賢者の孫(第2話『常識破りの新入生』)のあらすじと感想・考察まとめ

チンピラに絡まれていた二人、シシリーとマリアを無事に救出したシン。二人はシンと同じく高等魔法学院の受験生だった。学院の入学試験の日、シンはカート=フォン=リッツバーグと名乗る受験生に因縁をつけられるが、これを軽く受け流す。入学後、カートはシシリーに付き纏うストーカーだったことが判明する。カートからシシリーを守るため、シンはシシリーの制服に強力な付与魔法を施すことになった。
今回は「賢者の孫」第2話『常識破りの新入生』の内容(あらすじ・ストーリー)と感想・考察を紹介。

「賢者の孫」第2話『常識破りの新入生』のあらすじ・ストーリー

受験生たち

シシリー=フォン=クロード(左の人物)とマリア=フォン=メッシーナ(右の人物)。

チンピラに絡まれていた二人、シシリー=フォン=クロードとマリア=フォン=メッシーナを無事に救出したシンは、二人を連れ大通りのカフェに入った。悪漢に襲われ消耗していた二人を落ち着かせるためである。話を聞くと、二人は高等魔法学院の受験生だった。
シン「へぇー二人も受けるんだ」
マリア「お?」
シン「俺も受けるからね」
マリア「うっそ?!あれだけ体術が使えるのに魔法使い?!」
シシリー「てっきり騎士養成学院の生徒さんかと…」
騎士養成学院は、王都にある三大高等学院の一つである。
シン「受かれば同じ学院生だね。お互いに頑張ろう」
そう言ってシンはマリアと握手する。続いてシシリーにも握手を求めるが、シシリーは困惑した様子だった。「シンは馴れ馴れしすぎたか?」と焦る。マリアがいたずらっぽい笑みを浮かべて「ちょっとどうしたのよシシリー」とからかうと、シシリーは赤面しながらシンの手を握り返した。
マリア「知ってる?最近賢者様と導師様が王都にお戻りになられたんですって」
マリアは賢者・マーリンと導師・メリダのファンだった。マリアは目を輝かせながら、賢者と導師への憧憬を語り始めた。
マリア「救国の英雄 稀代の魔法使いでありながら勇猛果敢に魔物を仕留める賢者マーリン様と、魔道具を操りその美しい容姿からは想像もできないほど苛烈に魔物を狩る導師メリダ様!この国、いやこの世界に生きている限り最高の…」
シン「(やばい悶死しそう)」
止まるところを知らないマリアの「賢者」礼讚に、シンは辟易した。
シン「マリアってじ…賢者様と導師様のこと、好きなんだね」
シンは「じーちゃん」と言いかけるが、二人はシンが賢者の身内であることは知らないため「賢者」と言い直した。
マリア「当然でしょ!それにお二人のお孫さんが高等魔法学院を受けるらしいのよ!」
シン「(ギクッ)」
シン「じゃあ、俺はそろそろ」
身バレの危険を察したシンは、席を立った。
自分たちの分は払う、と言うマリア。シンはそれを手で制して、伝票を持ってその場を後にする。
マリア「なんていうか、かっこいい奴だったね」
シシリー「うん…」
マリア「ねぇ、チューしていい?」
シシリー「うん…」
シシリーは心ここにあらずといった様子で二つ返事を返し続ける。
マリア「彼、私がもらってもいい?」
シシリー「う…え?あぁだめっ!!」
上の空だったシシリーは、まんまとマリアの罠にかかってしまった。
こんなシシリー初めて見た、と言いながら笑うマリア。
マリア「まさか助けられたから一目惚れとか、チョロいヒロインみたいなこと言わないでよ」
シシリー「そんなんじゃないと思うけど…」
シシリー「すごく緊張しちゃうというか…心臓がドキドキするっていうか…体が熱くなるっていうか…」
マリア「(ちょっとちょっと、マジですか)」
マリアは冗談で言ったつもりだったが、シシリーはまんざらでもなさそうな顔をしていた。

「こんなシシリー初めて見た」とシシリーをからかうマリア。

入学試験、因縁

カート=フォン=リッツバーグ(手前の人物)を組み伏せるシン。

入試の日、試験会場で掲示板を見ていたシンは、カート・フォン・リッツバーグと名乗る男子受験生に肩をつかまれて因縁をつけられる。しかし、シンは全く動じておらず、逆にカートの腕を捻り返した。憤ったカートは貴族の嫡男であることを強調して再度シンに迫るが、シンは「はい、俺はシンです」と自己紹介で返す。カートの怒りが頂点に達したその時、一人の少年が介入する。少年の名はアウグスト=フォン=アールスハイドといい、アールスハイド王国の王子だった。
アウグスト「高等魔法学院において、権力を振りかざすは厳罰に処する。校則ではなく、王家の定めた法であったはずだ」
アウグスト「それに従えぬということは、王家に対する反意なのか?」
カート「いえ、決して!」
アウグストの一声でカートは渋々といった様子で引き下がる。
あの自己紹介を返したのは傑作だった、噂通りの世間知らずのようだ、とシンに告げるアウグスト。「どちら様?」と首をかしげるシンに対し、彼は自己紹介をする。
オーグ「私の名は、アウグスト=フォン=アールスハイドだ。近しい者はオーグと呼ぶ」
それを聞いたシンは「ディスおじさんの息子?!」と驚きの声を上げる。オーグは「そんな風に言われたのは初めてだ。王子と知ると媚び諂う者ばかりだからな」と皮肉交じりに笑った。
シン「だっておじさんの息子って言われても、従兄弟って感じだし」
それを聞いたオーグは大きく口を開けて笑った。
オーグ「そうかそうか従兄弟か」
シン「なにか喜んでもらえたようで、何よりだよ」
オーグ「それじゃ、お互い頑張ろうではないか」
シシリーとマリアは、そんなシンたちを遠巻きに眺めていた。王子と親しげに話すシンに、シシリーは「シン君って何者なんだろ…」と言葉を漏らす。
マリア「それより、問題はあいつだね」
マリアはカートの方に目を向ける。
マリア「まさかこの学院に来てるとは…」

アウグスト=フォン=アールスハイド。

謎のダンスを踊りながら呪文詠唱する受験生。

試験が始まった。試験はまず筆記試験を行い、続いて実技試験を行うという流れである。
順調に筆記試験を終えたシンは、他の受験生たちと共に実技試験会場へと移動した。屋内にある実技試験会場には、複数の的が設置されていた。
女性試験官「それではあの的に、自分の得意な魔法を力の限り放ちなさい」
メガネをかけた女性試験官のその言葉を合図に、順番に魔法を放っていく受験生たち。初めて同年代の魔法を見るシンは、興味津々といった様子で他の受験生たちを見る。しかし、シンの期待とは裏腹に、受験生たちは中二病のような呪文詠唱で低レベルな魔法を繰り出していた。中には謎のダンスを踊りながら詠唱するものもおり、シンは唖然とした。
シン「(恥ずかしい!恥ずかしいよ!詠唱って…あんなんなの?!)」
シン「(派手な割に効果がショボいよ!なんだこの中二病発表会は)」
そうしている間にシンの番が回ってきた。試験官から「君の事は陛下から聞いています。力を抑えて、くれぐれもこの練習場を破壊しないように」と注意を受ける。
シン「(ディスおじさん…いったいどんな説明を?)」
女性試験官「あの的を破壊する程度の威力でいいですからね」
シン「じゃあ…あれでいいか」
シンは、左の掌に小さな魔方陣と青白い炎を発生させた。他の受験生たちは詠唱なしで魔法を発動するシンに驚きの声を上げる。次の瞬間、シンは炎の弾を高速で撃ち出して、的を完全に破壊した。爆風で女性試験官のメガネが割れる。
女性試験官「あぁー!!力を抑えてと言ったはずですがぁー!!」
シン「あ、はい。相当抑えて撃ちましたけど」
女性試験官「…あれで?そうですか。お疲れ様でした」
シンは怒られずに済んでよかった、と安堵した。
その日の夜。高等魔法学院では会議が行われており、シンのことが話題に上っていた。「それほどなのか。賢者の孫は」と尋ねる男性教師に対し、女性試験官は「はい、今年の入試主席は決まりですね」と答えたのだった。

シンは的を木っ端微塵に破壊した。

シンへの憎悪を募らせるカート。

学院で試験結果が発表された。シンはSクラスで、入試主席であった。シンは受付の先生に付与魔法が施された制服の説明を受ける。「自分で付与し直さないこと」と説明する先生に対し、シンは「ばーちゃんでも駄目?」と尋ねる。先生が「導師様なら問題ありません」と答えると、シンは「魔改造しよう」と不敵な笑みを浮かべるのだった。
入試主席のシンは、入学式で新入生代表の挨拶をしなくてはならなくなった。シンは身分を理由にしてオーグに押し付けようとするが、入試主席が挨拶をするのは伝統であり身分は関係ない、と軽く一蹴されてしまう。
その日の夜、カートは入試主席となったシンに対し憎悪を募らせていた。
カート「俺がSクラスではなくA?!その上俺に恥をかかせたアイツが首席だと?」
カート「許せない…許せない許せない許せない許せない」
同じ頃、シンはマーリンの家で高等魔法学院の制服に付与されている効果の書き換えに挑んでいた。この制服には「魔法防御」「衝撃緩和」「防汚」が付与されていた。
シン「なかなか上級な魔道具だな。だが書き換える」
書き換えには「魔法効果有効/無効」の効果が付与されているペンを用いる。ペン先を向けると「有効」に、反対向きに使うと「無効」として機能するようになっている。シンはこのペンを使って付与された効果を無効化し、上書きしていく。
シン「(この制服に付与可能な最大文字数は20文字。魔法を運動エネルギーに置き換えて…)」
シン「成功だー!!」
制服に「防汚」「自動治癒」「絶対魔法防御」「物理衝撃完全吸収」を付与し直すことに成功したシンは、歓喜の声を上げた。
メリダ「なんだい?!夜中にいきなり!」
心配したメリダがドアを開ける。
シンがメリダに嬉しそうに制服を見せると、メリダは驚愕した。シンの施した付与魔法はあまりにも強力で、制服が国宝級の装備と化していたためである。

付与の上書きをした制服をメリダに見せるシン。

入学式当日、マーリンとメリダはシンに同伴して学院まで赴いた。シンは、メリダに制服への付与魔法について口外しないよう釘を刺される。国宝級の装備はトラブルの元になりかねないため、メリダは心配していた。
やがて式が始まり、シンは新入生代表挨拶のために名前を呼ばれる。
眼鏡の女性教師「続きまして、新入生代表挨拶です。本年度入学試験主席、シン=ウォルフォード君」
シシリー「えっ?」
マリア「ウォルフォード?」
シシリーとマリアはウォルフォードという苗字に反応する。
オーグ「そうだ。シン=ウォルフォード」
オーグ「例の英雄の孫だよ」
オーグがそう言うと、シシリーとマリアは驚嘆の声を上げた。
壇上に立ったシンは堂々と新入生代表挨拶を述べる。そんなシンを、カートは鬼の形相で睨んでいた。

賢者の孫が知り合いだったことに驚くシシリーとマリア。

シシリーの悩み

シシリーを脅迫するカート。

式の後、Sクラスの教室にて、担任のアルフレッド=マーカスによる簡単なブリーフィングが行われた。ブリーフィングが終わると、シンはマリアから声をかけられた。マリアは、シシリーが男に付きまとわれて困っている、とシンに告げる。その男は、シシリーが何度も断っているにもかかわらず、実家の権力を傘に脅迫してきたという。
シン「最低だな。どこのどいつだ?」
マリア「この学院にいるの」
シシリー「ごめんねシン君。いきなりこんな話…」
シシリーが謝っていると、彼女の背後からカートが現れた。
カート「おいシシリー!他の男と話をするとは何事だ」
「あいつよ」とマリアはカートを指さした。
カートはシシリーの腕を掴もうとするが、カートの手はシンによって跳ねのけられる。
カート「なんだ貴様は?!シシリーは俺の婚約者だ。引っ込んでろ!」
シシリーは怯えていた。シンはシシリーに「大丈夫。何があっても俺が守るから」と囁いた。シンの言葉を受けて、シシリーは勇気を振り絞ってカートと対峙する。
シシリー「あなたからの求婚はお断りしました!付き纏われるのも、勝手に婚約者と言われるのも迷惑です!」
「あなたの言いなりになるつもりはない」とはっきり拒絶の意思を示したシシリー。それを受けたカートは、親の権力を傘にシシリーを脅迫する。
カート「貴様の父親は財務局の管理官だったな。俺の父は財務局の事務次官だ。俺が父に一声掛ければ…くははは」
シシリーは怯えきっていた。シンの堪忍袋の緒が切れかけたとき、様子を窺っていたオーグが声を上げた。
オーグ「いい加減にしろ」
オーグ「親の力で圧力をかけるなど、言語道断。王国貴族にあるまじき行為だ」
オーグ「ならばこちらも財務局長(カートの父親)に伝えておこう」
オーグがそう言うと、カートは渋々といった様子で引き下がった。
「見ていたのなら早く入ってこい」とシンが言うと、オーグはシンの「大丈夫。何があっても俺が守るから」というセリフを再現してからかった。
オーグ「かっこよかったぞー」
オーグ「なあクロード?」
シシリー「かっこよかった…です」
赤面するシシリーを見て、「もうかわいいなぁ畜生」と思うシンであった。
マリア「もう大丈夫だと思う?」
シン「あの目を見る限り、まだ注意は必要だな」
シシリー及び友人たちの身を守るために何かできないかと考えたシンは、彼らの制服の付与魔法を書き換えることを思いついた。
シン「そうだ。みんなうちに来ないか?」
マリア「行く!行きます!」
シンの提案に、賢者と導師の大ファンであるマリアはすぐに飛びついた。
オーグ「私も行こう。父上も寄るだろうしな」
オーグがそう言うと、傍にいた二人、ユリウス=フォン=リッテンハイムとトール=フォン=フレーゲルも付き人として同伴することになった。
シンたちはまず来賓室にいたマーリンとメリダのもとへ向かった。シンは二人に友人たちを紹介する。そうして一同は王都のマーリン邸へ向かうことになった。

シシリー「かっこよかった…です」

「国宝級」を受け入れる資格、覚悟

メリダはシシリーを試そうとする。

マーリン邸に到着したシンたち。シンはカートの一件をマーリンとメリダに説明する。安全のためにシシリーの制服の付与魔法を書き換えたい、とシンがメリダに言うと、メリダはシシリーの方に目をやった。
メリダ「確かシシリーといったね。付与の書き換えってのはとんでもない代物だ。シンは本気でアンタを守ろうとしている。それを受け入れる資格があると思うかい?」
メリダは、シンの制服が既に国宝級の防具になっていることを一同に告げる。そして「これほどの付与がされた防具はいったい幾らの値が付くかもわからない。それを受け入れる覚悟と資格はあるのかい?」とシシリーに問いかけた。
シシリー「それは…。その資格は…私にはありません!」
シシリーは目に涙を浮かべながら答えた。
シシリー「私はシン君の優しさにつけ込みました。訳を話せば同情して助けてくれる、そう思いました」
シシリー「シン君は何の関係もないのにやっぱり助けてくれて。守ってやるって言われて…嬉しくて」
マリア「違うの!私がシシリーをそそのかして!」
庇おうとするマリアを振り切って、シシリーは謝罪する。
シシリー「ごめんなさいシン君。後のことは自分でなんとかします。メリダ様にもご迷惑をおかけしました」
そう言って部屋を出ていこうとするシシリーを、メリダは呼び止めた。
メリダ「もし何も言わずに受け取ろうとしたなら、叩き出していたところさね」
メリダ「でもあんたは正直に話した。国宝級の防具を手に入れるチャンスを放棄した。それは誰にでもできることじゃない」
シシリー「でも、私はシン君を…騙してっ…!」
メリダ「女が男を騙して何が悪いんさね。シンを見てごらん。気付いてもいないよ。むしろ、頼られたもんだから張り切ってるんじゃないかね」
メリダがそう言うと、シンは少し照れた様子で「ああそうだよ」と答えた。
シン「シシリー、俺は騙されたとか思ってないよ。助けたいと思ったのは俺の意思なんだ。だからさ、俺の意思を否定すんなよ。利用してくれて大いに結構だよ」
メリダが「試すようなことをして悪かったね」と言いながらシシリーを抱きしめると、シシリーは泣き出してしまった。

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