花咲くいろは(花いろ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『花咲くいろは』とは、P.A.WORKS制作による日本のオリジナルテレビアニメ作品、および、これを原作としたメディアミックス作品。舞台は石川県湯乃鷺温泉街。祖母が経営する温泉旅館「喜翆荘」に住み込みの仲居として働くことになった松前緒花が個性的な従業員に囲まれながらも、様々な経験を通して成長をしていく。

『花咲くいろは』の概要

『花咲くいろは』はP.A.WORKS10周年記念アニメーション作品であると同時に、同社初の完全オリジナル作品となる。テレビアニメは2011年4月から9月まで放送された。公式略称は「花いろ」で、製作委員会名にもこの名が使われている。千田衛人の作画によるコミカライズが、『ガンガンJOKER』(スクウェア・エニックス)にて2010年12月号から2012年10月号にかけて連載された。単行本は全5巻。 地方の温泉旅館・喜翆荘(きっすいそう)を舞台に、主人公・松前緒花たちの成長を描く青春お仕事ドラマ。石川県の湯涌温泉がモデルとなっており、作品がヒットしたことで作品中の架空の祭りである「ぼんぼり祭り」等の企画も実際に行われ、盛況を博した。

『花咲くいろは』のあらすじ・ストーリー

母の夜逃げにより喜翆荘で住み込みの仲居として働くことになった緒花

東京にフリーライターの母と住んでいる高校二年生の松前緒花。自由奔放な母親を目の前で見ている緒花は将来何かやりたいこともなければ、考えたくもない状態。同じ高校に通うボーイフレンドの孝一からは「お前、そのうち身を滅ぼすぞ」と言われる始末。そんな緒花だが、どこかで「今までの自分と違う自分」になりたいという願望はもっていた。緒花が学校から帰ってくると母の皐月が「夜逃げをすることになった」と突然言いだす。「子どもを夜逃げに連れて行くわけにはいかない」という母親から手渡されたのは「喜翆荘」という名と、電話番号が書かれた一枚の紙切れだけ。単身祖母の喜翆荘へと行くことになった緒花は東京を離れる前に孝一に別れを告げに行くと、孝一からは「ずっと好きでした」と告白をされる。孝一の告白に驚き、戸惑う緒花。孝一の告白に返事をすることなく、そのまま祖母を頼りに石川県湯乃鷺温泉の喜翆荘へと向かう。喜翆荘の立派な建物に感動する緒花。しかし出迎えたのは鶴来民子の「死ね」という言葉と、女将であり祖母でもある四十万スイの「あんたは今日からうちの従業員だ」という言葉だった。緒花は喜翆荘に到着早々、雑用係として廊下掃除をすることになる。

雑用係として雑巾がけをしている緒花のもとにやってきたのは、叔父であり喜翆荘番頭の四十万縁。縁は皐月の弟だが、子どもの頃、皐月からは散々な目に遭わされていた。皐月と顔が似ている緒花に「積年の恨みを晴らしちゃうかも」と言い去っていく。そして皐月に興味をもち、「性に乱れた人だと聞くけど本当なの?」と根掘り葉掘り聞こうとする仲居頭の輪島巴。巴から喜翆荘の中を案内されていると住み込みで板前見習いをしている鶴来民子とアルバイトで仲居として働いている押水菜子を紹介される。民子からは早々に嫌われてしまっている緒花は菜子から喜翆荘の周りを案内されるが、話がなかなか続かない。「なんだか理想と違う」と思う緒花。それでも喜翆荘に慣れようとするが行動がすべて裏目に出てしまい、民子からは「空気が読めない」と嫌われる。

「そもそも仕事をしたくてここに来たわけじゃない。」と思っていた緒花だったが、喜翆荘で何もできない、何をしたいのかもわからない自分にも腹を立っていた。「誰かに期待をしても傷つくだけだ。だったら最初から期待しなければいい」という考えを捨て、自分だけの力では何もできない以上、「ここで輝けるように頑張ろう」と緒花は決意をする。

香林高校のクラスメイト

緒花は民子、菜子と同じ学校に通うことになる。東京から来たということでクラスメイトから質問攻めにされ、その勢いに戸惑う緒花を救ったのは、クラスメイトであり、有名温泉旅館“福屋”の一人娘である和倉結名だった。
クラスでは結名は「結名姫」、民子は「民子姫」と男子から呼ばれ、「モテの巨頭」と言われ、憧れの存在となっていた。にぎやかにスタートした緒花の学校生活だが、校舎裏で男子生徒の告白を受けてその気はないと突っ返す民子の姿を目撃する。民子は喜翆荘の板前であり、先輩でもある宮岸徹に思いを寄せていた。しかしそんな民子の思いは徹になかなか伝わらず、民子はもどかしい思いをしていた。

景気が悪い喜翆荘と喜翆荘の評価

番頭である四十万縁は大学時代からの知り合いの経営コンサルタントの川尻崇子を雇っている。彼女は月に1度、喜翆荘を訪ねているが、崇子の提案は従業員とスイからは不評であり、縁は落ち込む。

旅行雑誌で喜翆荘のある湯乃鷺温泉街が特集されることを知った緒花。旅館ランキングで上位になればお客も増え、スイからも労ってもらえるのではと考える。常にお客が少ない喜翆荘は従業員の菜子と徹が休みを取っていたが、急に宿泊客が増える。人手が足りずスイも仲居の手伝いをしようとした矢先、スイは倒れて入院する。スイが不在にしている時こそ自分が頑張らねばと縁は気張るものの、結局崇子に頼る。崇子は旅行雑誌の湯乃鷺温泉の特集のために覆面雑誌記者が潜り込んでいるといい、覆面記者を割り出し、そのお客に対していつも以上によいもてなしをするべきだと言う。しかし、緒花はスイが言っている通りどの客にも平等にもてなしをするべきだとし、菜子と徹を呼び戻す。そんな最中、東京から孝一が緒花を訪ねに来るものの、既に喜翆荘は満室で結局緒花に会うことはできず、帰ってしまう。

旅行雑誌の記事で喜翆荘に対してつけられた評価は10点満点中5点だった。どの客にも精一杯のもてなしをしたはずなのに厳しい評価をされたことに納得の行かない緒花は、ひとりで東京の雑誌社に乗り込む。記事を書いたのは母・皐月だと知り、「なぜ来てもいないのにこのような評価を付けられるのか」という皐月を責める緒花。「一度喜翆荘を見に来てほしい」という緒花の説得に折れて休暇を取り、皐月は客として喜翆荘を訪れることを決める。緒花は孝一がアルバイトをしている書店を見に行くと、そこには孝一に片思いをしている五十嵐波子がいた。波子は緒花に対し、「いつまでも孝一の心を縛らないでほしい」と言う。緒花はそんな波子を見て、もうこれ以上孝一を振り回してはいけないと思い、孝一から離れていく。

スイは喜翆荘を訪れた皐月を接待するを菜子に指名する。皐月は本来は女将ですら入ることがタブーである板場に入り、十年一律のメニューに対して全てを変えるのではなく変化をもたせること、温泉に対してはいつでも入れるようにするべきだとアドバイスをする。そんな皐月のアドバイスに対し、スイは「そんなことを聞いて何になる」と最初は突っぱねるが、スイは「あの客は一見さんでありながら一見さんではない」と皐月の好きなちくわの煮物を作って出すなど、皐月のためのもてなしを緒花と共にする。皐月が去った後日、「十年一律のごとく守り抜くための従業員の気概を感じる」と皐月に絶賛された記事を喜翆荘の従業員は目にする。

修学旅行で結名の許嫁が経営する旅館に宿泊する緒花

高校の修学旅行で宮崎を訪れていた緒花たち。緒花は客として他の旅館を見学する機会はなかなかないと意気込む。宿泊先の旅館にいたのは結名の親戚である日渡洋輔が番頭をする旅館。結名と洋輔は許嫁でもあった。若くして番頭になった彼は旅館の仕事に対して愛着はあるものの、空回りしているきらいがあった。洋輔は専業の仲居は不要で、人件費削減のために機械を導入し、必要な時だけバイトで仲居を雇えばよいと考えていた。しかし人件費削減のために機械を導入したものの、機械が故障したときの対応まで考えていなかった。厳しい指導をする洋輔に対して、バイトの仲居たちは反発し、一斉に辞めてしまい、人手が足りなくなってしまう。旅館の仕事の大変さを知っている緒花は、修学旅行の自由時間に仲居の仕事を手伝うことにする。洋輔の父である社長は緒花に仲居の仕事を頼み、あとから民子と菜子も手伝う。旅館の仕事には興味がない結名は「洋輔君は番頭の仕事に向いていない。もっと自分の好きなことをすればいいのに」と言うと、つらいことがあってもそれでも旅館の仕事が好きだという洋輔。洋輔は旅館の仕事を今はやりたいと考えていない結名と許嫁の関係を解消し、一から旅館業のことを学び直し、「働く人のことを考えられる番頭」になろうとする。

喜翆荘に映画撮影の話が舞い込む

喜翆荘では映画の撮影、そしてその映画への出資の話が崇子を介して持ちかけられていた。映画製作には喜翆荘を舞台にして、さらに現地の人も積極的にキャスティングすることにもなっていた。スイは映画製作の話を縁にすべて一任した。縁は湯乃鷺温泉、喜翆荘の起死回生を図り、映画製作に同意をする書類に押印し、多額の金を払ってしまう。一方スイのもとには皐月から電話が入り、映画製作の話には乗らないようにと忠告をする。しかし時すでに遅く、書類に押印した後、プロデューサーの伊佐美轍夫と連絡がとれなくなってしまっていた。実は映画製作は詐欺であり、話を崇子に持ち掛けてきたプロデューサーの伊佐美は映画詐欺の常習犯であるという。東京へと向かい、伊佐美からだまし取られた金を取り返しに行こうと決意する。皐月の協力もあり、その後、崇子は伊佐美を警察を引き渡すことに成功する。

香林高校の文化祭

高校の文化祭「香林祭」の準備に大忙しの緒花たち。学校の行事にはしっかり参加するようにスイからも言われていた。文化祭で「姫カフェ」を企画することになった緒花たちのクラス。クラスの「モテの二大巨頭」である結名は接客チームのリーダー、民子は料理チームのリーダーとなる。緒花は仲居の経験を活かし接客チームの講師を任される。最初はあまり乗り気でない民子だったが、徹の「文化祭当日の昼間は暇だ」というひと言で民子は徹が「姫カフェ」に来るかもしれないと張り切り出す。民子は最高の料理を作ろうといろいろと考えるのだが、教室の設備では民子が考えてきたメニューを作るのは難しいとチーム内から言われる。教室の設備を使うのであればオムライスを作ろうという意見が料理チームの女子から提案されるが、おいしいものを提供したいと考える民子は「教室にある設備ではおいしいオムライスを作ることができない」と却下する。すると料理チーム内のメンバーである階戸雪が民子に異議を唱えた。雪は同じクラスの霧人に対し、中学生の頃から思いを寄せており、そんな彼のためにオムライスを作りたいと思っていた。一方霧人は民子のことが好きで、何度も告白をしていたが、徹に思いを寄せる民子は霧人のことは目にもくれていなかった。雪は民子が考えているメニューの中にオムライスが入っていなかったこと、民子が霧人を振ったことを怒り、泣き出す。

料理チームのメンバーは雪に味方し、民子は一人で準備をすることになる。そこに緒花が手伝いに入るものの、民子は手伝いは不要だと突っぱねる。緒花も民子もお互いに意見を譲らないでいたところ、結名と菜子、民子以外の料理チームのメンバーもやってきた。結名は「接客チームの緒花が料理チームを手伝うのではなく、本来民子の手伝いをするべきは料理チーム」だと民子と緒花の間に入って仲裁しつつも、料理チーム内の雰囲気は気まずいまま。そんな中、菜子の「オムライスを食べたいな」という一言で民子は菜子、緒花、結名、料理チームのメンバーの分のオムライスを作ることになる。民子のオムライスを食べたことで雪をはじめとする料理チームのメンバーは民子と和解し、教室の設備でも作ることができるオムライスを試作していく。試作の結果、みんなで作った「みんな風オムライス」が出来上がり、文化祭当日、雪は霧人に、民子は徹にオムライスを出す。

喜翆荘番頭・四十万縁と川尻崇子の結婚

突然、縁が崇子と結婚することを言い出す。崇子はスイに対し「旅館の仕事をライフワークとして継ぐつもりがある」と言うものの、スイの反応は「好きにしな」とつれない。スイは縁に崇子との結婚を許す条件として、自己満足でするものではなく、喜翆荘の番頭として結婚式を挙げるようにと言う。しかしホテルでの挙式は値段が高くどうしたらいいか悩む縁と崇子に、緒花は喜翆荘で結婚式をしたらどうかと提案し、喜翆荘で挙式をすることに決まる。スイから好意的な感情を向けられていないだろうと思っていた崇子はスイの部屋をたずね、縁との結婚を白紙に戻させてほしいという。スイは仏壇から亡くなった夫からもらった翡翠の指輪を崇子に見せる。スイと亡くなった夫の四十万誠司は40余年前、別の旅館で働いていた。勤め先の社長を介して跡取りのいない旅館を引き受けることになったことがきっかけで、これまで勤めていた旅館を辞め、喜翆荘の立ち上げに日々奔走していた。スイと誠司には結婚式をする余裕すらなかった。「喜翆荘」という名前は誠司が「スイ(翆)が喜ぶ旅館」という意味を込めてつけた。スイは「結婚というのは本当の一人には絶対にならない。絶対にさせない。」約束なのだと崇子に告げ、「縁をよろしく頼む」と頭を下げた。だがスイには縁と崇子に喜翆荘を継がせるつもりはなかった。

スイの決意とぼんぼり祭り

スイは「ぼんぼり祭り」を機に、喜翆荘を閉めようと考えていた。喜翆荘の経営は長い間苦しかったことに加え、喜翆荘の仕事は亡くなった夫とスイの夢ではあるが、子どもである皐月や縁にまで押し付けるものではなかった。
そんなスイの気持ちを誠司の墓参りの際に聞かされた緒花と、「喜翆荘はぼんぼり祭りで終いにする」とスイから告げられ、動揺する従業員たち。なんとかして喜翆荘を立て直そうとする縁は、ぼんぼり祭りの観光客に多く泊まってもらえるようにと、いつもよりも多く客を受け入れていた。その対応に追われる従業員たちと、スイの考えを知る緒花の間には微妙な温度差が生じていた。そして客の対応に追われ、人手が足りず、連携が取れない状態になってしまった喜翆荘。番頭としての能力の限界を感じ、山積する問題に頭を抱えていた縁の前に現れたのが緒花の母・皐月だった。そして元仲居であったスイも立ち上がり、縁に「番頭として仕事の采配をするように」と言い、宿泊客の対応に再起する。
仕事がひと段落し、ぼんぼり祭りに行く喜翆荘の面々。ぼんぼりに下げられた「のぞみ札」の中にあった緒花の「四十万スイになりたい」という願いを見つけたスイと皐月。そして東京からは緒花に会うために孝一がやって来ていた。緒花は孝一に「好き、こうちゃんが、こうちゃんが、好き、大好きです!」と告白をする。
祭りが終わり、建物は保存の上で旅館の喜翆荘は店じまいとなり、緒花は皐月のいる東京に戻ることになった。従業員一同は、また戻ってくる事を心に決め、それぞれの道を進む。

『花咲くいろは』の登場人物・キャラクター

松前緒花(まつまえおはな)

CV:伊藤かな恵

母の夜逃げをきっかけに祖母が営む旅館にアルバイトで住み込みで働くことになった高校二年生。
喜翆荘に来るまでは、今の自分を変えたいと思いつつも何がしたいのかよくわからない状態だった。自由奔放な母を見て育ってきたせいか「誰かに期待をしても傷つくだけだ。だったら最初から期待しなければいい」と諦観すらしていた。現実的でスレたことを言い、母の皐月からは「子どもが言うセリフじゃない」と言われることも。
仕事ばかりしていた母に代わって幼稚園児の頃から家事をやっており、掃除や料理も難無くこなす。同じ喜翆荘の学生従業員でもある民子や教育係の菜子、ライバル旅館の福屋の和倉結名と同じ学校に通う。
活発で明るく前向きな性格。一本気で熱い性格ゆえに、考えるより先に行動に出てしまう向きが強いため、それが原因で大騒動の火元となってしまうことも。場の空気が読めないところがあり、本人も自覚している。
喜翆荘で働くうちに旅館の仕事に大きな魅力を感じ、この仕事に誇りと愛情を抱くようになる。
名前の由来はハワイ語で「家族」を意味する「ohana」から。

鶴来民子(つるぎみんこ)

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