ダーウィン事変(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ダーウィン事変』とは、2020年8月号の『月刊アフタヌーン』より連載された、うめざわしゅんによる漫画。アメリカを舞台に、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーを主人公とした「差別とテロ」を題材とした物語である。15歳のチャーリーは人間の両親のもと高校に入学し、人間の女の子ルーシーと出会い友情を育む。一方で、「ALA(動物解放同盟)」と名乗るテロ組織はチャーリーを仲間に引き込もうと画策する。数々の賞にランクインし、海外でも話題となっている。

ゲイルに無差別に撃たれた同級生たち(上)と目を背けるルーシー(下)

リヴェラ自らが誘導し、銃乱射事件を起こしているゲイルに通信機経由で伝えた言葉。リヴェラはこれまでの観察から、チャーリーの行動原理は単純(シンプル)であり「観測範囲の苦痛と死を減らす」ことであると考える。リヴェラはこの行動を「危害センサー」と捉え、ゲイルに「チャーリーに教えてあげるんだ この世界はシンプルではないことを」と言い、適度に瀕死の人間をばら撒かせる。目的の為なら手段をいとわない、リヴェラの冷酷さが分かる名言。

スタイン博士「生きることは変わることだ 変わらなければ」

町を出る気はないと言うスタイン博士(右下)にこの世の不条理を説くフィル(上)

銃乱射事件後、チャーリーの為という名目で町から出て行くよう提案に来たフィルへ向けたスタイン博士の言葉。チャーリーをよく思わない町の住人を抑えるのにも限界があり危険だと考えるフィルに、「出て行くつもりはありませんよ」と答えるスタイン。それに対しフィルは「残酷で理不尽で苦痛に満ちた現実を受け入れられないのなら、夢想家のテロリストと大差ない」と言い放つ。「生きることは変わることだ 変わらなければ」とスタインは揺るがない意思を見せるのだった

チャーリー「ボクはこの世界に対して全然なんの責任も感じない だって勝手に放り込まれただけだから」

ルーシー解放のため淡々とALAメンバーを倒すチャーリー(右)に今一度対話を求めるリップマン少佐(中央)

ルーシーを救出するべく対峙することとなったリップマンへチャーリーが伝えた言葉。地球温暖化等の人類が抱える危機について、ALAの行動は長期的に見れば動物だけに限らない人類の利益に敵うものだという。「世界から苦痛と死を少しでも減らしたいのなら」と再度チャーリーを誘うリップマンだが、「ボクはこの世界に対して全然なんの責任も感じない だって勝手に放り込まれただけだから」というチャーリーの一言で、リップマンはチャーリーをALAにとって危険な存在だと認知する。

ルーシー「きみがヒューマンジーであることは きみ自身から切り離せることなの?」

チャーリーは思春期を迎え、ルーシーも自身に好意を持っていることを知り「交尾しない?」と誘う。ルーシーは驚き「嫌とは思わない」と答えつつも、「積極的にそうしたいと思えない」、と嫌であると伝える。「それってボクがヒトだったら違ってた?」と聞くチャーリーに「きみがヒューマンジーであることは きみ自身から切り離せることなの?」とルーシーは聞き返す。答えられないチャーリーに、「いまはこのくらいかな…」と照れながらも頬にキスをするのだった。第1話の「ボクも不思議に思ってる 人間(ヒューマン)なのってどんな感じ?」と反対の立場となっている。

エヴァ「I am a mother of 2(私は二児の母)」

エヴァが死の間際で単語カードを使ってチャーリーに伝えた言葉。寿命を迎え救急措置を受けるエヴァにお別れをするため、コーンバーク研究所を訪れたチャーリーとルーシー。安楽死させられる直前、エヴァが指を微動させるのをルーシーが気付き、単語カードを渡すよう懇願した。エヴァは単語カードを「I am a mother of 2(私は二児の母)」と並べた。誰も知らなかったチャーリーの兄弟の存在が明らかになる。

『ダーウィン事変』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

連載以前から決まっていたテーマ「人間と動物の生存権」

作者のうめざわしゅんは、作品のプロトタイプ(原型)の段階で、動物の権利についてなど事前にかなりの量の文献を読み込んでおり、担当編集者の寺山晃司氏に説明してすぐに連載が決まったという。

アメリカが舞台なのはリアリティを求めた結果

本作のテーマにある「差別とテロ」について、登場人物たちに活発な議論をしてほしいと考え、日本よりもアメリカが舞台のほうがリアリティを持てるとして決まった。関係者に誰一人アメリカ生活をした者はいないが、作者うめざわが元々海外ドラマや洋画が好きだったので、アメリカ像を膨らませて制作している。

マンガ大賞2022の評価は「令和の『寄生獣』」

担当編集者の寺山晃司

マンガ大賞2022の審査員から「令和の『寄生獣』」とコメントを受けており、作者うめざわが元々『寄生獣』を読んだことがあり、『月刊アフタヌーン』が好きだったと寺山は明かしている。

『anan』2022年1月26日号で作者うめざわしゅんのインタビュー記事掲載

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