イノサン(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『イノサン』は、坂本眞一による歴史漫画作品。タイトルの「イノサン」とは、フランス語のInnocent(イノサン)、英語のInnocent(イノセント)を意味する。『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて、2013年9号から2015年20号まで連載された。18世紀のフランスで、処刑人の家に産まれた青年の物語。国王直々の処刑人の傍ら、医師となり人々を救ったが、サンソン家の人間は死神と蔑まされた。処刑人の家業に前向きではない青年が、彼の意志には反して処刑人として血に染まった人生を歩んでいく物語である。
処刑人
フランスにおいては世襲の役職だった。裁判によって死刑が確定した犯罪者に対して死刑を執行する者のこと。社会から蔑視される一方で経済的には裕福であり、処刑や拷問の技術を伝承していた関係上、外科医術に通じている。 また、封建的な意味として犯罪者を処刑する高位の 裁判官 の名称として用いられる場合や、 殺し屋 を示す比喩として用いられる場合もある。
ギロチン
フランス革命下で発足した国民議会の議員で、衛生問題に詳しかった医学博士のギヨタン Guillotine (英語読みでギロチン)が発案者とされる。
人権宣言発出前のフランスでは、身分の違いによる激しい差別があり、死刑の手法も例外ではなく、平民は絞首刑、貴族は斬首刑といった方法で死刑執行されていた。絞首刑よりも斬首刑の方が死ぬ際に苦しむ時間が少なく済んだが、斬首刑であっても、腕の未熟な死刑執行人にあたると苦痛を余儀なくされた。そこでギヨタン博士が考案したギロチンを用いて死刑執行を行うことにより、受刑者に与える苦痛を軽減させた。1792年に国民議会で採用されてからは、ギロチンを用いた処刑方が採用され、広く行われるようになった。1793年1月のルイ16世の処刑や、同年10月のマリ=アントワネットの処刑もギロチンが用いられた。次第に公開処刑は行われなくなったものの、フランスでは非公開のギロチンを用いた処刑は1970年代まで続き、1981年の死刑廃止まで存在した。
『イノサン』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
シャルル=アンリ・サンソン「今成すべき事の為に必要な手がかりであるならば男であろうが女であろうが老いていようが子供であろうが僕は誰の言葉にも耳を傾ける!!!」
ダミアンの八つ裂きの刑にあたり、ニコラが意図的に駄馬を用意したせいで刑が進まなくなってしまった。本来使われるはずだった馬が用意されていれば、四肢は、馬が引いた途端に千切れていき感じる苦痛が最小限で済むはずであった。成す術がないシャルルの前に現れたのはまだ幼いマリー=ジョセフ。マリー=ジョセフは物心ついた頃から独学で死刑執行の手技や医療を学んでいたためシャルルに対して「腱を切ればいい」と的確なアドバイスをした。女が壇上に上がることを禁忌とする祖母アンヌ=マルトに対してシャルルは「今成すべき事の為に必要な手がかりであるならば男であろうが女であろうが老いていようが子供であろうが僕は誰の言葉にも耳を傾ける!!!」と言い放った。そこには、かつて厳しい折檻を受けていた幼年期のシャルルの姿は微塵も感じられなかった。
シャルル=アンリ・サンソン「新しい時代は僕達のもの 僕達の未来を脅かす者は 誰であろうと斬り捨てる!!!」
ダミアンの八つ裂きの刑の執行にあたり、女でありながら神聖な壇上に上がったことで、祖母アンヌ=マルトから焼き鏝を胸に押し付けられる等、苛酷な折檻を受ける妹マリー。そこへ叫び声を聞いたシャルルが駆けつけ、マリーを救い出すが、手枷を外されたマリーはアンヌ=マルトを剃刀で斬りつける。我を忘れ怒り狂うアンヌ=マルトにシャルルが放った言葉が「新しい時代は僕達のもの僕達の未来を脅かす者は誰であろうと斬り捨てる!!!」だった。それまで父バチストや祖母アンヌ=マルトに言われるがままに生きてきたシャルルだったが、いつか死刑制度を無くすためにはこのまま言いなりになっていてはいけない、これまでのやり方ではいけないと気付いたのだった。
『イノサン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
幻となった舞台「イノサン」のパリ公演
歌手の中島美嘉主演、宮本亜門演出のミュージカル「イノサン」のパリ公演中止が2020年1月中旬突如公式ツイッターで発表された。公演予定の2月9日まですでに1ヶ月を切っており、観劇予定だったファンの困惑する様子がテレビのワイドショーでも取り沙汰されていた。提携するJTB経由で申し込みをしていた場合は全額返金の対応が取られたが、現地集合のプランについては未対応。自身で航空券や宿泊施設を手配していた場合も何も対応はされなかった。
パリ公演の開催予定会場パレ・デ・コングレ・ド・パリは、パリのショッピングモールであるLes Boutiques Du Palais内にある劇場だった。中止の理由として、ネットニュースやツイッターで話題になっていたが、1.出演者の降板が相次いだ事が影響2.パリの情勢不安を考慮した3.会場の手配等現地で何らかのトラブルがあった、等が現在でもなおネット上で見られることが出来る。(2021年10月)公式サイトのみならず、主演の中島美嘉も謝罪コメントを出すまでの騒動に至った。
首元に斬首の跡が見えるギロチンマリーが表紙を飾る「画集イノサンBleu」
画集「イノサンBleu」は、「イノサン」から「イノサンRouge」までの全てのカラー原稿を収録し、「イノサンRouge」最終巻と同時に発売された。
フレスコ画風に描かれた表紙のマリーの首元からは出血が見られ、ギロチンで斬首されたような跡がある。一見、青い薔薇を持っているように見えるが、表紙をめくると、表紙の薔薇は透明な作りになっている。そして1ページ目に青い薔薇の絵とともにこう書かれている。「青薔薇の花言葉。かつてこの世に存在しない青薔薇の花言葉は不可能だったが、2004年開発は成功。花言葉は変更された。不可能を可能にする」と。それはまさにイノサンの作中でのマリーそのものだった。
画集の中には、イノサン全シリーズのイラストや、単行本では未収録のもの、コミックスのカバーイラストになったものも収録されている。そして、カラー作品の後には、著者である坂本眞一氏が自ら選んだコミックス内のモノクロの絵のベストセレクションが掲載されており、漫画連載時には印刷されていた文字が出来る限り外されているため、作画を楽しむことが出来る。
現役高校生の時に漫画家デビューをした著者の現在に至るまでの逸話も掲載されている。
2020年3月中旬に銀座蔦屋書店で開催予定だったサイン会は、新型コロナウイルスの感染症対策のため中止となった。
目次 - Contents
- 『イノサン』の概要
- 『イノサン』のあらすじ・ストーリー
- 死神と言われるゆえん
- 幼少期に差別を受けていたシャルルは他の子供たちと同じように教育が受けられなかった
- シャルルは14歳で初めての処刑台に
- 初めての処刑はお粗末なものだった
- 死刑執行人の継承を決意したシャルルにまた辛い運命が迫る
- 引き返せなかった八つ裂きの刑
- 物語は真紅のベルサイユ編へ
- サンソン兄妹の運命に関わる二人
- 前代未聞の死刑執行命令
- ベルサイユ宮殿での公開裁判
- オーストリアの花嫁と王政破壊を宣言するフランス王太子
- ふたりのマリーに立ちはだかる国王に寄り添う兄シャルル
- 『イノサン』の登場人物・キャラクター
- サンソン家
- シャルル=アンリ・サンソン (Charles-Henri Sanson)
- マリー=ジョセフ・サンソン
- ゼロ
- シャルル=ジャン・バチスト・サンソン(Charles-Jean Baptiste Sanson)
- アンヌ=マルト・デュビュ・サンソン
- ニコラ=シャルル・ガブリエル・サンソン(Nicolas-Charles Gabriel Sanson)
- アンドレ・ルグリ
- ジャン・ルイ
- アンリ・サンソン(Henri Sanson)
- ガブリエル・サンソン(Gabriel Sanson)
- 王族
- ルイ=オーギュスト(Louis=Auguste)
- ルイ・フィリップ2世(Louis Philippe II)
- マリー=アントワネット(Marie Antoinette)
- 軍人・貴族
- ジャン
- トーマス=アーサー・グリファン
- ジョルジュ・ド・ラトゥール
- 第三身分
- マリー=ジャンヌ・ベキュー
- マリー=ジャンヌ・ベルタン
- ロベール=フランソワ・ダミアン
- アラン・ベルナール・シュバリエ・ド・サン・ジェローム
- 『イノサン』の用語
- ムッシュ・ド・パリ
- 処刑人
- ギロチン
- 『イノサン』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- シャルル=アンリ・サンソン「今成すべき事の為に必要な手がかりであるならば男であろうが女であろうが老いていようが子供であろうが僕は誰の言葉にも耳を傾ける!!!」
- シャルル=アンリ・サンソン「新しい時代は僕達のもの 僕達の未来を脅かす者は 誰であろうと斬り捨てる!!!」
- 『イノサン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 幻となった舞台「イノサン」のパリ公演
- 首元に斬首の跡が見えるギロチンマリーが表紙を飾る「画集イノサンBleu」