『×-ペケ-』とは、新井理恵による漫画作品。『別冊少女コミック』において1990年から1999年にかけて連載され、単行本は全7巻が刊行された。舞台は栃木県立宇都宮南高等学校。そこに通う生徒や教師、その周辺人物たちの日常をブラックユーモアと社会風刺たっぷりに描いている。登場人物の癖の強さや、当時の少女漫画誌としては異彩を放つ不条理ギャグ漫画として人気を博した。
『×-ペケ-』の概要
『×-ペケ-』とは、新井理恵による漫画作品。『別冊少女コミック』において1990年から1999年にかけて連載され、単行本は全7巻が刊行された。栃木県に実在する、栃木県立宇都宮南高等学校を主な舞台とし、そこに通う生徒たちや周辺人物の日常を綴ったオムニバス形式の作品となっている。同校は作者の出身校であることを明かしており、制服や体操服、校内の間取りなどは忠実に再現されていることでも知られている。
一話で終了する短編作品のほか、いくつかの大まかなシリーズで構成されたシリーズ作品が存在する。シリーズ作品では共通した同一タイトルがつけられ、登場人物を補足したり、作者の心境を綴った小タイトルがつけられているのが特徴となっている。このように、連作といえる50編以上の物語群を総称したものが、本作品『× ―ペケ―』として連載されていた。基本的には4コマ漫画作品だが、1ページ作品も存在している。
また、単行本第3巻以降においては、同時期に連載されていた新井理恵による他作品『ご笑覧ください』からも「ないないの神様」などの登場人物が合流。同様に、単行本第4巻以降では『ダイナマイト・ブラボー』からも、「看護婦の母」などのシリーズが本作に合流している。
登場人物はウサギのような風貌の男子高校生・因幡浩をはじめとする、見た目からして個性的な特徴を持つ生徒や、病的なまでのサディストや過激な妄想癖を持つ女子生徒など、一癖ある人物ばかりで個性豊か。彼らの繰り広げる日常を描き、当時の少女漫画誌としては異彩を放つ不条理ギャグ漫画として人気を博した本作だが、ブラックユーモアや社会風刺といったテーマも盛り込まれているという作風の都合上、連載当時からの時代の変遷を経て「不適切」と見做されかねない表現も多く見られる。
『×-ペケ-』のあらすじ・ストーリー
「君の瞳は10000ボルト」
高校の同級生である瞳と俊夫は交際中のカップル。しかし冷酷無比な性格の瞳は、バレンタインデーにわざと失敗したチョコレートを渡したり、高熱を出して早退しようとしている俊夫を引き止め、顔を土気色にして授業に出ている彼を笑ったりとやりたい放題。
振り回される俊夫は彼女の愛を疑いつつも、それでも別れることができずに付き合い続けている。
「高校落書」
山本晃司。長髪を茶色に染め、粗暴な言動が目立つ彼は、教師や周囲の生徒たちからはいわゆる「ツッパリ」として警戒されている。しかし晃司は、ごく普通の両親に愛情を注がれ、双子の兄弟や妹、そして兄と飼い犬で構成されるほっこり家族の元で育った心優しい少年だった。人知れず教室を掃除し、職員室には花を飾り、道に迷った老婆を見つければ背負って手助けする、そんな晃司の学校生活には英語教師の渡辺という、最大の理解者の存在があった。
「ほかほか家族」
山本晃司には兄の勘彩、双子の兄である城司、そして妹の鈴妥という兄妹と、ごくごく普通の両親、そして勘彩の実子で、自分と同じ名前の晃司という家族がいる。彼らはクリスマスのケーキをバタークリームにするべきかチョコクリームにするべきかで大喧嘩をし、餅を喉につまらせた家族を見て大笑いしたり、誰が一番バレンタインのチョコレートをもらってきたかを競ったりして毎日を楽しんでいる。そんな自由奔放な山本家の、笑いの絶えない日常は続いていく。
「僕の保健室へようこそ」
病気や怪我をした生徒を手厚く看護するはずの、高校の保健室。そこには常軌を逸した言動で生徒たちを震え上がらせる、危険な大人が巣食っていた。
その名は保健医。彼は強すぎる性的欲求を持て余し、性別に関係なく生徒に妙な距離感で迫ったり、勤務態度も倫理観もおかしな方向に飛び抜けているため、保健室を不用意に訪れた生徒は皆、何かしらの意味で後悔することになる。
そして彼の元には一人また一人と、事情を知らない生徒たちが訪れるのであった。
「戦争倶楽部」
卓球部に所属する男子生徒、アンデルセン。彼は病弱で、少し走るだけでもすぐ疲れてしまう。夏休みは暑すぎて部活に出られず、冬休み中は寒いのでやはり部活に出られない。体育祭は最初から最後まで見学しただけで顧問に誉められ、部員達にはその虚弱体質をからかわれて過ごしている。しかし彼の持つ自己正当化のスキルは、群を抜いているものがあった。ひ弱であることを存分に活かし、あらゆる手を使って自分の地位を高めていった彼は、失敗すれば涙ながらに周囲に訴え、ちょっとしたトラブルでも自分が被害者であるかのように巧みに話をすり替えてしまう。部員たちは戸惑いながらも、その泣き落としとちゃっかりした立ち振る舞いを前にすると、つい押し切られてしまうのだった。こうして、ひ弱な体を活かして知略を駆使し、逞しく生き延びてきたアンデルセンは、とうとう部長になることを顧問に勧められる。
本人はあくまで「仕方なく」という顔をしているが、周囲にはそれはどこか、満足げな表情に見えるのであった。
「SISTER STRAWBERRY」
卓球部のアンデルセンには、真紀子という姉がいる。真紀子は彼以上に自己正当化のスキルが高く、泣き方を理屈で解説できるほど、自分を被害者に仕立て上げるための理論武装に長けていた。
体を張りながら自己正当化に勤しむ彼女は、今日も社会人として厳しい世の中を渡り歩いていく。
「岡本夢路」
岡本夢路は、長い黒髪に大きなリボンという外見が特徴の女の子。ポーカーフェイスではあるが、友人関係もそれなりに築いている「普通」を極めた少女だった。しかし彼女には、幸せそうに過ごしている人を常に不幸に叩き落すことを想像しているという悪癖があった。実際に行動に移すことこそないものの、その妄想は大きなことから小さなことまで、常に人としての一線を超えている。高校を卒業した夢路は看護師としての道を選び、彼女が良からぬ妄想を抱いていることを察する患者たちに恐れられながら、妄想の世界を満喫するのであった。
「ルイルイ」
二頭身の体、頭には「Merry X'mas」と記された三角帽子を被ったルイルイ。彼は自身を、魔法を使って人々を幸せにする「幸せの使者」だと信じている。
足が太いことを悩んでいる人がいれば、骨が浮いて見えるほど体を細くしてやり、子供っぽい外観に悩む人がいれば、40代くらいの姿に変身させてやったり、誰かに優しくされたがっている人がいれば、故意にケガを負わせて同情を引けるようにしたりなど、彼は毎日人々に幸せを届けられるよう、弟子のアリエスとともに常に忙しく過ごしている。
「ガニ」
自称「幸せの使者」であるルイルイには、ガニメーデスという師匠がいる。ガニメーデスは不肖の弟子であるルイルイの存在を深く悔いて、いつも自分は消えていなくなるべきだと自分を責めていた。そんなある日、ルイルイの弟子であるアリエスの兄が、ルイルイを殺そうとやってきた。弟子を殺されそうになったガニメーデスは怒り、アリエスの兄に襲い掛かる。
「イナバ」
因幡浩は、白い体毛と赤い目、そして長い耳が特徴の、キュートな外見の男子生徒。どう見てもウサギにしか見えないのに、毛を剃ると普通の人間の姿になり、走り幅跳びは1メートル20センチしか飛ぶことができない。そんな彼に、周囲はどこから来たのかを聞けずにいる。愛らしい外見で性格も良い浩には、伊倉紅子という恋人がいた。彼女と浩は順調に愛を育み、結婚して子供に恵まれる。伊倉を溺愛する浩は「子供は彼女に似てほしい」としみじみ語るのだった。
「探してるのにぃ」
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目次 - Contents
- 『×-ペケ-』の概要
- 『×-ペケ-』のあらすじ・ストーリー
- 「君の瞳は10000ボルト」
- 「高校落書」
- 「ほかほか家族」
- 「僕の保健室へようこそ」
- 「戦争倶楽部」
- 「SISTER STRAWBERRY」
- 「岡本夢路」
- 「ルイルイ」
- 「ガニ」
- 「イナバ」
- 「探してるのにぃ」
- 「怪人赤マント」
- 「高校教諭」
- 「赤い羽音」
- 「陽だまり」
- 『×-ペケ-』の登場人物・キャラクター
- 「君の瞳は10000ボルト」
- 白鳥 瞳(しらとり ひとみ)
- 出川 俊夫(でがわ としお)
- 瞳の兄
- 「高校落書」/「ほかほか家族」
- 山本 晃司(やまもと こうじ)
- 渡辺(わたなべ)
- 広瀬 舞子(ひろせ まいこ)
- 山本 城司(やまもと じょうじ)
- 山本 鈴妥(やまもと りんだ)
- 山本 勘彩(やまもと かんさい)
- 山本 晃司(小)(やまもと こうじ(しょう))
- 「僕の保健室へようこそ」
- 保健医
- 「戦争倶楽部」/「SISTER STRAWBERRY」
- アンデルセン
- 顧問の男性教師
- イソップ
- 真紀子(まきこ)
- 「岡本夢路」
- 岡本 夢路(おかもと ゆめじ)
- 岡本 夢人(おかもと ゆめと)
- 「ルイルイ」/「ガニ」
- ルイルイ
- アリエス
- ガニメーデス
- アリエスの兄
- 「イナバ」
- 因幡 浩(いなば ひろし)
- 因幡 晃(いなば あきら)
- 伊倉 小紅(いくら こべに)
- 因幡 ピーター 円人(いなば ピーター まろんど)
- 因幡浩の友人たち
- 「探してるのにぃ」
- ないないの神様
- 「怪人赤マント」
- 赤マント
- かおる
- かまいたち
- 「高校教諭」
- 先生
- 広瀬(ひろせ)
- 「陽だまり」
- 内藤(ないとう)
- 長島(ながしま)
- 『×-ペケ-』の用語
- 栃木県立宇都宮南高等学校(とちぎけんりつうつのみやみなみこうとうがっこう)
- 『×-ペケ-』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 深いのにムダに見える恵方巻の知識
- 大人びた小学生から垣間見える社会風刺
- 切なくもよく見かける「あるある」ネタ
- 『×-ペケ-』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 舞台となった栃木県立宇都宮南高等学校は新井理恵の母校
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