国木田独歩(文豪ストレイドッグス)の徹底解説・考察まとめ

国木田独歩(くにきだ どっぽ)とは『ヤングエース』で連載中の漫画およびアニメ作品『文豪ストレイドッグス』の登場人物で、異能力集団「武装探偵社」の一員にして妥協を許さない堅物な男。いつも持ち歩いている手帳の表紙には"理想”と大きく書かれており、秒刻みのスケジュール管理をしている。このこだわり抜いた「人生の道標」ともいわれるスケジュールが狂うことを大いに嫌うが、奇妙奇天烈な言動をする探偵社員たちに振り回されている。

カーライルが探偵社屋に立ち寄ってくれたことを聞き、国木田の頬は珍しく緩む。

欧州で手帳を造っている伝説的な職人。いつも国木田の持ち歩いている手帳は彼の限定生産品であり、国木田は尊敬の念を込めて「巨匠(マスター)」と呼ぶ。

国木田独歩の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「異能が当人を倖せにするとは限らん。お前なら 知っているだろう」

国木田の言葉に敦は心当たりがあった。

第3巻9話。鏡花の起こした事件を巡り探偵社やマフィアが様々に行動を起こす中、「悪いのは彼女の異能を利用してる奴なのに」と言う敦に言い返した言葉。鏡花は殺戮の異能をポートマフィアに利用され、界隈では名の通った暗殺者として仕立てられていた。ここ数日で急激に戦果をあげた鏡花の身元が割れるのは時間の問題だというところまで事は進んでおり、新聞の記事にも「少女の犯行か」という見出しが付いているほどだった。
当時の敦と鏡花は「自分の意思で異能力をコントロールできない」という点で共通している。国木田の言う通り「虎に変化する能力を持っているせいで孤児院を追い出された敦」「殺戮の異能力のせいでポートマフィアに利用されている鏡花」というように、異能力は決して自分に利益をもたらすものではないと言い聞かせる場面だった。同時に国木田から見て“鏡花に入れ込み過ぎている”敦に釘を刺すという意図もあり、彼の合理性を重んじる性格と後輩を慮る優しさが共に感じられるセリフである。

「極刑の手配犯でマフィアの裏切り者。その不幸を凡て肩代わりする覚悟がお前にあるか? お前の舟(ボート)は一人乗りだ。救えない者を救って乗せれば――共に沈むぞ」

厳しい言葉を言い残し、国木田は敦と別れる。しかし敦はこの言葉にとっかかりを感じていた。

第3巻9話。鏡花を匿いたいと伝える敦に言い放った言葉。「35人殺し」の異名を持ち、ポートマフィアの裏切り者でもある鏡花を、敦は1人で守り切れない。国木田が非情ということではなく、探偵社員として未熟な敦には荷が重すぎるということ、覚悟のできていないまま私情を挟んで行動に移してはいけないということを伝えるための言葉であった。
敦もまた、芥川たちポートマフィアに襲撃されていることに対して恐怖を拭えないでいて、厳しくも正しい国木田の言葉に黙り込んでしまう。国木田の判断は現実的な観点から行われており、時に冷徹に過ぎるようにも思われるが、それを敦に常々伝えているのは彼を案じているからである。
国木田というキャラクターの人柄と、彼が本質的には優しく高潔な人物であることがうかがえるセリフである。

「あの娘は諦めろ! 善良な者が何時(いつ)も助かる訳ではない! 俺も何度も失敗してきた! そういう街で そういう仕事だ! 俺達は超人(ヒーロー)ではない! そうなら善いと何度思ったか知れんが違うんだ!」

「彼女は……助からない?」と言う敦に、心苦しくも現実を言い渡す国木田。しかし敦は鏡花を救うことを諦めていなかった。

第3巻11話。鏡花のことを諦め切れていなく、国木田の元へ飛び降りるか迷っている敦に強く訴えた言葉。
探偵社は軍警から協力の依頼を受けて事件を解決することもあり、「探偵社に街を守ってもらっているから自分たちも安心して仕事ができる」ということを市警から言われることがしばしばあった。特に国木田が太宰と組んで仕事をするようになってからは、高難度の荒事解決数は探偵社随一を誇っている。
しかし、助けられる者もいれば、助けられない者も多かった。
上述した国木田の過去の事件のように、「理想の救い方」から大きく外れて終わった事件が何度もあっただろう。

国木田の言うことは至極最もであり、お世辞にも、敦は強く頼りになるとは言えない。芥川から奇襲を受けて疲弊している敦にもそれは分かっている。
しかし、国木田の言葉に敦は「僕は……違うと思う!」「探偵社は僕を見捨てなかった!」と言い返した。
鏡花を救い、芥川と戦うため、敦は噴煙の中へ駆け戻る。涙をにじませながら駆ける敦を見て、国木田は探偵社員として1歩成長した敦の覚悟を感じ取り、「走れ敦!!」と戻る背中に向けて鼓舞するのだった。

「何時(いつ)まで守られ役でいる心算(つもり)だ。刺されても起き上がる根性骨(タフネス)が人虎の売りだろう」

襟首を掴まれながら、発破を掛けられた敦。

第5巻第18話。ポートマフィアの襲撃を受けて疲弊している敦にかけた言葉。
敦は鏡花の初任務にサポート役として同行した帰り、ポートマフィア幹部の紅葉からの襲撃を受ける。重傷を負った敦は死を覚悟したが、駆けつけた国木田と賢治に助けられた。
国木田は座り込む敦の襟首を掴んで立ち上がらせる。
船上で強敵である芥川を倒し、鏡花を守り抜いた一件があり、国木田をはじめとする探偵社員は敦の覚悟や最後まで諦めない土壇場の行動力を評価していた。
「探偵社員としての責任を持ってほしい、部下を守れる上司であってほしい」という重圧ではなく「敦の行動力を信頼しているのだからこんなことで挫けるな」という、強い口調ながらも国木田らしく敦を奮起させるためのセリフである。

「血反吐を吐いて抗っても人は死ぬ。残酷で無慈悲で理想の欠片もない それがこの世界だ。……だが目指す先が 苦痛と渇きの砂漠でしかなくとも 俺は理想を求める」

「自分の眼前で誰も死なせない」そんな理想を掲げながらも、現実は理想とは程遠いことを、国木田は誰よりも知っている。

第10巻40話。爆弾魔・桂正作との戦闘シーン。
国木田は正作を体術で拘束し返すが、正作のパソコンを操作すると「線路上に設置した爆弾の停止周波数」と「文につけられた爆弾の起動周波数」が同一であることが判明する。国木田が必ず、一方を救い一方を殺すように正作が仕向けたものだった。
パソコンのエンターキーを押した国木田は文を守るように抱き留める。爆弾は爆発するが、前もって国木田の合図を聞いていた与謝野が駆け付け異能力を発動したことで、国木田と文は無傷で生還した。

国木田は、自分が描く「理想」と現実の世界が程遠いことは承知している。しかし、現実の非情さを痛いほど理解していながらも、なお理想を求め続ける人物でもある。
彼の言う「理想」とは、国木田がたった一人で孤独に追うものではなく探偵社員とともに目指すものであると、読み手が再認識する場面であった。

「力に使われるな。此迄もお前は虎の力に溺れた時に負けている。一言で云うなら “虎は強いがお前は弱い”」

体術の稽古で、国木田は改めて敦の弱みを伝える。

第14巻57話。国木田と敦が体術の特訓をしている何気ない場面であったが、敦の頭にはずっと響いている言葉であり、今までの戦闘でも頭脳ではなく虎の異能で力押ししているという自覚があった。
国木田が敦のことを日頃から見守り、その強みや弱みをしっかりと分析していることがうかがえるシーンは度々あった。特にこの場面は師匠としての国木田が敦の隙とも言える箇所を改めて伝えており、国木田と敦が良好な先輩後輩の関係にあることが分かる。
このセリフの前に「直線で攻撃するな、反撃を貰いに行くようなものだ」とも言われており、後に敦が建物へ侵入するときに国木田の言葉を思い出して、正面玄関からではなく地下避難通路から潜入した。しかし、待ち構えていたゴーゴリに翻弄され、「接近戦なら(力押しで)勝てる」と考え正面から走ってしまい、反撃されてしまう。

「我が名は国木田独歩! 我が理想は墜ちぬ! この“生命(いのち)”を燃料として 永遠に飛び続ける!」

空中に身を投げ出しながら発動した異能力"独歩吟客"。裸眼でも国木田の目はまっすぐと鐵腸に向けられている。

第15巻62話。対《猟犬》条野・鐵腸戦。《猟犬》の力に圧倒され、探偵社員たちはポートマフィアの手を借りながらも壊滅の一歩手前まで追い詰められている。
鐵長は伸縮する刀身を使って機体まで登り、ヘリの回転翼を切断しようとしていた。
国木田は自分ごと鐵腸を蹴り落とし、仕込んでいた手帳のページを取り出した。国木田は異能力で手榴弾を具現化させ、空中で鐵腸を巻き込んだ形で自爆し、生死不明となる。

条野は国木田の「理想」を「高く飛ぶ大きな気球」と表現し、「気球はいつか必ず燃料が尽きて地に墜ちる。理想が墜落する日に怯えて生きていた」と言う。このように条野は人の弱みや隙間を狙って尋問する戦略を得意としており、今回も国木田の思想に入り込むことで戦意を喪失させようとしていたのだが、国木田の心は完全には折れなかった。仲間たちのために、そして理想を貫くために命さえ懸けた国木田の行動は、探偵社の反撃の狼煙となって反転攻勢に続いていく。

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