ここは今から倫理です。(ここ倫)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ここは今から倫理です。』とは、雨瀬シオリによる漫画作品。集英社の雑誌『グランドジャンプPREMIUM』で2016年11月号から連載が開始された。高校で倫理科を受け持つ教師・高柳(たかやなぎ)が、様々な悩み・不安を抱える生徒たちと向き合い、問題を解決に導いていく様子が描かれている。自傷行為、違法ドラッグ、DV、いじめ、一方的な性行為など、社会を取り巻く諸問題に切り込んだ作品として大きな話題になった。2021年1月には山田裕貴主演でドラマ化もされ、反響を呼んでいる。

『ここは今から倫理です。』の概要

『ここは今から倫理です。』とは、雨瀬シオリによって、『グランドジャンプPREMIUM』(集英社)にて、2016年11月号から2018年11月号まで連載された。その後、同誌が『グランドジャンプむちゃ』にリニューアルした際に移籍し、2019年1月号(創刊号)から連載している漫画作品である。『みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞2018』ネクストブレイク部門2位。2022年6月時点で電子版を含めた累計部数は170万部を突破している。
また、2021年1月16日から3月13日までNHK総合「よるドラ」にて、山田裕貴が主演でドラマ化された。

高校3年生になり倫理の授業を選択した生徒を受け持つ高柳(たかやなぎ)、彼が生徒の抱える様々な悩みや不安、問題に向き合い解決していく学園ヒューマンストーリーである。
高柳が担当する倫理の授業には初め、15人の受講生がいる。合意のない性行為を行う生徒、自身の頭の良さゆえに他者の無学さに苛立ちを覚えてしまう生徒、自傷行為を行う生徒、ドラッグの取引にまきこれてしまう生徒、出席している生徒はそれぞれの悩みを抱えている。そんな生徒に対し高柳は独自の視点とスタンスで生徒に向き合い、倫理を通して向き合い解決していく。

この漫画の最大の見どころはなんといっても、高柳が独自の視点で生徒の問題を解決し、そのときに投げかける言葉である。生徒の出来事1つ1つに適した哲学者の名言や、そこに独自に加わる高柳の視点が、生徒はもちろん、我々読者までをも考えさせるような言葉である。高校が舞台ということもあり、高柳が言葉を投げかけるのは高校生が相手になるが、大人の読者にも十分参考になる言葉ばかりである。

そんな、普段身近に感じることがない哲学や倫理的思想に触れることができるのが、『ここは今から倫理です。』である。

『ここは今から倫理です。』のあらすじ・ストーリー

新3年生編

倫理を説く高柳(右)と逢沢いち子(左)

3年生になると生徒は選択授業を受けなくてはならない。様々な科目がある中、高柳が受け持つ倫理の授業は15人の生徒が受講することになった。
その生徒の中には、レイプ被害を受ける生徒、教師を陥れようとする生徒、薬物の取引をしてしまう生徒などなど、様々な生徒が存在する。
そんな生徒達の卒業まで見届けるのが新3年生編になる。

生徒1人1人にスポットが当てられ、それぞれストーリーが展開されて行く。多くの生徒は1話で完結。生徒によっては2話までかかる生徒もいる。この生徒達の出来事や悩みに対して、教師の高柳は独自の視点と哲学で解決して行く。また、このストーリーの展開によって、高柳の過去が小出しにされて行く。高柳がなぜそう考えたのかや、学生時代にどんな話をしたのかなど、高柳についての背景が見えてくるようになる。

前述した通り、生徒1人1人が物語のスポットに当てられるため、伏線になることはあるものの、1人の生徒が特別主人公のようにスポットに当てられ続けることはない。しかしながら、新3年生編の第1話でスポットに当てられた逢沢いち子(あいざわいちこ)だけは、複数の物語に少し関わってくる。
特に大きく関わってくるのは新3年生編の最後、卒業式の話だ。第1話で高柳に対して恋心を抱く逢沢は卒業式後、高柳に告白をする。そのため、逢沢のみ他のストーリに多少の絡みが出てくる。

新2年生編

年度が入れ替わり、逢沢達を始め、3年生達は学校からいなくなる。高柳の倫理の授業は3年生ではなく新2年生を対象に授業を行うことになる。新2年生では12人の生徒を担当することになる。2年生でも、Xジェンダーの生徒、暴力沙汰を起こす生徒、クレランボー症候群に罹る生徒など、様々な不安や悩みを抱える生徒がいる。

新3年生編と同じく生徒1人1人にスポットが当たるため、1話〜2話完結の話が続く。しかし、その中でも特に他の生徒のストーリーと関わってくる生徒が2人いる。1人は沖津叶太(おきつかなた)、もう1人は鳥岡(とりおか)である。1人目の沖津は自身がXジェンダーである。自身の性差の問題とともに、同じく倫理を受講しており、制服のクロスドレッシング(異性装)を希望する六本(ろくもと)と気が合い、六本のストーリーに関わってくる。もう1人の鳥岡は暴力的な生徒で、「なぜ人を殺してはいけないのか?」という疑問を持っている生徒だ。倫理の最後の授業では毎回生徒同士のディスカッションをするのだが、新2年生編のディスカッションのテーマは、この「なぜ人を殺してはいけないのか?」という鳥岡の疑問がそのままテーマになる。また、鳥岡に関連して、高柳の大学の友人である萱島(かやしま)が登場する。

新2年生編では、年度が変わったタイミングで授業を受けていた生徒が前向きに進んでいる描写が描かれる。そして高柳が他校に転任して終わる。

転任編

高柳は沖津達には何も言わずに他校に転任してしまう。転任先では古文及び現代文を担当する市井すみ子、英語を担当する葛尾友子(くずおともこ)とともに、倫理及び2年C組の担任として配属される。始業式の着任する教師紹介の時に、高柳は生徒から「サイコパスっぽい」と思われてしまうような、相変わらずの雰囲気で自己紹介し、転任編が始まる。

過去編

熱海旅行編

教授の「寅さんみてえな旅がしてぇ」という教授提案により、では教授と高柳の2人きりでの旅行になる。「昭和の頑固親父」のような教授に対して、まさに「現代っ子」のような考えを持つ高柳。時代の変化により、過去の風習だけではなく、正義や正しさなどの思考についてもジェネレーションギャップができていることにぼやく教授。現代となっては時代錯誤な寅さんの生き方、今までにない男女の性差など、そこに対して高柳と教授の雑談がベースに話が展開して行く。

また、こうした時代や流行の話だけではなく、なぜ高柳が教師を目指したのかや、なりたい教師像などもここで明かされる。

ゼミ旅行編

以前高柳と旅行に行ったため、日光旅行を「メンドクセエよ」と文句を口にする教授を引き連れ、ゼミの卒業旅行編ではゼミ生みんなで日光へ行く。そこには鳥岡のストーリーで出てきた萱島をはじめ、高柳の他6人のゼミ生とのやりとりが伺える。そのため、以前の熱海旅行では描かれなかった、学生同士の高柳のやりとりが多く含まれている。

また、前回の熱海旅行では、なぜ教師になったのかや、どんな教師になりたいかなど、高柳が教師になるにあたって、前向きな話題が多かった。しかし、今回は高柳が教師になるにあたっての悩みや不安など、後ろ向きな話題があり、高柳のネガティブな心情がここで吐露されている。

『ここは今から倫理です。』の登場人物・キャラクター

新3年生編の生徒達

逢沢 いち子(あいざわ いちこ/演:茅島みずき)

校内だろうと場所を弁えずに性行為におよぶ、課題を提出しないなど、問題児として名高い女生徒である。2年生の時に男子生徒との性行為を高柳に咎められて以来彼が気になっていた。高柳に思いを伝えるも「教養のある女性がタイプ」と振られて以来、彼に見合う教養を身に着けようと努力している。

酒井 美由紀(さかいみゆき)

非常に成績が優秀な女子生徒。中学生時に図書室の蔵書を全て読み終え、本を読めば何でも理解できると悟った。知識が大抵の人間より豊富なせいで、同級生、さらに教師や親ですら、無知だと見下している。

八木 まりあ(やぎまりあ)

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