女神候補生(杉崎ゆきる)のネタバレ解説・考察まとめ

『女神候補生』とは、杉崎ゆきるによって『月刊COMIC GUM』にて連載されていた漫画作品である。2000年にXEBEC制作でアニメ化され、NHK BS2の『衛星アニメ劇場』枠で全12話が放送された。2001年に突如休載になって以降、杉崎本人が連載そのものを放棄している。人類最後の希望の星、惑星ZION(シオン)を襲う犠牲者(ヴィクティム)という名の巨大生物を倒す為、人類も女神(イングリッド)という名の巨大人型兵器を作り上げた。主人公ゼロはパイロットになる為、仲間と共に日々訓練を重ねていく物語。

『女神候補生』の概要

『女神候補生』とは、杉崎ゆきるによって『月刊COMIC GUM』にて連載されていた漫画作品である。宇宙空間の中で、犠牲者(ヴィクティム)と呼ばれる巨大生物から、自分達の住む惑星ZION(シオン)を守る為、女神(イングリッド )と呼ばれる巨大人型兵器に乗り人類は戦う。主人公のゼロはまだパイロット訓練生。新しい仲間と出会い、正規のパイロットになる為、厳しい訓練を積み重ねていく。

アニメ版女神候補生はロボットの様な女神(イングリッド )の巨大人型兵器を3次元グラフィックにより立体化していた為、機体のフォルムは美しく戦闘シーンはリアルに表現されていた。パイロットにはそれぞれリペアラーと呼ばれる機体を整備する女性のバートナーがおり、コンビを組んで、パイロットのサポート役としてリペアラーは機体調整をし、共にイングリッドを動かしている。パイロットとリペアラー内での信頼関係は戦闘にも影響してくる。パイロットとリペアラーの恋愛関係や心情の変化などもストーリーの中に組み込まれている。

1997年10月にワニブックスより女神候補生1巻発売、2000年にXEBEC制作でアニメ化され、NHK BS2の『衛星アニメ劇場』枠で全12話が放送された。読者からは「女神(めがみ)」と呼ばれ親しまれていた。当初は26話放送される予定だったのだが、予算関係の諸事情により途中で打ち切りとなり、多くの伏線が回収されないまま物語は終了した。そして2001年に突如休載になって以降、杉崎本人が連載そのものを放棄している。

『女神候補生』のあらすじ・ストーリー

星歴4088年、人類は戦争などの争いにより4つの惑星を失い、住む場所を失った人類は現在スペースコロニーと呼ばれる宇宙空間にある施設での暮らしを余儀なくされていた。人類自らの過ちにより起きた危機的なこの現象を星系危機と呼び、これを解消する為に人類は最後の希望の星、惑星ZION(シオン)に移住する計画を立てていたのだが、未だに出来ずにいた。
宇宙空間にあるスペースコロニーは人工的に作られた惑星で、見た目は大きな半球型のカプセルの様になっている。外部からの攻撃や衝撃などを防ぐ為にこのカプセル状になっており、もし地球に似た惑星ZIONを手に入れる事が出来れば、人類は自由に住める様になる。

宇宙空間の中では人類とは全く違う謎の巨大生命体「犠牲者(ヴィクティム)」も惑星ZIONを自分達の者にしようと狙っていた。惑星ZIONを狙う人類に対しても攻撃を仕掛けてくるようになっていた。ヴィクティムの体格や形状、そして能力などは様々で何故彼らは惑星ZIONを狙い、そして人類にまで攻撃を仕掛けてくるのかは解明されていない。
人類に対し攻撃をしてくるヴィクティムに対抗する為に「女神(イングリッド)」と呼ばれる5体の巨大人型兵器を創りあげた。このイングリッドを操縦する為には、厳しい条件がある。条件として、人類が持つ4種類の血液型のAA型、AB型、OX型、EO型の中で極めて数の少ないEO型である事、14歳から16歳までにEXと呼ばれる特殊能力に目覚めた一般男性のみとなっている。この二つの条件を持ち合わせていなければ、試験すら受けれないのだ。女性の場合はどちらの条件にも当てはまる事があまりない為、試験を受ける事は出来ない。
EXの特殊能力には空間時間を止める能力、敵の場所を探知する能力、戦闘能力が上がるなど人それぞれ色んな能力を持っている。

だが条件をクリアすればすぐにパイロットになれる訳ではない。試験に合格した者の訓練や育成を行う「G・O・A(ゴア)」と呼ばれる宇宙船型の施設が存在している。
「G・O・A」はGODDESS OPERATOR ACADEMYの略称で女神のパイロット育成機関の呼び名になっている。

星歴5030年、主人公のゼロはパイロットになる事を夢見て「G・O・A」の試験を受けて見事合格した。ゼロの他にヒイード、クレイ、ルズ、ヤマギが候補生として選ばれ入学した。養成施設では学校と同じで、実技や教育指導を行う教官が存在しており、今回の候補生を指導するのはアズマ教官になった。

養成機関「G・O・A」に入学した者は「女神候補生」と呼ばれ、3年間でパイロットになる為の戦闘知識やEXの特殊能力をコントロールする訓練などを受け、候補生3000名の中から最終的に選ばれし5名だけが現役のイングリッドのパイロットになれる。これは女神の機体が5体のみでそれぞれに現役のパイロットが存在する為、入れ替わりがない限り新しくパイロットにはなれない様になっている。ただEXの能力は使えば使うほど消耗し無くなっていく為、短期間しかパイロットとして活躍出来ない。
パイロット養成施設「G・O・A」の施設で候補生達は共同生活をしており食堂などもある。学校の授業と同じでカリキュラムと呼ばれるパイロットになる為の基礎知識の勉強や実技訓練等をしている。入学後初めてゼロが仲間達と食堂で食事している時に「パイロットになる」と大声で発言してしまい、先輩達から注目を浴びる事となった。
ゼロは今まで自分がパイロットになる事しか考えておらず、周りの目など気にした事がなかったのだ。皆パイロットになる為にここでの生活をしている。
3000名もいる候補生の中、皆がライバルである事を思い知り、そして自分の置かれている立場を自覚した。ゼロは今まで自分の住んでいた故郷では経験した事のない環境の中、同期の仲間との共同生活や訓練、そして先輩達との出会いにより、考え方や言動が少しずつ変化し精神的にも成長していった。
ゼロ達候補生も含め、現役のパイロットも本人達だけでは機体を動かすことが出来ない。リペアラーと呼ばれる女性の整備士が居て、機体を調節したり、動作の補助や機体の整備する役割を担っている。リペアラーはパイロットと2人1組でコンビを組み、実技の訓練などを一緒に行う。
それぞれのコンビとして、ゼロとキズナ、ヒイードとイクニ、クレイとサキ、ヤマギとツカサ、ルズとレッカの組み合わせになった。
パイロットとリペアラーはお互いの性格を理解し合い、信頼関係が生まれてくると実力を発揮しやすくなる。相手の事をよく理解しコミュニケーションを取りながら、信頼関係を築けるかが大きな鍵となってくる。

ゼロとキズナは初めて一緒に実技の訓練を受ける事になった。訓練を受ける際、手首に刻字されてあるバーコードを読み込まなければならないのだが、ゼロは早く機体に乗りたいとせっかちな態度をとり、機体の方に走り出そうとしていた。
自己紹介の挨拶もロクにしないゼロに対し、キズナは足払いをして厳しく怒った。ゼロは少しイライラしながらも早くしてくれと言わんばかりに手首を差し出した。
バーコードを読み込む際にキズナの帽子がゼロの顔にあたってしまう。これを邪魔に思ったゼロが帽子をとると、キズナの頭にはなんと猫耳がついていた。
耳の形の事を気にしていたキズナは、ゼロの無神経さに怒りと混乱のあまり、その場から飛び出して行ってしまう。
慌てるゼロは、アズマ教官に5分以内にキズナを呼び戻して来なければ訓練を受けさせないと言われ、急いでキズナを追いかける。
キズナを探し出したゼロは、耳の形などは関係ない、パイロットになる為にはキズナが必要だという事を伝えて二人はアズマ教官の元へと戻る。
実技訓練中に飛び出したキズナに対し、アズマ教官は頬をビンタで叩き反省するように指導した。それを見たゼロは自分にも責任があるからと同じ罰を与えてくれと申し出る。ゼロの潔い申し出にアズマ教官は容赦無くグーで殴りかかった。キズナはゼロのパイロットになりたいという心意気に感銘を受け、少しずつ心を開いていく。
キズナの猫耳についての詳細はまだ明かにされていない。

リペアラーと一緒にバーチャル空間で訓練を繰り返し行い、慣れてきた頃、パイロット訓練用のPRO-ING(プロイング)と呼ばれる小型の戦闘機に乗り、基本操作を覚える実技訓練を行うことになった。2対2の対決でゼロはトップ候補の上級生のアーツとコンビを組み模擬戦を行う事になった。
最初はゼロの身体能力の高さから、動作が早すぎて間に合わず機械が不具合を起こしていた。キズナはそれに気づきゼロの能力に合わせ機体のレベルを上げようとしていた。
これを見ていたアズマ教官は「機体を調整するのではなく、自分が機体に合わせろ」と言われる。最初は思うように動けなかったゼロだが、次第に動きを把握し、上級生とも互角に戦えるようになって行った。このプロイングの訓練を繰り返し行う事により、戦闘での感覚を掴み女神のパイロットへの道が近づいていく。
訓練の最中、アズマ教官は校長に呼び出され、候補生の強化を急ぐように指示される。現役で活躍するイングリットのパイロット達の中から近く欠員が出る可能性があると聞かされたのだ。世代交代を示唆するかのように、候補生達は新しい能力が開花されていた。
現役のパイロットはティーラ、ガルイース、アーネスト、リオリート、ユウの5人で、リペアラー整備士はリーナ、チューン、フィルフレイラ、カズヒの4人。
パイロットに慣れる資格を得るのが男性が多い中、ティーラは唯一女性でありながら血液型もEO型で、EX能力も2つ持っている。
そしてティーラは何故か歳を取らない、専属のリペアラーもついていないなど謎が多い人物だ。男性に負けずトップリーダーとしての役割を果たし、長期間パイロットを続けている。
パイロットの機体には役割があり、攻撃に特化した機体、防御系の機体、探知や分析能力のある機体に分かれている。

ゼロが訓練に励んでいる最中、現役のパイロット達にも変化が訪れていた。ヴィクティムとの戦いは次第に苦戦を強いられるようになっていった。
攻撃担当のガルイースの動きに問題があり、能力の衰えを自覚するが故に戦闘中に無理な行動を重ね、他のパイロット達に負担をかけチームワークを乱していたのだ。
仲間達からは危険な行動は良くないと指摘されたガルイース、駄目だと分かりながらも不安や焦りからか、その行動を抑えられずにいた。
アーネストにはテレパシー能力があり、ガルイースの誰にも言えない心の不安を読み取っていた。

不安を抱える状況の中、ヴィクティムの大群が惑星ZIONに向かってきているという報告を受ける。5人のパイロットはすぐに戦闘に向かう。
大群で襲ってくるヴィクティムに苦戦する中、ガルイースは群れを率いるボスがいる事に気づく。ボスが支持を出し、大群のヴィクティムを操っていたのだ。
このボスを倒すしか残滅させる方法はないと分かったのは良いが、肝心のボスの姿を見失ってしまう。
焦るガルイースは防御シールド超え、一人で群れの中に突っ込んでいってしまう。EX能力の衰えを恐れるガルイースが焦っている事をアーネストは感じていた。
このままではまた無謀な行動に出ると思ったアーネストはガルイースを追いかけていく。

そこで先にボスを見つけたのはアーネストだった。アーネストはボスであるヴィクティムを捕獲しようと必死にしがみつく。アーネストの機体は主に探知や分析能力を得意とし攻撃能力があまりない。その為、ボスを逃さないように必死にしがみついていたのだが、ヴィクティムも振り払おうと必死に攻撃を仕掛けてくる。
このままではマズいと思ったアーネストは自分の機体を目印にボスを攻撃をしてくれとガルイースに指示する。
目印にする事により、ボスを倒せる同時にそれはアーネストの機体を巻き込んでしまう恐れがある。何度もヴィクティムから激しい攻撃を受けたアーネストは動けなくなり遂に捕まってしまう。
これ以上アーネストを傷つける訳にはいかないと、ガルイースが攻撃を仕掛けようとした瞬間、ティーラのEX能力が発動し空間の時間を止めて瞬間移動しヴィクティムにとどめを刺した。この時、アーネストの機体は酷い損傷を受けていた。ヴィクティムは倒したのだが、悔しさからガルイースは泣きながら乱射攻撃を続ける。この様子を見たティーラはガルイースの機体を操り、強制的に動きを止め戦闘を終わらせた。

戦いを終え、戻ってきた時にはすでに機体の中でアーネストは死んでしまっていた。
皆が悲しみに暮れる中、ティーラはトップとして冷静に任務を遂行し、新しいパイロットの要請を行う。ティーラは、いつでもヴィクティムから惑星ZIONを守る為に次のパイロットが必要だという考えだったのだ。ガルイースは自分の身勝手な行動によりアーネストを失ってしまったという悔しさから後悔の涙を流す。

その後アーネストの葬儀が行われた。そして新しいパイロットとして候補生の中でトップ成績だったアーツが選ばれる事となった。
アーツはなんとアーネストの弟だったのだ。あまり戦いを好まない性格だったのだが、兄のアーネストの為にも負けられないという強い意志でパイロットの任命を受けた。アーツも兄と同じでテレパシーの能力を持っている。

アーツが抜けた後、候補生のトップを選出するテストが行われる事になった。ゼロとヒイードはトップになる為にライバル心を剥き出しにしていた。ヒイードのパートナーであるイクニはゼロとキズナのコンビネーションに対して妬みにも似た感情を抱いていた。そしてイクニはキズナが目を離した隙にゼロの機体に支障が出る様に細工を施した。勝ち抜けばヒイードが自分の事を認めてくれるのではないかという思いがあったからだ。
トップ争いのテストを進めようとした矢先、本部から緊急の援助要請が候補生達に入り、ゼロ達もプロウィングに乗り出撃する事になった。
イクニが細工したゼロの機体はそのまま戦闘に向かってしまう。ゼロ達の役目はG・O・Aの周辺で群れから離れたヴィクティムを迎え撃つよう支持を受けていた。しばらく様子を見ているとヴォクティムが候補生たちの元にやってきた。初めての実戦に怯えながらも必死にヴィクティムに攻撃をしていく。

『女神候補生』の登場人物・キャラクター

女神候補生

ゼロ・エンナ(苑名 零)

女神候補生ナンバー88/リペアラーパートナー「キズナ・トゥリーク」
【CV:小尾元政 (テレビアニメ版) / 福山潤(ドラマCD版)】
明るく前向きな熱血タイプの主人公。頭で理解するのが苦手で、体で覚えるのが得意。まっすぐ一途な性格の持ち主な故に周囲のメンバーとの衝突も絶えない。
特に同級生であるヒイードとは考え方が合わずによく喧嘩をしている。この世界の中では、人間は体の一部に欠陥を持って生まれてくるのだが、ゼロにはその欠陥部分が全くなかった。入学当初は地面に足がついてないと気持ちが悪くなる無重力恐怖症で、機体に乗る度に吐いていたが、キズナと一緒に無重力に慣れる訓練したり、実戦を繰り返す中で解消していった。

クレイ・クリフ・フォートラン

女神候補生ナンバー89/リペアラーパートナー「サキ・ミモリ」
【CV:吉野裕行 (テレビアニメ版) / 白石稔(ドラマCD版)】
頭脳優秀で記憶能力が人一倍高く、情報収集などが得意だが運動能力が少し欠けている。「実にキョーミ深い」というのが口癖。メガネをかけているが、実は視力が悪いわけではなく、これは両目がアトミックと呼ばれる補助器であることを隠すためにしていた事だった。EXは記憶能力。クレイは最終的にこの能力が認められ、パイロットとしてではなく全てを見届ける総指揮官などがいる「G・I・S(ジィス)」へ行く事になった。

ヒイード・グナー

女神候補生ナンバー87/リペアラーパートナー「イクニ・アレクト」
【CV:千葉進歩 (テレビアニメ版) / 小野坂昌也(ドラマCD版)】
幼児期に戦災孤児に近い境遇で過ごした事で、ヒイードから見て幸せな暮らしをしている者に憎しみを抱いている。誰とも連まず一人での単独行動が多く、極度の人間不信で冷酷な性格を持っている。ゼロに対しては強い敵対心がある。ヒイードの挑発にゼロが反発し二人は喧嘩になることが多い。
自分が上に立ちたいという気質もあり、候補生のトップと戦った際に瀕死状態まで追い込んだことがある。リペアラーのイクニを道具の様に扱い、周囲からは危険な人物として見なされている。

ヤマギ・クシダ

女神候補生ナンバー86/リペアラーパートナー「ツカサ・クーシャ」
【CV:陶山章央 (テレビアニメ版) / 田中一成(ドラマCD版)】
何かにつけて文句が多い。本人は背が低い事を気にしている。パートナーのツカサはかなりの長身である。ツカサに好かれおり、追いかけられる事がしばしばある。口より手が先に出るタイプだが喧嘩っ早い訳ではなく、どちらかと言えば正義感が強いタイプである。

ルズ・サワムラ

女神候補生ナンバー85/リペアラーパートナー「レッカ・トーシング」
【CV:大本よしみち(現・大本命) (テレビアニメ版) / 保志総一朗(ドラマCD版)】
温厚な性格で、争いを好まない。食べる事が大好きで入学当初は15Kgもオーバーウエイトしていたがリペアラーパートナーのレッカの指導の元、別人と見違える程に痩せて皆を驚かせた。痩せた方法については二人の秘密として分からないままだったが、EXの能力が変身能力でこれを使ったものと考えられる。
入学当初は弱虫で誰かの後ろを着いていくタイプだったが、トレーニングや仲間達とのふれ合いにより、少しずつ自分に自信を持つようになっていった。ルズのEXの変身能力は優秀で、ゼロの体をコピーしてゼロの機体に乗る事も出来た。

リペアラー候補生

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