エール!(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『エール!』とは、2014年に公開されたフランスのヒューマン・ドラマ映画。主演のポーラ役は本作が長編映画初主演のルアンヌ・エメラが務め、両親役には名優のカリン・ヴィアール、フランソワ・ダミアンが起用されていることでも話題となっている。なお、ルアンヌ・エメラは本作での演技と歌唱が高い評価を集め、2015年のセザール賞で最優秀新人女優賞を受賞した。聴覚障害をもつ家族の中で育った健聴の少女が歌の才能に目覚め、家族への責任と、自身の人生の選択の間で葛藤する姿を描き、国際的に高い評価を集めた。

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『エール!』(映画)の概要

『エール!』(原題:La Famille Bélier)とは、2014年に公開されたフランスのヒューマン・ドラマ映画。聴覚障害をもつ家族の中で育った健聴の少女が、家族への責任と、自身の人生の選択の間で葛藤する姿を描いたヒューマンドラマ作品である。
ハンディキャップを持つ家族とヤングケアラーという、一見すると重いテーマを扱いながらも、家族愛と巣立ちの対比や、ハンディキャップと社会の関係性を、音楽と手話を効果的に用いた演出を通して親しみやすく描いている。この手腕は、「重さや辛さを感じさせない爽やかさがある作風」として、国際的にも高い評価を獲得した。
主演のポーラ役は本作が長編映画初主演のルアンヌ・エメラが務め、両親役には名優のカリン・ヴィアール、フランソワ・ダミアンが起用されていることでも話題となっている。なお、ルアンヌ・エメラは本作での演技と歌唱が高い評価を集め、2015年のセザール賞で最優秀新人女優賞を受賞した。
2021年にはアメリカで本作のリメイク作品『コーダ あいのうた』が公開され、同作は第94回アカデミー賞において作品賞を含む主要部門を受賞している。

舞台はフランスの田舎にある村。聴覚障害を抱える家族の中で、唯一の健常者として暮らす女子高生・ポーラは、学業に打ち込みながらも懸命に家族の生活をサポートしていた。
しかしある日、ポーラは自分に歌の才能があることを知り、家族のもとを離れる可能性を含んだ将来の選択と向き合うことになる。

『エール!』(映画)のあらすじ・ストーリー

聴覚障害を抱える一家と唯一の健聴者

フランスのある田舎の村で暮らす高校生の通うポーラは、両親と弟の4人家族。しかし、この一家はポーラ以外は全員耳が聞こえないというハンディキャップを持っていた。
一家は家畜を育ててチーズを作り、それを販売して生計を立てている。仕事のため、健常者とのコミュニケーションの中間役としてポーラは重要な役割を担っていた。電話での受け答えや商品の説明も、彼女がいなくては成り立たないからだ。
学業もおろそかにすることなく、一生懸命家族を支えているポーラは、人一倍頑張り屋で気立ての良い娘だった。
そんなある日、ポーラは好きな男の子であるガブリエルのため、学校のコーラス部のオーディションを受けた。そのオーディションに合格したポーラは、講師のトマソンから「歌の才能がある」と言われる。ポーラは戸惑いながらも歌うことに楽しさを見出していく。
トマソンはそんなポーラに、3ヶ月ほど歌を本気で練習し、パリで行われる音楽学校のオーディションを受けることを勧めた。家の手伝いもあるためポーラは悩むが、ひとまず家族には内緒にして、本格的なトレーニングを始めることにするのであった。

「家族への愛」と「自分自身の人生」の間での葛藤

歌のレッスンは毎日トマソンの自宅で行われていた。しかしそれと時を同じくして、父親が突然「村長選に立候補する」と言いだしたことで、ポーラの家は大忙しになる。
当然巻き込まれてしまうポーラは、歌のレッスンのための時間を確保することも難しくなり、トマソンに叱責されることも少なくなかった。
そんな日々が続いたある日、ポーラは意を決して両親に歌のことを打ち明けようと考えた。
歌を歌うのが楽しいことや、パリの音楽学校に行く話があることなどをすべて家族に説明するポーラ。しかし家族は愕然とし、「パリに行ったらこれからの自分たちの手伝いはどうなるのか」と彼女に詰め寄るのだった。
ポーラは必死に「自分にも自分の人生がある」と反論するが、家族が首を縦に振ることは終ぞなかった。
家族から好意的なリアクションがもらえなかったことに意気消沈し、ポーラはトマソンにオーディション出演を辞退すると伝える。トマソンは考え直すようにポーラを説得するが、彼女は自分の夢を諦め、家族とともにずっとこの村で暮らすことを決めていたのだった。

諦めてしまうポーラ

トマソンからポーラが自分の夢を諦めようとしていると聞かされたガブリエルは、ポーラに「オーディションはさておき、学園祭の時に一緒に歌おう」と声をかけてくれるのであった。
そして迎えた学園祭の本番当日。その場にはポーラの両親と弟も来てくれたものの、耳が聞こえない彼らにとって、ポーラの歌は無音で、娘が口を動かしているとしか感じられない。
一家は歌の素晴らしさを理解できないまま、隣に座っている人に合わせて拍手をするだけだった。
しかし、ポーラの歌唱力は多くの人からの賛辞を集めるほど素晴らしいものだった。
公演終了後、トマソンはポーラの両親に会い、彼女の持つ才能の素晴らしさと、それを伸ばしにパリへ向かうことを応援してあげてほしいと懸命に語り掛ける。
しかし、手話の通訳無しではトマソンの話が理解できない家族に対し、ポーラは彼のその発言を訳すことはしなかった。

学園祭を終えたその日の夜、裏庭にポーラを呼び出した父は、彼女に歌ってくれと頼んだ。
言われるがまま歌い出すポーラの喉元に手を当て、その振動を感じる父は、何か考えた様子で黙り込むのであった。

ポーラの「巣立ち」

それからしばらくが経ち、なぜかオーディションの日を把握していた両親は、ポーラを起こすと車に乗せ、会場に連れて行ってくれる。
ポーラは困惑しながらも「オーディションを受けることになった」とガブリエルに対してメールを送る。メールを受け取ったガブリエルは急いでトマソンの元へ向かい、2人も大急ぎでパリを目指すことになった。

一方、オーディション会場ではポーラが歌う順番が回ってきた。練習してきた曲をピアニストに伝えるものの、「楽譜が無いと弾けない」と断られてしまう。
困り果てるポーラだが、そこに入ってきたトマソンが「自分がピアノを弾く」と申し出てくれたことで、彼女はようやく安心した様子を見せた。
歌い出したものの緊張で声が出ず、頭からやり直すというハプニングこそあったものの、ポーラは再び歌い始める。
歌の途中でポーラは手話をし始め、家族も歌詞を理解することができた。
ポーラが何を歌に乗せて訴えているかを知ることになった両親は、頷きながら涙をたたえ、大舞台に立つ自分の娘を誇らしげに見つめるのであった。

オーディションを突破したポーラは家を出て、パリに行くことになった。
旅立ちの日、家族は抱き合って別れを惜しむが、ポーラの門出に反対する者は、もう誰もいなかった。
こうして、彼らは家族というものの大切さを改めて噛みしめ、それぞれの想いを胸に新しい日々を迎えることになったのだった。

『エール!』(映画)の登場人物・キャラクター

ベリエ家

仲良く酪農を営む一家。ポーラ以外は全員聴覚障害というハンディキャップを持っているが、全員が明るく楽しく暮らしている。

ポーラ・ベリエ(演:ルアンヌ・エメラ)

本作の主人公。村の高校に通う女子高生。ベリエ家で唯一の健聴者で、家族とは手話で会話し、健常者との会話の通訳や、仕事関係の電話の応対なども請け負っている。トマソンから歌の才能を見出されたことが転機となり、家族を気にかけながらもパリの音楽学校のオーディションを受けるための練習を始める。

ロドルフ・ベリエ(演:フランソワ・ダミアン)

画像左端がロドルフ

ポーラの父。明るい性格の熱血漢。聴覚障害を持ちながらも、エネルギッシュに仕事に打ち込む酪農家。酪農の現状を変えるため、村長選挙に出馬しようと思い立つ。

ジジ・ベリエ(演:カリン・ヴィアール)

画像右から2番目がジジ

ポーラの母。明るくおしゃれで美しい女性。チーズ作りが得意で、彼女の作るチーズは評判がいい。

カンタン・ベリエ(演:ルカ・ジェルベール)

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