8 1/2(Otto e mezzo)のネタバレ解説・考察まとめ

『8 1/2』(イタリア語タイトル『Otto e mezzo』)は1963年に公開された、イタリア人映画監督フェデリコ・フェリーニによる自伝的コメディドラマ映画である。
単独監督作品を1作、共同監督作、短編作を0.5作とカウントし、本作がフェリーニの8.5作目に当たることからタイトルがつけられている。1963年の第36回アカデミー賞で最優秀外国語映画賞、監督賞、脚本賞、美術賞の4つの賞を獲得した。
映画監督のグイドの苦悩、そして彼が理想の世界へと現実逃避するさまを描いている。

『8 1/2』の概要

『8 1/2』はフェデリコ・フェリーニによって1963年に製作・公開されたモノクロ映画である。日本では「はっか にぶんのいち」と読み、「フェリーニの8 1/2」とも呼ばれることもある。イタリア語のタイトルは『Otto e mezzo』。「8と半分」の意味であり、今作がフェリーニにとって8.5作目の監督作品であるということが由来となっている。フェリーニはこれまでに6本の単独監督作と2本の短編作、同じくイタリア出身の監督アルベルト・ラットゥアーダとの共作作品を1本を制作しており、短編作と共同作を0.5本とカウントすると「8 1/2」は文字通り8.5作目に当たる。また当初は脚本を共同で担当していたエンニオ・フライアーノが「The Beautiful Confusion」というタイトルを提案していたが、フェリーニが断っている。
今作はフェニーリの自伝的作品とも呼ばれており、マルチェロ・マストロヤンニが演ずる主人公のイタリア人映画監督グイドが新作の構想に難儀し、療養のために温泉地へ訪れるところからストーリーが始まる。

本作は1963年のアカデミー賞において最優秀外国語映画賞、衣裳デザイン賞(白黒)を獲得している。現実と想像の世界を行き来する、その実験的な作風は後の映画に与えた影響力の大きさから英国映画協会が選ぶオールタイムベストムービーの3位にランクインしている。また2010年にはエンパイアマガジンが編集した最高の映画ベスト100で62位にランクインした。
1963年の今作の封切り後、新しい表現形式の実験を試みる若いイタリアの詩人、作家、評論家、学者などが『8 1/2』に触発されて作家集団「グルッポ63」を結成した。
フェリーニの伝記作家であるトゥリオ・ケツィクは"世界中の映画監督によって多くの『8 1/2』の模倣作品が作られた"と述べている。トゥリオ・ケツィクは『8 1/2』に影響を受けた作品として、『アリス・イン・ワンダーランド』(ポール・マザースキー監督、1970)、『聖なるパン助に注意』(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督、1971)、『アメリカの夜』(フランソワ・トリュフォー監督、1974)、『オール・ザット・ジャズ』(ボブ・フォッシー監督、1979)、『スターダスト・メモリー』(ウッディ・アレン監督、1980)、『ア・キング・アンド・ヒズ・ムービー』(カルロス・ソリン監督、1986)、『リビング・イン・オブリビオン』(トム・ディチロ監督、1995)、『脳内ニューヨーク』(チャーリー・カウフマン監督、2008)、『グレート・ビューティー』(パオロ・ソレンティーノ監督、2013)などの作品を挙げている。

他にも1982年にトニー賞を受賞したブロードウェイミュージカルの『ナイン』は本作を下敷きにしている。『ナイン』ではグイドが女性に振り回される描写が強調されている。2003年にはアントニオ・バンデラスを主演に再上映され、2009年にはロブ・マーシャル監督によって映画化もされた。
1993年アメリカのロックバンドR.E.Mの曲「Everybody Hurts」のミュージックビデオは『8 1/2』のオープニングを引用している。

『8 1/2』はクリエイティブな作業における技術的な困難や個人的な問題から起きる奮闘をテーマに扱っている。また、厳しく制限された制作スケジュールなどのために直面するアーティストの苦悩も表している。映画を見るとさまざまな困難が起こる中でも人生の意味を見出して行くことについてもテーマとして扱っている。グイドが時間や周りの人間に追われる様子を用いて、この頃の多くのイタリアの映画同様、近代化に対しての批判も含んでいると言われる。
イタリア人作家のアルベルト・アルバシーノによると、フェリーニの映画は1930年に書かれたロベルト・ムージルの『特性のない男』という小説と似た性質をもっている。

『8 1/2』のあらすじ・ストーリー

有名イタリア映画監督のグイド・アンセルミはスランプに陥っていた。彼が制作中である新しいSF映画も芸術性や舞台美術の準備の難しさから次第に興味を持てなくなっていた。

温泉地にて自らの不安を取り除こうと模索している最中、グイドは有名な映画批評家に出会い、新作のアイデアについて意見を述べたが、批評家はそれを酷評する。そうして彼は構想していた物語のキーになる女性について再考し始めた。彼の愛人であるカルラがローマから彼を訪ねやってきたが、グイドは自分が泊まっているホテルとは別の場所へ彼女を泊らせ、ほとんど無視するようにあしらった。

映画の制作スタッフはグイドに映画制作に戻ってもらうべく、彼の宿泊先を移動させたが、彼はスタッフをかわし、ジャーナリストを無視し、おまけに俳優には役の説明もしないままだった。映画の撮影を始めないといけないというプレッシャーから、グイドは想像の中で子供の頃の記憶にたどり着いた。その記憶とは、子供の頃のある日の夜に祖母の家で過ごし、娼婦と海辺で踊っていると彼が通っていたカトリックスクールから罰を受けた、というものだった。この記憶を聞いた批評家は感傷的な上に曖昧過ぎて映画には使い物にならないと一蹴したが、だんだんと想像と現実の区別が曖昧になっていく。幼少の頃の記憶をマリア像に懺悔した後、再び想像の世界で娼婦のいる海辺へ向かった。

グイドは別居中の妻ルイーズと彼女の友人を撮影地に呼び出した。友人らは踊りながらグイドとルイーズの中を取り持とうとするが、グイドは彼女を撮影スタッフに任せ、その場を去る。

映画を撮影したい気持ちは出てくるがなかなか上手くいかない彼は途方にくれ、またもや想像の世界に入る。そこではグイドが妻と一緒にいるときに愛人のローラが現れ、修羅場が訪れる。

再び現実に戻り、撮影現場に行くとサーカスの楽隊とこれまでに現実世界と想像世界に出てきた全ての人物が目の前に現れ、全員が手を取りながら輪になり踊り出した。グイドはカメラテストを行いながら、そのカーニバルの指揮を始めるのだった。

『8 1/2』の登場人物・キャラクター

グイド・アンセルミ(演:マルチェロ・マストロヤンニ)

出典: the-artifice.com

本作の主人公。
有名な映画監督で新作の制作に取り掛かるが様々な事情からうまくいっていない。

ルイーズ・アンセルミ(演:アヌーク・エーメ)

出典: www.repstatic.it

主人公グイドの妻である。
グイドとの関係は冷え切っている。

クラウディア(演:クラウディア・カルディナーレ)

主人公グイドがかねてから自身の映画に出演を依頼していた映画女優。

カルラ(演:サンドラ・ミーロ)

出典: 4.bp.blogspot.com

グイドの愛人。グイドに呼ばれ撮影現場に現れる。

ロッセーラ(演:ロッセーラ・フォーク)

出典: 4.bp.blogspot.com

グイドの妻ルイザの親友である。
グイドが唯一心の内を明かすことができる人物でもある。

『8 1/2』の用語

空想

現実にはあり得ない事、現実とは何ら関係のない事を、頭の中だけであれこれと思いめぐらすこと。本作は現実とグイドの空想が織り交ぜとなった作品で、どこからどこまでが現実で、どこからが空想なのかまったくわからない混沌とした展開となっている。

自伝

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