エール!(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『エール!』とは、2014年に公開されたフランスのヒューマン・ドラマ映画。主演のポーラ役は本作が長編映画初主演のルアンヌ・エメラが務め、両親役には名優のカリン・ヴィアール、フランソワ・ダミアンが起用されていることでも話題となっている。なお、ルアンヌ・エメラは本作での演技と歌唱が高い評価を集め、2015年のセザール賞で最優秀新人女優賞を受賞した。聴覚障害をもつ家族の中で育った健聴の少女が歌の才能に目覚め、家族への責任と、自身の人生の選択の間で葛藤する姿を描き、国際的に高い評価を集めた。

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ポーラの歌声は本当に素晴らしく、この声を聞くだけでも今作を観る価値はあると述べる視聴者は多い。しかし、より注目してほしいのはクライマックスの導入部分にある発表会のシーン。ここでポーラと、彼女の想い人でもある友人のガブリエルがデュオを披露するのだが、この時の描写が秀逸なのだ。一切の音を排し、画面に映るのは口を大きく開けて楽しそうに歌うポーラのみ。このシーンは聴覚障害を持つ家族から観た彼女を表現したもので、無音なのにひしひしとポーラの想いが伝わってくるものとなっており、多くの視聴者が心を打たれた。

クライマックスでは、音楽学校のオーディションで歌う際、観に来た家族にも分かるようにと、ポーラは手話を交えて歌う。その歌詞は家族への想いをそのまま表したものとなっていて、見事な歌声とも相まって見るものの心を揺さぶる名シーンとなっている。
あえて複雑な技巧は凝らさず、ストレートに想いを伝える演出は、観るものに素直な感動をもたらすこと間違いなしだ。

『エール!』(映画)の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ポーラの進学先のモデルは「Maîtrise de Radio France」(マイトリーズ・ド・ラジオ・フランス)と推測するファンの声

作中では明かされないポーラの進学先だが、ファンの中では「Maîtrise de Radio France」(マイトリーズ・ド・ラジオ・フランス)がモデルではないかという推測が上がっている。
マイトリーズ・ラジオ・フランスとは、パリにある国立放送局ラジオ・フランス直属の合唱団・音楽教育機関で、「クラシック声楽・合唱の名門」「入試がオーディション形式」「課題曲の雰囲気」「教師の審査スタイル」などが、ここを強く思わせる作りとなっている。
そのため、ファンの間では「名前は出ないけど、実質ここがモデルだよね」という声が多く上がっている。
ちなみに、本作『エール!』では学校名をぼかしているのに対し、リメイク版の『コーダ あいのうた』では進学先について「バークリー音楽大学」と明確に出しているという差が存在しており、フランス映画とアメリカ映画の気質の差が出ているポイントでもある。

ハンディキャップを気にするのは常に周囲という現実

障害を扱う映画というのはどうにも重くなりがちなのが「あるある」のパターンだ。世間的に可哀想という認識があるからなのか、身体にハンディを持っている人が明るく楽しく生きている姿は「いまいち現実性に乏しい」という解釈になっているのかもしれない。
しかし現実は違い、自身のハンディを当たり前に受け入れ、人生を謳歌している人は本当にたくさんいるのである。この作品で描かれているベリエ家の面々はまさに「謳歌している」人々で、彼らは娘に頼りながらではあるが、本当に楽しそうにコミュニケーションを取って暮らしている。ともすれば、言葉よりも手話の方がよほど感情を豊かに表現できるのではないかと思えるほどだ。
本作『エール!』では、障害があることを気にしているのは当事者ではなく、その周りの人々だという現実を思い知らされる。その傾向は主人公のポーラに特に顕著に表れており、「友達にはできるだけ家族のことは話したくない、両親と弟のことは大好きだけど、このまま一生世間と家族の橋渡し役をする羽目になることを思うと憂鬱になる」という、家族だからこその複雑な感情や、大人と子供の間にいる年頃の女の子が抱える葛藤が、ありのままに描かれているのだ。
しかしそれでいて物語の雰囲気は暗くならず、むしろ明るくなっていく。何気なくやっているようで、これを表現するのはかなり難しい。
テーマがテーマだけに分厚いストーリーを覚悟して視聴を始めたものの、本題がハンディキャップに置かれていないため、ライトな色調で紡がれる物語に好ましい印象を持った視聴者はかなり多い様子だ。

『エール!』(映画)の主題歌・挿入歌

主題歌:ルアンヌ・エメラ「Je vole」(ジュ・ヴォル/私は飛ぶ)

ミシェル・サルドゥの名曲を、本編クライマックスでポーラを演じたルアンヌ・エメラがカバー。手話を交えた歌唱シーンで挿入歌として使用されたほか、ラストシーンでも主題歌として使用されている。

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