BEASTARS(ビースターズ)のネタバレ解説・考察まとめ

『BEASTARS』とは2016年より板垣巴留が『週刊少年チャンピオン』で連載している漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。肉食獣と草食獣、爬虫類や鳥類などの様々な動物が共存する世界を舞台に、全寮制の学校チェリートン学園に通う悩めるハイイロオオカミの高校生・レゴシが、恋愛や部活、家族との関係や社会での関わりを通し、種間の違いに葛藤しながら成長していく青春を描く。擬人化された肉食獣と草食獣の対立や異なる種間の相互理解を巡るすれ違いが生み出すドラマは国内のみならず海外にも厚い支持を受ける。

『BEASTARS』の概要

『BEASTARS』とは2016年より板垣巴留が『週刊少年チャンピオン』で連載している漫画、およびそれを原作としたアニメ作品である。2018年第42回講談社漫画賞少年部門と第11回マンガ大賞を受賞。作者の板垣巴留は同じく『週刊少年チャンピオン』にて活躍中の板垣恵介(代表作『クラップラー刃牙』他)の実娘。2019年に発売された『週刊少年チャンピオン』42号誌上では親子対談が実現した。2019年10月から12月にかけてフジテレビ『+Ultra』枠でアニメが放映されたのがきっかけで海外ファンも多く獲得。漫画のアカデミー賞と謳われ、全米で最も権威あるアイズナー賞にも2020年にノミネートされる。
チェリートン学園2年生のハイイロオオカミの主人公・レゴシは演劇部の美術チームで照明係を担当していたが、同じ部員であり友人だったテムが校内で食殺されたのをきっかけに肉食獣と草食獣、異なる種間のトラブルに巻き込まれていく。学園のスターであり草食獣の身ながら全動物の指導者・ビースターを目指すアカシカのルイとの友情、非力で小柄だが負けん気の強いウサギのハルとの恋愛を通し、捕食者としての肉食獣と被捕食者としての草食獣の差異や対立に翻弄されながらも成長していく姿を描くヒューマンドラマ。先入観や偏見、あるいは本能の宿業に縛られたキャラクター達が異なる価値観の他者とのコミュニケーションに苦慮しながら距離を縮めていく過程を丁寧に描いた群像劇でもある。

本作を挟む形で連載された『BEAST COMPLEX』とは世界観を共有しており、登場人物の一部はどちらにも登場する。

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『BEASTARS』のあらすじ・ストーリー

※作中では「人」という言葉を極力使わないよう演出を工夫しており、「1人、2人」は「1匹、2匹」、「人生」は「獣生」といった形になっている。本記事でもそれに準じて表記する。

演劇部篇

レゴシはチェリートン学園高等部に通うハイイロオオカミの生徒である。彼は常に無害な存在として振る舞うよう努めていたが、学園の中でアルパカのテムが食殺される事件が発生し、草食獣と肉食獣の間に深い溝が生じる。
これに対し、学園のカリスマ的存在でありレゴシと同じく演劇部に所属する花形のルイは、このような状況を打開するために新入生歓迎公演で両者が誇りと共に歩む未来を示してみせると宣言した。

同じ頃、レゴシはドワーフウサギのハルと出会う。ハルに対して抱いた強い興味と衝動が恋心なのか肉食獣の本能なのか分からず苦悩するレゴシ。やがて新入生歓迎公演の日になり、ルイは初日で名演技を披露し、“草食獣でも肉食獣に精神的な勝利を収めることは可能”という事実を持って己の言葉を証明した。しかし無理がたたって倒れてしまい、2日目の主役を虎のビルに任せることとなる。
しかしビルは秘かにウサギの血を服用していた。これに気付いたレゴシは激昂し、公演中、舞台の上でビルに決闘を挑む。壮絶な殴り合いは割って入ったルイの機転で“演技の一環”として処理され、公演は成功裏に終わる。
この一件でレゴシはルイへの敬意を強くしたが、ルイは肉食獣の力を隠して生きるレゴシに不快感を覚える。素直な憧憬と裏返しの羨望を抱え、2匹の少年は交流を重ねていく。

隕石祭篇

肉食獣のレゴシ(左)と一定の距離を保とうとする草食獣のハル(右)。

交流を重ねるうちに、レゴシはハルと親しくなっていった。一方、ハルはレゴシの内面には好感を抱くものの、一定の距離を保って接する。
この頃、演劇部の肉食獣仲間と遊びに出掛けたレゴシは、「裏市」という草食獣の肉を売る非合法な場所に迷いこむ。肉を食べてみようと誘われたレゴシだったが、それがハルへの想いを汚す行いであるという怒りと恐怖からその場を逃げ出す。そこでレゴシは闇医者であるパンダのゴウヒンに出会い、自身の想いが思春期の衝動と肉食獣の本能が合わさった危険な執着であることを指摘されるのだった。
レゴシはハルと別れることを決意したが、それを伝えようとした隕石祭の日、ハルはシシ組のライオンたちによって誘拐されてしまう。ルイもそのことを知ったが、彼が保身から”何もしない”ことを選んだと知ったレゴシは激昂し、自分がハルを助けると宣言して学園を飛び出していく。そんな彼の姿を見て、ルイも自分の心に従うことを決意する。
ゴウヒンと共にシシ組に乗り込んだレゴシは、食われる寸前のハルを救出する。そしてレゴシは、自分の生まれ持った大型肉食獣の力は草食獣を守るためにあるのだと確信し、そのためであればいくらでも戦えることに気付くのだった。

アジトから撤退したレゴシとハルを逃がすまいとシシ組の構成員たちは立ち上がるが、突然そこへ現れたルイが拳銃でシシ組のボスを撃ち殺した。ルイのおかげでレゴシ達は無事に逃げおおせたが、ルイはシシ組の構成員たちに捕まってしまったのだった。

食殺事件篇

レゴシはハルとの交際をスタートさせた。そして学園からの依頼で、レゴシはテムを食い殺した肉食獣を探して調査を開始する。
一方、ルイはシシ組の新たなボスとなっていた。当初は利用し利用される関係であった両者だが、双方が次第に相手を頼れる仲間として受け入れていく。

ある時、演劇部で草食獣が大怪我をする事故が発生。その時、部員である熊のリズが動揺していなかったことから、レゴシは彼がテムを殺した食殺犯であることを見抜く。これを認めたリズとレゴシは“草食獣と肉食獣の関係”について激論を繰り広げながら拳を交え、大晦日に決着をつけようと約束を交わす。

そしてやってきた大晦日。ルイはシシ組を抜けてレゴシの決闘を見守ることを選択する。
しかしルイが到着した時にはレゴシはリズに圧倒され、半死半生の有様になっていた。そこへ割って入ったルイは、レゴシに自分の足を食べるように言う。肉を食べれば、肉食獣の本来の力が解放され、レゴシはリズに打ち勝てる。拒むレゴシだったが懇願するルイの気持ちを汲み取り、友情のため、リズの過ちを正すため、彼の片足を食らう。

心から友達になりたいと願いつつ、自身の肉食獣の本能に負けてテムを食い殺したリズにとって、それは信じられない奇跡であり、自分が憧れて諦めた“草食獣と肉食獣の真の友情”の在り方だった。
レゴシの猛攻と2匹の友情の前にリズは敗北と自分の過ちを認め、崩れ落ちる。こうして、学園を震撼させた食殺事件は解決したのだった。

種間関係篇

食殺犯を捕まえたレゴシだったが、ルイの片足を食べたことが原因で学園を去ることとなる。一方、ルイは復学して実家に戻り、ハルもレゴシとの交際を続けつつ大学に通い始めた。
そんなレゴシに、ウマのヤフヤが接近する。ヤフヤは社会のリーダーに与えられる「ビースター」の称号を持つ壮年の草食獣で、若い頃はレゴシの祖父と組んで活躍していた。実際に対面してレゴシの精神性を評価したヤフヤは、彼を次代のビースターにもなりうる存在と判断し、自分の手元で助手として使い始める。

一方、ヒョウとガゼルの混血児であるメロンという凶悪犯がヤフヤを狙っていた。メロンが裏市に潜伏しているという情報をつかんだレゴシは、そこでシシ組と共に勢力争いに参加。
その頃ルイは、養父の急死によって財閥の若きリーダーとなっていた。ルイは就任記者会見でこれまで公然の秘密とされていた裏市について語り出す。
今そこで自分の友達が草食獣と肉食獣の未来のために戦っていることと、今こそ社会はこれまで目を背け続けていた”食べられる者と食べる者”という関係について向き合うべきだというルイの訴えは、すべての獣も巻き込んで大きな暴動を巻き起こす。

獣たちが混乱する中、肉食獣たちの手で裏市は解体されていく。それは、大切な隣獣である草食獣たちを傷つけたくないという真摯な思いによるものだった。
草食獣と肉食獣の間に本物の愛や絆が芽生えるはずがないと信じるメロンにとって、それはありえない光景だった。自らの敗北を悟ったメロンは拳銃自殺を図るも、一命を取り留めた。

その後、レゴシとハルは、決して完全に理解し合うことはできないだろうことをお互い承知の上で、一緒にいるための努力を一生続けることを誓い合い、口約束で婚約を交わした。
こうして、それぞれが少しずつ前に向かって歩みつつ、獣たちの社会は続いていくのだった。

『BEASTARS』の登場人物・キャラクター

主要人物

レゴシ

CV:小林親弘
本作の主人公、ハイイロオオカミのオス。名門チェリートン学園高等部2年で演劇部美術チーム所属。
眼光鋭い三白眼、立派な爪と牙を備えた外見から敬遠されがちだが心優しく繊細な性格。その優しすぎる性格故、オオカミとして生まれ落ちた事を引け目に感じできるだけ目立たず生きたいと望んでいたが、ハルとの恋愛やルイとの友情によって変わっていく。
12巻でテムの食殺事件解決後に学園を退学、アパート「伏獣荘」に引っ越して独り暮らしを始める。
ハイイロオオカミとコモドオオトカゲのクォーターであり、祖父のゴーシャとは爬虫類の血が混ざった弊害で全身が鱗に覆わていくのを苦にした母の自殺以降疎遠になっていたが、学園での成長を通し和解。混血児のメロンにまだ見ぬハルとの子供を重ねて非情に徹しきれないなど、彼女との将来を真剣に考えている。

ハル

CV:千本木彩花
本作のヒロイン、ドワーフウサギのメス。チェリートン学園の高等部3年園芸部所属、レゴシより一歳上の先輩。
明るくサバサバした性格で誰が相手でも物怖じしないが、小さく非力なウサギとして生まれ落ちた事に劣等感と老成した諦観を抱いており、唯一性行為でのみ自分が優位になれるとして複数の異性と関係を結ぶ。そのせいで女子から嫌われて嫌がらせを受けていた。ルイとも性交渉があり、自他ともに厳しく弱音を漏らせない彼の心の拠り所であった。またレゴシが園芸部を訪れた際は、彼もどうせ誰とでも寝る淫乱ウサギの体がめあてだろうと早とちりして誘惑している。
ルイに恋していたが種族と立場の違いから成就は絶望的と悟っていた。演劇部の夜間練習の見張りをしていたレゴシに襲われ間一髪逃げ出したが、薄々彼が犯人ではないかと気付いていた。ひたむきな好意を寄せてくるレゴシを憎からず思っていたが、隕石祭でシシ組から救出されたのをきっかけに惹かれていき恋人同士になる。

ルイ

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