探偵物語(Tantei Monogatari)のネタバレ解説・考察まとめ

「探偵物語」は、ハードボイルド作家・小鷹信光の原案をもとに、1979年9月から1980年4月にかけて日本テレビ系列で全27話が放送されたTVドラマ。私立探偵の工藤俊作(松田優作)が、様々な依頼を引き受け、刑事たちに邪魔者扱いされながらも街の仲間たちと事件の解決に乗り出す。主演の松田優作は、それまでのハードボイルドなヒーロー像から一変、コミカルな演技と独特のスタイルで、彼の伝説的な作品となった。

『探偵物語』の概要

「探偵物語」は、1979年9月18日から1980年4月1日まで日本テレビ系列で全27話が放送された1話完結のテレビドラマ。
当時「大都会」シリーズなどアクション路線を強調していた日本テレビ火曜夜9時枠の作品として、放送初期の視聴率は20%前後という高い水準で推移していたが、中盤以降は10%台前半にまで大きく数字を落とす結果となり、一時マイナー作品として見られていた。だが主演の松田優作が亡くなった直後の1989年に追悼企画として再放送されたのを機に新規のファンを増やし、さらに1997年の再放送では松田優作ブームが再燃。現在では彼の伝説的な作品として幅広い世代に強い影響を与えている。

原案はハードボイルド作家で評論家の小鷹信光。小鷹が「原作」ではなく「原案」とクレジットされているが、ドラマ用の企画から派生したものだからであり、企画段階では小鷹自身のハードボイルド論に基づいて本格的な主人公の設定が提案されていた。しかし実際の映像ではアドリブが頻発するなど、本気と冗談が入り混じった独特の世界観が築かれている。
私立探偵・工藤俊作を演じる松田優作は、それまでの彼のイメージである、シリアスでニヒルなハードボイルドのヒーロー像を一変、口数が多くコミカルなキャラクターに終始し、アクションシーンにも果敢に挑戦している。

なお、松田優作が同じく探偵役を演じた赤川次郎原作の角川映画『探偵物語』とはストーリー・設定上の関連は一切なく、全くの別作品である。

『探偵物語』のあらすじ・ストーリー

東京に事務所を構える私立探偵・工藤俊作。
日曜日と午前中は仕事をしない主義なので、昼頃までピンクのパジャマにアイマスクで寝ているのだが、調査の依頼者は朝に訪ねて来ることが多く、よく起こされる。起きるとパジャマを着たままトイレで用を足しながら歯を磨くのも習慣である。
起き抜けには、コーヒーメーカーで自作のブラックコーヒーを飲む。たまに行き付けのマスターの店で飲むこともあるのだが、ブレンドにはかなりうるさく、覚えの悪いマスターをよく叱っている。また、事務所でコーヒーを飲んでいると、同じビルに同居しているファッションモデルのナンシーと女優の卵であるかほりが世話を焼きにやって来る。二人とも仕事が無いのでヒマなのである。

仕事には、黒いスーツと派手なカラーシャツにサスペンダーに無地のネクタイ、時々は白や茶のストライプスーツを着ることもあるが、ソフト帽を被り、サングラスを掛け、愛車のベスパP150Xに乗って颯爽と出掛ける。
事務所のある街には、骨董屋、ポン引き、トルコ嬢、ニセ宝石商にイレズミ者など、工藤が信頼している情報提供者でもある仲間がたくさんいて、みんな快く協力してくれる。
聞き込みの際には、必ずマイク付きテープレコーダーを持って行き、情報を録音している。たまにビルや家屋に忍び込んで盗聴器を仕掛けたりすることもある。
仕事をしていると、事あるごとに付きまとい邪魔をしに来る二人の刑事がいる。警視庁東警察署の服部刑事と松本刑事だ。警察に嫌疑をかけられ事情聴取されたり新聞沙汰になる事も多々あるので大変迷惑している。

工藤探偵事務所は「職業蔑視はしない」「手相は見ない」「相手にかかわらず約束は守る」「家庭のトラブルは扱わない」など、仕事上の主義はたくさんあり、万年金欠気味ではあるが心情的に納得できないと依頼人から金を受け取らないこともある。

様々な依頼がある。時には麻薬や殺人が絡んだり、事件の犯人にされたり、暴力団に追っかけられて銃撃戦やカーチェイスに巻き込まれ、命の危険に晒されることもあるが、すっきりと仕事を終わらせて、一人で豪勢なディナーを食べるのがささやかな楽しみでもあるのだ。

印象的な回

第3話「危険を買う男」

ある朝、工藤は事務所に訪ねてきた謎の中年男性から、ある女性を3日間監視して、盗聴もしてほしいという依頼を受ける。
監視する女性とは相木法律事務所の弁護士相木マサ子。さっそくマサ子の事務所に向かい、盗聴器を仕掛けて監視を始める工藤。どうやらマサ子は芝浦にある小平建材の倉庫の放火事件で逮捕された女性の無実を証明するため真相を究明中であったのだ。そして事件を追いかける内にこれは「2億円の保険金に絡んだ放火事件」という真相が見えてくるのだった。

その後、放火事件の当日にその事件に関係している岸田という男に会っていたという工藤の街の仲間・オカマのチー子が、二人のチンピラから「今すぐこの街から出て行け!」と脅される。工藤はマサ子の車に盗聴器を仕掛けているところを警視庁東署の刑事・服部と松本に見つかり、財布を没収された上に昼食をおごらされる。そしてマサ子は知らない二人組の男に駅のホームに突き落とされそうになるが、間一髪、マサ子を張っていた工藤に助けられる。工藤は依頼者の中年男性に調査の報告をし、マサ子が突き止めた事件に絡む5人の男の名前を告げると、何故か調査を中止してくれと言い出すのだった。

事件に絡むチンピラ達に狙われるマサ子を守るため、工藤はマサ子と接触し情報を共有するが、今度は工藤も狙われる羽目に。マサ子は、妨害を受けながらも調査を進めていくうちに、実は工藤に依頼をしてきた中年男は、この放火に遭った倉庫の会社・小平建材の石塚社長で保険金の受取人でもあった。彼は岸田の友人でヘリコプターの操縦士である尾関という男と保険金を山分けする前提で放火をしたのだが、相木弁護士の捜査状況が気になり、工藤探偵事務所に盗聴を依頼したものだったことが分る。

真相を掴んだマサ子は工藤と一緒に小平建設が受け持つ工事現場に出向くと石塚社長に揺さぶりをかける。すると石塚社長は狼狽えて事件の真相を自白、自首するつもりだったが、直後に現場にいたチンピラ達によって殺されてしまう。さらに上空から尾関の操縦するヘリコプターが車で逃げる工藤とマサ子を上空から銃で狙い、激しい銃撃戦とカーチェイスを演じることになる。危機一髪のところを騒動を嗅ぎつけた服部ら警察が到着し、事件は解決を迎えるのだった。

第14話「復讐のメロディー」

雨降る街で煙草に火を付けて佇む工藤のもとに、1人の女が近づいてきた。女は「私の命は今日で終わりました」というので仕方なく事務所に戻って話を聞くことにすると、女は世田谷に住む大杉亜木子といい、半年前、弁護士をしていた夫が、依頼人の妻を強姦して殺したという事件の容疑で捕まった。夫は絶対にそんなことはしないのでもう一度調べ直してほしいと言う。
亜木子の夫は、離婚の慰謝料の交渉を依頼されていたが、殺されたその依頼人の妻は亜木子の夫を誘惑して自分に有利になるように抱き込もうとしたというのだ。夫はその後警察から取調べを受け、依頼人の妻から誘惑してきたというのは嘘で、本当は襲ってから口封じのために殺したのだろうと疑われ、ノイローゼのようになって今日自殺をしてしまったのだという。亜木子は、真犯人を探すために探偵社もいくつか回ったが、警察を恐れてどこも引受けてくれなかったという。自分一人でもやると言う亜木子に工藤は、出来ることはやると言うしかなかった。

工藤は弁護士の相木マサ子に協力を依頼。事件についての資料を取り寄せ調べてみると、事件を担当したのは城東署の西田という刑事で、信州の牧場の息子で「閻魔の西田」と呼ばれるほど凄腕の刑事らしい。被害者はネグリジェ姿で発見され、検出された体液からO型の血液型を示すものが残っていたという。さらに似たような事件がないか調べてみると、2年前に八王子でホステスが殺害される事件があり、その時も同じ血液型を示す体液が残されており、同一犯の可能性が高い事件だった。そして、2つの事件のどちらも死体発見者が西田刑事であり、血液型もO型であることが判明。工藤は西田への疑惑を深め、そのことを亜木子に報告すると、「主人を躍起になって犯人に仕立て上げたんだ」と西田を真犯人だと決めつける。そして一人で西田に復讐しようとするが、逆に痛めつけられてしまう。

それから暫くして、亜木子は突然工藤の前から姿を消す。そして現金書留で報酬と依頼を断る内容の手紙が工藤の元に送られて来たのだが、その消印から彼女は蓼科にいることが分かる。亜木子は蓼科の銃砲店でライフルを習得し、長い髪をバッサリと切り、復讐に備えていた。工藤は亜希子と接触するうちに彼女の健気さと美しさに好意を持ち始めていた。そして復讐をやめさせようと必死に説得する。
だが、その頃西田が休暇を取って実家の牧場に帰っていた。そして亜木子は一人で西田の牧場へ向かう。工藤も慌てて後を追う。そして工藤が牧場に着いたとき、亜木子がライフルを振りかざして西田を追い詰め、頭を下げさせていた。制止する工藤の叫びもむなしく、ライフルの銃弾は西田の頭を撃ち抜いた。
呆然とする工藤の横を通り過ぎて草原に消えていく亜木子。そして…遠くから銃声が一発鳴り響いたのだった。 

主な登場人物・キャラクター

工藤 俊作(演:松田優作)

東京(名刺によると千代田区)に自身の事務所・工藤探偵事務所を構える、ユーモアと自由を愛する私立探偵。
横浜育ちだが、サンフランシスコで刑事をしていた過去がある。
仕事時には、黒いスーツ(たまに白や茶もあるが)に派手なカラーシャツとサスペンダー、ソフト帽にサングラスというスタイルで、バイク(ベスパP150X)に乗り行動している。タバコはキャメルを好み、ライターの火力は常に最大。コーヒーのブレンドにはかなりうるさい。
毎回、二人の刑事たちに邪魔者扱いされているが、街には情報を提供する仲間が多く、聞き込みの際にはコンパクトなマイク付きのテープレコーダーを使用している。また、施錠されているドアを簡単にはずしたり、手錠をかけられても素手ではずすことも出来る。
最終話の終盤、次々と殺された仲間の復讐を果たした後、プール・バーを出たところで、客の男にいきなりナイフで刺されるが、その後の生死は不明である。

工藤探偵の名刺

服部刑事(演:成田三樹夫)

警視庁東警察署のベテラン刑事。
部下の松本刑事とコンビを組み、事あるごとに「工藤ちゃん、工藤ちゃん」と工藤に付きまとい横柄な態度で指図したり因縁をつけたりもする。だが女性に対しては丁重に扱う。
事件に対する洞察力、推理力がまるで無く、安易に工藤を誤認逮捕する事もしばしばで、工藤からは煙たがられているのだが、反面、工藤の違法行為を大目に見たり、ドラマ後半ではだんだんと工藤の良き協力者という側面が強調されてきたりもする。

松本刑事(演:山西道広)

警視庁東警察署の刑事で服部の部下。
刑事としてのキャリアは5年ちょっとのようだが、工藤のことを「乞食野郎」などと目の敵にしており、ことあるごとに「犯人は工藤に決まってますよ!」と決めつけて逮捕しようとする。
ドラマの終盤では、工藤の腕前を認めているかのような行動を見せるようになり、工藤を頼ったりもする。
女性に関してはウブな一面があり、色仕掛けに弱い。特に弁護士のマサ子ちゃんにはメロメロである。
刑事という自分の職業には情熱と誇りを持っているが、服部の汚職行為のおこぼれに預かるなど、ダーティーな一面もある。

ナンシー(演:ナンシー・チェニー)

工藤探偵事務所と同じビルに住む売れないファッションモデルの卵。
外国人なのかハーフなのか、英語はペラペラだが、日本語はたどたどしく日本語はほとんど読めない。
かほりと同居していて、頻繁に工藤の事務所を訪ねては工藤の世話をやきたがり、コーヒーやカップラーメンをご馳走になる。
ときどき、工藤の仕事に手足となって活躍することもあったりする。

かほり(演:竹田かほり)

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