ロッキー・ザ・ファイナル(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ロッキー・ザ・ファイナル』とは、2006年製作のアメリカ映画。シルヴェスター・スタローンの出世作にして代表作「ロッキー」シリーズの6作目。スタローンが監督・脚本・主演を務め、第5作から16年ぶり、第1作から30周年を迎えた伝説のシリーズを締めくくる。現役を引退し、愛妻エイドリアンにも先立たれ、一人息子ジュニアとの関係もこじれて満たされない日々を送るロッキーが、ある決意を胸に無謀な復帰戦に挑む姿を、彼の人生の思い出の数々をちりばめつつ熱く感動的に綴る。

マリーの一人息子。
母親がロッキーと再会した夜に、家の前で母からロッキーを紹介される。
ロッキーの店に母と一緒に招待されてからは、ロッキーの魅力に引き込まれ、ボクシングに復活したロッキーのトレーニングや試合にも立ち会っている。

デューク(演:トニー・バートン)

かつてのロッキーの宿敵で親友のアポロ・クリードの元トレーナー。
アポロの死後、ジムを経営しながらロッキーのトレーナーとしても協力する。
本作でも、ロッキーの復活に際し、トレーナーとして招聘され、ディクソンとのエキシビジョンマッチではロッキーのセコンドに付き指示を送る。
ロッキーとポーリー以外では、唯一シリーズ全作に登場しているキャラクターである。

スパイダー・リコ(演:ペドロ・ラヴェル)

シリーズ第1作の冒頭、場末のファイトシーンでロッキーと戦っていた三流ボクサー。
ロッキーと同じくフィラデルフィアの下町に住み、本作では、ロッキーのレストランの常連客で登場するが途中から皿洗いとして働き始める。
終盤のエキシビジョンマッチのロッキーの控室で、ロッキーのために聖書を読み上げて祈りを捧げた。

エイドリアン(演:タリア・シャイア)

ロッキーの友人であるポーリーの妹であり、ロッキーの妻。
本作ではすでに死去しており、ロッキーの部屋や、ロッキーの店「エイドリアンズ」に写真が飾られている。

『ロッキー・ザ・ファイナル』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

過去なんか忘れちまえ!過去なんてろくなもんじゃない!!

エイドリアンの命日、息子のロバートが店に訪ねて来ないことを寂しく思いながら、店が終わった後、ロッキーはポーリーとともにエイドリアンとの思い出の地を巡り歩く。彼女が働いていたペットショップはすでに閉店となっているし、彼女と初デートしたスケート場は廃墟となっている。ロッキーは彼女と過ごした日々をポーリーに語り続ける。それに対してポーリーが叱咤したセリフ。

ポーリーは、妻の死でいつまでも落ち込んでいるロッキーを見るに堪えなかったのだろう。何年経ってもうだつの上がらないポーリーには過去なんてどうでもいいのだろうが、ロッキーには彼女の存在が、彼女の愛が無ければ今の自分はいない。二人の対照的な生き方が見える興味深いセリフである。

自ら挑戦しようとする人間を止める権利が誰にある?

テレビ番組のディクソンと自分とのバーチャル試合を見て、自分の中にボクサーとしての情熱が再び蘇ってくるのを感じていたロッキーは、息子のロバートに家族として協力してほしいと頼むが、相手にされなかった。どうしても気持ちを押えられないロッキーは、自ら体育協会にプロボクサーのライセンス取得の申請をして協会に出向いた。協会側は、健康面では問題ないが年齢的なことでライセンスの発行は出来ないとロッキーに通達する。ロッキーは一度帰ろうとするが思い直したように戻ると、協会の役員たちに向かって自己の権利を主張し始める。その中で「あなたたちは単に自らの仕事をしているだけかもしれないが…」と前置いて発したセリフである。

エイドリアンの死後、彼女の名を付けたレストランの経営をしながら彼女の想い出に浸っていたロッキー。それまではボクシングに対する思いなど微塵も見せなかったのだが、一度復帰を決意すると、その情熱たるや凄まじい。普通、50歳の人間をプロに復帰させることは有り得ないと思うが、このセリフにはそれを実現させてしまうだけの力がある。

戦うのがボクサーでしょ?

ディクソンのマネージャーからエキシビションマッチを申し込まれ、降って湧いた大きな舞台に二の足を踏み、返事を保留にしたロッキー。
ロッキーは自分の店で働き出したマリーを車で家に送る際に、彼女の意見を聞くのだが、そこでマリーは、「あなたが心から闘うことを望んでいて、また、闘うべき試合なら闘いなさい」とロッキーを励ました。そして最後にロッキーにこの言葉を送った。

それまで控えめな態度に徹していたマリーだが、ロッキーを勇気づけるこのセリフが彼の復帰を促す決定打となる。またこの会話のシーン以降、彼女はロッキーにとってかけがえのない存在へと変わっていく。

人生ほど重いパンチはない。それでも、どんなに強く打たれてもずっと前に進み続けることだ。

ロッキーとディクソンとのエキシビションマッチが決まり、記者会見が行われた。その様子はテレビでも放送され、ロバートも行き付けの店のテレビで目にしていた。その夜、店を訪れたロバートはロッキーを外に呼び出すと、偉大なボクサーだった男の息子であるが故の苦悩をぶつけ、今度の試合に対して「これ以上俺を苦しめるようなことをしないでくれ」と懇願する。ロッキーは逆に困難に立ち向かうことの大切さを説き始める。「お前は変わってしまった。人に面と向かって馬鹿にされても平気な人間に成り下がった。困難にぶつかる度に自分のふがいなさを父さんの影のせいにした。」と言い、このセリフを続けた。

本作においては、過去のシリーズの中でもより多くの名言があるが、中でも一番深い印象を残すのがこの台詞。
シリーズ全ての脚本を執筆して来たスタローンの、主人公”ロッキー”を介した彼の人生哲学が、このシーンの一連のセリフであることは間違いない。困難や重圧に遭遇した時にどう向き合うかを、ロバートに、そして自分自身にも言い聞かせているのであろう。

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