
『宇宙家族カールビンソン』とは、1983年より連載されていたあさりよしとおのSF漫画作品である。『プチアップル・パイ』『月刊少年キャプテン』『アフタヌーン』で掲載され、それぞれ1から連載を行ったため、3つの世界観に分かれている。SFコメディドラマ作品のタイトルをもじった題名に、「昭和」を感じさせるパロディ。基本はギャグで笑えるのに、しっかりと重さもある作品となっている。
夕日が好きな「ジュンくん」は、夕焼けの光景で知られる大木淳。顔の前に物を置く「ジッソーくん」は、「実相寺アングル」と呼ばれる特殊なアングルからの撮影技法にこだわった実相寺昭雄がモデル、というよりも元ネタである。「分かる人には分かる」マニアックな笑いもあさりならではである。
作中に散りばめられたマニアックなパロディ

別作品より。
あさりよしとお作品には、パロディも多々見られる。これもマニアックなものが多いが、「特撮好き」なあさりの趣味全開、とまではいかずともあさりの作品作りに対する信念のようなものが描かれている。

特撮映像作家をモデルにした原住民が映画を作るエピソードがあるが、予算は「早い者勝ち」で「いいものを作ろう」としていた原住民は低予算しか与えられず、高い予算を得た原住民の映画は素人でも分かるほどの「駄作」(設定からして下らないの一言)。これは乱立する「駄作映画」に対する皮肉だろう。「何がどうダメか」を「素人」の他キャラクターに語らせている。

爆発大好きショウちゃん。避難訓練の際「火の元」としてみんなからボコられる。
ゆるゆるしているのに、ブラック。ブラックなのに、どこかゆるい。そして「いらない知識」から「感心するような知識」まで得ることができる。おおむねそんな作品である。
本当は切ない話だった『宇宙家族カールビンソン』
一見ほのぼのブラックシュール系SFコメディだが、作者によると最初の案では「暗いメルヘン」だった模様。宇宙船のことなど何も知らない、巨大なネズミの老婆が、異星人の赤ん坊(コロナ)を見つけ、娘として育てるところから物語は始まる。それなりに幸福な生活の中すくすく成長した娘は、ある日仲間の宇宙船で、母に別れを告げる間もなく旅立ってしまう。ネズミの老婆は住民から「あの子は空へ行った」という話を聞き、櫓を立て、次第に高くなっていく櫓から、いつしか降りて来なくなった、というお話。これはプチアップル版の柱で語られていた物語だが、その中に成人となったコロナのイラストが描かれている。
『宇宙家族カールビンソン』の主題歌・挿入歌
OP(オープニング):斉藤美和子「いちばんステキなラブ・ソング」
作詞・歌:斉藤美和子
作曲:瀬井広明
編曲:渡辺博也
ED(エンディング):斉藤美和子「すぷりんぐ・そんぐ」
作詞・歌:斉藤美和子
作曲:瀬井広明
編曲:渡辺博也
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目次 - Contents
- 『宇宙家族カールビンソン』の概要
- 『宇宙家族カールビンソン』のあらすじ・ストーリー
- 少年キャプテン版
- アフタヌーン版
- 『宇宙家族カールビンソン』の登場人物・キャラクター
- 美唄町の住人
- コロナ
- おかあさん
- おとうさん
- ターくん
- ベルカ
- アンディ
- パーカー
- ライカ
- ミドリ先生
- 駄菓子屋のばーさん
- 最強男
- トム
- 怪人虹男
- ケン
- ジョン
- デン助
- 到来者
- チカ
- マイカ
- 原生生物
- サンドウォーム
- げしょ
- 『宇宙家族カールビンソン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- カルチャーギャップの妙
- 昭和テイストと特撮ネタ
- 作中に散りばめられたマニアックなパロディ
- 本当は切ない話だった『宇宙家族カールビンソン』
- 『宇宙家族カールビンソン』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):斉藤美和子「いちばんステキなラブ・ソング」
- ED(エンディング):斉藤美和子「すぷりんぐ・そんぐ」