劇場版「メイドインアビス」-深き魂の黎明-のネタバレ解説・考察まとめ

『劇場版「メイドインアビス」-深き魂の黎明-』とは、2020年公開のアニメ映画で、つくしあきひと原作のファンタジー漫画『メイドインアビス』の完全新作劇場版タイトル。テレビアニメ1期の続編について描いた内容となっており、ストーリーは原作における4~5巻の箇所に該当する。「アビス」と呼ばれる大穴を探索する主人公の少女・リコとその仲間達が戦いを通して成長していく姿を、映画ならではのスケールで纏め上げた作品である。また、シリーズ全体を通しての特徴としてややグロテスクな描写が多く、R15指定となっている。

『劇場版「メイドインアビス」-深き魂の黎明-』の概要

『劇場版「メイドインアビス」-深き魂の黎明-』とは、TVアニメ『メイドインアビス』シリーズの完全新作劇場版作品。2020年1月17日より一部の劇場を対象として公開された。原作に忠実なグロテスク描写を行うあまり、公開直前の年齢審査の変更が発生する事態となったものの、最終的な興行収入は6億6000万円を記録している。
TVアニメシリーズと同じく監督・小島正幸、脚本・倉田英之、制作会社・キネマシトラスのチームが一丸となって制作を務めた。
物語の舞台は、約1900年前に「オース」という街で発見された不思議な縦穴、「アビス」。穴の正確な深さやアビスが出来た理由については何ひとつ明らかになっていない。しかしその多くの謎が「探窟家」と呼ばれる冒険家たちを、探索へと駆り立てていた。主人公である見習い探窟家の少女・リコは、かつて伝説の探窟家として名を馳せた自身の母・ライザに強い憧れを抱く。穴の底で娘を待っているかもしれない母の面影を追い求めて、やがてリコ自身も穴の底へと冒険する覚悟を決めるのだった。本作ではリコの仲間のレグ、ナナチだけでなく、旅の道中で出会ったプルシュカという少女との心の交流についても描かれる。また、ライザと同じトップレベルの探窟家にしか名乗ることを許されない称号・「白笛」を冠するボンドルドというキャラクターも登場する。

『劇場版「メイドインアビス」-深き魂の黎明-』のあらすじ・ストーリー

新たなる冒険のはじまり

アビスの深界四層:巨人の盃内にある不屈の花園という場所に辿り着いたリコ・レグ・ナナチの一行。そこで3人が目にしたものは、原生生物の幼体に脳まで寄生され自我を失った探窟家の姿。そしてその傍らには、花園を焼き払わんとする謎の男が居たのだった。男はリコ達に、自分の正体が「『黎明卿』新しきボンドルド」の配下「折手(アンブラハンズ)」であること、不屈の花園は危険な寄生虫の住処となっているから燃やして対処すべきであること。そして最後に、ボンドルドが五層でリコ達の到着を心待ちにしているということを伝えその場を去っていく。燃え盛る花園を眺めながらナナチは、過去にボンドルドが自身を巻き込んで行った非道な人体実験の数々を思い返す。そして、トラウマそのものとも呼べる男に自分達の今の状況が全て知られていることに歯嚙みするのだった。
そうして第五層:なきがらの海への移動を果たし、ボンドルドの住居兼研究施設でもある「前線基地(イドフロント)」へと辿り着いたリコ達。やや警戒心を抱く3人の前に、ボンドルドの娘を名乗るプルシュカという女の子が現れる。

前線基地

リコ達を歓迎するボンドルト卿

警戒する3人に対し、あくまで温厚な姿勢を崩さないボンドルド。「六層へ降下する方法が分からない」と尋ねるリコに、彼は「降りるには白笛が必要なのだ」と答える。しかし白笛には笛を作った所有者以外は音を奏でることが出来ないという特性があった。それにより、母親であるエルザの白笛しか所持していないリコ達は行き詰ってしまう。プルシュカ達の計らいにより、降下の方法が判明するまで、前線基地に宿泊できるようになった3人。しかし夜になると、レグとナナチが姿を消してしまう。心配のあまり1人で捜索に出掛けるリコだったが、施設内の扉は全て閉鎖されており、残された手がかりは上昇負荷が発生する階段のみ。レグ達の身を案じ、意を決して階段の調査に向かうが、第五層の上昇負荷である意識混濁や感覚の喪失に襲われてしまう。その場は何とかプルシュカに助けられたリコ。彼女は、自身もかつてこの階段で負荷に苦しめられたことがあると明かす。そして帽子からメイニャという不思議な生き物を取り出すと、「メイニャの匂いを辿れば、負荷の被害を受けることなく階段を上ることが可能だ」とリコに教えてくれるのだった。
一方その頃、行方不明とされていたナナチはボンドルドと2人きりで部屋に篭り、とある頼みごとをしていた。その内容は、「ナナチが昔のようにボンドルドの実験を手伝う代わりに、リコとレグをボンドルドの白笛で六層へと行かせること。それを大人しく見逃すこと。」以前と変わらぬ温和な表情でナナチの言葉に耳を傾けるボンドルド。しかしその裏でレグは既に折手の手に落ちており、残虐非道な実験が始まろうとしていたのだった。

黎明卿とその真実

ロボットであるレグの身体の作りを物珍し気に眺める折手達。腹部に針を刺して痛覚を確かめたりと残虐な実験を行うだけに飽き足らず、最終的にはレグの右腕を切り落としてしまう。間一髪、異常を感じたナナチが素早くレグを救出、前線基地そのものからの脱出には成功する。しかし階段を上ってきたリコやプルシュカまでもがその一部始終を目撃してしまう。リコは数時間前まで一緒だった仲間の変わり果てた姿に、プルシュカは幼い頃から周りに居た折手の非道な行いにそれぞれショックを隠せないのであった。
ボンドルドの追手から逃れるリコ、レグ、ナナチの3人。レグのダメージもあり、追跡から逃げ切ることは一見難しく思われた。しかしリコとナナチの知恵により、ボンドルド達をカッショウガシラというアビスの原生生物の巣に誘い込み、攻撃を与えることが出来た。更には、レグがボンドルドを水中へと引きずり込むことで、次層である六層の上昇負荷「人間性の喪失もしくは死亡」を彼の肉体に負わせることにも成功。そのダメージにより決着がついたかのように思われたが、不意に現れた折手のひとりが行動不能となったボンドルドから仮面を奪い取る。すると仮面を付け替えた折手の口から死んだ筈のボンドルドの声が聞こえてくる。黎明卿ボンドルドは、「精神隷属機(ゾアホリック)」という特殊な遺物を用いて、折手全員に自身の意識を植え付け支配下に置いていたのだった。たとえ目の前の彼を倒しても、まだ無数のコピーが存在するという事実。そのあまりの衝撃に、リコ達は目を見開くのであった。

夜明けの花

リコ達は不屈の花園で耳にした折手の言葉を手掛かりに、「精神隷属機そのものを破壊すればボンドルドの力に対抗出来るのではないか」と計画を立てる。決意を新たに再びボンドルドと対峙する覚悟を固めた3人。そして前線基地では、プルシュカがアビスの上昇負荷を肩代わりするアイテム「カートリッジ」に改造されようとしていた。
無事に基地へと突入を果たした3人。戦闘に備え、レグのエネルギー源である電気の確保の為、レグは単独で前線基地の動力部に潜入を行うこととなる。潜入の時間稼ぎを行うリコとナナチだったが、道中発生した停電により、人間をカートリッジに改造する作業場へと入り込んでしまう。その部屋でボンドルドと遭遇したリコ達は「白笛の材料が命を響く石(ユアワース)とよばれるものであること」「命を響く石の原料が生きた人間であること」「ボンドルドが自身の最初の命を犠牲に白笛を作り上げたこと」という様々な事実を知ることになる。そんな彼らの間に突如として割って入ったのは、電気ショックで記憶が混乱し、我を失ったレグだった。元々の身体能力の高さも相まって、ほぼ互角の戦いを繰り広げるレグとボンドルド。しかしながら、ボンドルドはカートリッジを大量に身に着け負荷を避け続けておりこれといった決定打は与えられずにいた。長引く戦いの中、ナナチの身を挺した活躍によりレグの暴走は収まる。それと同時に娘のプルシュカもカートリッジに加工されてしまっていたことが明らかとなる。結果として序盤で斬り落とされていたレグの右腕を用いて、リコが放った「火葬砲(インシネレーター)」という技が決め手となり、ボンドルドには辛くも勝利する。だがプルシュカの命が帰ってくることはなく、リコは血が溢れ出すカートリッジを抱き締め涙する。するとそこから出現したのは白い石、「プルシュカの命とリコ達への強い想いから作り上げられたユアワース」だった。死の間際、一緒に冒険に出て夜明けを見てみたいと願うプルシュカの気持ちがリコ達の旅路に一筋の光を照らしたのだ。こうして先へ進む手段を得た3人は、続く六層となる還らずの都へと向かうのだった。

『劇場版「メイドインアビス」-深き魂の黎明-』の登場人物・キャラクター

主要人物

リコ

CV : 富田美憂

主人公の少女。探窟家見習いであり、年齢は12歳。
戦闘能力は皆無だが、アビスに存在する特殊な生物やアイテムの知識に精通しており、記憶力がいい。また、未知のものを研究しようとする知的好奇心も高い。後述のレグに初めて会った際は、彼がロボットであることに興味を抱き、性器に至るまで隅々を観察していた。2歳という幼少期からの年月を「ベルチェロ孤児院」という施設で過ごしていた為、料理が上手い。その腕は、口にした仲間達が美味しさのあまり感動するほどである。実は偉大なる探窟家にして、白笛の称号を持つライザの娘。しかし、リコの身に何らかの危害が加わるといけないという周囲の人間の配慮から、出生の秘密は一部の者にしか明かされていない。今作では、母ライザを追ってアビスに入った後、深界5層:なきがらの海に突入した際の様子が描かれている。

レグ

CV : 伊瀬茉莉也

謎に包まれたロボットの少年。ある日アビスの中で機能が止まり行き倒れているところを、リコ達ベルチェロ孤児院の子供らにより救出される。四肢が機械的であることを除けば、見た目に関しては普通の人間とさして変わりがない。しかし、腕から強大なビームの様なものを発射出来たりなにかと常人離れしたパワーを持っている。このことから、アビスの深層からやってきた存在なのではないかとリコ達には推測されている。知識があるがゆえに何かと無謀な行動に出てしまうリコを守るために、彼女と共にアビスの底を目指す。リコとは正反対に料理が苦手である。冒険で負傷した彼女の代わりに料理を引き受けた際は、鍋いっぱいの真っ黒な物質を作り上げた。また、自身についての過去の記憶を失っている。記憶を保有していた頃は、リコの母・ライザと共に居たかのような描写が度々なされることがあるが、それについては依然謎に包まれたままである。

ナナチ

CV : 井澤詩織

ウサギの様な耳と、ふわふわの体毛に覆われた半獣人の外見をした存在。少年とも少女ともとれる見た目をしており、作品内でも性別については明言されていない。
「んなぁ~」というやや気の抜けるような口癖を好んで使い、アビスについてはリコ以上の豊富な知識を持つ。特に医療や薬学に精通しており、リコがアビス内の深界4層:巨人の盃にて瀕死の重傷を負った際は、自身の家まで招き入れて治療を行った。それ以降は2人の旅に仲間として同行するようになる。
元は「セレニ」という北の地の生まれの浮浪児。育った環境ゆえあまりまともな食材は口にしておらず、食べられれば何でもいいという考えを持っている。その為レグと同じく料理は下手。

前線基地(イドフロント)

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