妖獣都市(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ
「吸血鬼ハンターD」「魔界行」などで知られる人気ホラー作家・菊地秀行の「闇ガード」シリーズの一作目のアニメ化作品。監督は、「SF新世紀レンズマン」「獣兵衛忍風帖」の川尻善昭。人間界と妖魔が蠢く魔界との間の平穏の維持を任務とする“闇ガード”の滝蓮三郎が、魔界側の闇ガード・麻紀絵と共に、邪悪な妖獣たちと死闘を繰り広げる、エロス&バイオレンスたっぷりのハードボイルド・タッチのホラー。1987年制作。
『妖獣都市』のあらすじ・ストーリー
人間界と妖魔たちのいる魔界は、お互いの調和と共存のため、500年という長期に及ぶ不可侵条約を締結することとなった。
調印式は東京で行われ、式には欠かせない人物、伝説の霊能者ジュゼッペ・マイヤートの護衛を、魔界と人間界の平和を維持する“闇ガード”があたり。人間側からはその道では最高の腕を持つ滝蓮三郎が、そして魔界からは美しい容姿の麻紀絵が抜擢された。
ジュゼッペを迎えに空港に赴いた滝は、突如現れた魔界の男たちの襲撃にあった。
命を落としかけるが、間一髪のところで麻紀絵によって救われた。
2人が空港ロビーで、まもなく到着するジュゼッペの乗った旅客機を眺めていると、目の前で機は爆発炎上した。
驚き慌てる滝たちだったが、ふと横を見ると、ニンマリとほくそ笑む老人が立っていた。
その人物こそ、何者かの調印式妨害を予期し、一便早い機で到着したジュゼッペだった。
滝たちは、日比谷帝国ホテルの裏にある、霊障壁(バリヤー)を張り巡らせた特別ホテルにジュゼッペを案内する。
ジュゼッペは、部屋につくなりソープランドやキャバクラに連れて行けと駄々をこねだし、ワガママぶりにあきれる滝たち。
何とか説得し、滝は久しぶりに会ったホテルの主人とチェスで時間をつぶす。
夜も更けたころ、突然バリヤーが破られ、麻紀絵の元恋人だった魔界の妖獣ジンが現れ、襲いかかってきた。
反撃しようとしたが、滝の銃弾もホテル主人の鎖ナイフもジンの破壊パワーには歯が立たず、気を失ってしまった。
ジンが、ジュゼッペの部屋に忍び込むと、麻紀絵が武器である爪を長く伸ばして待ち構えていた。
元恋人だった彼女を、人間の味方をする裏切り者とののしりながら向かってくるジン。
彼に立ち向かうが、あっさりベッドに倒され、体を奪われそうになる麻紀絵。
だが、寸でのところで滝が駆けつけ、ジンを撃ち殺した。
そして、ジュゼッペの無事を確かめるため、彼が隠れていたトイレを覗くと、中はもぬけの殻だった。
すきもののジュゼッペなら行先はソープランドと目星をつけた滝と麻紀絵。
案の定、彼はそこにいたが、ソープ嬢に化けた妖獣に襲われ、生命力を根こそぎ奪われてしまっていた。
ジュゼッペの容体回復のため、霊法病院に車を飛ばすが、妖閉空間に閉じ込められてしまう。
だが、麻紀絵が自分の身を投げうって妖閉空間を破り、滝たちを脱出させた。
ジュゼッペは快方に向かったが、突如、滝の前に、妖獣たちに捕えられた麻紀絵が犯される映像が現れ、
彼女を助けたければ自分たちのアジトに来いと告げられる。
自分たちを救った麻紀絵を見殺しにはできないと救出に向かおうとする滝に、ジュゼッペは「これは罠だ、行くな」と命じる。
だが、それに耳を貸さず敵地を目指す滝。
アジトには、調停阻止を企てる魔界の過激派リーダー、Mr.影が待ち構えていた。
滝は手下の妖獣たちを次々と撃ち殺していくが、Mr.影は、死んだ妖獣たちの粘液を固めて自分の強力なバリヤーにし、滝に向かってきた。
銃弾は弾き返されるばかりで、とうとう追い詰められる滝。
そこに突然、滝を助けようとするかのごとく、どこからともなく凄まじい轟音を伴って稲妻のような鋭い閃光が走り、アジトを揺るがした。
一瞬ひるんだ影のスキを狙い、影の顔のど真ん中に銃弾を浴びせる滝。
影の首が吹っ飛び、地面に転げ落ちた。
滝と麻紀絵は病院に戻るが、職務放棄を理由に、二人は護衛の仕事を解任させられてしまう。
仕方なく帰路に向かう滝たちだったが、いつしか互いの心に相手を愛する気持ちが芽生えていた。
高速道路のトンネルに入ったとき、粘液を武器にしたクモ女に襲われた。
車が横転し、二人は粘液の糸に絡みとられ、鋭い針で体を切り刻まれ、気を失ってしまう。
そのとき、またもや鋭い閃光が糸を伝って走り、クモ女の体を貫いた。
地面に落下したクモ女は、苦しみもがき、やがて絶命した。
そして滝と麻紀絵は、とある教会で目を覚ました。
二人は何も身につけず抱き合っていた。
滝が麻紀絵の顔を見ると、魔界の者にはありえないはずなのに、目から涙が零れ落ちていた。
ジュゼッペが二人の前に現れ、今回の調印ために計画された秘密を打ち明けた。
「護衛していたのはワシの方だ。閃光を放ってお前たちを助けたのはワシだ。
実は、人間界と魔界との間に新しい生命を誕生させることが真の目的だったのだ。
そのために、お前たち二人を結びつけ、子を宿させることがワシの使命だった。
生まれた子供は、きっと二つの世界の平穏を約束してくれるだろうからな」と。
そのとき、死から蘇り、より強い妖力を持ったMr.影が、最後の戦いに挑んできた。
ジュゼッペと滝は、Mr.影と激しい攻防を繰り広げるか、影の邪悪な力に太刀打ちできず追い詰められてしまう。
もはやこれまでと観念したしたとき、麻紀絵が影の前に立ちふさがり、長く伸びた爪で影を引き裂いた。
滝と愛を交わすことにより、早くも受胎した麻紀絵の体に強力なパワーが生まれていたのだ。
戦いは終わり、その後も滝は闇ガードの仕事を続けるのであった。
主な登場人物・キャラクター
滝 蓮三郎(声:屋良有作)
年齢25歳。表向きは、中堅電機メーカーの営業マン。裏では、凄腕の闇ガードとして信頼が厚い。ウィークポイントは、女性に弱いところで、物語の冒頭で、惚れ込んだホステスに化けたクモ女の誘惑にあっさり負け、行為の最中に襲われ命を落としかけるが、寸でのところで助かる。
人間の世界にしろ魔界の世界にしろ体を張って守るほどの値打ちがあるのかと時々考えていた彼だが、麻紀絵と出合いが彼の気持ちを変えることに。
麻紀絵(声:藤田淑子)
魔界側の闇ガード。クールビューティだが、人間の世界では、あまりウレていないモデルの仕事についている。魔界のジンは元恋人だが、彼の過激な考え方に幻滅し別れたようである。武器は相手を切り裂く伸びるツメと自在に動く髪の毛。サイキックパワーで怪我の治療も行える。魔界側の存在である自分を命を懸けて救おうとした滝に心が揺らぎ、愛を感じて、魔界の者にはありえない涙を初めて流す。
ジュゼッペ・マイヤート(声:永井一郎)
伝説の魔道師にして、霊能者。人間界と魔界の休戦条約調印式に顔を出したのを最後に隠遁していたが、不可侵条約締結にあたって久しぶりに登場することになった。無類の女好きで、とんでもない災難にあうことに。
護衛される側として登場するが、実は人間界と魔界との間に新しい生命を誕生させること、その可能性を持つ滝と麻紀絵を結びつけ二人を守り抜くことを使命としていた。
物語のクライマックスじゃ、ちんちくりんな容姿に反し、実に勇ましくカッコいいところを見せる。
ホテル主人(声:大木民夫)
温厚そうで紳士的なナイスミドル。闇ガードのひとりで、滝との付き合いも長い。
ジンに襲われた時、背広に忍ばせた鎖ナイフで戦うが、片腕をもぎ取られてしまう。だが、それは義手のほうだった。
「闇ガードのしごとに誇りを持たなくちゃいかん。魔界と人間界の両世界にとって大事な役割をはたしてる立派な仕事だ」と自分の役割にプライドを持っている。
Mr.影(声:青野武)
不可侵条約の阻止を図る魔界の過激派リーダー。武器は、曲げた両腕の関節から出す長く鋭い刃。死んだ妖獣たちの粘液を自分の体に纏わせて固め、銃弾も弾き飛ばす強力バリアーにできる。頭蓋骨だけになっても時間をかけて元の体に再生する能力をもっている。また、腕や足をもぎ取られても、そこから触手を発生させ、相手を苦しめる。滝たちとの最後の戦いでは、グロテスク極まりないモンスターに変身してしまった。
クモ女(声:横尾まり)
映画のオープニングで、滝を誘惑し、彼の体液を手に入れようとした魔界の妖獣。Mr.影の手下。
股間に鋭い牙のような歯を持ち、クモの巣を作る粘液が武器。両腕を鎌の刃物に変える能力も持っている。