華のなまえ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『華のなまえ』は、槇村さとるによる短編漫画作品集、および同作品集のタイトル作として収録された短編漫画。短編集は『華のなまえ』のほか『晴れた日に永遠が見える』『SilkとCotton』の2作を合わせた3編で構成される。いずれも感受性豊かな少女を主人公に据え、大人でも子どもでもない年頃特有の、粗削りかつ繊細な心理や葛藤を美しく描いている。

『華のなまえ』の概要

『華のなまえ』(はなのなまえ)は、槇村さとるによる短編漫画作品集、および同作品集のタイトル作として収録された短編漫画。短編漫画である『華のなまえ』は1992年4月号から6月号にかけて『別冊マーガレット』で連載された。
収録されているのはタイトル作となった『華のなまえ』のほか、『晴れた日に永遠が見える』『SilkとCotton』の2作を合わせた3編で、いずれも槇村さとるの初期の作品。なお、『晴れた日に永遠が見える』は『別冊マーガレット』の1993年3月号、『SilkとCotton』は、同誌の1990年5月号に掲載されたものである。
いずれの物語も感受性豊かな主人公の少女を中心として進行していく。彼女たちが抱える、若さゆえの粗削りな心理や繊細な葛藤がどんどん洗練され、大人の女性への第一歩を歩み始める姿を描いている。
美しい作画と、登場人物の個性的かつおしゃれなファッションも見どころとなっている。

『華のなまえ』のあらすじ・ストーリー

『華のなまえ』

ファッションショーや雑誌のモデルとして活躍する久保梨花(くぼりか)は、幼い頃に父を事故で亡くし、それ以来、母である桂木志保(かつらぎしほ)と2人で生きてきた。志保は大女優として名を轟かせ、知らない者はいないほどの有名人だが、梨花にとっての母は、仕事ばかりを大切にして淋しい時も決して寄り添ってはくれない、「冷たい人」という印象だった。母親の気を引きたい一心で必死に甘えていた幼少期や、反抗して困らせようとしていた思春期にも邪魔者扱いしかされなかった過去に、梨花は深い傷を負っていた。
こうして精神的に未熟なまま大人になった梨花は、いつも何かに苛立って生きるようになり、仕事に対しても中途半端に取り組むようになってしまう。
ある日、その仕事ぶりをCMで共演した峰岸晃司(みねぎしこうじ)に厳しく批判された梨花。それからしばらく後、梨花は夜遊びに行こうと運転していた車で事故を起こしてしまった。その際、足に怪我を負い、足の神経を損傷してしまう。モデルらしい美しい動作を失い、梨花はショーモデルとしての道が絶たれてしまうのであった。さらに、事故によってついた悪いイメージも払拭することができず、梨花はモデルとしてのすべての仕事を干されてしまった。
傷心から更にやけ酒を煽っていた彼女だが、街中で彼女を拾ってくれた小劇団の女性と出会い、峰岸と再会。ちょうど代役を欲していた彼らの頼みにより飛び入りで演技に再会することとなる。峰岸は梨花の持つ女優としての才能を見出していた。彼はそのまま自身が手掛けている劇団に梨花を誘い入れ、彼女は自分の持つ新たな才能と向き合っていくことになる。

『晴れた日に永遠が見える』

男性的なルックスを持ち、周囲が求めるがまま「男らしさ」に応えて生きてきた桜子(さくらこ)は、自身のあり方と、世間の求める「桜子像」とのギャップにどこか空っぽで冷めた気持ちを抱えていた。ある日、桜子は謎めいた美女の翠(みどり)と出会う。
桜子は、自らを「レズビアン」と公言し、自分に対しても決して抑圧するような言動をとらない翠に対して好感を持つようになる。
しかしこの一方、桜子は翠と対話を重ねるごとに自身の抱える空虚さと対峙しなければならない局面に立たされ、「自分のありかた」というものを考えるようになっていく。

『SilkとCotton』

加賀の老舗呉服店の娘であるマミは、見合いを断る代わりに都内の大手下着メーカー「マリーナ」でデザインを盗んでくるよう父親から言いつけられ、しぶしぶ上京する。
満員電車に翻弄されたり、誤解だったとはいえ痴漢の被害に遭ったりと、苦難を重ねてようやく会社についた彼女。そこで待っていたのは、痴漢の犯人が上司だった、という事実と、積み重なる雑用仕事の数々だった。下着は今まで親に選んでもらってきたほど興味がなく、パシリ同然の仕事を必死にこなすも、社内で馬鹿にされてしまうマミ。
しかし、ある事件をきっかけとして、次第にアイディアを発信できるようになっていったマミは、下着デザインの趣深さに気づくようになる。

『華のなまえ』の登場人物・キャラクター

『華のなまえ』の登場人物

久保 梨花 (くぼ りか)

『華のなまえ』の主人公。生まれ持っての長身を活かし、雑誌やショーのモデルとして活躍している。華々しく活躍する一方で、父の事故死以来、母である志保に放置されていた幼少期の体験が傷となっている。こうした事情から非常に自己顕示欲が強く、周囲からちやほやされないと機嫌を損ねてしまうなど、振る舞いもわがまま。交通事故でモデルの道を絶たれて絶望するが、峰岸に女優としての素質を見出され、新たな一歩を踏み出し始める。

峰岸 晃司(みねぎし こうじ)

プロデューサー兼演出家。脚本を手掛けることもある。何でも器用にこなせる要領のいい性格と、端整なルックスを活かし、モデルや俳優としても活躍。CMのモデル撮影で出会った梨花の中途半端な仕事ぶりを痛烈に批判するが、その反面で彼女の女優としての素質を見抜いていた。梨花が事故でモデルとしての道を絶たれた後は、自身が手掛ける劇団に彼女を迎え入れる。表面だけを見ると強引で口調も冷たいが、根は面倒見が良く非常に優しい。

桂木 志保(かつらぎ しほ)

梨花の母。大女優として名を馳せるが、一方で娘の梨花を邪魔者のように扱い、彼女の心に深い傷を残す。

ショーコ

峰岸の劇団に所属している女性。世話焼きで正義感が強く、独自の価値観に基づいて生きている。梨花が怪しい男たちに襲われそうになっているところを、通りかかって助ける。

加藤 友紀(かとう とものり)

女優の母と祖母を持つ芸能一家に生を受け、自身も俳優として活動する男性。梨花の幼馴染。多忙な親を持つという点では梨花と同じだが、彼女とは対照的に天真爛漫で明るい性格をしている。梨花に想いを寄せている。

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