お~い!竜馬(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『お~い!竜馬』とは、武田鉄矢(原作)・小山ゆう(作画)による漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。1986年から『少年ビッグコミック』、1987年からは『ヤングサンデー』で連載された。幕末の英雄・坂本龍馬(竜馬)の生涯を描く歴史漫画である。少年期から青年期は土佐の身分制度を背景に、竜馬、武市半平太、岡田以蔵を中心とした若者たちの友情と成長が描かれる。成年期以降は、幕末の風雲の中で薩長連合や大政奉還などを主導し、時代を動かしていく竜馬の姿を虚実ない交ぜて描く。1992年にテレビアニメ化された。

『お~い!竜馬』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

坂本竜馬「強くなってやる!!」

土佐郷士、坂本家に生まれた竜馬は、その強そうな名前とは裏腹に、弱虫で泣き虫な少年に育った。
ある日、母の幸、源おんちゃんとともに花見に出かけた竜馬は、岡田以蔵ら友人たちとも出会い、一緒に楽しい時を過ごす。
しかし、以蔵が即席で作った日傘を上士たちに見咎められ、難癖をつけられてしまう。土佐は上士と郷士の身分差別が厳しく、郷士には日傘を差すことが許されていない。郷士は昔から上士からの理不尽な仕打ちに苦しめられ、耐え忍んできたのである。
日傘は壊され、竜馬は殴られ、刃向かった以蔵は半殺しにされる。さらに、病弱の幸はこの騒動により病が悪化してしまった。

初めて身分差別に触れてショックを受けた竜馬は、その理不尽さに立ち向かうため「強くなってやる!!」と誓い、自分から剣術の稽古を始める。作品の冒頭より泣いてばかりで受け身だった竜馬が、この場面からは自分の意思で前に向かって進み始めるようになる。
これ以降、竜馬の気弱な性格はなりを潜めるようになり、たくましく成長していく。のちの英雄・坂本竜馬の原点となる場面である。

坂本竜馬「俺は今 加代さんと一つになっちょる!!絶対なれないはずの身分を超えて一つになっちょる!!」

青春期を迎え、竜馬は悶々とした毎日を送っていた。
城代家老の娘である佐々木加代とはたがいに想いを寄せていたが、身分の壁があってどうにもならない。
そんなある日、加代がお忍びで竜馬を訪ねてくる。江戸の旗本のもとに嫁ぐことになったという加代は、竜馬に想いを伝え、未練を絶つために夜這いに来いと誘う。見つかったら竜馬は切腹ものだが、無事に忍んで行けたら竜馬に抱かれるというのである。

意を決した竜馬はその夜、佐々木家に忍び込み、加代と結ばれた。身分差別のない世の中になれば、このように好きな者同士が結ばれることができる。
「俺は今 加代さんと一つになっちょる!!絶対なれないはずの身分を超えて一つになっちょる!!こりゃまっこと、すばらしいことじゃ!!」と感激する竜馬に、加代は「好き合うた同士が誰でも…こうなることが許される世の中なら、いいですね…」と返す。
2人の仲はこの夜限りであり、この後、加代は予定通り嫁いでいくことになる。竜馬も加代もそれを理解しており、身分をこえて結ばれた喜びと、それでもなお添いとげることはかなわない切なさとが同居する場面である。

また、物語の後半では、身分や藩へのこだわりから離れられない他の志士たちが登場する。そして、そのようなこだわりから離れ、誰もが自由に生きることができる世の中を夢見る竜馬の姿が描かれる。なぜ竜馬がそうなりえたのか、理由の1つともいえる場面でもある。

陸奥陽之助「あの人ら…はなから死ぬ気なんだな…志士だぜ…」

ペリー来航以来、世の中は尊王攘夷論が沸騰し、やがて過激な尊王攘夷論を掲げる長州藩がリードするようになっていた。その状況に危機感を持った薩摩は幕府側の会津を手を組み、「八月十八日の政変で長州を引きずり下ろす。これにより、尊王攘夷派の勢力は一気に衰退した。この影響で八月十八日の政変後、尊王攘夷派の勢力は一気に衰退した。
土佐勤王党も崩壊し、行き場を失った土佐脱藩浪士の吉村寅太郎、那須信吾、安岡嘉助らは、尊王攘夷派の公卿・中山忠光を擁し「天誅組」と名乗って倒幕の兵を挙げた。
竜馬は陸奥陽之助を連れ、かつての仲間だった彼らに会いにいく。竜馬は必死で彼らを止めようとするが、すでに死を覚悟し、幕府を倒す先駆けとなって散ろうとする彼らは耳を貸そうとしない。

やがて、竜馬は説得を諦め、別れの時が訪れる。明るく振る舞う天誅組の面々だが、彼らも、そして竜馬もこれが今生の別れになることを理解していた。
陸奥は勝ち目のない無謀な戦いを始めた天誅組を内心では小馬鹿にしていたが、天誅組の心意気にふれ「あの人ら…はなから死ぬ気なんだな…志士だぜ…」と感嘆する。頭が切れるが生意気で、他人を見下す癖がある陸奥だが、利害を超えて信念を貫こうとする姿に触れて考えを改めるのだった。やがて陸奥は竜馬の片腕として存在感を増していく。

この後、天誅組の面々は幕府からの攻撃を受け、皆命を落とす。それはまた、幕末の動乱の中で、土佐の仲間たちが次々と非業の死を遂げていく始まりでもあった。この場面は、竜馬も含めてこれから悲劇に見舞われていく志士たちの姿を暗示している。
そして情勢はいっそう激しさを増し、いまだ世に出ていなかった竜馬、そして陸奥もその中に巻き込まれていく。竜馬は幕末史に残る大きな奇跡を起こし、陸奥もまたその片腕として働き、やがて名外務大臣として活躍するのである。

おりょう「ひとりで泣くな!!」

竜馬は、ひょんなことから借金のかたに妹を売られそうになっていた楢崎竜(おりょう)を助ける。おりょうの窮状を聞いた竜馬はほっておくことができず、寺田屋のお登勢に頼み込み、おりょうを働かせてもらうことになった。
おりょうは竜馬への想いを募らせていくが、国事に奔走する竜馬に応える余裕はなく、2人はすれ違っていた。

そんな中、情勢が尊王攘夷から公武合体へと変化したことにより、土佐勤王党は土佐藩から弾圧され、壊滅してしまう。
竜馬は親友である武市半平太と岡田以蔵の身を案じ、悶々とする日々を過ごす。一方、おりょうは竜馬に会えず、その想いを募らせていた。
2人は久々に寺田屋で再開するが、竜馬にはおりょうのことを気にかける余裕はなく、その態度は素っ気ない。
その後、竜馬は寺田屋に届いていた乙女からの手紙により、親友である武市と以蔵が死罪になったことを知る。船を出し、ひとりで号泣する竜馬。おりょうはその後を泳いで追いかけ、船に乗り込むと「ひとりで泣くな!!」と叫ぶ。「泣くんやったら、うちを抱いて、うちの胸で泣いとくれやす!!」「うちかて、これっきりやと思うたら、なんや、苦しゅうて苦しゅうて、ならへんのや!!」と、想いをぶつけるおりょう。竜馬はおりょうを抱きしめ、2人は泣き続ける。

竜馬のことを想いながらもこれまでは気持ちを伝えられずにいたおりょうが、ついに感情を爆発させたシーン。これによりようやく竜馬もおりょうと向き合うようになり、今まで微妙な距離だった竜馬とおりょうの気持ちが通じ合うきっかけとなった。これ以降、2人は互いにかけがえのない存在となり、のちに夫婦となって日本初といわれる新婚旅行を行うことになる。

坂本竜馬「わしゃ、日本人坂本竜馬じゃ!!」

江戸幕府を倒し、新しい世を作るためには、犬猿の仲である薩摩と長州に同盟を結ばせるしかない。そのために竜馬や中岡慎太郎らは奔走する。
薩摩の援助で長州は軍艦と武器を仕入れるが、薩摩に深い恨みを持つ長州人たちは素直に受け取ろうとしない。そこで竜馬は、米が不作で困る薩摩のために長州の米を安く売ってやることで五分五分の関係を築き、取引きを成功させようと桂小五郎に持ちかける。
桂は「(安く売るといわず)ただで恵んでやる」と度量の広さをみせるその一方で、竜馬に対し「武器購入の件といい…この米のことといい…君は本当に武士か!?…まるで商人のようだぞ…」と問いかける。
それに対し竜馬は「わしゃ、日本人坂本竜馬じゃ!!」と返す。
当時の人々は藩や領主に帰属しており、自分に「日本人」という認識を持っていなかったとされる。その中で「日本人」が誕生した場面といえる。
また、この場面は長州の桂や薩摩の西郷、大久保といった世を動かしたリーダーたちでさえも、身分や藩へのこだわりから離れられないのに対し、ひとり竜馬だけがそのようなこだわりから脱していたことを明示している。

これまで反目を続けていた薩摩と長州であるが、この後は同盟締結へ向け、歩み寄りを見せていく。このような竜馬の働きがあったからこそ、不可能と思われた薩長同盟が成功したのである。そして物語はここから一気に倒幕に向けて加速していく。

坂本竜馬「まだまだ途上じゃが、必ずわしはやっちゃる!!わしに付いちょって、見ちょってくれ!!」

竜馬にとって念願の薩摩と長州の同盟が成り、倒幕への道筋ができた。
喜ぶ竜馬は「土佐の仲間と喜び合いたい」と寺田屋に向かう。護衛をする三吉慎蔵は、寺田屋に土佐仲間が集まるのかと訝るが、誰もこない。

夜更けになり、竜馬はありったけの盃に酒をついで並べる。幕末の風雲の中で、竜馬ら土佐出身の志士たちは、あまりにも多くの血を流し、非業の死をとげてきた。竜馬はこれまでに犠牲となった仲間たちと心の中で祝宴を催す。
武市や以蔵、吉村虎太郎など、ひとりひとりを思い出し、語りかける竜馬。この場面は、かけがえのない仲間を失ってきた竜馬の彼らに対する想いと、大きな仕事を成し遂げ、彼らの犠牲に報いることができた竜馬のささやかな喜びが交錯する。また、読者は新しい世の中を作るために土佐が払ってきた犠牲の大きさを改めて思い知るのである。

竜馬は「皆…わしなりにがんばっちょるがぜよ!!今夜はいっしょに大いに飲み明かそうぜよ!!」「まだまだ途上じゃが、必ずわしはやっちゃる!!わしに付いちょって、見ちょってくれ!!」と、さらなる活躍を彼らに誓う。その誓い通り、薩土盟約、船中八策、大政奉還とさらなる活躍を続けていくが、竜馬にも残された時間は長くないのだった。

坂本竜馬「世界の海援隊でもやりますかいのう…」

徳川幕府最後の将軍である徳川慶喜が、ついに大政奉還を表明した。念願がようやく成り、竜馬は感激の涙を流す。
さっそく竜馬は新政府案と役職名簿をまとめ、翌日、薩摩藩邸を訪れる。

大政奉還が成る前に倒幕の兵を挙げようと画策していた薩摩の大久保一蔵は、竜馬にしてやられたと悔しがっていた。そこに竜馬が新政府の役職名簿を作って持ってきたと知り、己がどれほどの権力を握るつもりかと警戒する。
役職名簿を見せられた薩摩の西郷吉之助、小松帯刀、大久保、長州の広沢真臣ら薩長の要人たちは、やがてその中に竜馬の名がないことに気づく。
不審に思い「坂本さぁは…なんばやられもす!?」と問いかける西郷らに、竜馬は「世界の海援隊でもやりますかいのう…」と返す。竜馬は新政府で出世することに興味はなく、すでに世界に向かって飛び出していくことに想いを馳せていた。
維新の大業を成し遂げた自分たちが、新政府でも重要なポストにつくのが当然だと考えている薩長の面々に対し、私心のない竜馬の鮮やかさが際立つ場面である。そして、竜馬が維新後も生きていればどのような活躍をしたのか、その後の日本はどうなったのか、そう考えさせられる。

そんな竜馬に対し「坂本さぁは…もはや世界が相手でありもすか…」と感心する小松を始め、一同はあっけにとられる。ここに同席した陸奥陽之助はこれを痛快に思い、この場面について「その時の坂本は西郷より二枚も三枚も大人物に見えた」と後々まで語ったという。
長年の夢に向かってようやく新しい一歩を踏み出そうとする竜馬。これからどんな活躍をするのか期待せずにはいられないが、このわずか1ヶ月後に命を落とすことになるのだった。

『お~い!竜馬』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

『竜馬がゆく』の影響を受けた名前の表記

6gmnpna
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