QQスイーパー(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『QQスイーパー』は、最富キョウスケ作の少女漫画であり、月刊雑誌『ベツコミ』に、2014年から2015年にかけて全15話が連載された。単行本は全3巻である。人の心を掃除する「掃除屋」の少年少女が心に巣食う「ムシ」を退治していくというストーリーで、第1巻帯のキャッチコピーは「イケメンドSな“ココロの掃除屋”と”ワケあり”夢見がち少女が織りなす新感覚ラブファンタジー!!」であった。恋愛やファンタジーの要素だけでなく、SF的なダーク要素が織り込まれた、少女漫画の変化球ともいえる作品である。

『QQスイーパー』の概要

『QQスイーパー』は、最富キョウスケ作のSF要素が織り込まれた少女漫画であり、月刊雑誌『ベツコミ』の2014年4月号から2015年6月号にかけて全15話が掲載された。単行本は全3巻である。200万部を超えた『電撃デイジー』の次作として連載が開始され、同様に200万部を超えた『クイーンズ・クオリティ』へと続く。本作そのものは短い作品であるが、同氏の二大作の中継点として注目を集める作品である。玉の輿を夢見る西岡文は、転校してきた先で堀北玖太郎と出会う。玖太郎は周囲から「掃除が得意でよくわからないヤツ」と言われていたが、その実は人の心の中の悪い感情を掃除する「ココロの掃除屋」であった。家も身寄りもない文は「とてつもない精神力をもつ」ことを買われ、玖太郎の家に居候しながら、掃除屋の仕事を手伝うことになる。しかし文には昔の記憶がなく、「呪いの娘」と言われ続けてきた過去があった。そして、人の心を操り、文を「Q(クイーン)」と呼んで狙う者たちが現れたことで、文の秘められた力が明らかになっていく。人の心とそこに巣食う負の感情を巡る攻防を描く、SFラブファンタジーである。

『QQスイーパー』のあらすじ・ストーリー

掃除屋になった文と坂口の事件

身寄りも家も失った女子高生・西岡文は、何かに誘われるようにたどり着いた高校の旧校舎の一室に辿り着いて眠りにつく。翌朝、文を叩き起こしたのは、掃除が得意な謎多き青年・玖太郎であった。学校理事長・喜田川鉱一に旧校舎の部屋で勝手に寝ていた理由を問われた文は、自分が天涯孤独の身であることを明かす。旧校舎の部屋は「化け物屋敷」と呼ばれて他の生徒はほとんど近づかない場所で、文には普通は見えるはずのない、古い大きなドアが見えていた。
文が旧校舎の部屋に行くと、クラスメートの坂口純也とその仲間が旧校舎の部屋をぐちゃぐちゃに汚している。喧嘩になりかけたとき、玖太郎が姿を見せ、突然部屋中から不気味なムシたちが湧き始める。それを見た坂口たちは一目散に部屋から逃げて行き、玖太郎が箒で床をひと突きするとムシはすぐに散っていった。

いつのまにか眠っていた文が一人で目を覚ましたとき、部屋には大きな古い扉が現れていた。扉からは坂口の助けを求める声が聞こえ、文は戸惑いながらも扉を開けて中に入ってしまう。そのことを知った玖太郎は文を連れ戻すため、扉の中に入って行った。一方、一面にたくさんの扉がある空間を慄きながら進んでいた文は、坂口の声が聞こえる扉を見つける。中に入ると暗闇の中から大きなムシが現れ、坂口と文に襲い掛かった。そこに間一髪で到着した玖太郎はムシを押しのけ、今いる場所と、玖太郎たちの「仕事」の実態を文に明かす。
坂口がいたのは「ウチガワ」と呼ばれる人の心が集まる空間、その中に存在する坂口の心の部屋、「心間(こころま)」だった。心に悪い感情の残骸である「汚れ」が溜まるとそれを糧にする「ムシ」が集まって憑りつき、人の精神を壊してしまう。そうなる前にムシと汚れを払うのが玖太郎たち「掃除屋」の仕事だと言うのだ。玖太郎と文は協力しあってムシを打ち倒し、坂口の心間を浄化することに成功した。
目を覚ました文は、鉱一が玖太郎の家族かつ掃除屋の一員だと知る。文に掃除屋としての可能性を見てとった鉱一は、自分たちの家に文を迎え、家政婦兼掃除屋の手伝いとして雇うことを決めた。

清水川の事件

文は三年生の有名なカリスマ男子・清水川蓮に声をかけられ、無理やり体育館倉庫に連れていかれる。清水川は「こうなったのはあんたのせいだ」と謎の言葉を発して文の首を締め付け、その背後からはムシが現れて「呪いの娘」「絶望しろ」との言葉を吐いた。絶体絶命の危機に陥った文だが、玖太郎が駆けつけたことで難を逃れる。清水川の傍にムシがいたことから、彼が「ムシ憑き」であることは明らかであり、その症状はかなり進行していると考えられた。
翌日の晩、清水川の治療が始まる。精神だけの状態になった玖太郎と文、玖太郎の祖母のミヤコは、ウチガワの世界へと入り清水川の心間にたどり着く。文が任されたのは「清め」の役だった。気持ちを静めて集中した文は、ミヤコの手を借りながら、見事に部屋の浄化を果たす。力を使い果たした文は気を失うが、薄れる意識の中で呪いを倒せたこと、玖太郎と会えたことを喜ぶのだった。

アタルの登場とムシ遣い

清水川の事件の背後にはムシを使って人の心を操る人間、「ムシ遣い」がいる可能性が濃厚である。ムシ遣いのことを都市伝説ではないかと疑っていた玖太郎だが、文が誘われて行ったカラオケに「オーラが見える占い師」が来ているという話を聞き、急いでその店へと向かう。一方の文は、友達のマリエ、カオリたちとカラオケ店に来ていた。文たちを誘ったカオリは、「噂のすごい占い師」四方アタルのことを紹介する。周りが嬉々としてアタルの占いを楽しむ中、その場に馴染めない。耐えきれなくなった文とマリエがその場を後にしようとしたとき、突然アタルが文を名指して「呪いの娘」と言い放った。アタルの発言によってその場は大混乱になる。一人取り残された文がアタルの手にかかって絶体絶命の窮地に陥ったとき、玖太郎が到着して文を助け出した。やはりアタルはムシ遣いであることが明らかになったが、ムシに憑りつかれた男子の暴走に玖太郎が対処している隙にアタルは姿を消していたのである。
今回の事件を通して、鉱一は何者かが何らかの理由で文を「呪いの娘」に仕立て上げようとしているのではないかと推測していた。

カオリの事件と文の中の「女王」

カオリがクラスメートにアタルが文を「呪いの娘」と言っていたことをばらしてしまい、文は周りの女子たちから、ひどいいじめを受けることになった。だが、カオリに「F.Mさん(文)に対して『呪いの娘』『黒いオーラ』等という誹謗中傷が行われた」「彼女が人を呪うというのはまったくの捏造である」というメールが届いたことから風向きが変わり、女子たちは手のひらを返したように文に友好的な態度をとり始める。カオリもまた文たちに謝って何事もなかったかのように元の関係に戻ろうとするが、彼女が文を「売る」かたちになったことに怒っていた文たちは彼女を突き放した。周りにも陰口をたたかれて四面楚歌のカオリが家で涙にくれていたとき、アタルが電話をかけてくる。アタルの指示に従うと、カオリの体中からムシが噴き出した。
ムシに食い荒らされて心が壊れたカオリは、アタルの操り人形と化す。真夜中、文が寝ようとしていたところにカオリから「消えるから許して。ごめんなさい」と電話が入る。それを聞いて焦った文は、家を飛び出してカオリを探し始めた。

廃墟になった病院の屋上にカオリがいることに気づいた文は、我を忘れて走り出す。文を追って病院に入った玖太郎の前にはアタルが現れて「あの子はもうすぐ『女王(クイーン)』になる」との謎の言葉を発した。屋上ではカオリがフェンスの外側で今にも飛び降りそうになっている。文の必死の呼びかけに何の反応も見せなかったカオリだが、心を静めた文が気持ちを込めて声をかけたことでようやく振り返った。しかし、再びアタルが命令をしたためにカオリはまたもや飛び降りようとし、彼女を救うために不本意ながらも文はアタルの指示に従った。だがアタルは文をあざ笑うかのように、カオリに「飛び降りろ」と指示をだした。
カオリが飛び降りようとしたまさにその時、文の雰囲気が突然変わる。文が「うごくな」と言い放つと、それを聞いた玖太郎、アタル、カオリは身体を動かすことができなくなった。そのままカオリのもとに向かった文は「かならず助ける。だから来なさい」と声をかけ、カオリはその言葉に従ってフェンスの中へと戻ってきた。その瞬間、文は気を失って倒れ、文の意識がなくなると同時に玖太郎とアタルも元通りに動けるようになっていた。一連の流れを不思議に思う玖太郎に対し、アタルは何かを知っている様子で、「今のが『女王』の力の片鱗だ」といった。アタルは詳しいことは何も明かさずに去って行ったが、後に鉱一によって、「女王」とは絶対多数の他者の精神を操る力をもつ存在だということが明かされる。そのことを密かに聞かされた玖太郎は、たとえどんな秘密があったとしても文のことを守ると心に決めたのだった。

カオリの救済

病院に運ばれたカオリは危篤状態であった。カオリに「助ける」と言った約束を守るため、文は玖太郎、ミヤコとともにウチガワの世界へと向かう。カオリの心はウチガワの奥深くに沈み込んでいて、そこはより一層ムシが増えやすく、非常に危険な場所だった。文が目を閉じてカオリのことを強く思うと、文たちはカオリの心間の扉の前にいた。彼女は牢屋のような部屋の中に閉じ込められていた。「自分には何もない」「もうだめだ」と繰り返して文の言葉を聞こうとしなかったカオリだったが、「自分の中になにもないはずがない、どこかからひねり出せ」という文の強い訴えを聞き、自分のことを受け入れて牢屋から出ることができた。こうして自分の心を取り戻したカオリは、病院で目を覚ましたのだった。
事件解決の後、玖太郎は、カオリを助けに行く前にミヤコから言われた言葉を思い出す。その言葉とは、たとえ女王になる運命だったとしても文は「普通の女の子」であり、玖太郎だけはそれを忘れないでいてほしい、というものだった。そして、「文が女王になるのか」「もしそうなら、『黒い』のか『白い』のか」との疑問を残したまま、物語は次へとつながっていくのである。

『QQスイーパー』の登場人物・キャラクター

堀北家

西岡文(にしおかふみ)

私立玄門高校2年の転入生で、家も身寄りもない天涯孤独の身である。人生の目標を「玉の輿」としていて、可能性がありそうな人間を見つけると積極的にアプローチをかけている。しかし、「人の恋路を邪魔してまで玉の輿を狙うというのは道に反する」という考えから、相手に好きな人がいると素直に諦める。好きな言葉も「玉の輿」で、嫌いな言葉は「胃もたれ」「呪い」「理不尽」である。本人曰く「清楚で高貴なお嬢さんみたいな外見」であり、そのようにふるまっているが、実際は田舎の貧乏育ちである。人の似顔絵を頻繁に書くが絵心はなく、描いた人物は『進撃の巨人』さながらの不気味な様相と化す。
ムシを殴っても影響を受けないほどの並外れた精神力を持っていたことを買われ、鉱一に掃除屋の手伝いにスカウトされた。堀北家が人手不足に悩んでいたこともあり、家政婦兼掃除屋の見習いとして住み込みで働くことになった。どこに行っても「呪いの娘」と言われて実際に周りの人が不幸になっていった経験があり、自分に親切にしてくれた玖太郎たちが不幸になるのを恐れて、一時は堀北家を出ようとしていた。しかし、玖太郎と鉱一、ミヤコの温かい思いに触れ、そのまま働きながら自分の過去や「呪い」の所以を探ることを決意した。
作中にて二度、一度目は文がアタルに襲われた後にアタルから呪いの情報を引き出そうと考えたとき、二度目は文が、アタルに操られて自殺しそうになったカオリを止めたいと願ったときに、文のまとう雰囲気が大きく変化し、周りの人間を動けなくするほどの不思議な力を放ったことがあった。しかし、その間、文の記憶は途切れていた。この文の力と、当初から文がもっていた強い精神力、そして、アタルが文を「Q(クイーン)」と呼んで狙っていることから、文の正体が絶対多数の精神を支配できる女王(クイーン)である可能性が高いとされている。しかし、その詳細は本作中では明らかにされていない。

堀北玖太郎(ほりきたきゅうたろう)

私立玄門高校2年の美化委員である。鉱一、ミヤコとともに豪邸級の大屋敷に住んでいる。稼業は家の掃除屋であるとともに、人の心を掃除する掃除屋である。玄武門掃除役中央区預北家38代当主補佐として働いていて、高校にある扉の番人としての役目も担っている。掃除だけでなく、家事全般が天才的に上手い。文が家に来るまでは朝4時起き、文が来てからも5時起きで朝の家事をこなし、学校に行って掃除や見回りをこなしている。
周囲からは「よくわからないが悪い奴ではなく、掃除だけはうまい」と評価されている。ボッチのコミュ障で、人に関わるすべてを面倒くさいと明言している。悪態の決まり文句は「(鼻や耳に)キュウリを詰める」である。しかし実のところは寂しがり屋で、そうなったきっかけは、昔掃除屋の世界で事件が起こったときに長い間一人で過ごしたことであった。その頃に出会った「ふゆちゃん」という女の子のことをずっと好きでいたが、文の言動にふゆちゃんの面影を感じたことで、文のことを意識し始める。金平糖を食べる文の様子を見て文とふゆちゃんが同一人物だと確信するが、文の混乱を恐れてそのことを隠すことを決めた。その後、玖太郎は陰ながら文への恋心を募らせていき、アタルには「ずっと好きだった」と明言している。ミヤコから「どんな運命にあっても文はふつうの女の子だ」という言葉をかけられ、文にどんな秘密があっても文を守ると誓った。

喜田川鉱一(きたがわこういち)

玖太郎の親戚で、玖太郎や文が通う私立玄門高校の理事長をしている。掃除屋としての力はもたないが、亡くなった玖太郎の両親に代わって堀北家の掃除屋としての仕事を取り仕切っている。精神科医でもあり、ムシ憑きになった患者の治療を担当する。人の心理に長け、記憶を消す施術も可能である。既婚者で高身長のイケメンだが、私服のセンスは悪い。料理の腕はまずまずで、揚げ物は苦手である。文の掃除屋としての資質を見抜き、文を手伝いとしてスカウトした張本人である。茶道の心得があり、玖太郎に稽古をつけられるだけの腕前をもつ。

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