Free!（フリー）のネタバレ解説・考察まとめ

『Free!』の概要

『Free!』とは、京都アニメーションから発行されているKAエスマ文庫の『ハイ☆スピード！』（著：おおじこうじ）を原案にした、京都アニメーション製作のアニメ作品。
2013年の7月から第1期が放送（全12話）。
第2期の『Free!-Eternal Summer-』（フリー エターナル・サマー）は2014年7月から放送された（全13話）。
2015年12月5日には主人公たちの中学生時代を描いた映画『ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-』が公開。
さらにTVシリーズを再構築し、『ハイ☆スピード!』と繋がる新規エピソードを追加した映画『劇場版 Free!-Timeless Medley- 絆』、『劇場版 Free!-Timeless Medley- 約束』のタイトルでそれぞれ、2017年4月22日と7月1日に公開。
同年10月には、新作の特別編『特別版 Free!-Take Your Marks-』が公開。
第3期『Free!-Dive to the Future-』が2018年に放送（全12話）。
そして3期を再構築した映画『劇場版 Free!-Road to the World-夢』が2019年7月に公開。
キャラクターデザイン・作画総監督は「西屋太志」。西屋太志氏は『ハイ☆スピード！』でイラストも描いている。

比較的男性向け萌えアニメを作っていた京都アニメーションが、初めて女性向けに作った作品。
視聴層ではない男性側からは不満や不安の声もあったが、ターゲット層の女性視聴者からは人気を集め大ヒットする。
TSUTAYAオンライン・アニメストアでは第一期のDVD全巻1位を獲得し、キャラクターソングやドラマCDなどもオリコンランキングで上位に入る。
「俺はフリーしか泳がない」という台詞が、2013年度アニメ流行語大賞銅賞（3位）を獲得。
第一期のアニメが好評であったため、映画化やニ期・三期と続編が続いていく事になった。
それにより京アニは女性向け作品も作るという認識が生まれ、2018年には本作と同じく男性キャラクターの部活物である「ツルネ -風舞高校弓道部-」が放送された。

小学生のスイミングクラブでの優勝以降、水泳から遠ざかっていた主人公「七瀬遙」は、幼馴染の「橘真琴」「葉月渚」と共に岩鳶高校で水泳部を作る。
水泳初心者「竜ヶ崎怜」を迎え、4人で水泳の大会に出る事になった。
遙・真琴・渚の幼馴染で、小学生の頃三人と同じスイミングクラブに通っていた「松岡凛」は、水泳留学をしていたが、挫折して日本に帰国し、水泳の強豪校・鮫柄学園の水泳部に入った。
凛は、水泳の天才である遙に対して強いライバル心を抱いており、遙もまた凛を強く意識していた。
遙・真琴・渚・凛の四人はそれぞれ小学生の頃に4人でしたリレーの記憶を宝物のように思っており、遙たちは凛とまた一緒に泳ぎたいと思っていた。
一方の凛は、「楽しかった水泳の思い出」と「留学して上には上が居ると思い知らされた現実」に挟まれ、いつもイライラし行き場のない煮え切らない思いを抱いていた。
遙達が水泳の地方大会に出ると知った凛は、対抗心で鮫柄学園でチームを作りリレーに出ようとするが、凛は鮫柄の仲間ではなく遙たちばかりを見ていたためリレーメンバーから外されてしまう。
凛が本当は遙たちとリレーを泳ぎたいのだという事に気づいた怜は、大会で自分の代わりに凛を出場させる。
岩鳶高校は1位を取るも、当然失格になる。
しかし凛は水泳への熱意を思い出し、遙たちと仲直りし、心を開ききれていなかった鮫柄学園の仲間と向き合うようになった。
ニ期では凛の親友「山崎宗介」が登場し、凛率いる鮫柄学園のメンバーと岩鳶学園の水泳対決が描かれる。
そしてそれぞれ進学について考え始め、真琴は東京の大学へ進学、遙も真琴とは違う東京の大学へ進学、凛はオーストラリアへ行った。
三期では大学へ行った遙・真琴が、中学で同じ水泳部に入っていた「椎名旭」「桐嶋郁弥」と再会。
水泳で世界を目指す事にした遙は、大学の食堂で出会った「東龍司」をコーチにつけ、夢に向かって邁進する。

『Free!』のあらすじ・ストーリー

Free!（第一期）

思い出の優勝トロフィー

海辺の町の岩鳶（いわとび）高校の生徒である七瀬遥（ななせはるか）、橘真琴（たちばなまこと）と、その後輩の葉月渚（はづきなぎさ）は、つぶれたスイミングクラブに忍び込もうとしていた。目的は、タイムカプセルとして埋めた優勝トロフィーを掘り出すこと。小学校時代、3人はこのつぶれたスイミングクラブに通っていたのだ。

その時、突然松岡凛（まつおかりん）が姿を現す。凛も小学生の時のスイミングクラブの仲間であり、4人はリレーチームを組んで優勝していた。凛は、遥に対して執拗に水泳での勝負を迫ってくる。だが、水泳での勝負といってもつぶれたスイミングクラブのプールに水が張っているわけもなく、勝負はおあずけとなった。そして凛は、3人が掘り出した優勝トロフィーを投げ捨てて、帰ってしまうのだった。

鮫柄学園での一本勝負

スイミングクラブに忍び込んだ翌日、遥たちは岩鳶高校に入学して来た松岡江（まつおかごう）と出会う。江は凛の1つ下の妹である。昨夜の凛の態度を不審に思った凛は、江に凛のことを聞いてみた。凛は、小学生の時にオーストラリアへ水泳入学していた。しかし、1ヶ月前に突然帰国して、水泳の強豪校である鮫柄（さめづか）学園に編入したということがわかる。

遥たちは凛のことが気がかりで、鮫柄学園に潜り込んで探し回っていた。しかし、潜入がバレた遥たちは、鮫柄学園のプールで凛と勝負することになってしまう。遥と凛の100m一本勝負は、凛の勝利で終わった。遥は凛の勝利を祝うように、「お前の勝ちだ。よかったな」と声をかけたが、その言葉を聞いた凛はなぜか激怒する。その様子を、遥たちは戸惑いながら見ているしかなかった。

凛の激怒の理由、遥との因縁

凛は以前、中学1年の冬休みに一時帰国していた。そのとき、遥に水泳勝負を挑んでいたのである。凛には遥に勝てる自信があった。しかし、結果は惨敗。水泳留学までしていたのに負けたショックは大きく、凛は大泣きして水泳などやめるといい出したのだ。自分のせいで凛を傷つけたと動揺する遥は、水泳をやめてしまう。そんな遥を気にしつつも、凛はオーストラリアへと戻っていった。

今回、留学先から帰国した凛は、鮫柄学園に忍び込んだ遥を見つけて自分の実力を確かめようと勝負を挑んだのである。ずっと水泳を続けていた自分に対し、遥は長い間水泳の練習をしていない。それなら自分が勝つのが当たり前だと凛は思っていた。同時に、遥が水泳をやめたことにも、凛は不満を持っていたのである。それなのに、負けた遥からかけられた言葉が「お前の勝ちだ。よかったな」であった。その言葉を聞いた途端、心に溜まっていた遥への不満と自分自身に対する不甲斐なさが怒りとなって爆発してしまったのが、事の真相であった。

岩鳶高校水泳部の誕生

遥と凛が鮫柄学園のプールで対決した翌日、渚は、遥と真琴に水泳部を作ろうと持ちかける。真琴は話に乗り気なのだが、遥はあまり反応がよくない。実は、遥は泳ぐことが異常と呼べるほど好きである。ただ水の中にいるだけで満足できるほどなのだ。しかし、勝負にはほとんど興味がない。そこで、水泳部ならずっと水の中にいられると、渚と真琴は遥を説得しにかかる。そしてついに、遥に入部を認めさせたのだった。

足りない部員を補うため、渚は同級生で陸上部の龍ヶ崎怜（りゅうがさきれい）を水泳部に引き込む。マネージャーには松岡江、顧問には遥たちの担任である天方美帆（あまかたみほ）を引き込んで、ついに岩鳶高校水泳部がスタートしたのだった。この話を真琴から聞いた凛は、鮫柄学園水泳部への入部を決意したのである。

誕生したばかりの岩鳶高校水泳部だが、無謀にも県大会に参加していた。各種目の短距離での勝負ならばと、可能性にかけたのだ。しかし、思っていた以上に惨敗が続く。そんな中、個人戦フリーで凛と遥の直接対決が実現した。結果は凛の勝利である。正式な大会で遥に勝ったことに満足した凛に、もう二度と遥と一緒に泳ぐことはないと宣言されてショックを受ける遥であった。

なお、マネージャーの江がリレーにもエントリーを済ませていたため、岩鳶高校にはまだチャンスが残されていた。そして、リレー戦で岩鳶高校はみごとにトップでゴールを飾り、地方大会への出場権を勝ち取ったのである。凛は、喜び合う遥たちの姿に、昔のスイミングクラブでの自分たちの姿を重ねていた。

地方大会優勝を目指して

以前、岩鳶スイミングクラブのコーチをしていた笹部吾朗（ささべごろう）をコーチに迎え、岩鳶高校水泳部は地方大会へ向けて猛特訓を開始していた。地方大会でもリレーでの優勝を目指す遥たちは、凛もリレーに出場すると聞いてさらに燃え上がる。しかし、怜としては、なぜ凛がそれほど遥たちを意識するのかがよくわからない。

凛が遥にこだわる理由に納得がいかない怜は、凛に直接話しを聞くため鮫柄学園に乗り込んだ。しかし相手にされず、凛の遥かに対するこだわりが納得できないという自分の気持だけを告げて、凛はその場を立ち去る。地方大会の前日、凛は怜を呼び出した。そして、遥にこだわる本当の理由を話すのだった。中学のときに一時帰国した凛が遥に水泳勝負で負け、水泳をやめたいと大泣きしたのは、実は遥が原因ではなかったのである。本当の原因は、留学先での挫折だったのだ。遥と勝負したことは、水泳をやめるどころか、逆に情熱を取り戻すきっかけになっていたことを怜に話した。

凛から真実を聞いた怜は、凛は今でも遥を仲間だと信じているという確かな思いを感じ取っていた。凛も、翌日のリレー戦への思いを募らせる。しかし、ホテルに戻った凛は、部長の御子柴清十郎（みこしばせいじゅうろう）から思いもよらないことを告げられた。自分のチームを見ようとせず、岩鳶高校のメンバーばかりを意識している凛は、リレーのメンバーから外されてしまったのだ。リレーメンバーから外されたショックから立ち直れない凛は、フリー100mでも惨敗してしまう。そして、水泳への情熱を失くし、やめるといい出してしまうのだった。

深まる絆と未来への約束

凛の事情を知った怜は、凛に再び情熱を取り戻させようと一計を案じる。その計画とは、自分と凛を入れ替えてリレーに出場することだった。話を聞いた遥たちは驚くが、事情を聞いて了承する。岩鳶高校は、凛をメンバーに加えてのリレーへの出場を決定したのだった。

リレーは、岩鳶高校が優勝を勝ち取った。しかし、当然大会の規定違反に問われて失格となってしまう。だが、凛と遥、そして真琴、渚、怜の絆はより一層強固なものとなるのだった。この試合をきっかけとして心の中のわだかまりが消えた凛は、鮫柄学園のチームメンバーとも向き合うようになる。そして、鮫柄学園水泳部として、遥たちと対決する決意をするのだった。遥たちも、次こそは自分たち4人で一緒に大会で泳ごうと、約束をするのである。

Free!-Eternal Summer-（第二期）

新たな季節と新しい仲間

4月になり新学期を迎えた岩鳶高校水泳部は、新たな部員の獲得を目指していた。しかし、入部してくれる人は誰もいない。そのため岩鳶高校は、新たな季節も遥、真琴、渚、怜、そしてマネージャーの江の5人でのスタートとなったのであった。

一方、鮫柄学園では、山崎宗介（やまざきそうすけ）が入部してきた。水泳の強豪校である東京の鯨津（ときつ）高校からの転入である。これにより、凛のチームメイトは宗介と後輩である2年生の似鳥愛一郎（にとりあいいちろう）、それに御子柴部長の弟である御子柴百太郎（みこしばひゃくたろう）となった。

宗介の告白と地方大会の行方

岩鳶高校と鮫柄学園は、リレーで地方大会への進出を果たしていた。しかし、鮫柄学園では問題が発生していたのである。リレー戦の前日に、宗介が肩の故障を凛に告白したためだった。宗介は、高校1年の夏に、過度なトレーニングを繰り返したため肩を壊していた。それ以来、リハビリと故障の繰り返しとなり、水泳をやめる決意をしていたのだ。しかし、水泳をやめる前に凛たちの仲間になって一緒のチームで泳ぎたいとの思いから、鮫柄学園への転入を決意したのである。

宗介の告白を聞いた凛は、彼の体を心配してリレーへの出場をためらう。しかし、宗介の強い決意を知り、鮫柄学園はチームの結束をより強固にしたのである。遥たちも宗介の事情を知るが、フェアプレーの精神を貫いて正々堂々と戦うことを誓う。そして、お互いに悔いのない試合を行い、岩鳶高校が全国大会への切符を手に入れたのだった。

将来への夢、それぞれの進路

将来の進路に思い悩んでスランプに陥っている遥を見かねて、真琴たちは花火大会へと遥を誘う。しかし遥は真琴たちの気持ちに気づかない。そのうえ、真琴が東京の大学への進学を告げると、感情を荒らげて帰ってしまったのだ。遥は、真琴に裏切られたように感じたのである。遥の態度に悩む真琴は、凛に相談することにした。

凛は一計を案じ、かつての留学先であるオーストラリアへと遥を誘う。遥に、オーストラリアで一途に世界を目指している選手たちの泳ぎを見せて、何かを感じ取ってほしいと考えたのだ。凛の思惑は的中し、遥は世界の舞台で自分を試したいと考えるようになる。

帰国後、遥は真琴に謝罪する。それを受け、真琴は自分の真意を遥に告げる。自分は人に教えることに喜びを感じる性格であるため、選手を目指すのではなく選手を指導して支える側になる決意をしたこと。そのための東京への進学であることを遥に話したのだった。