弁護人(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『弁護人』とは、2013年に韓国で公開された映画で、監督はヤン・ウソク。主人公は韓国の元大統領の盧武鉉(ノ・ムヒョン)がモデルで、物語の大筋は彼の半生を描いている。高卒で司法試験に合格して弁護士になったソン・ウソクは、知人が共産党主義者の疑いで取り調べを受けていると知る。拷問に近い取り調べの実情に驚愕したウソクは彼らの弁護人として法廷に立つことを決め、無罪を勝ち取ろうと奔走する。この物語は、金儲けのために働いていた一人の弁護士が人々のために劇的に変化していく様を、事実に基づいて描いた作品である。

ウソクに顧問弁護士になるよう持ち掛けてきた、ヘドン建設の社長。高卒で裁判官・弁護士になったウソクの能力をかっており、ヘドン建設会長の反対を押し切ってまでウソクを顧問弁護士にしようとする。しかし結局ジヌの裁判による公権力からの圧力で、ウソクの元を去ることになる。

『弁護人』の用語

不動産登記

不動産登記でにぎわうウソクの事務所

不動産登記とは、その土地が「どこにあってどのような不動産なのか」「所有者が誰なのか」などを明らかにする書類のことである。通常は司法書士が依頼主から依頼を受けて作成することが多いが、弁護士も司法書士と同様に不動産登記を行うことができる。本作のウソクは不動産登記の仲介料の良さに目をつけ、弁護士でありながら不動産登記専門で活動していた。

警監

警察の制服を着たドンヨン

警監とは、韓国の国家警察の役職の一つ。韓国の警察は「国家警察」と「自治体警察」の2つに分けられ、国家警察は外事、保安、対北朝鮮事案などを担当し、自治体警察は生活安全や交通などを担当する。警監は国家警察の中でも係長やチーム長のような役割を与えられ、日本の警察組織の中で言う「警部」に相当する。本作のドンヨンも国家警察の警監として、北朝鮮と通じている可能性のあるアカを取り締まる役割を与えられていた。

共産主義

共産主義とは、社会主義の中でも特に急進的な考えをもった主義のことである。社会主義は市場経済が持つ経済格差等の負の部分を解消するために市場経済に様々な制限を設けているが、共産主義はさらに完全な平等社会を作るため、共産党などの一党独裁制を強く推し進めている。韓国と停戦中の北朝鮮が共産主義の国のため、本作では共産主義の考えを持った者を「アカ」として厳しく取り締まる様子が描かれている。

顧問弁護士

顧問弁護士とは、契約した企業に法律上のサポートやアドバイスを行う弁護士のことを言う。企業側にとっては、法律上のトラブルや従業員との細かな法律問題にも対応してもらえるため、安心して会社の運営ができるという利点がある。弁護士側としては顧問弁護士になると顧問料が見込めるほか、周囲への信用度も上がるため弁護士としての箔が付く。本作ではウソクがヘドン建設より顧問弁護士の依頼を受け、ドンホが喜ぶ様子が描かれる。

国家保安法

国家保安法とは、韓国の法の一つで国の国家保安を脅かす反国家活動を抑制するためのものである。具体的には反国家団体の構成や支援、反国家団体構成員の国内潜入などを規制・罰する法律で、日本の治安維持法を元に作られたとも言われる。制定は1948年で、制定から現在に至るまで韓国国内での反共産体系の中核を担ってきた。本作ではジヌたちアカの疑いをかけられた者たちが国家保安法を元に裁判にかけられる様子が描かれている。

量刑

量刑とは、その罪に対して被告人が負うべき刑の程度のことである。裁判官は、その事件を担当する弁護側・検事側の意見や証拠を鑑み、被告人が負うべき刑がどの程度のものが適当なのかを決定する。本作ではジヌたちが負うべき刑を決めるため、ウソクたち弁護側と検事側で相談して量刑の折り合いをつけるよう裁判官が促す場面が描かれる。

対共分室

対共分室で厳しい取り調べを受けるジヌ(中央)

対共分室とは、1948年の国家保安法制定により反国家勢力を取り締まるための分室として韓国南営洞(なみょんどん)に作られた建造物である。1990年頃まで国家保安法による公権力の人権侵害は当たり前に行われており、対共分室に送られたら「無事には帰ってこられない」と噂されていた。対共分室の中には16室の独房のような部屋が並び、捜査員によって水や電気を使った不当な取り調べが行われていた。本作の中でも、ジヌが対共分室でドンヨンによって厳しい取り調べを受ける様子が描かれる。

脱営

脱営とは、軍に所属する者が営舎を抜け出し脱走することを言う。韓国では脱営した場合、逮捕などの処罰の対象となる。本作ではジヌの裁判で証人となったユン中尉が、ドンヨンの策略により無断外泊で脱営中であると無実の罪を着せられ、逮捕される様子が描かれる。

『弁護人』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

過去の後悔を乗り越えたウソク

立派になったウソクを見て驚くスネ

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