チャイルド44 森に消えた子供たち(Child44)のネタバレ解説・考察まとめ

『チャイルド44 森に消えた子供たち』とは、2015年のアメリカ映画。「このミステリーがすごい!大賞」にも選ばれたトム・ロブ・スミスの小説『チャイルド44』を原作としている。監督は『デンジャラス・ラン』などを手掛けたダニエル・スピノーサ、トム・ハーディやゲイリー・オールドマン、ノオミ・ロパスなどの豪華出演陣が主演を務める。舞台は第二次世界大戦直後のソ連。政治体制に疑問を持つ1人のソ連国家保安省(MGB)捜査官が、児童連続殺人事件を隠蔽しようとする国家へ、一石を投じようと奮闘する姿を描く。

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『チャイルド44 森に消えた子供たち』(Child 44)の概要

『チャイルド44 森に消えた子供たち』とは、2015年公開のアメリカ映画。「ロストフの切り裂き魔」こと、アンドレイ・チカチーロをモデルとしたトム・ロブ・スミスの小説『チャイルド44』を原作としている。アメリカでは2015年4月に、日本では同年7月に劇場公開された。監督は『デンジャラス・ラン』などを手掛けたスウェーデンのダニエル・スピノーサ。トム・ハーディやゲイリー・オールドマン、ノオミ・ロパスなどの豪華出演陣が主演を務める。
物語の舞台となったロシアでは、公開予定日の前日にあたる2015年4月15日に上映の中止が発表され、配給会社のセントラル・パートナーシップと共にこの決断を下したロシア文化省からは「史実を歪めている」という非難の声も挙がっている。
原作小説である『チャイルド44』は「このミステリーがすごい!大賞」にも選ばれているが、原作小説を読んでいても読んでいなくても楽しめる内容となっており、国家の在り方の多様さというものを実感することができる作品として人気を誇っている。

物語の舞台は第二次世界大戦直後のソ連。ソ連国家保安省(MGB)の捜査官であるレオ・デミドフは、親友であるアレクセイの息子が変死体で見つかったことを聞かされる。しかし、明らかに異様な状況の遺体として見つかっているにもかかわらず、「殺人は資本主義の病」というスターリンの思想に基づいて行動する上司たちは、その事件を隠蔽することを決めていた。この決定に疑問を持ったレオは、同じく事件の解決を目指すネステロフ将軍や、謂れのないスパイ容疑をかけられた自身の妻と共に動き始める。追及の末に浮かび上がったのは、根深い理想論を掲げ、醜悪な事件の隠ぺいに走った官僚たちと、歪な国家の姿だった。

『チャイルド44 森に消えた子供たち』(Child 44)のあらすじ・ストーリー

戦争英雄となったひとりの孤児

1933年、スターリンの独裁政権下にあったソ連が巻き起こした「ホロドモール」と呼ばれる人工的な飢饉のため、ウクライナは1日に2万人以上が餓死する事態に陥っていた。
ある日、孤児院から脱走した一人の名もなき孤児はデミドフという軍人に拾われ、「レオ」の名前を与えられて養子となる。
1945年、成長したレオ・デミドフはソ連軍の一員としてナチスドイツとの戦いに参戦していた。レオはベルリン攻防戦で目覚ましい戦果を挙げ、祖国の英雄として讃えられるようになる。1953年、ソ連国家保安省の捜査官として出世を果たしたレオは、スパイ容疑をかけられている獣医のブロツキーを追って、部下のワシーリーと共に彼が匿われている一軒家に乗り込んだ。レオは逃げようとするブロツキーの身柄を確保に成功したものの、ワシーリーは彼を匿っていた農夫の夫妻を、「見せしめ」と称して二人の娘たちの前で撃ち殺す。
あまりに非人道的な行いに激怒したレオは、ワシーリーを殴り飛ばし、娘たちを慰めようとするが、彼女たちは心を閉ざしてしまうのであった。

子どもの変死と妻の疑惑

本部から呼び出しを受けたレオは、友人のアレクセイの息子が変死したことを聞かされる。発見された遺体は全裸で、胃が切り取られるという異様な状態だった。しかし、スターリンの「殺人は資本主義の病である」という思想に基づき、犯罪は隠蔽されてしまう時代。
上司のクズミン少佐はこの一件を事故として処理しようとし、レオにでっち上げの検視報告書を持たせた上で「アレクセイを説得するように」という任務を与える。
その直後、レオが捕えていたブロツキーが遂に口を割った。ブロツキーは7名のスパイの実名を挙げたが、その中にはレオの妻であるライーサの名前もあった。ライーサの容疑の裏付けを取るよう命じられたレオは、ライーサから自分の子を身籠ったと聞かされ、彼女を告発しないという決意を固めた。
この結果、レオは降格させられることになり、ヴォルスクという小さな町の民警として働くことになった。ライーサもこの町の小学校でトイレの清掃係を命じられ、生活は次第に困窮していく。ライーサは、証拠のないスパイ容疑をかけられたのは、国家に対するレオの忠誠心を試されたのではないかと考えていた。

連続殺人の捜査を続けるレオ

レオたちが住むヴォルスクの町でも、アレクセイの息子と同様の手口で殺害された少年の死体が発見された。レオはこれを同一犯による連続殺人とみて、ネステロフ将軍の協力を得て極秘裏に捜査を進める。この結果、44人もの少年たちが同様の手口で殺害されていたことを突き止めるのであった。
一方、ライーサは貧しく慣れない田舎暮らしに嫌気が差し、モスクワに逃げ帰ろうとしたところをレオに連れ戻されてしまう。そこでライーサは「そもそもレオを愛してはおらず、MGB捜査官のプロポーズを怖くて断ることができなかっただけだ」と告白し、さらに妊娠は自分の身を守るためについた嘘だということまで明かした。レオはこの事件が解決したら離婚するとライーサに約束する。
そんなある日、殺人の目撃者がいると知ったレオはライーサと共にモスクワに向かうが、無駄足に終わってしまった。そして、引き続き事件を追っていたネステロフ将軍は、ロストフという町がこの2年間の間に9人が犠牲になるなど、極端に被害者が多いことを知る。

「殺人捜査課」の設立と新たな人生

少しずつ事件の真相に迫ろうとしていたレオとライーサの元に突然ワシーリーが現れ、二人は捕えられて護送列車に乗せられる。刺客を返り討ちにして脱走したレオとライーサは、その足でロストフへ向かった。そして疑惑のあったトラクター工場の勤務記録などの証拠を入念に洗い出し、その結果、マレヴィッチという温厚そうな男が容疑者として浮上する。
レオはマレヴィッチを追って森の中で追いつめるが、マレヴィッチは自らもレオと同じく孤児院出身という出自を明かし、「レオのような英雄も人殺しと変わらない」と主張した。
マレヴィッチは駆け付けたワシーリーに射殺され、長年の間レオに歪んだ嫉妬心を抱いてきたワシーリーは、レオとライーサを殺そうと襲い掛かる。
しかし一瞬の隙を突いたレオは反撃に転じ、ワシーリーを殺害。その後、不正が明るみに出たクズミン少佐は失脚して逮捕され、新体制となったMGBに呼び戻されたレオは、今回の事件を機に殺人捜査課を新設することを決意。そしてそこでは、ネステロフ将軍を責任者として起用してほしいと頼むのであった。
こうして事件を乗り越えたレオとライーサは関係を再構築し、夫婦として共に生きていくことを誓い合う。そして、かつてワシーリーに殺された農夫の娘を訪ねるため孤児院へ向かい、彼女たちを養子として迎え入れるのであった。

『チャイルド44 森に消えた子供たち』(Child 44)の登場人物・キャラクター

主要人物

レオ・デミドフ(演:トム・ハーディ)

日本語吹き替え:宮内敦士
本作の主人公。第二次大戦後のソ連国家保安省(MGB)の捜査官。元は戦争孤児だが、孤児院を脱走したところをデミドフという軍人に救い出され、「レオ」という名前をもらって養子となる。正義感が強い性格で、アレクシスの息子をはじめとした子どもたちが変死する事件を突き止めるべく、ネステロフ将軍と手を組んで秘密裏に捜査する。しかし、ブロツキーを匿っていた農夫を子どもたちの前で殺害したワシーリーを殴り飛ばしたり、スパイの疑惑がかかった自身の妻のライーサが妊娠していると知ると政府に突き出ずに左遷されてしまったりと、情に篤すぎる部分が玉に瑕。

ネステロフ将軍(演:ゲイリー・オールドマン)

日本語吹き替え:辻親八
左遷先されたレオが出会う、警察の将校。基本的には国家に忠実な保安官だが、老獪で現実主義的、そして人間的な正義感を持ち合わせている。子どもたちを標的にした連続殺人を止めたいと思っていることから、率先してレオの捜査に協力。共に殺人事件の謎を追う。物語終盤、レオからソ連国家保安省(MGB)に新設される殺人事件捜査課のトップを依頼されている。

ライーサ・デミドワ(演:ノオミ・ラパス)

画像左がライーサ

日本語吹き替え:佐古真弓
レオの妻で、教師。夫との関係は冷めており、愛情は薄い。しかし、レオと共に理不尽な国家体制から逃れ、命をかけて真実を追ううちに、夫婦の絆を取り戻していく。
非常に強い意志を持つ女性で、冷戦期の恐怖政治下でも自立的に行動することができる。

ソ連国家保安省(MGB)関係者

ワシーリー(演:ジョエル・キナマン)

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