実話に基づいた映画「ヒトラー暗殺、13分の誤算」に描かれる悲痛な真実とは
ヒトラー暗殺を企てた1人の男に焦点を当てた戦争ドラマ。彼はなぜ暗殺を企て、実行したのか。現在と過去が入り混じり、やがて悲痛な真実が浮かび上がってきます。映画「ヒトラー暗殺、13分の誤算」をご紹介致します。
あらすじ・ストーリー
1939年11月8日、ドイツ・ミュンヘンでナチス指導者のヒトラーの演説が行われた。演説を予定よりも早く終わらせ退場したヒトラーだったが、その直後、会場が爆破される。逮捕されたのは、ゲオルグ・エルザー(クリスティアン・フリーデル)という男だった。ゲシュタポは犯行の黒幕を吐かせようとエルザーを拷問にかけるが、彼は爆破装置の製作や設置を一人で行ったと告白する。
拷問シーンや迫りくるナチの魔の手などの描写は胸に来るものがあった
現在の時系列では主人公がナチに捕まってからが描かれ、過去では彼がなぜ暗殺を企てたのかを描いていきます。現在で行われるのは残虐非道な拷問の数々。てっきり声だけの描写で恐怖心を煽るのかと思いきや、しっかりと拷問シーンを描き、吐瀉物も映っています。苦手な方には酷かもしれませんが、これらのシーンはできれば目を逸らしてほしくはないです。真実を伝えるという意味で、この映画は生臭い部分を余すところなく描いています。凄惨なシーンにこそ、過去の真実と向き合った証が残っています。
過去においては主人公の周囲にナチの影響がじわじわと寄ってきます。このじわじわと侵食されるような感覚がまた絶妙。1人、また1人とナチに取り込まれ、そして拒む者は強制労働や晒し者にされてしまう。群集心理や、アメとムチを使い分け、人々を支配していく。淡々としたシーンの数々でしたが、だからこそ怖かったですね。気付けば周りはナチ党員だらけになっているんですから。そうして、主人公は理不尽な境遇を胸に、ゆっくりと暗殺への道を歩み始めるのです。
淡々とし過ぎているからか目を惹かれるシーンが少なく、退屈な時間も少なくはない
題材が題材だけに仕方ないのかもしれませんが、淡々と進み過ぎて途中で少しだれてしまいました。視聴者の目を惹きつけるようなシーンや描写が少なく、あまりに丁寧に描き過ぎて、映画としての緩急が失われていました。この映画はミステリーやサスペンスなどではなく、戦争ドラマというジャンルなのである程度の停滞は仕方ないのかもしれませんが、それでも視聴者を飽きさせないような努力はすべきだったと思います。
ヒトラーやナチを題材にした映画はいくつか観てきたのですが、今作はその中でもあまり面白くない部類に入ります。他の作品が面白かったのもありますが、それを差し引いてもこの映画は並み以下です。真面目に作り過ぎて、映画のエンタメ性を度外視しているのではと考えました。他の映画はどれも固い題材をチョイスしながらも、常に視聴者の眼を意識していたような気がします。面白い題材を選んでいただけに、このような作品となってしまったのはひどく残念です。
まとめ
決して外れの映画というわけではありません。歴史の裏に隠された真実を暴き出すような作品ですので、その点に関しては大いに観る価値があります。しかし、いち映画としてはあまり面白くなかったというだけです。ただ歴史の裏側を覗きたいだけならばドキュメンタリーや書物を見れば済む話。それをあえて映画で観ようと思うのは、やはりエンタメとしての側面を無意識に期待しているからではないでしょうか。時間がある時にでもぜひご覧になってみてください。