ティファニーで朝食を(小説・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ティファニーで朝食を』とは、1958年にトルーマン・カポーティが発表した中編小説及び、それを基にして1961年にアメリカ合衆国で制作された恋愛映画である。ニューヨークで気ままに暮らすホリーは同じアパートに越してきた作家ポールと出会う。お互いに惹かれ合っていく2人の姿がロマンティックかつコミカルに描き出されていく。映画の冒頭と中盤に有名な宝石店ティファニーが登場するシーンが見どころだ。また、オードリー・ヘップバーンが着こなす華麗な衣装も見どころである。

ホリーとポールが立ち寄ったナイトクラブのステージに立つストリッパー。

ネコ(演:オランジー)

ホリーに拾われた名無しのネコ。放し飼いにされており、彼女の部屋の中を歩き回っている。ポールとタクシーの中で喧嘩をしたホリーによって雨の中に放されてしまうが、彼女によって見つけられる。

『ティファニーで朝食を』の用語

ティファニー

映画のタイトルに入っているティファニーとは、ニューヨーク五番街に本店を置く宝石店。1837年にアメリカで創業され、ロンドンやローマ、シドニーや東京など世界20か国に店舗を構えている。ティファニーを象徴する色は「ティファニー・ブルー」と呼ばれており、コマドリの卵の色が由来となっている。

クラッカージャック

ホリーとポールがティファニーを訪れ、指輪に文字の刻印を男性店員に依頼するシーンがある。その指輪はクラッカージャックというお菓子のおまけに付いてきたものだ。クラッカージャックは糖蜜を絡めたポップコーンの中にピーナッツが混ぜてある。お菓子の原型は1896年に開かれたシカゴ万国博覧会に出品されたポップコーン、ピーナッツ、糖蜜を混ぜたものである。ちなみにおまけが封入されるようになったのは1912年からである。

『ティファニーで朝食を』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ホリー・ゴライトリー 「気分が赤くなる時ってあるでしょ?」

ホリーは襲いかかる不安を彼女独特の言葉で表現する

上の階に越してきた作家ポール・バージャックが電話を貸して欲しいとホリー・ゴライトリーのアパートの部屋にやって来る。殺風景な彼女の部屋にポールは驚きを隠せない。そして彼女は時折、自分を襲ってくる不安な気持ちを「気分が赤くなる時ってあるでしょ?」と表現する。ポールは「赤?ブルーじゃなくて?」と聞き返す。ホリーは、「太った時とか雨が続くような時、悲しい時にブルーになる」と答える。そして気分が赤くなるのは、「突然怖くなり、何が怖いかわからない時」とポールに言う。素直に恐怖や不安を言葉にできず、彼女独特の言葉で表現するところにホリー・ゴライトリーの不思議な魅力が感じられる。

ホリー・ゴライトリーが「ムーン・リバー」を歌うシーン

ホリーは部屋の窓枠に座ってギターを弾きながら「ムーン・リバー」を歌う

窓枠に座ってギターを弾きながらホリー・ゴライトリーは「ムーン・リバー」を歌い始める。ホリーの上の階に住む作家のポールはタイプライターに向かって執筆に励んでいる。小説の主人公はホリーをモデルにしている。下の階から聞こえてくるホリーの歌声を耳にしたポールはタイプライターから離れる。彼は部屋の窓を開けて、歌い続けるホリーを見つめる。歌い続けるホリーはポールと一緒に漂いながら目にしたことのない世界へ飛び出していきたいという気持ちを抱いていると思わせる。歌詞にある「あなたがどこへ行こうとも 私はあなたについていく」という言葉が心の奥底でポールを思っていることを感じさせる。

ポール・バージャック 「君が本当にそう思うなら、君にあげたいものがある」

ポール(画像右)はホリー(画像左)がお金のためにブラジル人の富豪と結婚することに納得がいかない

ホリーとポールは互いを愛し合うようになり、初めてのキスを交わした。しかし、ホリーは突然姿を消してしまう。ようやく図書館でポールはホリーを見つけた。お金のためにブラジル人の富豪ホセと結婚するとポールにホリーは告げる。ポールはホリーを本気で愛しており、お金のための結婚に納得がいかない。ホリーを1人の女性として愛しているポールの思いはホリーには通じない。結局、ホリーにとってポールは他の男たちの同じなのである。ホリーに対してポールは、「君が本当にそう思うなら、君にあげたいものがある」と言って、50ドルの小切手を渡した。化粧室に行くための50ドルだ。ポールにとっても結局、ホリーはお金のために男性と時間を過ごすだけの女性に過ぎないという思いが伝わってくる。

『ティファニーで朝食を』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

原作者の主演希望女優はマリリン・モンローだった

「映画の妖精」と呼ばれる女優オードリー・ヘップバーンの代表作のひとつと言われている『ティファニーで朝食を』であるが、原作者トルーマン・カポーティはマリリン・モンローが主演を務めることを希望していた。モンローを主演第一候補とすることで映画化を承諾していたが、この話はなくなってしまった。そしてカポーティのイメージとは異なる女優オードリー・ヘップバーンに出演が依頼された。モンロー自身がセクシー女優というイメージ定着を嫌ったために出演を辞退したと言われている。また、慢性の遅刻癖があり、セリフ覚えの悪さでも有名であったモンローの起用をプロデューサー側が反対したとも言われている。

ティファニーで朝食を摂ることができる

オープニングでデニッシュパンを食べてコーヒーを飲むオードリー・ヘップバーン演じるホリー・ゴライトリーの姿が印象的な映画『ティファニーで朝食を』であるが、実際にティファニーで朝食を摂ることができるようになった。2017年11月10日にニューヨーク五番街にあるティファニー本店に「ザ・ブルー・ボックス・カフェ」と呼ばれるイーティング・スペースがオープンした。ティファニー本店4階にあるこのカフェはクロワッサンやコーヒー、果物が付いた「ティファニーで朝食を」と名付けられた朝食メニューが出されている。

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