ワッハマン(あさりよしとお)のネタバレ解説・考察まとめ

『WAHHAMAN(ワッハマン)』とは、漫画雑誌『モーニングパーティ増刊』『月刊アフタヌーン』で連載されていたあさりよしとおの漫画作品である。1万年前のアトランティス文明の生き残りである骸骨のような顔をしたワッハマン。宿敵・パパを倒す宿命を背負いながらも、現代では浮草のような暮らしをしていた。一見とぼけたような作風とは裏腹に、シリアスで救いのない物語が特徴の作品である。

『ワッハマン』の概要

『WAHHAMAN(ワッハマン)』とは、漫画雑誌『モーニングパーティ増刊』『月刊アフタヌーン』で連載されていたあさりよしとおの漫画作品である。全11巻。主人公・ワッハマンの骸骨のような外見からも分かる通り、『黄金バット』をモチーフにしたSF作品である。
1万年前のアトランティス文明の生き残りである骸骨のような顔をしたワッハマン。宿敵・パパを倒す宿命を背負いながらも、現代では浮草のような暮らしをしていた。一見して、とぼけたような作風とは裏腹に、シリアスで救いのない物語が特徴の作品である。
単純なストーリーのように思えるが、幾重にも鏤められた伏線や、宿敵である「パパ」の特異な存在感などから、あさりよしとおの作品の中でも一際異質な部類だと言われている。

『ワッハマン』のあらすじ・ストーリー

1万年前のアトランティス文明の生き残り

はるか1万年もの昔。人類の敵と称される男「パパ」を倒すため、勇敢な戦士がアトランティス人たちによってオリハルコンの肉体を手に入れた。時はかわり現代の日本、「人類の敵」の抹殺に失敗し、1万年間眠っていた戦士は記憶をほとんど失った状態で、自衛隊の作ったロボット(失敗作)による頭部への刺激で覚醒。「敵を倒さねば」という意識の下、笑いながらロボットを破壊する。
永遠の時間を過ごすことは、普通の人間には到底耐え切れない。現代によみがえった本人は自らを「ワッハマン」と名乗り、意識を深淵に沈めた状態で、飄々と浮き草のような暮らしをすることになる。

記憶を失い浮草のように生きるワッハマン

完全に記憶を取り戻せないままの「ワッハマン」は、各地を放浪する。ワッハマンの意識の覚醒レベルにはいくつかの段階があるが、普段は意識を深く沈めたレベル1(現実逃避モード)と、レベル2(明確な意識があるモード)とを行き来しながら生活をしていた。
社会人草野球に参加したり、犬や猫と食糧を奪い合ったり、カフェで食事したもののお代が払えないと食べた分だけ働く羽目になったりもした。
ワッハマンは、自衛隊のロボットを破壊したことで、自衛隊や、その存在を恐れる人類の敵の刺客、ワッハマンの秘密を探ろうとする防衛庁技術研究本部第四研究所特別分室(「分室」)など、さまざまな組織から追われる身になっていた。人類の敵から刺客として差し向けられたのは、レミィという少女の姿をしたアンドロイドだった。戦闘時にはハンババという巨躯の戦闘形態に変身するレミィだが、彼女は最初から捨てられるために作られたデータ収集用であるため、ワッハマンに勝てない。役立たずとしてパパに追い出されたレミィは、その後「分室」に身を寄せる。
「分室」は、最初はワッハマンを監視・調査するという建前のもとずさんな対応を行っていた組織だった。しかしワッハマンと関わりあううちに、最前線でパパに対抗する陣営になっていった。

宿敵との戦いに挑むワッハマン

あるとき、ワッハマンは月に降り立ったものの穴にハマって飛びたてずにいた着陸船を本来の角度にすべく、月に送られる。しかし着陸船の帰還時、飛び立たない脚部分にしがみついたことで、ワッハマンは月に置き去りになった。「分室」からレミィが迎えに来てくれたため何とか地球へ帰り着くが、レミィとは離れ離れになる。ワッハマンは「パパ」に対する敵意を自覚したことで、意識レベル4に覚醒。オリハルコンの力を全開にし、リミッターが外れたかのような戦いぶりを披露する。月から戻ったワッハマンは、人類の敵に対する挑発とも取れる行為を繰り返す。
そして人類の敵であるパパとの最終決戦。本気を出したワッハマンはパパに致命傷を負わせることに成功するが、死は救いだと考えるパパは高笑いしていた。パパは空しさを紛らわすため、何度も文明を起こし、滅ぼしてきたのだった。事情を知ったレミィに思い通りにさせないために絶対に死なせないと言われるものの、パパはレミィが一番のお気に入りだったと告白し、これまでつらい目にあわせたことを謝罪して絶命した。

人類滅亡後の地球で、レミィはワッハマンと再会する。本人曰くタイムカプセルであり、当分はワッハマンを孤独に浸らせないという。そして物語は彼女の一言で締めくくられる。

『ワッハマン』の登場人物・キャラクター

主な登場人物

ワッハマン

主人公。本名不明。1万年前のアトランティス文明の生き残り。「勇者」とされた男が金色に光る不滅の金属・オリハルコンの身体を手に入れた存在。常に高い身体的能力と戦闘技術を持ち、物理的な損傷を受けることはほとんどない。また、感情の起伏によって傷を修復することも可能。宿敵とされる「パパ」を倒すことを目的としているが、なぜ倒さなくてはならないのかという記憶が失われてしまった。そのため、戦闘には受動的である。

パパ

ワッハマンの倒すべき敵。一万年に渡り、人類世界を裏から支配してきた人物だが、コスプレ好きの一面も。本人曰く「着るわけではない」とのこと。1万年前ワッハマンと交戦し、肉体の半分を失い始めて死を意識するほどの傷を負った。残りの半分は機械で補っている。初期は中々にコミカルだったもののレミィを追いだした後は冷徹な面と、影の支配者らしからぬ言動が増える。CIAや日本の政治家とも内通しており、大政奉還にも関わっているとか。政治家たちからの呼び名は「御前」。その真の目的はワッハマンに殺してもらうことであり、彼を挑発するため、それまでの短編に登場してきた人物を次々殺害していく。悪趣味と称されており、最終決戦時には大量のレミィ、オシリスを送り込んで愚弄。レミィのことも捨てる為に作り、かわいがるだけかわいがり、捨てた。
最終決戦時、後述の破戒僧による「自分が黒幕」との嘘で本気を出したワッハマンにより致命傷を負いながらも、高笑い。レミィが一番のお気に入りだったと告白、つらい目にあわせたことを謝罪し絶命。長沼曰く、最期まで全員を躍らせた人物だった。

レミィ(ハンババ)

ハンババが本名で愛称がレミィだが、作中では巨漢ロボ形態がハンババ、通常形態がレミィと呼ばれていた。ちなみに変形パターンは毎回異なり、変形後も声は変わらない。

ワッハマンを「殺す」ため差し向けられた刺客だがどうにも間抜けなアンドロイド。戦闘力自体は高いが、ワッハマンには及ばない。基本的には小学生くらいの女の子の姿をしているが、戦闘時は「ハンババ」というマッチョな巨漢ロボットに大変身。人類の敵を「パパ」と呼んでいたため、まわりも「レミィのパパ」と呼ぶことがある。趣味はコスプレで、毎回シスター、レースクイーンなど場違いな格好で登場する。羞恥心というものを持たず、男性の前だろうと全裸で過ごす、まわし一つで相撲大会に出場する剛の者。最初から捨てられる為に作られたデータ収集用であるため、ワッハマンに勝てなかったのだ。追い出された後は「分室」に身を寄せる。ワッハマンが月に行った際迎えに行くが、地球に戻ってくる時に人工衛星を押し出されて衛星軌道からずれかかり、窮地に。レミィを振り投げればワッハマンだけでも地球に戻れるとされたが、「アイツも回収する」という長沼の声を聴き、余分なパーツを引っこ抜いて投げ捨てた。その反動で地球落下コースに戻るも、ワッハマンと別れてスイスに墜落。インガーという引退した時計職人に拾われる。
本来はロボット工学を研究していたインガーとゲルダの関係を見抜くなど、当初のお馬鹿さは抜け、自分を直すために高い材料ばかり買って足がついたことを悔いて追っ手と戦闘。日本に戻り、以降ワッハマンたちの味方として戦闘に参加。ある事情でワッハマンとキスする羽目にもなった。最終決戦の際「とっておき」のコスプレとして選んだのがウェディングドレス姿。「パパ」に追い出されたとしても、今は自分の意志でワッハマンたちの仲間になっているということを「嫁ぐ」という形で表したのだ。人類滅亡後の地球でワッハマンと再会。本人曰くタイムカプセルであり、当分は孤独に浸らせない、とのこと。物語は彼女の一言で締めくくられる。

長沼内規(ながぬま ないき)

「分室」所属の諜報員。合気柔術と中国武術をチャンポンにした怪しげな武術を使用。武器よりも武術で戦闘。梅田曰く肉体派。肉弾戦ではかなりの強者だが、余裕のない時は足技を繰り出せないこともある。当初はルパン三世と銭型警部のごとくワッハマンとの追いかけっこをしていたものの、次第にレミィのパパとの戦いにより、この世界の真相を知ることになる。既婚者だが、妻と子(生まれても来なかった娘)はとうに亡くなっており、法的には独身。子供時代、父親から物置きに閉じ込められたかられて以降カマドウマが何よりも苦手で、見るのも嫌とのこと。情報屋からパパの正体を知り、仲間には内緒で行動したがため、殺されたかもしれないとして、長らく潜伏状態だった。

竹村(たけむら)

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