ガメラ2 レギオン襲来(平成ガメラ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ガメラ2 レギオン襲来』とは、前作『ガメラ 大怪獣空中決戦』に続き、金子修介が監督した平成ガメラシリーズの第2弾。1996年7月に東宝洋画系にて公開された大映製作のモンスター・パニック・ムービー。惑星の生態系を侵略しようとする宇宙からの異生物レギオンが日本に飛来。地球の生態系を守ろうとする大怪獣ガメラとの壮絶な戦いを、前作から1年後の日本を舞台に自衛隊の活躍を交えて描く。

「ん~…酒でも欲しい気分ですね」

小型レギオンの死体解剖に立ち会った渡良瀬と碧は、帯津を呼んで緑の自宅の部屋に集まりレギオンの生態解明のために話し合った。その途中に話が煮詰まり、帯津がボソッと呟いたセリフ。

この後、碧は「あるよ!ゲド戦記のうしろ」と答えると、帯津が本棚の「ゲド戦記」の本の後にウィスキーの小瓶を見つけた。このシーンの前に碧の父親が、娘の部屋に見知らぬ男が2人も上がり込んだことに憮然とした表情をするシーンがあり、本編中、唯一のコミカルなシーンとなっている。

「ご無事で」

札幌、仙台と2度の種子発射をガメラに阻止されたレギオンが更に電波が過密である東京を目指すと予測した日本政府は、防衛庁から自衛隊に防衛出動を命じ、レギオンの予想進路上に防衛ラインを構築、関東一円の住民に大規模な避難命令が出された。ヘリで東京に避難していた碧も渡良瀬の指示で仙台に戻ることにする。その2人の別れのシーンで碧が渡良瀬に言った言葉。渡良瀬はこの言葉に対し、碧に敬礼を返した。

自分の事を散々気遣ってくれた渡良瀬の思いやりへの感謝と、最後の戦場に颯爽と向かう彼の姿を見て、意を決したように彼を呼び止めた。それぞれの思いを胸に、それぞれの立場で戦いのクライマックスに臨んでいく。2人の表情が感動を呼ぶ素敵なシーンである。

「ガメラはレギオンを許さないから」

東京へ避難した碧は1年前のガメラの資料から浅黄の事を知っており、仙台からの輸送ヘリの中で浅黄に声を掛けていた。そして碧は、灰に埋もれて動かなくなったガメラの復活を願いに浅黄を誘って2人でガメラの元へと旅立つ。その空港での会話。浅黄が「ガメラは生きてます…必ず復活します…だって…」と言いかけると、碧が「…だって?」と聞き返し、浅黄が言った言葉。

前作に続き、ガメラとのコミュニケーション能力を発揮して、ガメラ復活を賭ける浅黄の最大の見せ場となる始まりのシーンである。

「火力をレギオンの頭部に集中し、ガメラを援護せよ!」

ガメラと巨大レギオンの戦いは激しさを増して苦戦を強いられるガメラ。足利の作戦本部では花谷がガメラを援護するよう坂東師団長に進言するが退けられてしまう。 それでもなお巨大レギオンの進行を阻止しようとするガメラの行動に対し、師団長は遂にガメラの援護を決断した。各所に指示を送る命令の言葉。

この師団長の指示が、地球の存亡をかけて人類とガメラの共同戦線の幕開けとなる。本編において最高の見せ場となるきっかけを作ったシーンである。

『ガメラ2 レギオン襲来』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

新約聖書に結び付けた名前「レギオン」

レギオンの名前の由来について、神話への造詣が深い花谷が、小型レギオンの群れがガメラを襲う状況を見ながら呟くシーンで触れられている。
新約聖書のマルコによる福音書5章9節に現れる言葉。「主が、『おまえの名は何か』とお尋ねになるとそれは答えた。『我が名はレギオン。我々は、大勢であるがゆえに』(翻訳は映画オリジナルのもの)。」ローマ軍団のレギオン(古典ラテン語:legio)から転じているが、聖書では男に取り付いた悪霊が自らのことを指して呼んでいる。「大勢/多数」の意味から名づけられ、聖書に結びつけることによって、このガメラの闘いが人間にとって終末的な意味合いを持っていることを強く印象づけている。
また、オープニングタイトルでは、十字架がタイトルの「ガメラ2」の「メ」の文字に重なるという演出がある。

自衛隊は現実の装備で活躍

これまでのゴジラシリーズを始めとする怪獣映画の中に登場する自衛隊は、架空の特殊兵器(例えばスーパーX)を開発、使用しなければ太刀打ちできないことが多かった。しかし、平成ガメラシリーズでは現実の装備でそれなりの戦果を挙げている。
前作1作目では、81式短SAM(短距離地対空誘導弾)でギャオスを奇襲する作戦を行った(結果的には失敗し東京タワーを破壊してしまった)。
本作では、レギオンに対して陸上自衛隊が発射した79式重MAT(対舟艇対戦車誘導弾)が、レギオンのシールドを突破して、干渉波クローに命中し実質的に機能不全に追い込んでいる。これによってガメラのプラズマ火球を効果的にした。また、渡良瀬が9ミリ拳銃で小型レギオン1匹を射殺し、通信施設のアンテナに群がった群体レギオンを武装ヘリ部隊が一掃するシーンもある。
なお、劇中では自衛隊が中心となってレギオン襲来の防衛に当たっているが、札幌では大通駅などの警備や避難誘導、救助活動などに北海道警察の機動隊が登場している。

押井守が自衛隊のシーンを監督予定だった

金子修介監督から映画監督の押井守(代表作:機動警察パトレイバー) に「自衛隊のシーンを監督してほしい」とオファーがあり押井も乗り気だったものの、スケジュールが合わずに断念することとなってしまった。
押井と金子はそもそも東京学芸大学の先輩後輩の仲。押井は入学後は映画に熱中し年間1000本程の映画を見ていたほどの映画通。在学中に既存のサークルである映画研究会と袂を分かち、新たに「映像芸術研究会」を設立して自ら実写映画を撮り始めたという。金子もこの時のメンバーであった。

今回も劇中で報道する各局のアナウンサー

前作では製作に日本テレビが関わっている関係上、劇中に同局系列のアナウンサーや報道番組である『ニュースプラス1』や、長崎国際テレビ・福岡放送・静岡第一テレビの番組やスタッフが登場していたが、本作でも製作に日本テレビやNTTが参加していることから、劇中には同局系の番組『ズームイン!!朝!』が実名で登場、当時メインキャスターの福留功男が登場している(エンドロールにも『ズームイン!!朝!』と番組ロゴが表記されている)。日本テレビからは他に関谷亜矢子、薮本雅子。また、当時の地元局リポーターは、札幌テレビアナウンサーの今中麻貴、ミヤギテレビアナウンサーの水本豊、および同局の夕方ワイド『OH!バンデス』の初代リポーターの小山田明美。札幌テレビからは特撮作品に造詣の深い明石英一郎も端役で登場している。

当時無名だった大泉洋も出演していた

本作は北海道が舞台となった関係から、札幌の芸能事務所CREATIVE OFFICE CUEのタレントが多数出演している。
当時の北海道テレビの人気番組『水曜どうでしょう』で活躍していた、事務所の会長で映画監督でもある鈴井貴之が住民に注意を呼び掛ける札幌市職員役で登場。同所属で全国ではまだ無名だった大泉洋が地下鉄乗客役、同じく安田顕も隕石落下の急報を伝える自衛隊員役で出演している(大泉は、鈴井のミスによってクレジットに名前がない)。また、後にフリーアナウンサーとなる西島まどかが、碧と身を寄せ合う子役で出演。地元のパーソナリティとして人気の北川久仁子が、青少年科学館に設置されたガメラ対策特設本部オペレーター役で俳優デビューしている。
なお、鈴井・大泉らが出演している『水曜どうでしょう』では、ガメラのオリジナル・サウンドトラックから「ガメラ出現」「ギャオス逃げ去る」が使用されている。同番組の藤村忠寿ディレクターがガメラの大ファンだった事もあり、次回予告の多くが本作品の予告編を想起させるような内容になっているらしい。

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