カメラを止めるな!(カメ止め)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『カメラを止めるな!』とは、2017年制作の日本映画。映画・演劇の専門学校「ENBUゼミナール」のワークショップ 《シネマプロジェクト》の企画として制作された。監督は本作が劇場長篇デビューとなる上田慎一郎。本作は2017年に先行上映されると、またたく間に評判が広まり、国内外の映画祭でも数々の賞を受賞した。
ゾンビ映画の撮影中、本物のゾンビに襲われてしまう撮影クルーの恐怖と、その映画の撮影秘話を二部構成で描く。

「どうなってるんですか色々……親父にもぶたれたことないんだ!」

晴美にビンタされた二枚目俳優の神谷が、日暮に向かって言い放った台詞。
生真面目で役作りに余念のなかった彼も、トラブル続きの撮影に冷静さを欠いている。
直前のキャスト交代に加えて、酔っ払って本番中に嘔吐する細田、お腹を下し勝手に退場しようとする山越、そして暴走を始める晴美。
相次ぐ混乱で地獄絵図と化した現場に普段のクールな姿は失われ、この後「もう何も考えられない」とつぶやき倒れることになる。
もちろん台詞の元ネタは「機動戦士ガンダム」のアムロ・レイだろう。
そのあまりに唐突すぎるパロディに、笑いを通り越して事態の異常さが伝わってくる台詞である。

「落ち着いているわよ私は落ち着いてる」

役に入り込むあまり脚本を完全に無視し始めた晴美の台詞。
はじめ、心配する日暮に対して舞台袖で言った台詞であるが、その後、まったく同じ台詞をカメラの前でもつぶやくことになる。
おそらくは自分に言い聞かせようとしたのかもしれないが、彼女の顔は無表情で目の焦点も合っておらず、どうみても落ち着いているようには思えない。
おまけに全身は血糊塗れで右手には斧を持っているのだから、その姿は完全にサイコホラーの一場面である。
ゾンビ映画の撮影中に起きた惨劇「ONE CUT OF THE DEAD」であるが、本当の惨劇はこの台詞によって頂点に達したように思える。

クレーンショットを諦めようとする日暮を「待った」と制する真央

度重なる障害を乗り越え、ついに「ONE CUT OF THE DEAD」の撮影も佳境を迎えるが、ラストを前にしてカメラクレーンが破損してまうという事態が起きてしまう。
プロデューサーの古沢は、日暮に予定していたクレーンショットを諦めるように促す。
そんな中で娘の真央が立ち上がるシーンである。
妥協ばかりの作品を撮る日暮の仕事に、普段はまったく興味を示していなかった彼女も、「ONE CUT OF THE DEAD」の現場を通してともに奮闘してきた。
父の作品に対する熱意を知り、さらには日暮の台本に自分の写真が貼ってあることに気がつき、父の「こだわり」を捨てさせないため立ち上がるのである。
親子の物語でもある本作品が、その主題をはっきりと表出させる名場面である。

「コウちゃん、目を覚まして!」と同じ台詞を繰り返す松本

劇中作「ONE CUT OF THE DEAD」のクライマックスで松本が神谷に向かって説得を試みる場面。
「コウちゃん」とは神谷が演じている男優の役名で、彼は松本が演じている女優の恋人という設定。
要するに、ゾンビとなってしまった恋人に向かって、女優が懸命に言葉を投げかける重要な場面である。
しかし、「ONE CUT OF THE DEAD」の舞台裏を知っている観客からすると、それは一転してシュールな台詞に聞こえてしまう。
というのも、この時カメラの裏手ではスタッフとキャストが総出となって人間ピラミッドを組んでいたからである。
ピラミッドが完成しなければ、決めのラストショットは撮れない。
なんとか準備の時間を稼ごうと、松本は同じ台詞を何度も繰り返して引き伸ばす。
そのせいで明らかに不自然なシーンとなってしまっているのだが、そんなことは最早どうでもいいのかもしれない。
映画の前半と後半で180度印象が変わる『カメラを止めるな!』のラストに相応しい場面である。

『カメラを止めるな!』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

著作権をめぐる騒動

上田監督は本作の構想を劇団PEACE(現在は解散)による舞台『GHOST IN THE BOX!』から得たとしており、劇場公開時は原案としてクレジットされていた。
しかし、劇団の主宰であった和田亮一は本映画の著作権が自身および劇団にあると主張し、その告発記事が週刊誌「FLASH」(2018年8月21日)に掲載された。
これに対して制作のENBUゼミナールは直ちに声明を出し、著作権侵害には当たらないと主張。
上田監督もツイッター上で自身のオリジナル作品であることを強調している。
こうした経緯もあり、DVD/BDおよび配信版では「原案」のクレジット表記がなくなっている。

上田監督の関連作品

『カメラを止めるな!』のヒットにより、上田監督の他作品にも注目が集まることになった。
最初期の長編映画『お米とおっぱい。』のDVDの発売、および20代の頃に自費出版したSF小説『ドーナツの穴の向こう側』の再販が決定している。

『カメラを止めるな!』の関連動画

特報

予告編

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