職業・殺し屋。(職・殺。)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

2000年から連載された西川秀明の漫画。そのあまりのグロテスクさとエロティックさに話題になり、「殺人の権利を“逆”オークションで競り落とす」という設定も奇抜ゆえ、人気を博した。職業として殺し屋を営んでいる人々がどのような殺人を行うのかを描いたストーリー。2014年、『職業・殺し屋』全15巻、『新 職業・殺し屋。斬 ZAN』全5巻をもって終了した。

逆オークションに参加した人間は、競り落とした人間が必要だと判断しヘルプを求めた場合、それに応じなければならない。
詩織のように毎回ヘルプを中村に求めるなどパートナーが決まっているものもいるが、基本的には参加メンバーは変動する。

太陽の息吹

小夜子の持っている治癒能力のこと。
手をかざすだけで怪我や病気を治療することができ、心臓に疾患をもっていた赤松や、激しい戦いで損傷した殺し屋たちの傷を回復させている。

見どころ

殺人行為による「カタルシス」

この作品では基本的に殺人を「卑しい」ものだと定義している。
その卑しい行いをすることによって、蜘蛛や蟷螂は絶頂し、中村は不眠症を解決する。
人を殺すという行為によって引き起こされるカタルシスにより、普段の平凡な人間である自分と、殺し屋である自分を無理なく同居させようとしている。

細部まで書き込まれた絵がよりリアルを伝える

西川秀明の絵はデフォルメが効いたマンガチックな絵だが、整ったデッサンと表情の豊かさ、そして細部まで妥協せず書き込んでいるために、「もしかしたら存在するかもしれない」という若干のリアリティが添えられている。
「蜘蛛の糸」にしても「鎌」にしても、実際に戦闘で使用するのには無理がありそうな形状+重量+かなりの技術が必要そうなのに、それを躍動感のある絵で登場人物に無理なく使用させている。

殺すならやっぱり「悪」がいい

見出しはMr.AAのセリフだが、基本的にターゲットは悪人が多い。
啓と綾子の仲を妬んで綾子の殺人依頼をする中学生のエピソードがあるが、それは啓によって回避されている。
だが、「職業・殺し屋。」はどんな殺人案件でも受けるのがルールのため、殺し屋たちが正義の立場にいるわけではない。あくまで需要と供給を満たすという点で依頼者と殺し屋は繋がっている。
悪人が相手ではなく復讐のために依頼する人間もいるため、線引きはより曖昧で、読むものに色々と考えさせる。

『職業・殺し屋。』の名言・名セリフ

「ボクは君を殺せない」

志賀了が1話目の最後に、殺人現場に居合わせた女性にいうセリフ。
この後「何故なら君はゾンビだから」「死んでるんじゃボクには絶対殺せない」と続く。
女性は中学の時に家がめちゃめちゃになり、父親の作った借金を返してこれからようやく人生を歩み始めるところだった。
それを「一度死んだ」と表現し、まだ新しい人生を歩んでいないことで「ゾンビは殺せない」として志賀は彼女を見逃す。
志賀は「職業・殺し屋。」のメンバーとしては巻き込まれた人間や依頼者に甘く、本来は現場を目撃されたらその人間も殺さなければならないのだが、度々相手を見逃している。
そんな志賀の矛盾と優しさが垣間見える一言。

「キミ…賢そうな顔してるのにバカ?」

志賀が4巻20話で小夜子に言い放つ言葉。
小夜子は志賀たち「職業。殺し屋。」が新興宗教団体教祖の父を殺さないと、普通の女の子として生きていけない、死にたいと思っていた。
それに対して志賀が「バカ?」と言ったことに小夜子は衝撃を受け、その後「松田小夜子」「姫」という教団の人間としてではなく、一人の「小夜子」として生きていくことを決める。

「殺すならやはり悪(ワル)がイイ」

絶対に顔を見せない殺し屋Mr.AAの決め台詞。
殺すターゲットは悪人で、それを1円という安値で買い叩くことによって自らの殺人衝動を発散しているキャラクターだが、作中何度も出てくるこのセリフは、Mr.AAだけではなく読んでいる人間の気分も爽快にさせてくれる。

「だめ…これは人を殺した…罰だもの…」

9巻57話で、赤松と四条の依頼人メイが言うセリフ。
ロシアンコンバットという格闘大会で父親を殺された仇を討つためにふたりに殺人を依頼したが、メイはその現場で事故に巻き込まれて脊椎を損傷する。
車椅子になって自力で立ち上がることすら難しくなり、赤松と四条は小夜子の「太陽の息吹」を受けるようにすすめるが、メイは頑なに固辞する。
その理由がこのセリフである。
人を殺すと言うことは本来悪いことである、という概念を読者の思考に蘇らせ、その足枷をはめて生きていこうとするメイの強さを感じる一言である。

「KIRI 職業・殺し屋外伝」

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