魔法使いの嫁(まほよめ)のネタバレ解説・考察まとめ

『魔法使いの嫁』とは、ヤマザキコレによるマンガ作品。2014年1月号から9月号まで「月刊コミックブレイド」で連載された後に「月刊コミックガーデン」へと移った。この物語は、夜の愛し仔(スレイ・ベガ)である「チセ」が異形の魔法使い「エリアス」に買われるところから始まる。人ではない者が見えることにより、たくさん傷ついてきたチセは、その能力により様々な出会いを繰り返し自分と向き合っていくのであった。

妻に先立たれたジョエルは、妻の残して行った庭の薔薇園の世話をしていた。
リャナン・シーはそんなジョエルを何となく気に入り側にいると、薔薇園でリャナン・シーとジョエルの目が合う。
しかし通常人間にリャナン・シーは見ることはできず、その目の合った一瞬だけ奇跡的にジョエルがリャナン・シーを見たのであった。
リャナン・シーはその出来事からジョエルを気にかけ、しかし血を吸うことはせずにいた。
リャナン・シーは気に入った男性の血を吸い、その代わりに詞や歌の才能をあげる吸血鬼で、対象者は才能と引き換えに早死にする。
しかしジョエルは趣味で小説を書いているだけで才能を欲しているわけではなく、リャナン・シーはジョエルに何もできずにいた。
ジョエルはリャナン・シーを認識せず、リャナン・シーはそんなジョエルの側に何もせずに寄り添う、そんな日々を送っていた。
しかしある日、ジョエルは倒れてしまいもう余命が近いと分かる。
リャン・シーはジョエルの血を吸っていないが、自分が側に居たために寿命を縮めたのではないかと気に病む。
チセは人が妖精を見えるようになる妖精の塗薬を作りリャナン・シーにあげ、リャナン・シーはそれをジョエルの目蓋に塗る。
ジョエルはリャナン・シーを認識し、昔庭で見かけたときからずっともう一度会いたいと思っていたと打ち明ける。
妻が亡くなってから惰性で生きていたジョエルは、リャナン・シーに出会いもう一度会いたいと思うことで惰性では無い人生を送れたと語る。
そしてジョエルは死後きっと妻の側に行くが、その後にリャナン・シーの所にも行くと言い、リャナン・シーに残りの命を渡して消えていった。
リャナン・シーはジョエル亡き後も、ジョエルが再び会いに来るのを待ち、ジョエルの家に留まるのであった。

ウルタールの澱み

マシューは生まれつき体の弱い妻のミナを案じ、流しの魔法使いカルタフィルスに助言を請う。
カルタフィルスはミナにはもう余命が無いとマシューに言い、猫には9つの命があると話す。
マシューはカルタフィルスの言葉通り猫を殺して霊薬を作る。
ミナがマシューの居る小屋に入ると、多数の猫が捕まり、血まみれの床と血に汚れたマシューが居た。
ミナはその凄惨な光景に絶句し、何故こんな事をするのか、あなたはこんな事が出来る人じゃなかったはずだと訴える。
しかしマシューはミナのためだと笑う。
カルタフィルスはミナを後ろから動けなくし、マシューは無理やり秘薬をミナに飲ませた。
これでミナは元気な体になるとマシューは言うが、ミナはマシューの腕の中で泥になって消滅した。
カルタフィルスは実験は失敗だったと軽いノリで言って去って行き、精神崩壊したマシューはまだ猫の命が足りないのだと言って小屋を出る。
ミナの飼い猫ティムを発見し殺そうとするが、ティムはマシューの喉を噛み切って殺し、生かしもせず安らかな死も与えないと言う。
そしてミナを格にしマシューと死んだ猫達は「ウルタールの澱み」となった。
ミナはずっと澱みとなったマシューの側にいたが、澱みになったマシューはミナを認識できず、ミナは自分達の消滅を願っていた。
しかしチセはミナとマシューもカルタフィルスの被害者であるとし、エアリアルの力で穢れを浄化し、2人と猫達をあるべき輪廻の輪へ返した。

カルタフィルス(ヨセフ)の過去

墓守の一族であったヨセフは、死者と話すなどの噂を立てられ村人から忌み嫌われていた。
ある日、生き埋めになっていた人物を助け、その人物は「カルタフィルス」と名乗った。
体がミイラのようになり弱っていたカルタフィルスはヨセフに助けを求め、初めて他人から必要とされたヨセフはカルタフィルスを助けるために薬の研究をする。
ヨセフは村人達に虐待を受けながら、カルタフィルスの世話を支えに暮らし、いつかカルタフィルスの体が治ったら二人で村を出ようと提案する。
2人で村を出て幸せに暮らすという事が心の糧になっていたが、いつになってもカルタフィルスは治りもしないし朽ちもしない。
精神が耐え切れなくなったヨセフは、死なないカルタフィルスと自分が一緒になれば2人で救われると言い、2人は融合した。
しかし一つの存在になったヨセフとカルタフィルスは共に生きながら朽ち、体が病んだまま死ぬ事のできない無間地獄に陥る。
足が痛くて使えなくなったら人から足を奪い、体のパーツを入れ替えながら生き続けるが、体が良くなることも死に至ることも無い。
次第に自分が誰だったかも忘れ、目的も忘れ、何故自分たちだけがこんな目に合うのかとこの世を恨む。
そうして現在に至り、今もまだ体を痛みで苛まれながら死ぬ事も出来ず、痛みを和らげるためにキメラの研究をし、何故キメラを作っているのかすらも忘れ苦しみ続けている。
そしてカルタフィルスの名で呼ばれる事を嫌がり、自分はヨセフであると名乗る。
誰も自分を分かってくれない、何かを犠牲にして自分の願いを成就しようとするカルタフィルス。
チセはその気持ちを理解し、自分も同じように考えた事もあるし、自分自身を犠牲にして何かを得ようとしている自分とカルタフィルスは似ていると言う。
そしてチセはカルタフィルスを抱きしめ子守唄を歌い眠らせ、エインズワース家の近くの離れに住まわせた。
眠りという安寧を得たカルタフィルスは起きてもなおそこから離れようとせず、心と体を癒すように眠り続けた。

『魔法使いの嫁』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

制作背景・作風

本作は、作者ヤマザキコレが2013年に創作同人誌即売会で発表した同人誌が原型になっている。
この同人誌が担当編集者の目に入った事で、連載される事になった。
内容は現在の内容と同じく、主人公の少女とその主人公を弟子・お嫁さんにするために買い取った人外魔法使いのストーリー。
ヤマザキコレが好きだった「ハリーポッター」などのイギリスのファンタジー小説を参考にし、ブリテン諸島の伝承や伝説などの生物が描かれた。
現在でもその部分は受け継いでおり、イングランドの作家シェイクスピアの「夏の夜の夢」に登場する「オベロン」「ティターニア」、イングランド南西部コーンウォール地方の妖精「スプリガン」が登場。
他にもアイルランドやスコットランドの妖精「バンシー」、同じくアイルランドやスコットランドのジャック・オ・ランタンなどの鬼火伝承の名前の一つ「ウィル・オ・ウィスプ」、アイルランドの妖精又は吸血鬼「リャナン・シー」などが登場する。
シルキーは家事妖精「ブラウニー」とされているが、「ハリーポッター」でもブラウニーに等しい存在である屋敷しもべ妖精「ドビー」が登場する。

原型となった同人誌はネットオークションで高額で出回るが、公式サイドは完全再現したものをオークションの値段よりも安く出すから買わないよう呼びかけた。
復刻版同人誌はBD第一巻限定盤に付属した。

サブタイトル

「Everything must have a beginning.(すべてには始まりがある)」

原作サブタイトルは、一部を除きほとんどが英語のことわざになっている。
聞きなれないものから、6話「Curiosity killed the cat.(好奇心は猫を殺す。)」など聞きなれたものまである。
アニメも原作と同じタイトルが使われている。

タイアップ

2017年に「日暮里・舎人ライナー」とコラボ。
「秋のクイズラリー」として日暮里駅でエリアスのきぐるみと撮影会・グリーディングが行われた。

ドラマCD

原作第五巻にはドラマCDが付属。
声優はアニメ版とほぼ同じで、
チセ:種﨑敦美
エリアス:竹内良太
シルキー:遠藤綾
ルツ:内山昂輝
サイモン:森川智之
チセの母:井上喜久子
妖精:Lynn、重松千晴、河野茉莉
が担当した。

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ショートアニメ

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