愛してるって言っておくね（アニメ映画）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『愛してるって言っておくね』の概要

『愛してるって言っておくね』（原題：『If Anything Happens I Love You』）とは、娘の死を乗り越えようとする夫婦の葛藤を描いた、ウィル・マコーマックとマイケル・ゴヴィアによる短編アニメ作品。2020年にNetflixで公開され、その奥深い内容で好評を博し、第93回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞した。

学校で起きた銃乱射事件により、最愛の娘を失ったとある夫婦。2人の後悔か、家に住み着いた精霊か、2体の影法師が彼らの内面の葛藤を表すように動き回り、時に醜く争い、時に夫婦それぞれに寄り添いながら、娘と過ごした日々を思い返しては嘆く日々を送る。
そんなある日、ふとした偶然で動き始めたレコードプレイヤーの中から第3の影法師が現れ、家族の絆を再生させていく。

『愛してるって言っておくね』のあらすじ・ストーリー

夫婦の絶望

陰鬱な面持ちで食事をする、とある夫婦がいた。2人は同じテーブルに座りながらも何か言葉を交わすでもなく、彼らの代わりにそれぞれの姿をした影法師が醜く言い争っていた。夫婦は影法師が見えていないらしく、食後はそれぞれの部屋に戻っていく。
家の中には子供用の衣服やオモチャがあり、2人はそれを見ては後悔と絶望に打ちひしがれる。そんな中、棚の上から落ちたボールが転がっていき、1台のレコードプレイヤーにぶつかる。するとそこから、女の子の姿をした第3の影法師が現れる。

娘と過ごした日々

夫婦の影法師と女の子の姿をした影法師は、在りし日の家族の姿を再現していく。女の子は夫婦の娘で、この家で生まれ、両親から愛され、サッカーに夢中になり、初めてのボーイフレンドに喜び、そして制服を着て新しい学校に向かう。
両親の影法師は、娘を死に物狂いで引き留めようとするも叶わず、嘆き悲しみながらただ彼女を見送る。そうして向かった学校で、銃乱射事件が発生し、彼女は命を落とす。死の直前、娘は両親に向けて「愛してるって言っておくね（If Anything Happens I Love You）」とのメッセージを残す。

蘇る絆

再び物語は現在へと戻り、夫婦は娘を失った事実を受け止められずに絶望に打ちひしがれ続けていた。影法師たちももはや言い争う元気も出せず、2人は別々の方向に向かって進み始める。
しかしこの時、今まで家の中にいなかった娘の影法師が、慌てて彼らの腕をつかむ。なんとしても2人が離れていくのを阻止しようとむりやり引き戻すと、両親の影法師は初めて「ここに家族がそろっている」ことに気付いたかのように娘とパートナーを抱き締める。

たとえ娘はいなくなっても、彼女と共に過ごした思い出は、家族の絆はまだここに残っている。そのことに気付いた本物の両親もまた、これまでの断絶を癒すように互いを抱き締め、娘を失った傷と向き合い始めるのだった。

『愛してるって言っておくね』の登場人物・キャラクター

父親

一家の父親。一人娘を溺愛し、休みの時には彼女のサッカーの練習によく付き合っていた。
娘の死後はその絶望に耐えられず昼間から酒を飲むようになる。

母親

一家の母親。娘を一番側で見守り続け、ボーイフレンドができた時は興味津々にその様子を探ろうとしていた。
娘の死後は父親以上にショックを受け、彼女の遺品を目にしては涙にくれる日々を送っていた。

娘

父親と母親の間に産まれた一人娘。サッカーが好きで、父が休みの日には家で練習に付き合ってもらっていた。
新しい学校に通い始めたばかりの頃、校内で発生した銃乱射事件に巻き込まれて命を落とす。死の直前、両親に「If Anything Happens I Love You（愛してるって言っておくね）」とのメッセージを送った。