三井寿（SLAM DUNK）の徹底解説・考察まとめ

三井寿の概要

三井寿（みつい ひさし）とは、『SLAM DUNK』（スラムダンク）の登場人物で、湘北高校バスケットボール（以下バスケ）部に所属する3年生。
中学生の頃に神奈川県MVPに選ばれるほどの選手として活躍し、恩人でもある安西光義（あんざい みつよし）が監督を務める湘北高校バスケ部に入部。しかし入部して間もない頃に選手生命にも関わる怪我を負い、その引け目と擦れ違いの末にバスケ部を去る。以降は湘北高校の不良たちとつるむようになり、嫉妬に駆られてバスケ部の有望な新人選手を仲間たちと共にリンチするなどの問題行動を重ねていたが、紆余曲折を経て「バスケがしたい」という自分の想いともう一度向き合うことを選択する。

方々に頭を下げ、恥を承知でバスケ部に復帰し、以後はその一員として活躍。中学時代に取った杵柄を存分に発揮してチームに貢献する。
己の過ちを認め、恩人として敬愛する安西を始めに、入部した頃からのバスケ仲間である赤木剛憲（あかぎ たけのり）や木暮公延（こぐれ きみのぶ）、リンチした際に猛然と反撃され2人そろって病院送りされることとなった宮城リョータ（みやぎ リョータ）、不良時代の友人でバスケ部復帰後も応援してくれる堀田徳男（ほった のりお）など作中多くの人物と関わり、彼らに支えられながら仲間のために力を尽くす様は、読者たちから大きな反響を呼んだ。

三井寿のプロフィール・人物像

所属高校：神奈川県立湘北高校
学年：3年
誕生日：5月22日
部活動：バスケ部
身長：184cm
背番号：14
ポジション：シューティングガード（SG）、ガードフォワード（GF）

CV：置鮎龍太郎

中学時代、不良時代、バスケ部復帰後でだいぶ印象は異なるが、その根底ではバスケへの情熱を貫く少年。中学生の頃に試合中に諦めそうになっていた自分を励ましてくれた安西を敬愛し、チームの中でも特に「安西の期待に応えたい」との思いが強い。同時にバスケ選手として“無駄にしてきた2年間”のことを心底悔やみ、中学の頃の実力を取り戻そうと躍起になっているが、安西や木暮に言わせれば「あの頃の三井はとっくに超えている」とのこと。
現バスケ部キャプテンの赤木とは、入部したばかりの頃はライバル、復帰後は因縁のあるチームメイトとして良くも悪くも意識し合う間柄。互いに普段はそれを表に出していないが、心の内で「アイツには負けたくない、自分のことを認めさせたい」との想いを抱いており、だからこそ彼らが力を合わせて試合に臨む姿を見た木暮は「2年間も待たせやがって」との感慨を覚えている。

1学年下の宮城に対しては、「“バスケ部で活躍する1年生”という、かつての自分が歩みたかった道を歩んでいることへの嫉妬から不良仲間と共に襲撃した」事情もあり、引け目と罪悪感を抱いてはいるが、普段はそれを飲み込んであくまでチームメイトとして接している。宮城の側も過去の軋轢については何も言わず、もっともひどい目に遭わされた自分が黙認の態度を取ることで三井がチームに受け入れられるように取り図っており、互いに割り切った関係となっている。
2学年下の桜木花道（さくらぎ はなみち）は、あまり物事を深く考えない気質であるため三井のバスケ部襲撃の件は特に引きずっていない。不良時代の経験からか、妙に気の合うところがあり、試合中にはたびたび同じノリで騒いでいる。同じく2学年下で新入部員ながらチームのエースを張るの流川楓（るかわ かえで）は、三井を「自分を除けば部内で最強の選手」だと考え、超えるべき目標の1人だと目している。

三井寿の能力・プレイスタイル

3Pシュートを得意とするオールラウンダー

バスケの得点は基本的に2点刻みとなるが、ゴールから離れたスリーポイントエリアから放たれたシュートが入った場合は3点となる。これを3P（スリーポイント）シュートと呼び、1.5倍の効率で点が入るため試合に勝つために重要な要素となっている一方、通常より距離があるところからシュートを打たないとならないため難易度も高い。三井はこの3Pシュートを得意としており、安西からは「とっておきの飛び道具」と称されている。
中学MVPを取ったのは伊達ではなく、ドリブルやパスなどバスケにおけるあらゆる技術が高い水準でまとまっている。スタミナという明確な弱点を除けば、湘北高校バスケ部でもトップクラスの実力の持ち主である。

スタミナという弱み

不良として過ごした2年間のブランクの分だけスタミナには問題を抱えており、湘北高校バスケ部の選手層の薄さもあって試合終盤にはバテて動けなくなっていることも少なくない。本人もチームメイトもそれがよく分かっているため、三井はスタミナを消耗する激しい攻防にはあまり参加せず、基本的に3Pシュートを狙うのが常となっている。

三井寿の来歴・活躍

安西との出会いと中学MVP

中学時代からバスケ選手として注目を集め、神奈川県の県大会に参加。その決勝、残り数秒で負けている状態の中、仲間たちに「俺がいるから大丈夫だ、絶対に勝てる」との言葉をかけて激励する。しかし実はこの時本人は「もう無理なのではないか」と諦めかけており、仲間たちにかけた言葉も半分以上は自分をむりやり奮い立たせるためのものだった。
しかし、この時試合を見に来ていた安西は三井のそんな胸の内を見抜き、彼に「諦めたら試合終了だよ」との言葉をかける。この言葉に奮起された三井は残されたわずかな時間の中で八面六臂の活躍を見せ、チームは奇跡の逆転優勝。自身は大会MVPの名誉を受ける。

迷走の始まり

安西に感謝し、恩に報いたい、彼の指導の下でバスケがしたいとの思いを抱き湘北高校に入学。バスケ部に入部し、そこで赤木や木暮と知り合う。この頃の赤木はまだ体が大きいだけの無名の選手で、中学MVPである三井が自分と同じ「全国制覇」という夢を持っていることを知ると露骨に対抗心を燃やして空回ることを繰り返していた。
しかし入部して間もない頃、三井は「赤木をからかってやろう、安西の前でカッコいいところを見せよう」との想いから無茶なプレイをして膝を負傷。早く復帰したい一心で無茶をして怪我を悪化させ、チームの長期離脱を余儀なくされる。自分への失望、安西の期待に応えられないことへの罪悪感、そして自分が不在の間に赤木を中心にまとまっていくチームへの嫉妬と焦燥が絡み合った末、三井は「バスケ部を去る」という選択を選ぶ。

「安西の下でバスケがしたい」とだけ心に思い決めて湘北高校に入った三井は、そのバスケ部を離れたことで張り合いを失い、怪我が完治した後は校内の不良たちとつるむようになっていく。それでもバスケへの情熱を完全には捨てられず、タバコだけは一本も吸わなかった。不良たちのリーダーで友人ともなった堀田は、三井のそんな胸の内まで推し量ることはできなかったが、「三井はバスケ部で何かつらい目に遭った」ことは理解して彼との友情を育む。
2年生に進級した後、バスケ部に宮城という新入部員が入り活躍していることを知り、嫉妬に駆られて堀田たちと共に彼をリンチする。この時宮城は「逃げられそうにないし勝ち目も無い」と判断し、主犯と見抜いた三井にだけ猛烈に反撃。上の前歯を折られる大怪我を負い、2人とも病院送りになるという憂き目を見た。

この宮城へのリンチが具体的にいつ頃のことなのかは作中で特に言及されていないが、2人とも特に後遺症もなくバスケ部に復帰していることから完治まで何か月もかかるような大怪我だったとは思えず、それがリハビリも含めて治る程度の期間と考えると物語開始の前年度の三学期か同春休みのことである可能性が高い。

バスケ部への復帰

怪我が完治した頃には3年生に進級しており、“お礼参り”と称してバスケ部に復帰した宮城を襲撃。インターハイを前に問題を起こしたくない宮城たちバスケ部員から「帰ってほしい」と頼まれるが従わず、堀田たちと共に暴れ回る。チームメイトたちに直接手を上げられたことに激怒した花道と、駆け付けた彼の友人たちに蹴散らされる中、騒ぎを聞いた安西が現れる。花道に叩きのめされ、木暮から「いつまでそんなことをやっているんだ」と叱責され、今も尊敬する安西の顔を間近で見た三井は「バスケがしたいです」との本心をようやく打ち明ける。
三井の気持ちを慮った堀田は、咄嗟に花道の友人たちと口裏を合わせて「三井が“バスケ部に戻る”なんて言い出すからカッとなって暴れた」と教師たちに説明。三井のために全ての泥を被り、彼をバスケ部へと送り出す。

伸ばしていた髪を切り、方々に頭を下げ、恥を承知でバスケ部に復帰した三井は、無駄にしてきた時間を取り戻すようにバスケに打ち込む。部員たちの中にはこれをすんなりと受け入れられない者もいなくはなかったが、もっともひどい目に遭わされた宮城が何も言わないため他の者が声を上げることもできず、一心に練習に励む三井のことを次第に仲間として認めていった。
木暮はかつての仲間の復帰を喜ぶ一方、ブランクを物ともせずに中学MVPとしての力を発揮するばかりか自分たちに容赦なくダメ出しする三井を見て、「生意気なところは全然変わっていない」と呆れた様子を見せている。

インターハイ地区予選

かくしてインターハイの神奈川地区予選が始まると、三井は3Pシュートのスペシャリストとして活躍。以前の湘北高校バスケ部にはいなかった強力な選手の登場に他チームが驚く中、得点源として大いに力を発揮する。堀田とは相変わらず友人として接し、試合のたびに応援に来てくれる彼に「今でもダチだろ」と声をかけている。

しかし運動能力自体はかつてのものを取り戻せても、2年間練習をしてこなかったツケで体力だけは衰えており、激しい試合の中で最後までコートの中で動き続けることは難しくなっていた。全国大会への最後の切符を賭けた陵南高校との試合ではこれが祟って終盤に交代することとなり、「なぜ俺はあんな無駄な時間を」と不良として過ごした頃のことを悔やんでいる。

全国大会とその後