaccc8

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