宝石の国(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『宝石の国』とは、市川春子による漫画作品、および漫画を原作としたアニメ作品。アニメーション制作は「オレンジ」が担当した。今から遠い未来、星の生物は不死の体を持つ宝石になっており、宝石を装飾品にするために月から飛来する「月人」と28体の宝石たちとの戦いを描いている。美しい作画と作中に散りばめられた謎が魅力の作品となっている。

『宝石の国』の概要

『宝石の国』とは市川春子による漫画作品。2017年10月にアニメ化した。
制作会社は「オレンジ」、監督は『ラブライブ!』や『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』を担当した京極尚彦が務める。

今から遠い未来、星の生物は長い時間の中で微小生物(インクルージョン)に食われて無機物となり、意思を宿した宝石となった。
宝石たちには月人と呼ばれる敵がいた。月人はどこからか飛来してきて、宝石たちを装飾品にしようと攫っていく。宝石たちは月人たちとの戦う日々を過ごしていた。28体いる宝石の一つ「フォスフォフィライト」は体が脆すぎて戦うことを許されていなかった。不器用で他の仕事も任されていなかったが「博物誌作成」を命じられる。

『宝石の国』のあらすじ・ストーリー

フォスフォフィライト

今から遠い未来、星の生物は長い時間の中で微小生物に食われて無機物となり、意思を持つ宝石となっていた。28体いる宝石たちは、金剛先生と呼ばれる存在に束ねられており、宝石を攫って装飾品にしようとする謎の敵・月人と戦っている。主人公のフォスフォフィライト(フォス)は、硬度が「三半」と非常に脆く、月人に好まれる色をしていたため、戦いに出ることを禁止されていた。そんなフォスが与えられた仕事は「博物誌の編纂」だった。フォスは博物誌について知るため、一人で夜の警備の仕事をしているシンシャを探しに行く。しかし日暮れになり、岬で月人に襲われてしまった。そこへ毒液をまとったシンシャが現れ、フォスを守ってくれたのだった。シンシャは身体から無限に出てしまう毒液のせいで孤独だった。シンシャはフォスに協力する姿勢は見せないものの、博物誌の編纂に役立つであろう、名前がない植物のある場所をフォスに教えてくれた、そんなシンシャに対して、フォスは「夜の見回りよりずっと楽しくて、君にしかできない仕事を僕が必ず見つけてみせるから!」と声をかけるのだった。

フォスはダイヤモンド(ダイヤ)が新しい戦い方を試しているという話を聞き、ペアのボルツと共に見回りへ行っているダイヤに話を聞きに行った。しかしそこへ月人たちが現れ、宝石が暮らす「学校」へ向かっていく。月人たちはボルツが殲滅したが、月人が落としてきた巨大なカタツムリのようなものにフォスは飲み込まれてしまった。カタツムリは海へ落としたことで収縮し、大人しくなったが、フォスの姿が見つからない。ダイヤが「フォス、どこ行っちゃったんだろう」と呟くと、カタツムリが飛び跳ねて反応を示したため、ダイヤはフォスがカタツムリになってしまったのだと思い込む。

ダイヤは夜の岬で出会ったシンシャに新しいフォスを紹介するが、シンシャはそれがただのカタツムリであるということと、フォスを元に戻すヒントを与えた。そしてダイヤは他の宝石と協力してフォスを復元したが、目を覚ましたフォスはカタツムリの声が聞こえるようになってしまっていたのだった。

アドミラビリス族の王ウェントリコスス

カタツムリは自分のことを、アドミラビリス族を束ねる王・ウェントリコススだと名乗った。アドミラビリス族は近海に住む生き物だが、美しい殻を持つがゆえに月人に連れ去れ、飼われるうちに肥大化し、思考を奪われたのだという。2人でウェントリコススの故郷だという海へ行くと、ウェントリコススは人型の姿に変化した。しかし突然の月人の攻撃によってフォスは足を砕かれてしまった。フォスはウェントリコススに騙され、弟であるアクレアツスの引き換えとして連れてこられたのだ。しかし途中でアクレアツスが目を覚ましたため、人質の交換はうまくいかず、フォスも解放されることになった。フォスの失われた足はアクレアツスの貝殻によって代用されたが、失った身体と共に記憶も大量に失われてしまったのだった。

新しい足によって高速で走ることができるようになったフォスは、金剛先生に「この足の速さを生かして戦いに出たい」と申し出る。しかし剣をまともに扱うことができないため、剣の達人である双晶のアメシストの見回りに同行させてもらうことになった。見回りに同行して3日目、3人の前に月人が襲来した。アメシストたちはあっという間に月人を切り倒していくが、不審な大きな月人を調べようとしたところ、見慣れない兵器に四肢を砕かれ捕らえられてしまう。アメシストたちは連れ去られる寸前にボルツや先生に助けられたが、フォスはへたり込んでしまっており、何もすることができなかった。

フォスは修理が完了したアメシストたちに土下座して謝罪したが、アメシストたちからも「怖い思いをさせてごめん」と逆に謝罪されてしまった。自分を恥じながら走り出したフォスは、浜辺を歩くシンシャの姿を見かけたが、今話せることなんかないと考えて身を隠してしまったのだった。

アンタークチサイト

冬になると、宝石たちは冬眠する、冬の守りは金剛先生と、普段は液状化しているが気温が下がった時のみ結晶化するアンタークチサイト(アンターク)に任されている。何故か眠気が来なかったフォスは、アンタークの流氷砕きの仕事を手伝うことになった。身体にヒビを入れながらも流氷砕きを手伝うフォスだったが、ある時、「大丈夫?」という声を聞いた。アンタークによると、流氷も宝石と同じ鉱物であるため、言葉のような声を出しているという。アンタークにある程度認められたものの、脚力ほどの腕力がないことを気にするフォス。いっそのこと腕を切り落とそうかと考え、すぐに我に返るフォスだったが、「でも強くなれるよ」という流氷の声を聞き、手を滑らせて流氷の割れ目から落ちてしまった。気づいたアンタークがすぐに引き上げたが、フォスの両腕は失われてしまっていた。

2人は宝石たちが生まれた場所である「緒の浜」で腕の材料を探したが、あるのは金や白金ばかりで使えそうなものがない。アンタークは仕方なく金と白金の合金をフォスの腕に仮止めしたが、そのとき空が晴れ、月人が現れてしまう。さらにフォスの身体は、肥大化した合金によって包み込まれてしまった。アンタークは月人と戦ったが、見たことのない兵器によって腕を奪われてしまう。激高したアンタークは月人たちを倒すものの、新しく来た月人の矢に撃たれ、粉々に砕けてしまったのだった。

フォスは連れ去れたアンタークに代わって淡々と冬の仕事をした。失った身体の一部を髪の部分の宝石で補強したことから、髪は短くなっている。合金の腕を手に入れたことで、フォスは月人を倒せるようになっていた。そんなフォスに興味を持ったボルツがペアを組むことを打診してきたため、ダイヤのことを気にしつつも、ボルツと組むことになった。

翌日、ダイヤを残してフォスとボルツは2人で巡回に出かけた。その時、見たことのない二重に重なった黒点が現れ、阿修羅像のような月人が出現した。現在、金剛先生が眠ってしまったため、宝石たちは全員巡回に出ている。ボルツはそれを逆手に取り、学校に月人をおびき寄せ、金剛先生を起こして月人を倒すことにした。しかし学校にはダイヤが残っていた。ダイヤは一人で月人に立ち向かい、身体を欠損してしまったが、何とか一人で月人を倒すことができたのだった。ボルツが駆け付けたとき、倒したはずの月人は2人に増えていた。ボルツは分裂した月人の1体を倒したが、今後は4体に増えてしまう。フォスと学校に残っていたアレキサンドライト(アレキ)が残りの月人を倒したが、月人の残骸は大量の小型の犬のような姿に分裂していた。

逃げ出す犬たちを追いかけ、すべて捕獲する頃には、宝石たちは疲労困憊の状態になっていた。その時、犬が合体して元の月人の姿になり、鳴き声を上げた。その声によって目を覚ました金剛先生は、月人を見て驚いたような顔をし、月人に対してお手やお座り、伏せなどの命令をした。そしてまだ月人の片手が戻っていない様子を見て取ると、「シロ、お前、手はどうした?」と尋ねたのだった。

先生の様子から、フォスは先生は月人と何らかの関係があるのではないかと考える。外を歩きながら考え込んでいたフォスに、前からやってきたシンシャがボルツの靴と犬のような月人一匹を投げてよこした。フォスが「先生が隠し事をしているような気がする」とシンシャに相談すると、シンシャは「月人との関係か?」と平然と言い放った。そして「みんな知ってる。正確には全員が感づいているだけで、本当のことは誰も知らない。暗黙の内にそれがどのような間違いでも先生を信じると決めたわけだ」と続けるのだった。

フォスが学校へ戻ると、宝石たちと眠っていたシロが起き上がり、先生に寄り添って霧散してしまった。フォスが「月へ帰っているのですか?」と聞くと、先生は「いや、もう満足らしい」と答えたのだった。

金剛先生の秘密と新しい仕事

月人のことを知るには本人に聞くしかないと考えたフォスは、月人を待つことにした。そこへ、ルチルが声をかけてきた。ルチルはかつてペアを組んでいたパパラチアの部品を探しに緒の浜へ行くのだという。最近では他の宝石を差し込んでも目を覚まさなくなっていたパパラチアだったが、フォスが拾っていたルビーを使うと不意に目を覚ました。ルチルと言葉を交わしたパパラチアは、フォスを見て雰囲気が変わったことに驚いていた。フォスが「聞きたいことがある」と切り出すと、パパラチアは一緒に外で出てきてくれた。フォスが「月人と話してみたい。そして自分で本当のことを見極めたいと思ってる。それもやっぱり悪いことかな?」と尋ねると、パパラチアは驚いたような顔をして、自分はルチルに自分のことを諦めてほしいと思っている、という話をしてくれた。そして、「清く正しい本当が、辺り一面を傷つけ、全く予想外に変貌させるかもしれない。だから冷静に、慎重にな」と言うと、その場に倒れこんで眠りについてしまった。

日が暮れ、フォスが岬へ向かうと、そこには月人の姿があった。フォスは月人の一人を捕まえ、合金の幕の中へ引きずり込む。首を締めあげながら尋問すると、月人の目に黒目が現れ、「ふ……」というような声が聞こえた。しかしそこでシンシャが現れ、有無を言わさず月人を攻撃して溶かしてしまった。

夜になり、仕事に出てくるシンシャをフォスは待ち構えていた。逃げ出すシンシャを追いかけながら、フォスは「君にしかできない仕事を見つけた」と声をかける。「正確には君としかできない仕事だ。手伝って欲しいんだ」とフォスが言うと、シンシャは「”楽しい”はどうした?楽しいが抜けてる!”夜の見回りより、ずっと楽しくて、君にしかできない仕事、僕が必ず見つけてみせるから”、お前、そう言ったろ」と言う。そんなシンシャに対して、フォスは「”楽しい”は無理だ、ごめん」と謝罪し、「手伝って欲しいのは、僕と一緒に先生と月人の関係を暴く仕事だ」と続けた。シンシャは「楽しくなさすぎる!」と叫んだが、フォスはそれでも「いつも側で、君の審判を聞かせて欲しい」とシンシャに協力を求めた。そして、「僕には君が必要だ。また来る」と言ってフォスは立ち去ろうとしたが、その背中に向けて、シンシャは「組むだけなら、別に……」と呟くのだった。

その日もフォスは月人を待っていた。モルガから先生が呼んでいると声を掛けられたフォスは、先生の元へ向かった。脳裏には、パパラチアの「だから冷静に、慎重にな」という声がよぎるのだった。

『宝石の国』の登場人物・キャラクター

宝石

意思を持った宝石。宝石の種類はみんな違う。それにより硬度、靭性がそれぞれ違う。性別はなく、生殖もしない。
宝石たちを装飾品にしようとする月人と争っている。
硬度が違う宝石たちがぶつかると、硬度が低い宝石が割れてしまう。なので布の上から触るなど、直接体に触らないように気をつけなければならない。
体が砕けてもある程度宝石を集めれば宝石に内包される微小生物がつなぎ合わせてくれる。
宝石がかけるとそれに応じて記憶を失ってしまう。
肌のように見えるのは白粉(おしろい)を塗っているからである。それ故に海に入る場合などは対塩樹脂を塗らなければならい。
光を栄養としており、日が差さない夜には活動能力が制限される。
アドミラビリス族の言い伝えによると、人間が長い時間により「魂」「肉」「骨」に分離し、その「骨」に当たるものが宝石らしい。

フォスフォフィライト(CV:黒沢ともよ)

愛称は「フォス」。燐葉石。硬度は「三半」、靭性は最下級である。月人が好む宝石の色をしている。
先生の怒号や、他の宝石に手袋などをせずに素肌のまま触ると砕けてしまう。その脆さや、月人に狙われてしまうので戦いには出されない。
どうしようもない不器用なので他の仕事につくことも出来ていなかった。
戦いに出ることを望んでいるが、その体質故に許されず、「博物誌編纂」を命じられる。「博物誌編纂」の仕事は地味で気に入らないらしく、シンシャを仲間にしてさっさと終わらそうと考えている。

ウェントリコススに騙されて海に行った時に両脚を失った。その代わりにアクレアツスの貝殻を義足にし、早く走れる脚を手に入れた。そのおかげで戦いに出ることを許されたが、何もすることができずアメシストが危険にさらされた。
自身の無力さを知って、冬眠をせずアンタークと一緒に働いていたが、流氷にそそのかされて両腕までを失う。アクレアツスの貝殻はすでになくなっており、仕方なく「柔らかく、重い」とされる金をつけた。当初はどうすることもできなかったが、アンタークがさらわれたことをきっかけに金の腕を操った。
金の腕は伸縮自在で、液状化・硬質化を自在にできる。金の重さで全身にヒビが入ったが、そのヒビから液状化した金が入り込み全身を補強した。液状化の状態であれば月人たちの矢を無効化できる。硬質化して足場を作ることもできるが、硬度は高くなさそうである。

アンタークを月人にさらわれて以来、アンタークを真似た髪型にし、アンタークの代わりになろうとする。外見も内面も大きく変わり、冬眠から覚めた宝石たちは変わり果てたフォスの姿に驚いた。
合金の腕を手に入れた事で戦いにも出る様になり、新型の月人を破壊してアンタークを取り戻そうとしている。
眠りに入るとアンタークがさらわれたシーンがフラッシュバックするため、不眠症になっている。
起きている時もアンタークの幻を見る様になった。

先生と学校に現れた月人・しろが懇意にしているのを見て、先生と月人が繋がっているのではないか、という疑問を持つ。
それを調べるためにシンシャに「先生と月人の関係を暴く仕事」を頼む。

アンタークを失って変貌したフォス

シンシャ(CV:小松未可子)

辰砂。硬度は「二」で、28体の中でも最も低い。
無尽蔵に銀色の毒液を沸かせてしまう。宝石がその毒液を浴びると宝石が濁ってしまい、光を通さなくなる。光を栄養としている宝石たちはその部分を削ってしまうしかないが、宝石を削るとその分記憶を失ってしまう。
毒液をコントロールできずに、迷惑をかけまいと配慮をしているが、他の宝石からは恐怖されている。
宝石たちが夜に出歩くことはないが、毒液で夜の少ない光を集め行動することができる。それ故、夜の警護の仕事を与えられた。しかしこれまで夜に月人たちが現れたことはない。つまり宝石たちが距離を取るためにその仕事を与えられた。
口ではフォスを罵倒するが、密かにフォスに期待している。

後にフォスから「先生と月人の関係を暴く」という仕事を依頼される。当初は「楽しくなさすぎる!」と反発したが、「組むだけなら…」とフォスのペアになることを了承した。

金剛先生(CV:中田譲治)

剃髪をして袈裟を着ている。その姿はまるで仏教僧のようである。
硬度は明らかになっていないが、宝石の中でも硬いようで、瞑想(先生が寝ることをこう呼ぶ)から先生をジュードが起こそうとした時には腕が折れていた。
宝石達を取りまとめている。月人達が襲来する予兆があれば金剛先生に報告しなければならない。
報告もなしに月人のところへ向かったモルガとゴーシェを一喝した。戦闘能力は突出しており、モルガとゴーシェを一喝した際にその衝撃でフォスは粉々になってしまった(フォスが脆すぎるというのもあるが)。多数の月人も宝石のかけらのようなものを放ち一瞬で消し去った。
なんの仕事も任せることができなかったフォスに「博物誌編纂」の仕事を命じた。
他の宝石たちから愛されており、フォスは戦場に出る理由を「先生が大好きだから助けたいんです。」と言っている。アンタークチサイトも毎年冬になるとハグを求めている。

学校に現れた月人・しろの事を知っているらしく、仲良くしていた。
その事がきっかけでフォスは先生と月人の関係を疑うようになった。

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