豊かな感受性と光るセンスが魅力!『華のなまえ』

美麗で繊細な絵と鋭い心理描写が印象的な漫画家・種村さとるさん。そんな彼女の初期の作品で、感受性豊かな少女を中心に荒削りな心理や葛藤が洗練されていく様を描いた珠玉の短編集・『華のなまえ』について紹介します。

華のなまえ

美しいルックスとスタイル、洗練された身のこなしを持つリカ。そんな自分を顧みない大女優の母に対して強い不満や怒りを抱えている彼女は、幼いころからプライベートが荒れ放題。
そんなさなか仕事で気に食わない言葉を掛けられたリカは、いつものごとく夜遊びに繰り出したあげく交通事故を引き起こしてしまい、脚の神経を損傷。モデルらしい美しい動作の出来ない体になってしまって仕事も激減してしまう。

傷心から更にやけ酒を煽っていた彼女だが、街中で彼女を拾ってくれた小劇団の女性と以前仕事で一緒になり「気に食わない」言葉を掛けた青年と再会。ちょうど代役を欲していた彼らの頼みにより飛び入りで演技に再会することとなる…

晴れた日に永遠が見える

男性的な見かけを持ち、周囲の求める「男らしさ」に応えて生きる桜子。
自身のあり方と世間の求める"桜子"像とのギャップにどこか空っぽで冷めた気持ちを抱える彼女の。そんなある日のことひょんなことをきっかけに謎めいた美女・翠と出会う。

自らをレズビアンだと語り桜子を抑圧しない翠に対して好感を持つが、その一方で翠と対話を重ねるごとに自身の抱える空虚さと対峙しなければならない局面に立たされる…

SilkとCotton

加賀の老舗呉服店の娘・マミは、見合いを断る代わりに都内の大手下着メーカー・マリーナにてデザインを盗んでくるよう父親から言いつけられ、しぶしぶ上京。
満員電車にもまれたり痴漢(誤解)に遭ったり苦難を重ねてようやく会社についた彼女。そこで待っていたものは痴漢の犯人が上司になる事実と積み重なる雑用の数々だった…

下着は親に選んでもらうほど興味がなく、またはパシリ同然で馬鹿にされていた彼女。しかしあることがキッカケでしだいにアイディアを発信できるようになり、しだいに下着デザインの趣深さにきづいてゆく…

まとめ

見どころは多々ありますが、特に大人になりかけの子供の持つ繊細な心象と、登場する人物たちの着る個性的ながらも洒落た服装が魅力的。モード系のファッションを見るのが好きな方、モラトリアム中のもやもやした気持ちを抱えている方に特にオススメの作品集でした。

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