狼陛下の花嫁(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『狼陛下の花嫁』とは2009年から2018年まで『LaLa』で連載された可歌まとによる人気ラブコメディ少女漫画。
舞台は中華風の国、白陽国の王宮と後宮、そして下町。
下町で働く汀 夕鈴(てい ゆうりん)が父の知人の紹介で”冷酷非情な狼陛下”と呼ばれる白陽国(はくようこく)国王、珀 黎翔(はく れいしょう)の臨時花嫁として雇われ、時に甘く、時に悲しく厳しい現実に立ち向かい数々の困難を周囲の協力を得て乗り越え成長していく物語である。
『狼陛下の花嫁』の概要
『狼陛下の花嫁』とは2009年から2018年まで『LaLa』で連載された可歌まとによる人気ラブコメディ少女漫画。
本作は最初読み切りとして数話掲載され、甘々な恋愛ストーリーだけではなく兄弟愛や仲間との協力の場面が感動を呼び、人気を博し連載を開始。
中華風の国、白陽国の王宮と後宮、そして下町を舞台に描かれている。
下町で働く主人公、汀夕鈴(てい ゆうりん)が”冷酷非情な狼陛下”と呼ばれる白陽国(はくようこく)国王、珀黎翔(はく れいしょう)の臨時花嫁として雇われ奔走していく物語である。
夕鈴は下級役人である父親の知人から「内容はわからないが割りのいい仕事」と紹介されて王宮に出向くとその仕事はなんと”狼陛下”と恐れられている国王の縁談避けの臨時花嫁を演じることだった。
下町で育った夕鈴にとって王宮は普段の生活とはかけ離れた煌びやかな生活。翻弄されながら日々を送っていく中で”狼陛下”である黎翔の裏の顔、子犬のような優しい一面を目撃してしまう。
この裏の顔は王宮でも一部の側近のみに知らされている秘密の事実で臣下や他国になめられないイメージ戦略であることを知る。
狼のような一面と子犬のような一面の二面性を持った陛下に振り回される夕鈴だが、だんだんと惹かれていく。その膨らんでゆく想いを隠しながら、白陽国を渦巻くさまざまな陰謀に立ち向かう。不器用ながら一生懸命な夕鈴が、無事臨時花嫁のバイトを達成することはできるのかを描いたラブコメディである。
『狼陛下の花嫁』のあらすじ・ストーリー
白陽国王、珀黎翔と汀夕鈴との出会い
下級役人である父親の知人から「内容はわからないが割りのいい仕事」を紹介され、王宮に出向く夕鈴。しかしその仕事内容は、縁談避けのための臨時花嫁を演じることだと知る。
「詳しい内容は王宮で」と言われていたことから、怪しいとは思っていたものの高賃金に惹かれ出向いてしまった。そんな自分の行動を後悔し、すぐさま辞めることを決意する。
国王の側近であり夕鈴の直属の上司である李順に辞めることを伝えに行こうと向かう道中に”狼陛下”の裏の顔を知ってしまう。
”狼陛下”の裏の顔は子犬のような優しい一面だった。それは側近のごく一部にしか知らされていないため話せば一族もろとも地上から消えてもらうと李順から脅され悩んだあげく偽の臨時花嫁の仕事を継続する決意をする。
春の宴
黎翔が即位してから中止されていた花の宴。別名、花恵宴(かけいえん)。新たな季節を迎えるにあたり心身の汚れを祓う儀式だがいつしか花の下で酒宴を楽しむようになった宮中儀式である。
宴の責任者を決めるため対立する氾家と柳家だったが夕鈴の一言で両家子息である柳方淵と氾水月がそれぞれ責任者に選ばれ、表立った対立は収まった。
だが、責任者に選ばれた2人は個人的能力は高いものの協調性に欠けていた。しかも2人の性格が真逆のため提案の内容も真逆で、一行に話がまとまらない。
その仲裁に入っている夕鈴だったが「わかってもいない部外者が口を挟まないで頂きたい」と言われてしまう。
花の宴について調べようと書庫へ向かう夕鈴は、白陽国宰相である周康蓮から「過去の清算と新たな出発を示す重要な儀である。柳家と氾家の協力を持って成功すれば国王にとって非常に幸先の良い門出となるでしょう」と予言を授かる。
妃の役目の国王に花を届けるという重役を果たそうとする夕鈴だが花の宴の開催をよく思わない臣下達に妃が後宮から宴の会場へ移動するための花駕籠を壊されてしまう。
そこで夕鈴は臣下の反対を押し切り後宮から歩いて宴の会場まで向かい無事その役目を果たすのであった。
星祭り
王都から少し離れた離宮で行われる星祭りに避暑も兼ねて行くことになった夕鈴と黎翔。
そのロマンチックな響きから想像していたものとはかけ離れ夕鈴を襲ったのは離宮の人達による星読みについての勉強会だった。
星祭りが行われるまでの間、遊びの誘惑を行う黎翔に対し星祭りまで会わないことを決心した夕鈴。
夕鈴が真面目に勉強を行う中、離宮内では幽霊がでるといった不吉な噂で持ちきりになる。
そして星祭り当日、時間まで泉で身を清めている夕鈴だったが近くでだれもいないはずだが物音がしたことに気づく。
そこには妃に危害を加えようと雇われた刺客がいた。
無事、黎翔とその側近であり隠密の浩大に助けられことでなきを得、星祭りは粛々と執り行われた後、お土産に星読みのテキストを大量に渡され帰路に着いたのであった。
蒼玉国、瑠霞姫の来訪
白陽国に黎翔の父方の叔母である瑠霞姫が突然帰省することになった。その天女のような美しい出立ちの瑠霞姫から夕鈴は話相手役に指名される。
同席した夕鈴の親友であり氾家令嬢の紅珠と共に”お妃様を囲う会”に参加している夕鈴だが黎翔との間柄を根掘り葉掘り聞かれ、また2人の恋愛トークについていけず疲弊してしまう。
ある日瑠霞姫から貴族の令嬢達や紅珠と共に白華園内でのピクニックに誘われたが、その中で瑠霞姫から「ここにいる令嬢達はいつでも後宮入りできるよう準備されている、黎翔からの愛がいつまで続くかわからない」と言われてしまう。それに対し夕鈴は「今までもこれからも変わりなく心ひとつであの方の味方です」と返す。
その後のお茶会で瑠霞姫から後宮やそこにいた黎翔の母のこと、嫉妬が渦巻く後宮でただ黎翔に守られるだけで覚悟がないようであれば一般庶民である夕鈴が生きていくには厳しい場所であることを聞く。
だが夕鈴を見て余計なお世話だったことに安心した瑠霞姫は、ほどなくして帰国が決まり「くだらぬ中傷はなかなか消えはしないし苦労も多いことだが、かつてとは違うこの後宮でそのままのあなたがあの子のそばにいてくれたらと思う」という優しい言葉を残し去っていく。
瑠霞姫は意中の男性に対しあの手この手を使い嫁いでいく嵐のような姫であることを知り、驚く夕鈴だったが良き縁が持てたことに安堵する。
壬州の閑積への地方視察
堤防工事や収穫期の農民の様子を見に行くために壬州の閑積へ視察に向かう一行だったが、それは名目で黎翔の本当の目的は「久しぶりに会いたい知人がいて、どうせ会うなら人目を気にせず町などを見て回りたい」というお忍び視察だった。
そして変装して船に乗り込み到着したのは蓉州だった。
黎翔は夕鈴と遊ぶ時間がないことを文句を言いつつ目的地に到着。黎翔の”会いたい知人”は少々たてこんだ相手のため、夕鈴は黎翔の側近である徐克右と共に町で留守番することになる。
”会いたい知人”を昔の恋人かもしれないと疑う夕鈴だったが、真実は晏流公と呼ばれる黎翔の腹違いの弟だった。黎翔は即位後ほとんど会ったことがなかった弟に近くまで来たので会いたいということだったのだ。
予定がなかなか合わず町に滞在する間、一行は徐克右の仕事である”闇商人に関する情報収集”を手伝うことに。この闇商人が通るところには狼陛下や妃の悪い噂が流れるということを聞き情報収集を行う2人だが、黎翔のペースに巻き込まれデートのようになってしまう。
翌日、李順から晏流公の予定がついたことを聞かされ黎翔は会いにいく。
会いにといっても顔は合わせておらず晏流公の母である菫蘭瑶には内密だったため、隣室で授業風景を見るのみで姿はあまり良く見えず多分大きくなったということがわかる程度だった。
臨時花嫁バイト終了
夕鈴は李順から唐突に臨時花嫁の終了を告げられる。
黎翔は夕鈴に対し「なにか欲しいものや望むものはない?望むのなら嫁ぎ先も融通する。」と伝える。夕鈴は密かに想いを募らせていた黎翔から嫁ぎ先の話をされ、ショックだったがそれ以上に激怒する。
少し驚いた黎翔だったが悲しく笑い「君に優しくしなくていいなら私もどれだけ楽なんだろうな。」と言う。そして”狼陛下”の一面は演技ではないことを遠回しに伝える。
最後に口付けを交わしここにいてはダメかと聞く夕鈴に黎翔は「これまでの生活は君が見た悪い夢だ。全で忘れてしまえ。」と告げる。
そうして狼陛下の後宮から一人の妃が姿を消したが、元々どこから現れたかもわからない妃がどこへ消えたのか知る人はなく「後宮の花は枯れてしまった」と王宮内では囁かれた。
夕鈴は後宮での華やかな生活から普通の日常に戻ったが、思い出すのは黎翔のことばかり。考えても、もう手の届かない存在になってしまった黎翔に対して想いを募らせる。
もしもう1度会うことができれば玉砕覚悟で告白することを決意するのだった。
数日経ったある日、夕鈴の自宅に突然、周康蓮が訪れる。周康蓮が話す内容は王宮の人間が権力争いに夕鈴のことを利用しようと探すかもしれないということだった。
そのことを知った黎翔は「一旦、夕鈴を安全な地に身を隠し、ほとぼりが冷めた後は必ず元の生活に戻れるようするように」と周康蓮と命じる。
周康蓮は今も夕鈴と黎翔が本物の夫婦であるように見えると言い残し王宮に帰る。そして考えた結果夕鈴が望んだ避難先は蓉州だった。
蓉州、晏流公のお邸への潜入
夕鈴は黎翔のため蓉州にある晏流公のお邸に使用人として潜入する。そこで出会った晏流公はとても賢く黎翔のことを尊敬している人物であった。
自分の腹違いの兄である黎翔に会いたいと嬉そうに語る晏流公に対し夕鈴は「絶対に大丈夫」と伝える。その後夕鈴は晏流公だけでなく晏流公の母である菫蘭瑶にも気に入られるようになる。
ある日菫蘭瑶と闇商人が密会しているところを見かけてしまい王都での菫蘭瑶の陰謀を知ってしまう。それを阻止しようとするが浩大と徐克右に止められてしまい潜入は断念。
諦めきれない夕鈴は臨時補佐官である柳方淵と氾水月に協力を仰ぎ王都で取引が行われる妓館に潜入する。
王都の妓館へ潜入
菫蘭瑶の陰謀を阻止するべく王都に戻り闇商人が取引をする妓館に従業員として潜入する。
その日、黎翔も同様の情報を聞きつけ妓館にいた。それを知らない夕鈴は妓館で偶然、黎翔と再会してしまう。
周康蓮に夕鈴の避難先を任せていた黎翔は、この場で夕鈴が働いていることに驚き激怒する。
その怒りを闇商人に向け陰謀は無事阻止。騒動に紛れて夕鈴は黎翔によって後宮の一室に隔離される。
幽閉された花嫁
遊郭での騒動から数日、夕鈴は変わらず後宮に幽閉されていた。時折、後宮管理人である張元老師や浩大は現れるが黎翔は一切顔を見せない。
夕鈴は嫌われてしまったと気を落としていた直後、張元老師からいまから黎翔がここに来ることを知らされ、黎翔が現れた途端夕鈴は安堵からか涙を流してしまう。
それに動揺した黎翔は気持ちの整理がついたら来ようと思っていたことや、放っておくと夕鈴がなにをするかわからず心配のため幽閉したことを伝える。
そして黎翔は自分の想いを語りはじめるのであった。
告白
夕鈴のもとにやってきた黎翔は少しつまらない話をしてもいいかと聞き、自身のことを語り始める。
地方視察に訪れていた黎翔の父の前で舞を披露して見初められ後宮へ入った黎翔の母は生前、いつも後宮を逃げたがっていた。
だが、父から寵愛を受けていたため母は後宮から離れることを許されなかった。
見えないように後宮内部は荒れ後宮に馴染なかった母は体を壊しこの状況が続けば母も子も命が危ないと判断した父が辺境へ2人を逃がす。
その数年後、母は静か眠りにつき黎翔はその後も気ままに辺境生活を送っていたが突然王の座が転がり込んできた。
母のこともあり後宮に良い思い出がなく後宮に妃を入れる気にならなかった黎翔は”狼陛下”がその役目を終えたら王の座にいるべき人間に譲ろうと思っていたことを語る。
そのため黎翔にとってそのため臨時花嫁はとても都合の良い存在だった。
だが、いつか夕鈴を元の生活に帰さないとと思っていたのに一緒にいることがただ楽しくて、どうしても離れがたくなってしまった。自分の感情をギリギリ制御できるうちに手放せたと思っていたが、まさか妓館で再会してしまうなんて酷い話だと黎翔は語る。
そしてついに「君を愛してる」と告げる黎翔。それに対し夕鈴は「あなたの側にいたい」と返す。白陽国に春の兆しが見えた瞬間であった。
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目次 - Contents
- 『狼陛下の花嫁』の概要
- 『狼陛下の花嫁』のあらすじ・ストーリー
- 白陽国王、珀黎翔と汀夕鈴との出会い
- 春の宴
- 星祭り
- 蒼玉国、瑠霞姫の来訪
- 壬州の閑積への地方視察
- 臨時花嫁バイト終了
- 蓉州、晏流公のお邸への潜入
- 王都の妓館へ潜入
- 幽閉された花嫁
- 告白
- 再会の宴
- 炎波国、赤朱音の来訪
- 黎翔の過去
- 夕鈴の記憶喪失
- 正妃冊立の儀
- 『狼陛下の花嫁』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 汀 夕鈴(てい ゆうりん)
- 珀 黎翔(はく れいしょう)
- 李順
- 王宮関係者
- 柳方淵(りゅう ほうえん)
- 氾水月(はん すいげつ)
- 氾紅珠(はん こうじゅ)
- 張元(ちょう げん)
- 浩大(こう だい)
- 徐克右(じょ こくう)
- 周康蓮(しゅう こうれん)
- 柳義広(りゅう ぎこう)
- 氾史晴(はん しせい)
- 珀瑠霞(はく るか)
- 赤朱音(せき しゅおん)
- 晏流公(あんりゅうこう)
- 菫蘭瑶(とう らんよう)
- 柳経倬(りゅう けいたく)
- 桃香(とうか)
- 韋良(いりょう)
- 下町関係者
- 汀青慎(てい せいしん)
- 几鍔(き がく)
- 汀 岩圭(てい がんけい)
- おばば様
- 明玉(めいぎょく)
- 『狼陛下の花嫁』の用語
- 地名
- 白陽国(はくようこく)
- 蒼玉国(そうぎょくこく)
- 炎波国(えんはこく)
- 壬州(じんしゅう)
- 蓉州(ようしゅう)
- 白華園(はくかえん)
- 離宮(りきゅう)
- 名称
- 狼陛下(おおかみへいか)
- 妖怪妃(ようかいきさき)
- 『狼陛下の花嫁』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 珀黎翔「ごめん、夕鈴。僕はもう君が目の前にいて愛しさを抑えることが出来る気がしない」
- 汀夕鈴「この先がどんな形になっても私はもう後悔はしないんです」
- 晏流公「まるで彼女が私たちを兄上の元へ導いてくれたみたいだと」
- 珀黎翔「お前が私に仕掛けた”戰”なかなか面白いものであった」
- 赤朱音「全員殴るだけ…一人目で大当たりとは運がいいわ」
- 菫蘭瑶「けれど、私にしてみれば後宮の女などすべて妖の類にございますよ」
- 珀黎翔「君を僕から引き離そうとするなら、それが何者であっても…必ず滅びの末路を与えよう」
- 『狼陛下の花嫁』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 夕鈴の臨時バイトの紹介者は周康蓮
- 黎翔は仕事以外、夕鈴にかまうことしか興味が湧かない
- お転婆な夕鈴似の女性を探し出すのは困難
- 紅珠の小説のタイトルは『リリカルドリーミング☆ラブロマンス』