
『善悪の屑』(ぜんあくのくず)は、2014年から『ヤングキング』で連載された渡邊ダイスケによる漫画作品。事件を起こしたにも関わらず、様々な理由で十分な裁きを受けることのない犯罪者達に対し、被害者やその家族に代わって復讐を代行する「復讐屋」の二人の男の物語である。実際の事件を土台としていることから凄惨な描写も多いが、2016年にはコミックシーモア総合ランキング1位、music.jp週間ランキング3週連続1位を獲得し、Amazonランキング大賞2016上半期入賞という実績を残す人気作品となった。
『善悪の屑』の概要
『善悪の屑』とは、作者の渡邊ダイスケにより『ヤングキング』で連載され、シリーズ累計発行部数は460万部を突破した人気漫画の第一部作である。ある日突然、何の気なしに悲惨な事件に巻き込まれてしまった被害者たち。一方で、そんな悲惨な事件を起こしたにも関わらず、全く反省の色など見せずに、日常生活をのうのうと送り続ける犯罪者達。そんな被害者や被害者の家族が、主人公たちが営む古本屋「かもめ古書店」を訪れる。そこで、特別な方法を通し依頼を受けた主人公・鴨ノ目武(かものめ たけし/カモ)と島田虎信(しまだ とらのぶ/トラ)は、「復讐屋」として、被害者に変わってそのやるせない気持ちを晴らすために復讐を代行していく。
本作に登場する、思わず目を背けたくなるような凄惨な事件の数々だが、これらは実話をモデルとして構築されている。そんな凶悪な犯罪者たちに、さらなる酷い最期を迎えさせて復讐代行を行うという問題作品。グロテスクな内容や、気分の悪くような凄惨な描写も多い為、読む人を選ぶ作品でもあるが、人間の屑そのものを体現する犯罪者が、さらなる酷い復讐をされる光景は圧巻である。漫画雑誌『ヤングキング』にて連載し、2016年にはコミックシーモア総合ランキング1位、music.jp週間ランキング3週連続1位を獲得し、Amazonランキング大賞2016上半期入賞という人気作品となった。2019年には、新井浩文(鴨ノ目武役)、林遣都(島田虎信役)のW主演と馬場ふみか(ヒロイン・奈々子役)による実写化映画の公開が予定されていたが、主演の1人である新井浩文が逮捕された事を受け、公開が中止となった。
本作『善悪の屑』には、2016年から『ヤングキング』で連載が開始された、続編にあたる第二部『外道の歌』(げどうのうた)が存在する。どこか謎めいた雰囲気を漂わせる青年、カモは如何にして復讐鬼に成り果てたのか、という点にも焦点が当てられているほか、カモの相棒であるトラの復讐の行方も描いている。
外道の歌(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ - RENOTE [リノート]
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『外道の歌』は渡邊ダイスケによる日本の青年漫画。2016年から2023年にかけて『週刊漫画ゴラク』で連載され、WEBドラマ化もなされた。法の限界に挑む犯罪被害者と加害者を描き、社会的なメッセージを多分に含む。主人公のカモとその相棒のトラが、軽い刑罰や不当な釈放に苦しむ被害者のため、私的な制裁を加え独自の正義を貫く姿が物語の中心となる。冷徹で計画的な復讐劇の反面、復讐が正義か悩む内面も描かれている。
『善悪の屑』のあらすじ・ストーリー
強姦殺人事件への復讐依頼
カモ(鴨ノ目 武/かものめ たけし)とトラ(島田 虎信/しまだ とらのぶ)が営む古びた書店「カモメ古書店」をある女性が訪ねる。この女性はカモたちが裏稼業として営む「復讐屋」の依頼人であった。7年前、幼い息子と二人で家にいた女性は、宅配業者を装った男から強姦被害に合い、息子は窓から投げ落とされて殺害されたと語った。犯人は逮捕されたものの、未成年という理由で大した罪には問われることなく、すでに出所。癒えない苦しみを抱いた女性は「復讐屋」を頼ろうと、カモメ古書店を訪れたのである。
依頼を引き受けたカモとトラは、加害者の職場の路地裏で待ち伏せし、出てきたところを連れ去った。そして、女性が待つ倉庫へ連れていき、動けないように椅子に縛り付けたのち、「二度と強姦が出来ないように」と男の陰嚢を切り取り、口の中に詰め込む拷問を加える。
激昂した女性が首を締めながら直接犯人に詰め寄ると、加害者からは「後悔していた」という言葉が飛び出した。それを聞いた女性は、悲しみを抱えながらも前に進むことを決意する。復讐は完結したかに思われたが、カモは加害者男性を殺して処分してしまうのであった。
いじめ自殺事件と女子高生監禁殺害事件への復讐依頼
復讐屋へ依頼に訪れた老女には、亡くなった息子夫婦の代わりに大切に育ててきた中学生の孫がいた。しかし、孫は通っている中学校で凄惨ないじめに耐えかねて自殺をしてしまう。孫が残した遺書を手にして被害を訴えた老女だが、逆に加害者の親たちからやりこめられてしまったという。孫を虐めていた男子生徒三人と、いじめを見て見ぬふりしただけでなく、いじめの相談に来た孫に暴言を吐いた担任教師を相手取ったこの復讐の依頼を引き受けるカモ。担任を含めて全員の眼球をバーナーで焼き、声帯と耳の規管を切り取って、「見ざる・言わざる・聞かざる」の状態を作って解放した。中学生をいたぶることには少し抵抗を見せるトラだが、カモは「未成年だから許されるわけではない」と厳しい持論を披露するのであった。
カモの叔父である鴨ノ目刑事が、自身が昔担当した事件で殺害された被害者女性の遺族を伴ってカモメ古書店を訪れる。被害者となった高校生の女性は、帰宅途中に男性数人から強姦され、更に加害者男性宅で監禁されて暴行を受け続け、最後は山中に遺棄されたという。関与したうちの一人が口を割ったことによって事件は発覚するが、主犯格の男だけは警察官僚の息子という立場のせいか、不起訴となっていた。依頼を受けたカモとトラは、加害者の男を拉致。そして、加害者男性の肛門に焼けた鉄の棒を挿入する拷問を加えるのであった。
小学生からの復讐依頼
カモメ古書店に、学校で飼っているウサギを蹴り殺した不良グループへ報復してほしい、と小学生女児からの依頼が入る。この不良グループは小学校の敷地に侵入し、あらゆる悪事に手を染めていることで恐れられていた。この不良たちをカモとトラが蹴り倒して一掃することで、今回の復讐は完了。後日、この女児は「自分はカモの娘の友人で、一緒に遊んでいたことや、友人の父であるカモのことを思い出した」ということを明かす。カモは黙って女児の頭を撫でるだけで、何も言うことはなかった。
ウサギ事件の後、日常に戻った女児が、新たな相談者をカモとトラの所へ連れてくる。家族が洗脳されていると訴える依頼人の女性は、「父が高齢の女性を自転車でひいてケガをさせてしまい、この被害者が首に障碍を負って生活がままならないからと、自分の部下と一緒に家に居座っている」という事情を明かす。事故の被害者こと榊ヨシ江(さかきヨシえ)は、「飴と鞭」を巧みに使い分け、徐々にその家族を洗脳して侵蝕していた。唯一その状況に違和感を抱いて通報した祖父は殺され、洗脳された家族の手によって遺体を床下に隠されているという。依頼を引き受けて一家を訪れるカモは背部から殴られて気絶し、家に連れ込まれてしまう。しかし、それこそがカモの狙いであり、家に侵入することに成功した彼は反撃を始めるのだった。
「練馬区の殺人鬼」の登場
練馬区の住宅街に暮らす開成 奈々子(かいせい ななこ)は、二階の部屋でゲームをしていた。両親と、遊びに来ていた従姉の会話を無線でキャッチしていた奈々子は、急に会話が聞こえなくなったことで異変に気付く。その頃自宅には男が侵入し、両親を殺していたのである。従姉の断末魔を無線で聞いた奈々子は、咄嗟にベッドの下に逃げ隠れる。奈々子はそのまま長時間滞在した犯人に気付かれることなく難を逃れるが、仲良しの従姉が殺害されたことで苦しみ、カモメ古書店の戸を叩いた。しかし、奈々子が自ら囮となって犯人を呼び寄せる捨て身の作戦にも関わらず、一度は捕らえた犯人を取り逃がしてしまう。お面のせいで顔も分からずじまいで、手掛かりは右手の指にある大きなペンダコのみだった。カモ達は加害者を特定できず、行く宛のない奈々子は、そのままカモメ古書店に居候することになる。
こうしてカモたちの新たな敵となった「練馬区の殺人鬼」は、人が死ぬ瞬間を漫画に収めたいという欲求に従い、殺人を繰り返していた。「ゴアゴアコミック」という出版社で働きつつ、大学では漫研に所属して普通の生活を送っている、園田(そのだ)という青年であった。
トラの過去
トラはかつて喧嘩に明け暮れ、地下格闘技の大会で2連続チャンピオンになるほどの強さを誇っていた。三連覇を目指していたトラだったが、試合で大けがを負って入院してしまう。病院に駆け付けた母は不肖の息子を冷たく突き放したが、帰りにトラの入院代金を準備していた。しかし、ATMを出たところ、車でつけてきた男に鞄をひったくられてしまう。息子の入院費が入った鞄を取り返そうと母親は必死に抵抗するが、車に乗っていた男に殴られ、はずみでガードレールに頭を打ち、帰らぬ人となっていたのであった。
「自分が母親の死を招いた」と自分を責め続けるトラの前には、ある被害者家族の女性が座っていた。この女性が万引きをし、被害先から呼び出されて歩いていた母親が、薬物中毒の男が運転する自動車にひき殺されてしまったという。こうした経緯から自分のことを責め続けていた女性だが、ある日、加害者が自分の人生を謳歌していることをSNSで知ってしまう。
この女性にシンパシーを感じたトラは、独断でこの依頼を引き受けることを決めるのであった。
朝食会(ブレックファーストクラブ)との出会い
被害者側に立った復讐プランの提供を行っている非合法の団体「朝食会」に、ある事件の被害者の父親が依頼に訪れる。被害者である娘は彼氏と車に乗り、公園にいたところを不良グループに襲われて強姦され、恋人と共に凄惨な暴行を加えられたのちに殺害されてしまったという。事件の加害者は未成年ということで、大した罪にも問われることなく釈放。父親は朝食会に復讐の依頼をする。榎によって段取りを組まれ、父親から加害者に直接復讐を加え、殺害する場が設けられた。次に、もう一人の加害者を捕まえようとした際、もう1人の被害者である恋人の母から依頼を受けていた復讐屋と朝食会が出会うのであった。初めて互いを認識した復讐屋と朝食会は、方針の違いで対立する。しかし、復讐屋に依頼していた被害者の母親が朝食会側の意見に賛同したことで、カモ達への依頼を取り消してしまうのであった。
『善悪の屑』の登場人物・キャラクター
主要な登場人物
カモ/鴨ノ目 武(かものめ たけし)

この作品の主人公。坊主頭で常にサングラスをかけ、ゼブラ柄のパーカーを着用している。額に切り傷を縫った傷跡がある。語尾に「~だねえ」をつける口調に特徴がある。「カモメ古書店」の店主で、普段は店番をしている。裏稼業の「復讐屋」として被害者の復讐を代行する。無表情で口数も少なく、加害者に対して残酷な拷問も躊躇うことなく実行できる冷酷さがある反面、被害者遺族に対して前向きになれる言葉をかける優しさもある。居間に妻と幼い娘の遺影が飾られている。事件の全容は明らかにされていないが、ある未成年加害者により妻と娘が惨殺された過去があり、類似した事件の加害者に過剰ともいえる拷問を加えたり、未成年であっても容赦しない節がある。また、作中で娘を抱き上げている描写があり、その際にはサングラスもかけておらず、笑顔もみられていた為、無表情でサングラス姿となったのは事件を境にしてのことと思われる。
トラ/島田 虎信(しまだ とらのぶ)

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目次 - Contents
- 『善悪の屑』の概要
- 『善悪の屑』のあらすじ・ストーリー
- 強姦殺人事件への復讐依頼
- いじめ自殺事件と女子高生監禁殺害事件への復讐依頼
- 小学生からの復讐依頼
- 「練馬区の殺人鬼」の登場
- トラの過去
- 朝食会(ブレックファーストクラブ)との出会い
- 『善悪の屑』の登場人物・キャラクター
- 主要な登場人物
- カモ/鴨ノ目 武(かものめ たけし)
- トラ/島田 虎信(しまだ とらのぶ)
- 開成 奈々子(かいせい ななこ)
- 榎 加世子(えのき かよこ)
- 園田 夢二(そのだ ゆめじ)
- 事件の加害者たち
- 強姦殺害事件加害者
- いじめ自殺事件の加害者と担任教師
- 久保田(くぼた)
- ウサギ殺しの加害者
- 榊 ヨシ江(さかき ヨシえ)
- 危険運転致死加害者
- 連続女児殺害事件加害者
- ジェイク・堀尾(ほりお)
- 金子 茂(かねこ しげる)
- カップル殺害事件加害者
- 櫻井 志津馬(さくらい しづま)
- 『善悪の屑』の用語
- 復讐屋
- カモメ古書店
- 朝食会(ブレックファーストクラブ)
- 『善悪の屑』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- カモ「おまえさんの精子工場は本日をもって閉鎖だ」
- カモ「もう二度とウンコできないねえ」
- 『善悪の屑』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- モデルになった実際の事件
- 園田夢二が主役のスピンオフ『園田の歌』
- 榎佳世子が主役のスピンオフ『朝食会』