国木田独歩(文豪ストレイドッグス)とは【徹底解説・考察まとめ】

国木田独歩(くにきだ どっぽ)とは『ヤングエース』で連載中の漫画およびアニメ作品『文豪ストレイドッグス』の登場人物で、異能力集団「武装探偵社」の一員にして妥協を許さない堅物な男。いつも持ち歩いている手帳の表紙には"理想”と大きく書かれており、秒刻みのスケジュール管理をしている。このこだわり抜いた「人生の道標」ともいわれるスケジュールが狂うことを大いに嫌うが、奇妙奇天烈な言動をする探偵社員たちに振り回されている。

国木田独歩のプロフィール・人物像

国木田独歩(くにきだ どっぽ)
年齢:22
誕生日:8月30日
身長:189cm
体重:78kg
血液型:A
好きなもの:手帳、魚釣り、鰹のたたき
嫌いなもの:予定外、権威

CV:細谷佳正
演:輝馬

国木田独歩(くにきだ どっぽ)とは『ヤングエース』で連載中の漫画およびアニメ作品『文豪ストレイドッグス』の登場人物で、異能力集団「武装探偵社」の一員にして妥協を許さない堅物な男。現実を往く理想主義者にして、理想を追う現実主義者である。襟足を1本に結っており、銀縁眼鏡と上下同色のスーツを着用している。いつも持ち歩いている手帳の表紙には"理想”と大きく書かれており、秒刻みのスケジュール管理をしている。このこだわり抜いた「人生の道標」ともいわれるスケジュールが狂うことを嫌っているが、奇妙奇天烈な言動をする探偵社員たちに振り回されて、特に太宰には千々に乱される。
新米である敦に仕事を斡旋したり、探偵社の宿敵であるポートマフィアについて教え込んだりするなど熱心に指導する姿が見られる。
事態の状況をいち早く分析する司令塔のような役割を担っているが、狼狽したときは頭の上に眼鏡をかけたまま眼鏡の在りかを敦に尋ねたり、読んでいる手帳が上下逆さまであったり、説明の大半が指示語になっていたりする。パック卵のタイムセールに参加したり、友人の溜め込んだ食器を洗ったりするような家庭的な一面も。

国木田独歩の能力

異能力「独歩吟客(ドッポギンカク)」

手帳の頁を消費し、書いたものを具現化できる。ただし手帳より大きなものは不可能。

スタングレネード、ワイヤーガン、畳み刀、懐中電灯など、国木田が「手帳より小さいもの」と認識し、且つ「目で見て形状を記憶し、構造を理解したもの」であれば何でも生み出すことができる。具現化したいものを手帳に書き込み、そのページを切り離すことで発動する。あらかじめページを切り離して後から能力を発動させることもできる。汎用に優れた異能力と評されることも多いが、本人曰く、必要なものがあるなら初めから携行しておけばいいだろうと言われればその通りであるため、便利の範疇を超えるものではない。
この手帳はさる職人が年間100冊しか作らない限定生産品であり、値段も格別である。
字を書く時間が必要なことと、手帳を奪われたら異能力が使えなくなることが弱点。
名前の由来は、史実における国木田独歩のペンネームの1つ「独歩吟客」と推定される。

国木田独歩の来歴・活躍

学校教諭から探偵社員へ

国木田が探偵社員になる前は数学教師として教鞭を執っていた。その後、どのような経緯があって探偵社員になったのかは不明。
また、探偵社員になってから当時20歳のときには副職として週に2回、新鶴谷学園という学問所で代数の講師をしている。

太宰治の入社試験/相棒・太宰と組んだ最初の事件

20歳の国木田は同い年の新人社員・太宰治(だざい おさむ)と組んで仕事をすることになった。新入りの太宰には過去の経歴がまったくなく、誰かが故意に消したのではと、武装探偵社・社長の福沢諭吉は疑う。国木田は、もし太宰がスパイや間諜であると確信したならばクビにするように福沢に指示され、万一のことに備え拳銃を預かっていた。
匿名の人物から幽霊屋敷の調査を依頼された2人は真夜中の廃病院に潜入する。女性の悲鳴が聞こえた先に走ると、何者かに誘拐された大学教師・佐々城信子(ささき のぶこ)が水槽の中で監禁されているのを発見した。佐々城を救出した後、同時期に起こっている「横浜来訪者連続失踪事件」の被害者を偶然にも発見する。単独で横浜を訪れた人々が突然いなくなり、そのまま失踪するという事件だ。被害者数は11名で、捜査本部が出て既に1ヶ月が経過している。太宰は「まったく関係のないもう1つの事件の被害者が見つかるなんて出来すぎている」と話していた。被害者は鉄檻の中で監禁されており、鉄檻の錠前を解除するには、それに繋がっている電子端末式のロックを操作する必要があると太宰は考えた。太宰が端末に触れようとすると、端末のセンサーが作動し、檻の中に毒ガスが噴射される。国木田が檻に手を掛けるが、佐々城と太宰に後ろへ引っ張られ、檻の部屋から脱出することとなった。檻の中にいた被害者は全員死んでしまった。
佐々城の回復を待つ中、意気消沈する暇もなく《蒼の使徒》と名乗る者から「横浜のどこかに爆弾を仕掛けた」とメールが届く。この《蒼の使徒》こそ、幽霊屋敷の調査を依頼してきた匿名の人物であった。国木田は、探偵社の協力者であるハッカー・田口六蔵(たぐち ろくぞう)に、電子メールの送り主を捜し当てるよう依頼する。
《蒼の使徒》に国木田は心当たりがあった。過去に探偵社は《蒼色旗(そうしょくき)の反乱者(テロリスト)》事件と呼ばれる、政府施設を狙った襲撃・破壊事件を捜査していたのだが、そのとき首謀者の《蒼王(あおおう)》は現場に突入した5名の刑事を巻き込んで自爆し死亡していた。巻き込まれた刑事のうち1人が六蔵の父親であり、蒼王が立てこもった現場を突き止めたのが国木田であった。
駐日合衆国大使館へ赴いた国木田と太宰は身分を偽装して、爆弾製造技術者の情報を入手する。探偵社員の推理のもと、設置された爆弾の居場所を突き止め現場に急行するが、爆弾を設置した犯人であるザキエル・アラムタの遺体が転がっており、人だかりができてしまっていた。アラムタの遺体には、「00」という数字が至るところに書かれていた。
一旦、探偵社へ戻ることになり国木田は車を走らせる。その間、福沢から「横浜来訪者失踪事件の犯人が死亡した」「死因は不明だが体のあちこちに"00"という数字が浮き出ていたらしい」と報告を受けた。
六蔵から「《蒼の使徒》のメール送信元は、太宰のコンピュータからだった」と告げられた国木田は、人気のない山間の倉庫へ行き、拳銃を太宰の方へ向けた。「君の勝ちだ国木田君。撃ち給え、君になら撃たれてもいい」としか言わない太宰の眉間に、国木田は躊躇いなく弾丸を命中させた。停めた車へと歩いて戻るところで、社員の一人から「《蒼の使徒》からメールが届いた」と連絡が入った。メールには「航行中である飛行機のエンジンと操縦桿の機能を停止させる」と書かれていた。脅迫を阻止するべく、国木田は仰向けに倒れている太宰に話しかけた。
「いつまで死んでいる気だ阿呆。起きて働け」
太宰は生きていたのだ。国木田が撃った拳銃は“独歩吟客”で具現化したものであり、異能無効化の能力を持つ太宰には無害であった。敵は経歴不詳の新人である太宰を真犯人に仕立て上げるつもりだったが、太宰は敵の魂胆をすべて読み切り、その計画にあえて乗っていた。太宰は、爆弾が置かれた現場で野次馬をかき分けた際、敵と接触し盗聴器を仕込まれたが、同時に敵に座標発信器を取り付けたらしい。
航空機内と連絡がつき、機長が言うには「全ての電子機器が停止しており、旋回も加減速も不可能。計算上ではあと1時間で陸地に激突してしまう」とのことだった。このままでは乗員の約400名が死亡し、地上にも甚大な被害をもたらすことになる。2人は座標発信器を追って敵の本拠地を直接叩くべく、車で山間部を疾走し、旧国防軍の軍事施設跡地へ到着した。
先に突入した太宰は2階の通信室へと向かい、飛行機の機能を復活させようと試みるが、通信室の番人である褐色肌の大男に鉢合わせる。大男の剛腕が太宰を襲い、細身で非力な太宰は深手を負ってしまう。
国木田も1階の格納庫まで走るが、そこで謎の数字を操る異能を持つ金髪の青年が待ち構えていた。巨大な魔方陣のようなものが足元の地面に描かれており、それを踏んだ直後、国木田の手の甲には数字「39」が刻まれた。目の前に居る青年こそ一連の事件を起こしている《蒼の使徒》であると確信した。青年の異能は、相手の体に数字を浮かび上がらせることで相手の寿命を操ることができ、思うがままに遠隔攻撃でダメージを負わせることができる。数字が「00」になったときに異能にかかった者は死んでしまう能力だと言う。国木田が攻撃を仕掛けようと近づいても、青年の異能で吹っ飛ばされてしまい、傷一つ付けられない。
不利な状態で戦い続け、国木田の数字は「04」になった。2階の通信室に思わず目をやると、自分と同じく傷だらけの太宰がいた。太宰もまた、国木田の方に目を向ける。視線が交錯し、そして叫んだ。
「国木田君!」
「太宰ィ!」
国木田は備えてあったワイヤーガンを2階に向けて発射し、太宰は窓から空中へと身を投げた。2階の室内へ辿り着いた国木田は、迫ってくる大男を簡単に投げ飛ばす。1階へ降り立った太宰は異能無効化の能力を使って、青年の異能力を封じ込めた。敵を倒した2人は通信室で合流し、航空機の操縦を回復させることができたのだった。
事件が収束した後、国木田は太宰に廃病院へ呼び出され、真の《蒼の使徒》はあの青年ではなく別にいると話される。青年たちは《蒼王》の一件もあって探偵社を非常に警戒していたはずで、自分たちを邪魔する組織はたくさんある中、探偵社だけを執拗に狙って事件を起こすのにはコストパフォーマンスが悪すぎるのではないか、と考えたらしい。つまり、今までの犯人たちは、何者かによって「探偵社こそ最大最悪の敵である」と過大評価するような情報を吹き込まれたと太宰は推測した。真犯人に廃病院へ来るように、太宰は電子メールを送っていた。その電子メールを覗き見たらしく、六蔵も居合わせていた。
突然銃声が聞こえ、六蔵の胸から血がしぶく。部屋の入り口を見やると、そこには拳銃を構える佐々城信子の姿があった。銃を捨てるように言われ、太宰は拳銃を足元に落とす。彼女が正真正銘の《蒼の使徒》、そして死亡した《蒼王》の妻であった。
幽霊屋敷・来訪者失踪・爆弾設置、そして飛行機ハイジャック。《蒼の使徒》は自ら手を汚さず、必ず実行犯を用意する犯罪者だ。誘拐も、爆弾も、実行犯にすべて委託し、自分まで嫌疑がかからないようにしていた。佐々城がここまで巧妙な計画を立てたのは、夫を自爆へ追いやった探偵社の醜聞を流すため、そして夫が夢見た「理想の世界」を創りあげるためだった。
《蒼王》は無くならない犯罪に心を痛め、虐げられる人のいない「理想の世界」を模索して、法理を作る側である国家官僚の道を志した。それでも道は険しく、体制の悪癖、同僚の容喙、上司の不理解など、遠すぎる「理想」に絶望してしまった。その姿に耐えきれず、妻である佐々城は「犯罪による悪の断罪」を提案したのだった。それが「理想」を叶えるための修羅の道であることは承知の上だった。
「六蔵を撃ったことを証言すれば再び探偵社への攻撃をする」と佐々城は太宰と国木田を脅迫する。「これは契約です。貴方がたは私に干渉しない。私は探偵社を攻撃しない。別の組織を使って、同じ事件を起こします。貴方がたにそれを防ぐことは許されません」と言い、銃口を下ろした。
国木田はずっと考えていた。佐々城が銃を向けるべき相手は俺達ではない。俺達でなければ一体誰であるのか。全員が救われ報われる、理想の世界がどこかにあるはずだ、と。
佐々城が国木田に何か言いかけたとき、佐々城の胸を3発の銃弾が貫通した。床に倒れていた六蔵が拳銃を構えていた。太宰は手放した銃を、知らないうちに六蔵に向けて蹴り飛ばし、六蔵が佐々城を殺すように仕向けたのだった。六蔵は「《蒼王》が……お前が父上を殺したんだ」と言って、そのまま動かなくなった。国木田が佐々城に駆け寄り体を抱き上げる。「国木田様、貴方は……どこか、彼の人に……似ています」と佐々城は囁いて、死んでしまった。
国木田は憤怒し、太宰に掴み掛かる。自らが手を汚さない殺人。佐々城がしたことと同じであった。太宰はただ静かに言葉を紡いだ。
「どこかに正しい理想の世界が存在する――そう云う考え方をする人間が、理想通りにならぬ世界を憎み、周囲を傷つける。《蒼王》がそうだった。理想や正しさを貫いて傷つくのは、周囲の弱い人間なんだ」「正しさを求める言葉は刃物だ。佐々城さんを殺したのは私じゃない、《蒼王》の正しさだ」
正しさとは外にではなく自らの内に求めるものなのかも知れない。しかし、今の国木田が自らの内に正しさを求めても、返ってくるのは無力感ばかりだった。国木田は、廃病院の窓から外を眺める。朽ちた庭に、朱い彼岸花が揺れている。目を閉じても、その朱と、微笑んだ佐々城の面影は、消えずに瞼の裏に残っていた。

人喰い虎の調査/中島敦との出会い

飯処で、常備している拳銃を静かに見せる国木田。

国木田は太宰と行動しているうち、中島敦(なかじま あつし)という青年に出会う。何日も物を食べていない敦に茶漬けを奢ったあと、軍警からの依頼である「人喰い虎」の調査をしていると話す。敦は「人喰い虎」に心当たりがあるようで、太宰は敦に虎退治を手伝ってくれないかと提案した。
虎退治ののち太宰は「敦を探偵社員にしたい」と言い出し、半ば強引に入社試験を受けさせることとなる。その内容は探偵社員にテロリストや人質を演じてもらい、立て籠もり事件に偽装して、敦の行動で入社する資格があるかどうかを見極めるというものだった。敦は無事に試験に合格し、探偵社の一員として働くことになる。

国木田は手帳に挟めていた写真を敦に見せる。写真に写る人物はポートマフィアの構成員・芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)だ。芥川は殺戮に特化した凶悪な異能力を持っており、国木田でも鉢合わせたくない人物であった。
国木田に初任務を託された敦だったが、最中に芥川の襲撃を受ける。芥川には敦を生け捕りにしてポートマフィアへ連れて行くという目的があった。芥川の異能力“羅生門”は身に着けた衣服を変幻自在に操ることのできる能力であり、鋭利な刃物として扱うことも、鎧のように硬化することもできる。敦は右脚を欠損するほどの重傷を負うが、虎に変化して身体の傷を再生できる異能“月下獣”を発動し、芥川と互角の戦いを繰り広げた。戦闘は太宰が割り込んだことで決着しなかったのだが、ここで太宰は、敦がポートマフィアに狙われているのは、闇市で敦に懸賞金がかけられているためだと知る。太宰はポートマフィアに勘づかれないように、敦に懸賞金をかけたのは何者であるかを調査するのだった。

敦が探偵社員の買い物へ付き合うことになるが、帰りの電車でポートマフィアの刺客・泉鏡花(いずみ きょうか)と対戦する。鏡花は「35人殺し」の二つ名を持つ異能力者で、攻撃性の強い異能力を目当てにポートマフィアに利用され、名の知れる暗殺者に仕立てられていた。鏡花はポートマフィアからの呪縛から逃れようと、身に巻き付けた爆弾で自害を図ったが間一髪で敦に助けられ探偵社で保護された。身寄りのない鏡花をどうにかしてかくまい、助けたいと思っていた敦だったが、国木田は鏡花を軍警に引き渡すよう指示し、先に探偵社へ戻っていく。
敦は鏡花をデートに誘い、鏡花の行きたいところへ連れて行った。敦の行動の真意に気づいていた鏡花は自らの意思で交番前まで辿り着くが、鏡花には発信器が埋め込まれており、敦は芥川の襲撃を受けて負傷。鏡花ともども連れ去られてしまう。

「現場を目撃した」という市民からの通報を受けた探偵社だったが、省庁幕僚の護衛依頼を受けている最中であり、敦を捜索するための人員が不足している状況であった。ポートマフィアは独自の密輸ルートを幾重に所有しており、人目に触れることなく移動することは容易であると言われていた。社員である谷崎潤一郎(たにざき じゅんいちろう)は「一刻も早く敦を救出するべきだ」と主張するが、同じく社員の江戸川乱歩(えどがわ らんぽ)に「敦がポートマフィアに狙われ攫われたのは個人的な問題であり、我々が彼を捜索し救出する必要はない」と一蹴されてしまう。国木田も乱歩に同意し、「事態が多くの目に触れれば探偵社も側杖を食らう」「社員の保護よりも官僚の護衛依頼を優先しなければならない」と苦渋の判断を下していた。
そんな面々に、谷崎の妹・ナオミは痺れを切らし、探偵社社長である福沢を国木田たちの前へ連れてくる。重く苦しい雰囲気を吹き飛ばすかのように福沢はこう言い放った。
「新人が拐かされた。全員追躡に当たれ! 無事連れ戻すまで、現業務は凍結とする!」
社員たちの推理により、敦は外国への輸送船に乗せられて海の上にいるという情報を得る。国木田は福沢から託された小型高速艇の鍵を握りしめ、敦の救出に向かった。

国木田が輸送船付近に到着したとき、輸送船は鏡花の仕掛けた爆発で沈みつつあった。敦は爆風で芥川や鏡花とはぐれ、国木田と小型高速艇に気づいて甲板に向かった。
小型高速艇に飛び乗れば助かるが、取り残されている鏡花のことをまだ諦め切れていない敦に、国木田は怒号を浴びせた。
「あの娘は諦めろ! 善良な者が何時(いつ)も助かる訳ではない! 俺も何度も失敗してきた! そういう街で、そういう仕事だ!」
「俺達は超人(ヒーロー)ではない! そうなら善いと何度思ったか知れんが違うんだ!」
しかし、国木田の言葉に敦は「僕は……違うと思う!」「探偵社は僕を見捨てなかった!」と言い返した。鏡花を救い、芥川と戦うため、敦は噴煙の中へ駆け戻った。
敦は芥川との長い決着によって力を使い果たす。大きな爆発で船から投げ出された鏡花と、鏡花に体を支えられた敦とを、国木田は小型高速艇で受け止めたのだった。

組合の襲撃/三社鼎立

太宰がポートマフィアへ潜入し、極秘の調査をしたことによって、敦に懸賞金を掛け、ポートマフィアに探偵社を襲撃させるよう仕向けたのは「組合(ギルド)」と呼ばれる北米異能者集団だと分かる。組合は都市伝説のような扱いをされており、政財や軍閥の要職を担う一方、裏では膨大な資金力と異能力で数々の陰謀を企てる秘密結社であると言われていた。直接会うことは難しいとされていた組合が突如横浜の町に降り立ち、探偵社へと乗り込んでくる。
組合の団長であるフランシス・スコット・キー・フィッツジェラルドは「謝罪」と銘打ち、探偵社の買収を持ちかけた。買収の目的は探偵社が所有している「異能開業許可証」である。異能開業許可証とは内務省異能特務課が発行する許可証で、異能力者の集まりが合法的に開業することを可能にするものだった。この提案は福沢に即座に断られるが、フィッツジェラルドは「明日の朝刊にメッセージを載せる。俺は欲しいものは必ず手に入れる」と含みを持たせ、一旦は退いた。
翌朝、ポートマフィアの使用していた7階建ての建物が消滅したというニュースが入ってきた。既に探偵社員の宮沢賢治は襲撃に遭い行方不明となっており、組合は暗に「逆らう探偵社も用済みのポートマフィアもすべて消す」と宣言してきたのだ。
国木田は敦と谷崎に「組んで賢治を探せ、敵と接触しても戦わず逃げろ」と告げ、太宰とともに会議室へ向かう。
街中に繰り出した敦たちだったが、組合団員のルーシー・モード・モンゴメリからの攻撃を受け、異能空間での戦いを余儀なくされる。完全なるアウェイ戦だったが異能空間の弱点を見つけ出し、無事に賢治と、同行したナオミを救出した。

数日後、鏡花の初任務に敦がサポート役として同行した帰り、ポートマフィア幹部・尾崎紅葉からの襲撃を受ける。紅葉は、鏡花の携帯に電話をかけて異能力“夜叉白雪”に敦を斬れと命令した。完全に油断していた敦は背後から“夜叉白雪”の攻撃を受けて重傷を負う。紅葉が現れたのは鏡花をポートマフィアへ連れ帰るためであった。ポートマフィアに戻りたくない鏡花は、封印していた“夜叉白雪”で紅葉の異能力“金色夜叉”を迎撃するが、敦の前で紅葉は「鏡花の両親を惨殺したのは、鏡花の異能力である“夜叉白雪”だ」と告げてしまった。知られたくなかった事実を敦に知られてしまった鏡花は戦意を喪失し、そのまま紅葉に抱き留められ、ポートマフィアの所有車へ歩いて行く。
敦が構成員の向ける銃口に囲まれ、危機に瀕したとき、上空から車が降ってくる。敦を守り、ポートマフィアを抑止するために賢治が投げたものだった。敦のそばに国木田も到着し、「何時まで守られ役でいる心算だ」「刺されても起き上がる根性骨(タフネス)が人虎の売りだろう」と敦に発破をかける。国木田は、鏡花の電話に着信があれば信号を出すよう細工をしていた。
二組織が衝突する寸前、ジョン・スタインベック、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトをはじめとした組合団員の複数名がその場に到着する。ポートマフィア側はすぐに危険を察知し組合たちを銃撃するが、敦たちごと反撃されて一瞬のうちに叩きのめされ、鏡花は行方知れずとなった。

敦、国木田、賢治の3人は、探偵社員の与謝野晶子の治療により傷が完治。国木田はすぐに福沢の指示で、探偵社の事務員を県外に待避させ、調査員を旧晩香堂に集めた。晩香堂は会社設立前に福沢が拠点にしていた講堂で、限られた人間しか知らない場所であった。探偵社員の皆殺しを目論むマフィアと、探偵社の買収・地位剥奪を狙う組合、この両組織と何としても戦わなくてはならなくなったと福沢は告げた。

武装探偵社、ポートマフィア、組合、三社による全面戦争が始まる。

VSジョン・スタインベック、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト

ポートマフィア幹部である中原中也は、事務員の春野綺羅子・谷崎の妹ナオミの居場所を突き止め、組合の団員に密告していた。オフェンスチーム「甲」となった国木田と谷崎は、春野とナオミを救出するため、早くも組合と正面衝突することとなる。
ナオミたちが潜伏先から離れるも、ジョンの異能“怒りの葡萄”によって車ごと拘束されてしまうが、国木田たちは2人の救出に間一髪で間に合った。国木田がラヴクラフトの背後から銃撃して、ジョンの操っていた木の根を破壊する。谷崎も手持ちのナイフで、車を拘束していた根を切り落とし、ナオミたちに「麓の鉄道を旅客列車が通る。10秒だけ止まるように話を通してあるからそれに乗って逃げるように」と指示した。
ジョンは木の根で銃弾を防御し、さらに国木田の左腕を拘束、拳銃をはね飛ばした。「攻撃手段がなくなった」と油断したジョンは、国木田の策略に引っかかることとなる。国木田は懐に忍ばせておいた手帳のページを取り出し、異能“独歩吟客”を発動する。ページには「自動拳銃」と前もって書かれており、具現化された拳銃を再び手に取った。腕に絡み付いていた根をちぎり、そのまま体術でジョンの動きを封じるが、先ほど倒したはずのラヴクラフトが国木田の背後に迫っていた。
ラヴクラフトは生身でも銃弾が効かない異能者で、国木田の銃撃によるダメージを少しも負っていなかった。ラヴクラフトの腕からタコのような巨大な触手が飛び出し、国木田と谷崎は触手に捕まって、岩肌に叩き付けられてしまう。
万事休すかと思った直後、遠くから一台の貨物車が走ってくるのが見えた。貨物車は車線を外れて、スピードも落とさずこちらに向かって走ってくる。
このとき、谷崎は自身の異能力“細雪”を発動させていた。“細雪”は一定の空間に幻影を作り出し、周囲に幻覚を見せる異能だ。運転手にはジョンたちが見えておらず、直進の道路だと思い込んでいた。貨物車はジョンとラヴクラフトにそのまま突っ込み、国木田たちは大きな衝撃により触手からの拘束を逃れた。ジョンとラヴクラフトは警察に包囲され、国木田たちは森林に身を隠してその様を見届けた。
国木田たちは探偵社屋に戻り、身体の回復に努めたのだが、ジョンとラヴクラフトは警察の勾留を逃れていた。組合の構成員は各々が表の顔を持ち、政府や大企業の要職にある者もいるため、北米だけでなく日本の政府にさえ影響を大きく与えている。組合は外交筋から圧力をかけて、構成員に外交官と同等の権限を付与させ、法執行機関であっても手に負えないように仕組んでいた。
自由の身になったジョンとラヴクラフトは、ポートマフィアの構成員・夢野久作を拘束し、フィッツジェラルドの「緊急プラン」が発令されるときを静かに待っていたのだ。

Qの異能と「緊急プラン」

呪いの手形が国木田の首筋に浮かび上がっている。

ポートマフィア所属・夢野久作(Q)の異能“ドグラ・マグラ”は自分を傷つけた相手を呪う異能力で、呪われた者には手形の痣が浮き上がり、彼が持つ人形を破壊することで呪いが発動する。呪いが発動したものは狂乱して、幻覚が見えたり幻聴が聞こえたり、周囲に襲いかかったりするようになる。
組合(ギルド)は三社戦争を一気に終わらせるため「緊急プラン」の発動を通達する。「緊急プラン」とはQの“ドグラ・マグラ”とジョンの“怒りの葡萄”の連携異能力を使い、横浜の街を焼却するという作戦である。ジョンの“怒りの葡萄”でヨコハマ中の樹木とQの痛覚とを共有させて、Qの“ドグラ・マグラ”を大勢の人に発動させることで、街を混乱に陥れようとしていた。
横浜に住む人々はいつものように木の根を踏み、幹を叩き、枝を切り落としている。国木田も知らずの内にQの痛覚に刺激を与えた一人であり、首に痣が浮き上がっているのが確認できたため、太宰にそれを報告した。Qの異能力の内状を知っていた太宰は国木田の体を椅子に縛り付けて拘束する。
フィッツジェラルドは手元にあったQの人形の頭部を破り、呪いを発動させた。国木田も街の人々と同様に血の涙を流し、過去に出会ったある女性の幻覚が見えるようになる。

マフィアは街の混乱で多くの構成員が命を落としたが、太宰曰く探偵社の被害は「国木田君が恥ずかしい台詞を連呼しただけで済んだ」らしい(ある女性の幻覚に向かって「俺は理想の世界の為に」「貴女の命を何よりも」と騒いでいる描写があり、太宰はその様子を録画したと話している)。

鏡花の正式入社

フィッツジェラルドに勝利した敦と芥川は、空中戦闘要塞“白鯨(モビー・ディック)”の制御端末を操作して降下を免れたが、何者かが制御端末のコントロールを奪い、“白鯨”は再び横浜へ墜落しようとしていた。35人殺しの容疑で逮捕されていた鏡花は、乗っていた無人機の無線通信が“白鯨”の電波を拾っていることに気づき、敦と交信することに成功する。
鏡花は、自分が乗っている無人機を“白鯨”に衝突させれば横浜に届く前に墜落させられると提案するが、虜囚である鏡花には足枷がはめられており、脱出装置のある部屋までは行けないことを敦に明かした。敦はやめるように必死に説得するが、「命を犠牲にして街のみんなを守れば本当の探偵社員になれる」と鏡花は堅い意志を見せる。敦は芥川に襟ぐりを掴まれて無理やり“白鯨”から脱出し、無人機は猛スピードで“白鯨”にぶつかった。埠頭のすぐそばに“白鯨”は墜落して海に浮かんでいた。

海からあがった敦たちの元に、太宰が福沢を連れてやって来る。福沢の異能力“人上人不造(ヒトノウエニヒトヲツクラズ)”は自分の部下にのみ発動する異能で、異能の出力を調整し、自力で制御を可能にするものだった。鏡花は無人機が衝突する直前に入社試験に合格し、“夜叉白雪”をコントロールできるようになっていたため、“夜叉白雪”の刀で鎖を切って脱出した。敦と鏡花は再会を果たし、国木田たちは埠頭の対岸で敦たちを呼んでいた。

三社の鼎立は幕を閉じ、後日、鏡花の正式入社を祝う会が探偵社屋で開かれた。国木田は予算や出費の計算をする傍らで敦と鏡花に声を掛ける。はじめこそは、報告書を明日まで書くようにと指示したり、敦が単身で敵の懐に乗り込むことは通常あり得ないとまくし立てたりしていたが、与謝野の助け船によって「二人共、よくやったな!」と賞賛したのだった。

終戦後

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