路傍のフジイ〜偉大なる凡人からの便り〜のネタバレ解説・考察まとめ

『路傍のフジイ〜偉大なる凡人からの便り〜』とは、2023年5月より『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載を開始した鍋倉夫による漫画作品である。一見冴えない中年男性の藤井守は40代独身で非正規雇用。周囲からはつまらない人間だと思われているが、周囲の価値観にとらわれずマイペースに暮らす彼の生き方は、周囲の人々の価値観にも影響を与えていく。『週刊ビッグコミックスピリッツ』のほか、ビッコミなどの電子漫画サイトでも配信され「マンガ大賞」なども受賞している。

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橘 共実(たちばな ともみ)

石川がカフェで出会った小説家。独特の雰囲気があり、石川にとって気になる存在。

石川がマッチングアプリで出会った男性とカフェにいた際に、隣の席にいた年配の男性。小説家で、家だと眠くなるという理由からカフェにパソコンを持ち込んで仕事をしている。石川が相手の男性を見極めるためにいつも同じカフェに来ているのを知っており、男性が席を外している間に石川に声をかけたのが出会い。今までの男性といる時より楽しそうだったという理由が最初の会話だったため、はじめは石川に距離感がおかしい人と警戒される。だが、大好きなアニメ「マッドハンターズ」のコラボグッズを探す石川がコンビニをはしごしていた際に、偶然店内で再会しグッズを譲る。なお、この時の石川は髪を下ろして眼鏡もかけていたために、橘は自分がグッズを譲った女性が石川であることには気づいていなかった。
後日、再び隣の席になった石川からグッズのお礼を言われてからコンビニでのことを思い出し、石川はグッズを譲り受ける際に支払いを拒否されていたため、お礼を兼ねて橘の小説を電子書籍で購入。作品は石川の好みに合い、時間を忘れて読み進めたほど。同じ職場の渡辺や松岡も橘の作品を知っており、それなりの知名度を持つ。時折見せる笑顔や真剣に仕事にとり組む横顔が石川の心を掴んだが、石川の告白はきっぱりと断った。2度の離婚歴がある。

『路傍のフジイ〜偉大なる凡人からの便り〜』の用語

カイン

石川の推しキャラ。作品の中での人気は高くないためグッズが手に入りにくい。

石川が大好きなアニメ「マッドハンターズ」のキャラクター。長髪に眼帯をしており、輪郭はやつれているが石川の最推しキャラクター。作中ではあまり人気がなくグッズもほとんど作られていない。藤井もこのアニメが好きで、雨の日に傘がない石川に藤井が声をかけ、一緒に帰ることになった際に石川のバッグについていたキーホルダーが会話のきっかけとなった。2人とも一番好きなキャラクターがカインだったことで打ち解けた。藤井いわく「皮肉ばっかり言って口も悪いが嘘はつかない」。そしてそこが石川も好きな部分。8話ではアニメの2期が始まったことが石川の台詞から判明しており、更に第35話ではコラボグッズを求める石川がコンビニをはしごしても売っている店が見つからないなど、人気の高いアニメであることが伺える。
なお、石川はこの時に偶然コンビニで会った橘からグッズのみを譲り受け、欲しかったレアなカインのアクリルキーホルダーを手に入れた。

SKINNY GOAT(スキニーゴート)

藤井の心に刺さった若者向けのバンド。ライブには若い女性ファンが多数。

若者に人気のアーティスト。矢部いわく「ティーン向け」の楽曲が多く、女性のファンが多い。藤井が訪れたラーメン店で偶然流れていたものの、アーティスト名も曲名もわからなかったため、CD屋で鼻歌を歌って、店員に教えてもらった。CDを聴き、気に入った藤井はコンサートにも足を運んで感動し、後にギターでも曲を練習する。湯沢の送別会のカラオケでは「白夜」を歌っており、松岡からも「選曲が若い」と言われていた。

黒ひげさん

黒ひげさんの葬儀には、死を悼むファンからたくさんの手作り作品が寄せられた。

藤井や同年代の矢部が子供の頃に見ていた教育番組「いっしょにつくろ」の進行役の男性。身近なもので工作をする番組だが、シルクハットにカイゼル髭をたくわえてステッキを持ったやや不気味な紳士。色をワインや血の色で例えたり、喫煙パイプを作ったりとコンプライアンスの面で危ういところもあり、父母からの評判も悪かったと噂されているが、その独特な雰囲気が子供からは人気だった。藤井はこの番組が好きで大学生になってもたまに観ており、敬語を話すようになったのも黒ひげさんの影響。
訃報がニュースで流れたことから会社でも話題になり、藤井はお別れの会に行く予定だった。しかし、新入社員・長内を急遽手伝うことになったためにお別れ会には間に合わなかった。終了後に会場に駆けつけた際、たまたま片づけをしていた男性に会うことができ、自分が作った飛行機を加えて黒ひげさんへの餞にした。藤井以外にも黒ひげさんを偲ぶ参列者が持ってきた様々な工作品が届けられており、当時の少年たちに愛されていたことが伺える。
実は23話では、藤井が夕飯をご馳走になっていた馬場宅のテレビでも黒ひげさんらしき人物がテレビに映っている。

月下の剣士

ストーリーは作中で詳しく明かされないが、表紙から武士の話であることが想像できる。

中学時代の藤井と馬場が仲良くなるきっかけになった漫画。教師に頼まれて不登校気味でしばらく学校に来ていない馬場にノートを渡しに来た藤井は、馬場の母に促され部屋に通される。話したことがなかった馬場は気まずさを感じるが、動じない藤井は馬場の本棚に漫画がたくさんあることに気付き話題を振る。馬場が一番好きな漫画が『月下の剣士』だが、藤井が途中までしか持ってないと話すと馬場はそこからが面白いから続きを読ませた。どんなストーリーかは断片的にしかわからないが、主人公の名前は「リック」、馬場のお気に入りのキャラクターは「吉宗」という名前であることが判明している。馬場にとって一、二を争う名シーンがあるが、藤井もそのシーンで涙ぐんだことから登場人物に関する考察で話が盛り上がる。帰りに馬場は藤井に続きの単行本を貸した。この作品をきっかけに仲良くなった2人だが、途中で藤井の転校が決まり、見送りにきた馬場が読み終えていない分の単行本を餞別として藤井に渡した。

『路傍のフジイ〜偉大なる凡人からの便り〜』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

田中「この人がつまらない人間に見えたのは、俺自身がつまらないやつだからだ。」

地味でつまらなそうに見えた藤井だが、本人はそんなことは全く気にしていない。そんな藤井の姿は田中の見方を変えていった。

第1話で初めて藤井としっかり話すことになった田中のモノローグ。結婚や出世から取り残されたような焦りを抱えながらも、自分より冴えない藤井を見て「自分の方がまだマシだ」と感じていた田中。ある休日、偶然自宅近くで藤井の姿を見つけた田中は、藤井の後をつけてみる。だが、彼の休日は驚くほど地味で、楽しそうに思える要素が全くなかった。藤井がケーキを買う様子を見ながら、自分の行動がばかばかしく感じた田中は家へ帰ろうとする。
だが、ケーキ屋を出たところで周囲に怒鳴る見知らぬ年配男性を、車が来るからと端へ寄せようとした藤井の顔に、男性の拳が当たってしまう。男性はそのままどこかへ行ってしまい、鼻血を出して起き上がった藤井に、田中は自分が持っていたタオルを貸す。これがきっかけで、藤井の家へ一緒に行くことになった。変わったものがあったり、すごく散らかっている部屋を想像したが、藤井の部屋は意外にも普通だった。所狭しと様々な趣味に関する品や本が並び、壁にかかっている絵や部屋にある皿は自分が教室で作った作品だという。だが、どれも決して上手なものではない。田中は皮肉も込めて「人生楽しそうですね」と藤井に言うと、藤井は素直に田中の言葉を受け取り、やりたいことも知りたいこともたくさんあると返した。そんな藤井のなりたいものは「不老不死」だと言う。他人の評価を気にせず、自分の「好き」を楽しみ、殴られたことも含めて「良い日だった」とほほ笑む藤井を見て、田中は本当の意味でありのまま生きる彼に感心する。
部屋に置いていたギターを見つけ、藤井の弾き語りを聴きたいと頼んだ田中は、絵や陶芸と同じく決して上手ではないギターと歌声を聴きながら思わず涙ぐんだ。自分が藤井を「つまらない人間」だと思っていたのは、他人の尺度でしか物事を見られない自分自身の空虚さゆえだったと気づく。そして、「この人がつまらない人間に見えたのは、俺自身がつまらないやつだからだ」という思いに至ったのだった。
藤井と話してからは不思議と心の中にあったモヤモヤが消えた田中は、また遊びに来てよいかと藤井に尋ねると快諾される。この日から少しずつ、田中は藤井と仲良くなった。

藤井「僕は…無理してまで人に好かれようとは思いません。」

藤井守という人間性が凝縮された一言。

矢部から「もっと笑った方がいい」「その方が好かれる」と言われた時の藤井の返答。同じ職場にいながら、あまり関わりがなかった矢部とともに、病欠の営業の代わりにクライアント先へ行くことになった藤井。病欠の営業・中尾が最近ふさぎ込んでいるように見えていたという藤井に対し、意外に人を観察していると話す矢部は、自分がどう見えているかを藤井に聞く。「みんなから頼りにされる職場の明るいムードメーカー」に見えるという藤井の答えに満更でもない様子の矢部だが、その後藤井は「本当の矢部さんのことはわかりません」とも付け加えた。如才ない雰囲気で藤井にも気さくに話しかける矢部だが、自分のフィールドに常に居たいタイプ。自身の趣味である登山に藤井を招こうとしたり、クライアント訪問後に食事に行く際にも自身が常連として通うバーに藤井を連れて行ったりと、マイペースな藤井は少し困惑する。
バーの常連客はかわるがわる藤井に話しかけてくるが、徐々に自分のいる場所ではないと感じた藤井は、先に帰ると矢部に伝えて店を出る。自分と同じように楽しんでいると思っていた矢部は慌てて藤井を追いかけ、つまらなかったかと問う。藤井はみんな良い人で楽しかったと告げるが、その表情はいつもの通り笑っていない。そんな藤井に矢部は「もっと笑った方がいいですよ。そのほうがみんなと打ち解けられるし…好かれると思います」と告げる。だが藤井は「僕は…無理してまで人に好かれようとは思いません。」と自分を崩さない。そんな藤井に矢部は「僕は多少無理してでも人に好かれたい」とし、そんな本音を聞いた藤井はようやく笑顔を見せる。矢部からは「意外とガンコ者なんですね」と言われその場で別れた。藤井の本音と性格がはっきりとわかる言葉でもある。

成田「時間は関係ないんじゃない?マモルちゃんは友達だと思ってるよ、きっと」

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