スカイ・クロラ The Sky Crawlers(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』とは、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』で有名な押井守監督による作品である。声優陣に加瀬亮や菊地凛子、竹中直人を迎える。完全な平和が成立している時代。戦争はショーとして存在している。ショーは空でのみ繰り広げられ、殺し合いを成立させているのは年を取らない子供たち「キルドレ」である。彼らは毎日同じ日々を過ごす。戦争を仕事としてこなしながら、死なない限り、毎日同じ日々がやってくる。何かを変えたくても変えられない人々の日常。
土岐野尚史(ときのなおふみ)
函南たちがいる基地のムードメーカー的な存在で函南の相棒ともいえる。草薙や函南と違い常に口角をあげて明るい態度でいる。頻繁に娼婦の館へ行き、朝帰りを繰り返しいい加減な生活を送っている。しかし、明るさといい加減さの裏側も時折みせ、どこか達観している発言や熱く仲間思いの行動もする。函南との会話で「どこへ行っても、同じような連中しかいねーよな、本当。こんなやつ初めてみたぜっていうやつには、最近めったにお目にかかれないもんな」と繰り返される日常に対しても不満がある。退屈している表情も見せるが、草薙と一緒に出撃した時、彼女が帰ってこないことを誰よりも心配していた。函南のことを親友のように慕っており、エースパイロットとしても認めている。
三ツ矢碧(みつやみどり)
物語の中盤から登場するキルドレの女。自分がキルドレであることに悩んでおり、キルドレでなくなることを望んでいる。永遠に生き続けることと変わらない日常に対する不安がある。自分がどこから来て、いつから今の生活を始めているのかが分からないことに絶望している。周囲のキルドレが精神的に落ち着いて見えており、彼らがどのように精神的バランスを取っているのか知りたいと思っている。草薙水素は子供なのに草薙瑞季を産んだ。いつか草薙瑞季は母親を年齢的に追い越す。そんなキルドレの矛盾を現した草薙水素の行動と存在は、三ツ矢にとっては大きな負担になっている。
湯田川亜伊豆(ゆだがわあいず)
函南や土岐野と同じパイロットでありキルドレである。ティーチャーに果敢に挑んで撃墜される。特徴は白い頭髪と丁寧な新聞の折り方。新聞を丁寧に折りたたむ描写は、小説版ではない設定である。この癖が、湯田川がいなくなった後のアイハラにつながっている。アイハラも湯田川と同じ白い頭髪であり、新聞を丁寧に折りたたむ。過去の記憶がアヤフヤなことや死んでも同じ人間が出現するなどの三ツ矢が感じているような違和感と、繰り返されるだけの日常を、白髪や癖で視覚的に視聴者にわかりやすく表現する役割を担っている。登場するキルドレの全員が自分たちの記憶に整合性がない。おそらく幼いころの記憶がある人間は一人もいないだろう。彼らはどこかで製造されて突然任地にやってくる。クローニングまたは人口培養なのかはっきりとしたことは劇中でも語られていないが、キルドレは生まれるのではなく製造されている。製造に使われている設計図は遺伝子だと考えられる。遺伝子が設計図であるならば、戦死してしまったキルドレの同じ設計図を流用すれば、同じようなキルドレが製造される。函南も、アイハラの新聞を折りたたむ癖を見たことで、自分を含めたキルドレが、生と死を繰り返していること、または、再生産物であることを確信したかのような表情をする。
篠田虚雪(しのだうろゆき)
キルドレでパイロットの一人。函南が自己紹介をしても、手を上げるだけで、声を発して応えないなど、できるだけ喋らないようにしている。草薙が司令官をしている基地では最古参の飛行士。数少ない発言の一つに、函南に見学者たちについて「きっと、ぶっ殺してやりたくなる」と告げている。彼ら自身の代わりにキルドレを戦わせているという認識がなく、無責任と言える立場の人々に対しての自分の意見を率直に述べている。このように、篠田自身が本当に伝えたい気持ちと、それを共有してくれそうな立場の相手と内容だけを選んで喋っている。都市での大規模作戦時に戦死した。湯田川がアイハラになったような後任の人物は登場していない。
鯉目新技(こいめあらぎ) / 鯉目彩雅(こいめさいが)
函南たちが普段とは違う、大編隊での作戦時に立ち寄った基地にいた双子のパイロット。双子のパイロットについて函南が珍しい方だと土岐野に説くが土岐野は見たことないわけじゃないと返す。双子のパイロットを頻繁に見るほどでもないが、パイロットをしている人間であれば、見たことないわけではない。遠征や異動のたびに様々な人に出会っているが、いつも同じような人しかいないことに対する皮肉でもある。双子はコンビネーションに優れるため兄弟で出撃することが多い。どちらか一方がいなくなることはなく、いなくなる時は必ず両方だと小説版では土岐野が説明している。
大人
笹倉永久(ささくらとわ)
草薙水素の過去を知る数少ない大人。キルドレではなく、大人の女性であることがポイントで、ティーチャーがキルドレたちの父親的存在なら、母親的存在なのが笹倉である。本編で登場する見学者たちのような他人としての大人だけでなく、子供(キルドレ)たちを見守る親のようなキャラクターも必要だと言える。実は森博嗣の原作小説では笹倉は男である。小説版のスカイ・クロラシリーズでは、草薙水素の相棒的ポジションを担っている。キルドレの中でも、接している時間が長い草薙のことを誰よりも気にしている。他のキルドレに対しても母親目線を示しており、娼婦と遊ぶ土岐野に対しては厳しい目を向けている。
ティーチャー(てぃーちゃー)
キルドレたちが絶対に倒せない相手。乗っている戦闘機には黒豹のマークがついている。この世界では戦争はエンターテイメントであり、それを実施しているのは永遠に生き続けるキルドレたちである。しかし、ティーチャーは大人である。ティーチャーは特別なのかキルドレではないにもかかわらず、戦闘機乗りをしている。草薙水素との因縁は非常に深いようである。そのことは草薙水素の本編中での言動から確認できる。
フーコ(ふーこ)
函南たちがいる基地の近くで営業している娼婦のひとり。函南がくる以前はジンロウが客だった。ジンロウがどうなったのかを気にしていたが、函南が来たことで死んだと認識している。草薙との間にも何かがあったようであり、草薙が娼婦たちの館に来た時のことを函南に語っている。胸にフクロウの入れ墨がある。函南に空を飛ぶことが好きかと質問し、彼が好きだと回答したことに、よかったと告げている。何かを知っているような雰囲気だが本編でそれらを語ることはない。
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目次 - Contents
- 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の概要
- 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』のあらすじ・ストーリー
- 前任者の機体
- キルドレと一般人
- 草薙水素と函南優一
- ティーチャー
- 戦争と平和
- 繰り返される世界
- 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の登場人物・キャラクター
- キルドレ
- 函南優一(かんなみゆういち)
- 草薙水素(くさなぎすいと)
- 土岐野尚史(ときのなおふみ)
- 三ツ矢碧(みつやみどり)
- 湯田川亜伊豆(ゆだがわあいず)
- 篠田虚雪(しのだうろゆき)
- 鯉目新技(こいめあらぎ) / 鯉目彩雅(こいめさいが)
- 大人
- 笹倉永久(ささくらとわ)
- ティーチャー(てぃーちゃー)
- フーコ(ふーこ)
- クスミ(くすみ)
- 本田(ほんだ)
- 山極麦朗(やまぎわむぎろう)
- フーコとクスミが働いている館の娼婦たち
- 整備員(せいびいん)
- バスガイド(ばすがいど)
- マスター(ますたー)
- ユリ(ゆり)
- キルドレの子供(きるどれのこども)
- 草薙瑞季(くさなぎみずき)
- 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の用語
- キルドレ
- 戦争法人 / 戦争請負会社 / 民間軍事会社
- プッシャ式とトラクタ式
- 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』に登場する兵器
- ロストック社の機体
- 散香(さんか)
- 染赤(そめあか)
- 泉流(せんりゅう)
- 空中給油機(くうちゅうきゅうゆき)
- 翠芽(すいが)
- 鈴城(すずしろ)
- 紫目(むらさめ)
- 填鷲(てんが)
- 清影(せいえい)
- 逸波(いつは)
- 消宮(しょうぐう)
- ウルフラム
- トーラント
- ラウテルン社の機体
- スカイリイ J2
- レインボウ
- フォーチュン
- フィジョン
- インシデント
- バイス
- チューリップ
- クロアサン
- 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「気を付けて」「何に?」
- 「でも、明日死ぬかもしれない人間が、大人になる必要なんてあるんですか?」
- 「君は生きろ。何かを変えられるまで」
- 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の見どころ
- 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- ”こだわり”と思われる、劇中に登場するポルシェ912(草薙水素の愛車)と主役機体である散花(さんか)との共通点
- 草薙水素(くさなぎすいと)と草薙素子(くさなぎもとこ)が似ているのは偶然
- 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:絢香『今夜も星に抱かれて…』
- 挿入歌:CHAKA『Sail Away』
- 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の予告編動画