羊文学(バンド)とは【徹底解説まとめ】

羊文学とは2011年に結成されたオルタナティブ・ロックバンド。結成当初は5人組だったが、メンバーが高校生だったことから受験に伴う活動休止や脱退など、幾度かのメンバーチェンジを経験。2015年にフクダヒロア、2017年に河西ゆりかが加入し、羊文学の発起人・塩塚モエカとともに以降この3人で活動している。楽曲には「ありのままの自分を生きる」という前向きなメッセージが込められており、その飾らない姿と繊細な音楽が多くのファンの心に刺さり、共感を呼んでいる。

2018年リリースの「1999」。タイトルを見ただけでは信じられないが、「1999」は羊文学を代表するクリスマスソングである。1999年はちょうどノストラダムスの予言で世界が滅亡するかもしれないと囁かれていた時代であり、「誰もが愛したこの街は 知らない神様が変えてしまうっていう話」という歌詞がそのことを表していると思われる。その独特の世界観や塩塚モエカの柔らかな声にハマる人が続出し、「1999」は発表された当初から非常に高い人気を博していた。

「人間だった」

「人間だった」は『ざわめき』と『our hope』の初回限定盤BDに収録されている1曲である。イントロだけ聴くとアップテンポで明るい曲のように感じるが、実際には人間の愚かさや傲慢さを歌った非常に考えさせられる楽曲。
世の中が便利になればなるほど、人は何か大切なものを失っていく。このままでは人類は本当に破滅してしまいかねない。そんな強いメッセージ性が込められている。

「あいまいでいいよ」

『POWERS』と『our hope』の初回限定盤BDに収録されている。2020年11月に2ndフルアルバム『POWERS』から先行配信されたが、歌詞に「春」と出てくる通り、実際には春の息吹の中で恋愛する若者たちの姿を歌ったラブソング。後半にかけてだんだん曲が盛り上がっていくにつれ、塩塚モエカのクリアボイスも伸びやかになっていくのが耳に心地良いとして人気の楽曲である。

「光るとき」

「光るとき」は、2022年1月から3月まで放送されたテレビアニメ『平家物語』のオープニング。「祇園精舎の鐘の声」で始まる『平家物語』は、どんなに高い地位や権力を手に入れてもいつかは必ず衰退していくという「盛者必衰」を説いている。「光るとき」は、この盛者必衰を前向きな言葉で見事に言い換えている点で高く評価されている。「永遠なんてないとしたら この最悪な時代もきっと続かないでしょう」という歌詞がそれに当たる。この歌詞は平家が全盛期にあった平安時代末期から鎌倉時代にかけてのみならず、どんな時代にも当てはまることだ。世界を見回せば、戦争・貧困・温暖化など、あまりにも大きな課題に逃げ出したくなる人も多いかもしれない。でも、いつか必ずそんな時代は終わる日が来るのだという強いメッセージが伝わってくる楽曲である。

羊文学の名言・発言

塩塚モエカ「永遠にたどり着けないんだけど、そこまでの途中にいるっていうイメージ」

2018年2月に2ndミニアルバム『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』をリリースした羊文学。その際のインタビューで、塩塚モエカは楽曲について「ここじゃなくていい、どこか逃げ出したいというか現実逃避したい感じの曲。永遠にたどり着けないんだけど、そこまでの途中にいるっていうイメージ」と語っている。様々なストレスや問題を抱える社会にあって、「ここから今すぐ逃げ出したい」と感じている人びとはあまりにも多い。しかし、逃げても逃げても結局は目の前にある現実から逃れることはできない。「永遠にたどり着けないんだけど、そこまでの途中にいるっていうイメージ」という塩塚モエカの言葉は、そんなどうしようもない世の中の現実を突きつけてくる非常に重みのある名言である。

塩塚モエカ「コロナでライブハウスが営業できない状況を少しでも助けたい」

2020年初頭、日本をはじめ世界中に衝撃が走った。新型コロナウイルスが蔓延し、人びとの社会生活は大きな転換を余儀なくされた。音楽界でもそれは同じで、数多くのイベントが中止または延期となり、甚大な影響を受けた。そんな中、羊文学は2020年8月2日、9日、16日の3日間にわたって無観客ライブを行い、オンラインでの配信を成功させる。3日間ともそれぞれ別の映像監督がディレクションを手がけ、セットリストも会場ごとで異なっていた。これは、「コロナでライブハウスが営業できない状況を少しでも助けたい」という想いを抱いていた塩塚モエカからの提案によるものである。観客からの収益が運営費の大半を占めるライブハウスは、コロナ禍によって大打撃を受けていた。それぞれのライブハウスと縁の深い映像監督を起用し、可能な限りそのライブハウスのやり方を尊重したという。結果としてこの試みは大成功を収め、直後の羊文学のメジャーデビューに際して大きな評価に繋がった。音楽に関わる1人でも多くの人の力になりたいという塩塚モエカの温かな人柄が伝わってくる名言である。

塩塚モエカ「『平和だったらいいな』っていう気持ちはずっとありました」

2022年4月20日にアルバム『our hope』をリリースした羊文学。そのタイトル決めの際、塩塚モエカはもともと「hopi」という言葉にしたいと思っていたとインタビューで語っている。塩塚によると、「hopi」とは「平和の民」を意味する言葉で、アメリカ先住民族の名称だという。しかし、今回のアルバムはその人たちのことをテーマにしているわけではないことから、「hopi」をアルバムタイトルに冠することに躊躇いを感じ、最終的には『our hope』というタイトルに決まった。インタビューの続きで、塩塚モエカは「『平和だったらいいな』っていう気持ちはずっとありました」と語っている。凄惨な事件や事故など殺伐としたニュースが絶えない中で2020年からのコロナ禍、そして2022年2月から始まったロシア軍によるウクライナ侵攻など、人びとの生命が脅かされ続けている時代。誰しもが、1日でも早く世界に平和が来て欲しいと願っているはずである。「『平和だったらいいな』っていう気持ちはずっとありました」という塩塚モエカの名言からは、誰もがそんな世界を望んでいるんだという願いが伝わってくる。

羊文学の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

羊文学の名称の由来は「カッコいい」のと「大きな世界観の表現」

羊文学というバンド名に対し、なぜ羊と文学という組み合わせにしたのかという疑問は、ファンのみならずともそのバンド名を聞いた人なら誰もが一度は抱くはずである。
その答えは、塩塚モエカ本人がインタビューの中で語っている。彼女によると、「英語でも日本語でも『羊』っていう言葉が入ってたらカッコいいような気がすると思った」という。また、彼女は当時アイスランドのロックバンドであるシガー・ロスが好きだったことから、「シガー・ロスって曲の世界観が大きいじゃないですか?そういう大きさをバンド名で表現できたらいいな」と思った結果、文学という言葉を思い付いたのだそうだ。この「羊」と「文学」を合体させてバンド名にすることをひらめいたのは自宅の洗面所だったそうである。
バンド名を変えることはこれまでに何度も考えたそうだが、結局ここまで来たら変えられないと語っており、羊文学という名称に対する愛着のようなものが湧いてきていることが感じられる。

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