竜とそばかすの姫

竜とそばかすの姫

『竜とそばかすの姫』とは、2021年の夏に公開されたスタジオ地図製作の細田守が監督を務める日本アニメーション映画。心に大きな傷を抱えた主人公の女子高校生が、仮想世界と現実世界での出会いを通して成長していく姿は見る人に勇気を与える。監督特有の空想と現実による2つの世界と2つのアニメーションによって紡ぎだされる物語は、かつてない圧倒的スケールとなる。SNSが当たり前になり目まぐるしく変化していく世界で、変わることの無い大切な物は何かを訴えかける作品となっている。

竜とそばかすの姫のレビュー・評価・感想

竜とそばかすの姫
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大人も子供も楽しめる 時代を描くヒューマンストーリー

自分に自信が持てない主人公のすずは、幼い頃に川で母親を亡くしている。
すずの母親は、川で身動きが取れなくなってしまった子供を助けるため、流れの速い川の中を一人で助けに向かう。だが、母親は川に流されてしまい姿が見えなくなった。助けようとした子供は違う大人に助けられたが、すずの母親はすずの目の前で亡くなってしまった。歌う事が大好きだったすずはこの日以来、歌う事ができなくなってしまったのだ。

そんなある日、コンピュータに詳しい友達に「U」というネットの世界を紹介される。ネットの世界でのすずは、名前は「ベル」と言う。顔は学校で男子からも女子からも人気の友達の顔だ。
すずは現実世界では歌う事が出来ないが、ネットの世界のベルになる事で歌うことができるようになる。ネットでベルが歌うと、それを聞いた人達が「ベルの歌は凄い」と称賛するようになり、たちまちベルは有名になっていった。

そんな中、ネットの中で傷だらけの竜と出逢う。竜は、見た目は恐く背中にたくさんの傷があった。そんな竜の事が気になったベルは、竜との接触を試みた。しかし、ネットの世界は皆んな素顔を隠していて竜の本当の姿がわからない。そこで、ベルは竜に信頼してもらうために、ネットで素顔をさらけ出し歌を歌った。
その姿を見た竜はベルに心を開き始めた。そして竜の背中の傷は虐待のものだとわかり、ベルは現実世界で竜に会いに行く事を決意した。ネットでしか会った事がなかったベルと竜は現実世界でも会う事ができ、ベルは竜の虐待を阻止し、竜を救うことができたのだ。心を閉ざしていたすずと竜は、Uの世界をきっかけに前を向いて生きられるようになったのだ。

竜とそばかすの姫
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映画「竜とそばかすの姫」の紹介

細田守監督の作品は海外でも絶大な人気を誇っており、この「竜とそばかすの姫」は特に評価の高い作品です。
この映画をスクリーンで見た時は完成度の高い音響と映像に心を奪われ、自分もUの世界に迷いこんだかのような心地よい浮遊感を覚えました。
舞台は高知県であるということから高知の名所やゆったりとした自然の描写がとても美しく、それと対比するバーチャル世界の近代的な世界観、そして壮大な音楽がこの映画が評価される最大の要因です。
私がこの映画で最も心を奪われたのはベルの歌声です。
元々気になっていたアーティストである中村佳穂さんが主人公すずを演じるということで注目していたのですが、その歌声は想像を遥かに上回るものがありました。
声量も申し分なく透き通るような歌声が心地よく、映像の美しさも相まって釘付けになってしまいました。
作中では正体のわからない竜を探し出すすずの芯の強さに惹かれます。過去の悲しい出来事から歌うことができなくなってしまい、塞ぎこんでいたすずがUの世界でベルとして歌を歌うことにより成長していく姿に目が離せませんでした。
ネットの世界でアバターを使い、もう一人の自分を生きるという点ではサマーウォーズを思い出させる演出があります。しかしストーリーとしてはサマーウォーズは一人の敵を大勢で倒す、竜とそばかすの姫では一人の敵を大勢から守ると言った展開であり、前作とはまた違った魅力を感じます。

竜とそばかすの姫
7

映像美と音楽でミュージカルを見ているかの様な満足度

人気アニメ監督となった細田守さんの最新作。

まず冒頭からいきなりテーマソングが流れ、そのアップテンポな曲に一気に関心を引き付けられた。
映像美も凄く映画館の大スクリーンで見ても見劣りせず、細部までこだわりが感じられた。

本作では「歌」がキーワードになっており、作中でも何曲も歌が流れる。
主人公が「ベル」、相手役が「竜=野獣」と「美女と野獣」を連想させるようなミュージカルの様な演出にも大変心を惹かれた。

作品のテーマの一つとして今のネット社会に対する問題提起が描かれていると思った。
誰もがインターネットで匿名で情報発信出来る様になり、その匿名性故に無責任に他者を否定したりする事が実社会でも問題になっていると思う。
今作では、そういった社会の中で他者を思いやって行動する事が大切だと語っていたと私は感じた。
実際、作中のように行動を移すのは難しい事だと思うが、ネットの向こうにいる相手の事を思いやる事が大切なのだと細田監督は伝えたかったのではないだろうか。

ストーリーとしては所々ご都合主義な点もあるが、映画を観た人の心に何か大切な事を語りかけてくれる魅力があると感じた。
この作品の魅力である「音楽」と「映像美」は映画館の音響と大スクリーンで観てこそ、より楽しめると思うので、劇場公開しているうちに是非鑑賞してもらいたいと思った。

竜とそばかすの姫
3

終わりの方の展開が嫌い。

現実世界では歌えない少女が、ネットでは歌えて人気になるというお話はすごくいいと思います。もちろんネットって怖いところでもあるのに、そこらの描き方が足りないというか、子どもがあんなに儲けてどうするんだとか悪い大人になんかされるだろと思わなくもないけど、彼女の歌声がすごくよくて、それだけでもってかれた感がありました。なんていうのかすごい歌です。これなら売れるのもわかるし、周りが彼女を応援しちゃうかもと思います。だからそこら辺までの話は結構好きです。でも、最後のほうも虐待を受けている少年を救う展開ははあ?って感じでした。子どもが一人で怖い男の大人の元に行くなんてありえないし、それをよし、やれとか言わないでしょう。そんなのひどいです。娘が殺されたりひどい目にあってもいいんかいって思います。そういうところが夢物語すぎるし、ほんとこの監督の話って、男の夢っていうか男が好きな女が出てくるなあって感じです。おおかみこどものときからあんまり好きな監督さんじゃないけど、やっぱり嫌だなと思っちゃいました。この映画でいいところは本当に音楽だけです。でも、音楽を聴く価値はありました。いい音楽で、胸にぐっときます。

竜とそばかすの姫
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子供と大人の関係が希薄

作品自体の映像美や楽曲は素晴らしく、映画館で見て損はないと強くお勧めできます。しかしストーリーのことを言ってしまうと、「描きたいシーンを描くから前後のつながりや設定はどうでもいい」ような印象を受けてしまいました。
同じような世界観の以前の作品「サマーウォーズ」でやりたかったことは、細田守監督がデジモンアドベンチャーの映画「僕らのウォーゲーム」のラストシーンをオリジナルで描きたいが為に舞台設定に時間をかけたような印象がありました。今回はあまりにその先を見据え過ぎた所為か、世界観の設定がとにかく甘いです。
未来なんだか古臭いんだか、「U」という世界は現実世界にとってどのくらい干渉しているのか分からないです。母親が濁流下川に子供を助けるために入り命を落としたことと、ネットの世界で素顔を晒す事は別にイコールに思えないのに、イコールという危険な事としてとらえているのに違和感がありました。Youtubeなどは存在しない世界なんでしょうか?
そして親子の絆を描きたいのか、描きたくないのかも中途半端です。母を亡くした鈴を見守っていた大人たちは最後の最後鈴を1人で危険な所に行かせるばかり。ネットでの素顔公開以上に、暴力男のところに一人で行かせるのは大人としてナンセンスすぎるのではないでしょうか。

竜とそばかすの姫
10

音楽も最高に美しく、ストーリーの伏線回収も綺麗!

何よりもまず、劇中冒頭の音楽がとても印象的でした。アルバムチャートで首位になったり、音響上映が決定するなど、とてもこだわりのある音楽であることがよく分かりました。ストーリーだけでなく劇中音楽にもよく意識を向けて鑑賞することをおすすめします。
作品の世界観が複雑過ぎると、疑問にずっと引っ掛かってしまうことが多いのですが、この作品は前提となる世界設定は大きいですがとてもシンプルで分かりやすく、展開するストーリーが入ってきやすかったです。
また、Uの世界では終始「竜」は誰なのか、どんな環境で生活しているのかについてとても想像を掻き立てられ、伏線回収でもスッキリするストーリーとなっていました。恐らく良い環境にはいない「竜」を、なんとか救い出そうとする勇敢な主人公に感情移入できるし、またシーンとしては短いですが、現実の片思いを描く場面では主人公の可愛らしい一面もあり応援したくなるような作品でした。
Uというデジタル社会と現実とで、別人として生きようとした主人公が最終的にはどちらも「同じ人物」として堂々と生きることを決意したことで、本当の自分を見つけ出し、またその自分を受け入れることができたのでメッセージ性の強い作品であると感じました。

竜とそばかすの姫
10

圧巻です (一部ネタバレあり)

細田守監督の作品はどれも、現実世界とフィクションのような世界を融合させたストーリーなので、共感し入り込みやすい物語が多いです。
中でもこの作品の見どころは、映像と音です。
GCを使ったアニメーション技術は、まさに“美しい”の表現がぴったりです。
また、主人公の鈴とそのアバター(As)BELLの声を担当した中村佳穂さんの声に聞き惚れた方も多かったと思います。
もう一人のキーパーソンとなる「竜」の声を担当したのが俳優でもある佐藤健さん。
映像と音の迫力は、是非劇場で堪能する事をお勧めする作品です。

幼い時に母を事故で亡くし、心の殻に閉じこもる鈴。
同時に、大好きだった歌も歌えなくなり、退屈な日々を送る。
ある日、親友からの勧めでインターネット上の仮想世界“U”に参加することに。
憧れの友達そっくりなAsに初めは動揺していたが、もう一つの世界で何かを変えたいと思った鈴は、そのAsに「BELL」と名前を付けた。
“U”の世界に入り、初めは怯えていた鈴ですが、この世界で歌を歌う事ができ、徐々に自信が付いてくるように。
そんなある日、「竜」と呼ばれる謎の存在が現れる。
その出会いから、物語は仮想世界から現実世界に繋がる展開を迎える。

竜とそばかすの姫
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『竜とそばかすの姫』を絶対に映画館で見る2つの理由

細田守監督作『竜とそばかすの姫』が2021年7月16日に公開された。
公開から1か月経っても動員数は順調に増え、8月20時点での興行収入は50億円を突破し、細田監督が2015年に『バケモノの子』で記録した58億5000万円という記録も目前だ。
今回は『竜とそばかすの姫』を映画館で見るべき理由をご紹介したいと思う。

①圧倒的な映像美
『竜とそばかすの姫』は仮想空間「U」をテーマに主人公がBelleというアカウントを通して展開される物語だ。
まずこの仮想空間「U」の映像美に感動する。
『サマーウォーズ』で描かれたような細田ワールド全開の仮想空間になっており、そこに豪華制作陣が色を付けている。
キャラクターデザイナーは『アナと雪の女王』や『ベイマックス』などディズニー作品を多く手掛けるジム・キムが担当し、細田監督の描く現代版美女と野獣のイメージを再現している。
ノスタルジックな仮想空間の背景に1体1体デザインされたアス(「U」内でのアバターのようなもの)が作中常に登場し、「U」の世界観を味わわせてくれる。まるで自分も「U」の世界に入ったような120分を体験出来るためファンタジー好きには必見だ。

②ハイクオリティーな楽曲
映画が始まって最初のシーンはBelleが「U」の中でライブを行うシーンなのだが、このシーンだけでもこの映画を見るべきだ。
楽曲は2020年最も注目されたアーティストであるKing Gnuを中心として結成されたアート集団「millenium parade」が手掛け、注目の若手アーティスト中村佳穂がBelle役の声優として歌を担当する。
また、劇中歌には大根仁監督『モテキ』やNETFLIXオリジナル作品『全裸監督』の楽曲も手掛けた岩崎太整が担当。
曲やキャラクター、「U」の効果音を表現するダイナミクス(音の強弱による演出)をぜひ映画館で堪能してほしい。