ISLAND（アイランド）のネタバレ解説・考察まとめ

『ISLAND』の概要

『ISLAND』とは、フロントウイングが制作したPCノベルゲーム、およびそれを原作としたアニメである。2017年2月23日にはプロトタイプからPlayStation Vita版が発売。テレビアニメを記念したPlayStation 4版は2018年6月28日に発売された。その他、同年の8月24日にはSteam版が配信された。アニメは2018年7月1日から9月16日まで放送された。制作は「feel.」。シリーズ構成・脚本は『狼と香辛料』『まおゆう魔王勇者』などで知られる荒川稔久。また、監督は『ハヤテのごとく！』『絶対可憐チルドレン』などの川口敬一郎。

離島である浦島に流れ着いた少年・切那（せつな）は「世界を救う。その為に時を超えて過去へ戻ってきた」ということ以外の記憶を失っていた。浦島御三家の一つである御原（おはら）家の跡取り娘・凛音（りんね）と出会った切那は、御原家で使用人として働くことになる。
自身の記憶をなくした切那と、5年前に行方不明となった時より前の記憶がない凛音。他の御三家の娘である伽藍堂沙羅（がらんどうさら）と枢都夏蓮（くるつかれん）と共に日常を過ごす中で、二人の過去にまつわる謎が明かされていくSFストーリー。

『ISLAND』のあらすじ・ストーリー

記憶を失った切那

離島である浦島に流れ着いた謎の少年・切那は「世界を救う。その為に時空を超えて過去に戻ってきた」ということ以外の記憶を失っていた。島の者以外は本土へ強制的に返すという掟の為、切那は本土に送られそうになるが、ひょんなことから島に留まるができた。その日の夜に海岸で星を見ていた切那は、浦島御三家の一つである御原家の跡取り娘・凛音と出会う。凛音と出会った瞬間になぜか凛音の名前を思い出した切那は、御原家の使用人として働くことになる。凛音は切那と同様、5年前に行方不明となった時以前の記憶を失っていた。
謎のフラッシュバックに悩まされながらも切那は個性豊かな沙羅や夏蓮と出会うが、記憶の謎は更に深まっていった。

陽に当たると死んでしまう媒紋病

ある時、凛音に「自分は陽に当たると死んでしまう媒紋病（ばいもんびょう）という風土病にかかっている」と告げられた切那。切那は使用人としての仕事をこなしながら、沙羅の図書館で媒紋病について調べる。そこには、浦島に伝わる伝説と御三家の捏造された歴史があり、さらに切那の失われた記憶についてのヒントがあるようだった。切那は凛音の病気のことを確かめるため凛音の母親・玖音に「凛音は媒紋病か？」と尋ねる。玖音から返って来た答えは、「違うけれどそう思い込んでいる。神隠しにあう前の記憶を失った凛音は、真っ白になった自分に伝説の凛音を重ねてすがっている」というものだった。切那は凛音の恐怖心を失くすために昼の海に行ってみようと誘うが、伝説にすがる凛音は頑なにその誘いを拒否する。
切那と夏蓮、沙羅は凛音を昼の海に刺そう出そうと作戦を立てた。その作戦はうまくいったが、外に出てきた凛音は宇宙服のような恰好で日傘をさすという奇妙な姿をしていた。しかし凛音は3人の元に向かう途中で転んでしまい、頭に被っていたヘルメットが取れてしまう。結局、凛音は宇宙服を脱いで切那と共にパラソルの下に座った。

自分を変える夏蓮

一行は海で楽しく遊んでいたが、謎の廃屋を見つけたことで凛音が失った記憶の一部を思い出したと同時に気絶してしまう。後から聞くと、凛音はその小屋で昔よく切那という名前の男の子と会っていたのだ。切那は、自身の失った記憶と凛音の過去に何かの関係があるのかとますます疑いを深くする。一方、凛音はそれ以上過去のことを考えようとせず、まだ伝説の凛音に自身を重ねていた。そんな中、夏蓮は自分を変えることを決意し、播守との結婚式を滅茶苦茶にしてほしいと切那にお願いする。
切那は、変わろうとする夏蓮に協力すると決め、結婚式を滅茶苦茶にする計画を立てた。そしてその計画を知った凛音と沙羅、播守、夏蓮の兄・春守、クルーザーの操縦者・金城は、夏蓮に協力を申し出る。結婚式当日、切那は結婚式に乱入して夏蓮を誘拐した。夏蓮の父・守継は夏蓮を引き戻そうとするが、春守に諭されて諦める。夏蓮は父親に反抗して初めて自分の意志を表明し、行動に移したのだ。

クルーザーで本土に向かった夏蓮と切那は、春守に渡された地図を頼りに夏蓮の母親・夏未の元へ向かう。5年ぶりにやっと母親に会えることで、夏蓮は期待と不安を胸に抱えていた。しかし、2人は着いた場所にあったのは、夏未のお墓だった。母親の死を知らなかった夏蓮は、その場で泣き崩れる。そこへ現れた人物は、夏未の教え子だった女性・山吹桃香だった。
桃香は夏未の研究室だった建物に2人を招待し、生前の夏未について夏蓮に語った。夏未は海洋地質学の研究者で、本土の大学に招かれて浦島を出て行き、1年前に高速道路での事故で亡くなった。研究結果を話す夏未は輝いていたが、夏蓮のことだけが気がかりな様子だったと、桃香は夏蓮に告げた。
夏未の想いを知った夏蓮は気持ちが吹っ切れて、浦島に戻った後に本土の大学に行かせてほしいと父親に頭を下げる。守継もしぶしぶそれを許可した。
自分を良い方向に変えた夏蓮を見て、沙羅は変わらない自分に焦りを感じていた。

神の子

沙羅は自分に「神の子」としての力があったが、両親を亡くした火事の影響でその力が無くなってしまったと考えていた。「神の子」としての力が無ければ、媒紋病で苦しむ島の人々を救うことが出来ない。だから自分は過去に戻って沙羅の母親になり、沙羅を生んで火事を防がなければならないという使命に追いつめられていた。
沙羅の考えを知った切那は、島の人々のために一生懸命な沙羅が納得するなら出来るだけの力を貸すことに決める。しかし凛音は凛音の父親がまとめた書物から、伽藍堂家の闇の歴史を知り、切那にもそれを語る。それは、沙羅は「神の子」などではないという事実。新生児の媒紋病発症率が沙羅の誕生後ゼロになっていたのは、伽藍堂家が発症の恐れがある子たちを殺していたというものだった。いわば沙羅は、伽藍堂家の権威づけのための自作自演に利用された子どもだったのだ。
凛音が切那に話していた真実を、たまたま御原家を訪れていた沙羅は聞いてしまう。絶望した沙羅は、浦島神社の本殿に火を放って焼身自殺を図るが、切那に助けられる。数日間眠りについていた沙羅が目を開けた時に見たものは、沙羅がお世話をしていた媒紋病患者たちが沙羅の回復を願って折ったたくさんの千羽鶴だった。それを見た沙羅は自分の生きる意味に気づき、涙を流した。

凛音の記憶

良い方向に変わった夏蓮と沙羅を見て、凛音は自分も変わろうとする。切那と一緒に昼間にデートに出かけ、自分の気持ちに正直になって2人でペアグッズを身に付けたりした。楽しそうな凛音を見て、切那も嬉しさを感じる。
一方、凛音は廃屋で今の切那とは違う切那と会っていた記憶を切那に話す。しかし、凛音はまだ過去の記憶に正面から向き合えないでいた。
甘味処のおばあさんの一言で凛音は更なる過去を思い出す。それは、今凛音が共に過ごしている切那とは違う切那に関する記憶だ。凛音は謎の廃屋で真の切那に会っていたが、2人で海に落ちてしまい、嵐の後だけに現れる島・暴龍島に流れ着いた。2人でずっとここで過ごしていたいと望む凛音だが、真の切那は凛音だけでも浦島に帰そうとしていた。真の切那は眠り薬を入れたスープを凛音に飲ませて1人だけボートに乗せ、浦島に帰したのだ。
そのことを思い出した凛音は、真の切那を助けに行こうと嵐の海に乗り出してしまう。そして切那も凛音を追い、2人は海で遭難する。

真の切那

凛音と切那が漂流したのは、嵐の後だけに現れるという謎の島・暴龍島だった。2人はそこで真の切那を探すが、見つけたのは真の切那の遺体だった。
側に残されていたノートには、真の切那と凛音は5年前に暴龍島に辿り着いた後のことが書かれていた。凛音はずっとここに2人で居たいと言うが、真の切那は凛音だけでも浦島に帰したい。そんな時に真の切那は1艘のボートを見つけた。2人でないと助かりたくないと言う凛音に真の切那は睡眠薬を飲ませてボートに乗せ、自身は暴龍島で朽ち果てたのだった。
そのことを知った凛音は、真の切那を助けられなかった自分を責める。しかし切那の言葉で救われ、凛音は過去にけじめをつけた。
だが2人は浦島に戻る途中で嵐に遭い、凛音は海に沈んで亡くなってしまう。切那は凛音の死という過去を変えるため、タイムマシンが開発される未来まで自分の時を止める機械に入り、コールドスリープの状態となった。

2万年後の世界

切那が目覚めたのは、浦島から2万年後の世界だった。その時代では世界の終わりが近づいており、人々は最後に残された居住地である地下シェルター「アイランド」で限られた資源を使いながら暮らしていた。
記憶を失くした切那は、1人の少女・リンネに助けられ、アイランドで生活する。ある日2人は、札なし（無戸籍）で親に捨てられた子どもたちのことを知り、シスターのサラと共に援助を行う。そんな中、3人と札なしの子どもたちのリーダー・カレンは、教会によって追われる身となってしまった。
教会の権力者である大司教の陰謀で、枢機卿殺人の濡れ衣を着せられた切那とサラ、カレン。火あぶりにされる3人を、リンネは機転を利かせて救出した。
4人はアイランドを抜け出してリンネが以前見つけた秘密の洞窟へ向かうが、火あぶりにされた時の怪我がもとでサラは命を落としてしまう。数日後に媒紋病を発症したカレンも、サラの後を追うように亡くなる。
残された切那とリンネは、リンネの家に代々伝わる設計図がタイムマシンであることに気づいた。同時に切那は今までの記憶を全て思い出し、リンネは浦島の時代まで過去を遡って歴史を変えることを提案する。
最後に想いを寄せていた2人は身体を重ねて、切那はタイムマシンに乗り込んだ。

本当のエンディング

アイランドから2万年前の浦島に戻った切那は、凛音や夏蓮、沙羅と改めて出会い、3人を良い方向に変えていく。凛音の死を回避して世界を変えようとしていた切那だが、驚愕の真実の可能性に気づいてしまう。それは、凛音の母親・玖音がかつて自分が愛した少女・リンネではないかということだった。切那は、玖音はリンネであり、2人は時を超えてすれ違ってしまったことを確信した。凛音は、玖音と切那の間に生まれた娘だったのだ。
玖音にそのことを聞きに行く切那だが、玖音は切那に自分のことを忘れて凛音を幸せにしてほしいと願い、顔を合わせようとすらしない。母が自分の幸せだけを願っていることを知った凛音は、切那に玖音の元に行くようにと背中を押した。
娘も自分の幸せを願っていることを知った玖音は、切那を受け入れ、2人は結婚する。それは、伝承のリンネとセツナが迎えた本当のエンディングだった。

『ISLAND』の登場人物・キャラクター

浦島編

三千界切那（さんぜんかい せつな）

CV：鈴木 達央
浦島の海岸に打ち上げられていた少年。「世界を救う為に時を超えて過去に戻ってきた」ということ以外の記憶を失っている。唯一名前を思い出せた少女・凛音の家で使用人として働くことになる。
凛音や沙羅、夏蓮、島の人々と共に楽しい毎日を送りながら、失った記憶を探し求める。しかし、島の伝説や風土病である煤紋病（ばいもんびょう）を知るにつれて切那の記憶に関する謎が深まっていく。

その正体は浦島の伝承に出てくるセツナであり、愛する女性であるリンネを救うため何度も時を超えているタイムトラベラー。