リボーンの棋士(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『リボーンの棋士』とは、2018年25号から2020年38号まで『ビッグコミックスピリッツ』に掲載された鍋倉夫による漫画作品。才能はあるがプロ棋士になれずに26歳で奨励会を退会し将棋から遠ざかっていた主人公の安住浩一が、3年後に再び将棋と向き合いプロ棋士を目指して仲間たちと切磋琢磨していく物語である。緊張感ある対局の様子やプロ棋士になるリアルな厳しさが描かれている。また、さまざまな戦術や棋風が紹介されており、この作品を通して将棋を学ぶこともできる。
『リボーンの棋士』の概要
『リボーンの棋士』とは、2018年25号から2020年38号まで『ビッグコミックスピリッツ』に掲載された鍋倉夫による日本の漫画である。タイトルの『リボーンの棋士』は、手塚治虫の漫画である『リボンの騎士』を倣ったものであるが、両者に関係性はない。年齢規定により奨励会でプロ棋士になれなかった20代後半の主人公の安住浩一(あずみ こういち)がいくつもの挫折を乗り越えトップアマチュア棋士となり、そこからプロ棋士として生まれ変わる(リボーンする)過程を描いたヒューマンドラマである。単行本は全7巻が発売されている。ちなみに、この作品の将棋監修をしている鈴木肇も主人公安住と同様、奨励会でプロ棋士になれずにアマ棋士からプロを目指している。
主人公の安住浩一は小学生のときから将棋の才能があり、将来を有望されていた。しかし、プロ棋士を養成する奨励会においてよい成績を残すことができず、プロ棋士になれずに26歳で奨励会を退会した。しばらく将棋から遠ざかった生活をしていたが、退会してから3年ほど経って再び将棋と向き合うことになった。アルバイト先が同じである森麻衣(もり まい)の勧めにより、アマチュア棋士の大会へ積極的に参加するようになったのである。アマ棋戦で良い結果を残すとプロ棋戦に参加ができるようになり、そこでも良い結果を出すと特例としてプロ棋士になれる。30歳手前になった安住はプロ棋士になる夢を再び燃やし、目標に向けて同じ夢を持つ仲間たちと切磋琢磨していく。果たして、安住はプロ棋士になれるのか、安住のシビアな戦いが続いていく。
この作品はプロ棋士になるための非常に厳しい世界がリアルに描かれており、また、プロ棋士・奨励会員・トップアマ棋士・将棋ファンといった将棋界の人間模様も詳細に描いており、将棋ファンならずともその内容は興味深いものといえる。また、プロの対局で実際に用いられるさまざまな戦術や棋風が紹介されており、この作品を通して将棋を学ぶこともできる。
『リボーンの棋士』のあらすじ・ストーリー
将棋まつり
主人公の安住浩一(あずみ こういち)は小学生のときから将棋の才能が豊かで、将来はプロ棋士になるだろうと有望視されていた。しかし、プロ棋士を養成する奨励会においてプロになる要件である「26歳までに4段に昇格すること」が叶わず、年齢制限に引っ掛かり26歳で奨励会を退会する。その後、安住はカラオケ屋でアルバイトをするだけで、奨励会にいたことを周りに言わずに将棋から離れた生活を3年間送っていた。
安住のアルバイト仲間に森麻衣(もり まい)がいる。将棋ファンの森は数年前の対局をテレビ観戦していた際、記録係が安住であることを見つけた。記録係をするのは奨励会員であるので、安住は以前奨励会員であったということだ。森は驚くとともに安住に憧れるようになり、安住に将棋界に復帰して欲しいと強く願い、デパートで開催される将棋まつりに安住を誘った。
リボーン
将棋まつりで、安住は明星(あけぼし)六段と指導対局で戦った。明星は中学生のときにプロになったトップ棋士の一人であり、安住が奨励会を辞めた最後の三段リーグで黒星を喫した因縁の相手である。その明星に安住は指導対局とはいえ、平手で勝ってしまう。この勝利により、安住は将棋の楽しさを純粋に思い出し、再び将棋界に戻ることにした。手始めに、対局相手を求めるために街の将棋センターに出向く。そこで奨励会時代の盟友であった土屋貴志(つちや たかし)と再会した。土屋も年齢制限でプロ棋士になれずに奨励会を退会し、その後は親の工場で働く状況である。二人は3年ぶりに対局をし、旧交を温めプロ棋士への想いを語り合った。プロ編入試験の受験に必要な条件は「プロとの公式戦において、最も良いところから見て10勝以上。なおかつ6割5分以上の成績」であり、アマからプロを目指すのは奨励会以上に困難な道である。それでも二人はプロになる夢を諦めきれず、再びプロ棋士を目指すことを決意した。
アマ竜皇戦
安住と土屋はアマチュア棋士の大会であるアマ竜皇戦の東京都大会に出場した。この大会を勝ち上がるとプロ棋士への道が開かれているので、アマの強豪棋士が多数出場していた。アマ名人である片桐豊(かたぎり ゆたか)もそのうちの一人である。東京都大会の上位に安住や土屋、片桐が入り、1か月後に開催される全国大会へ駒を進めた。全国大会に向けて、そしてプロ棋士を目指すにあたってレベルアップを図りたい安住と土屋は、知り合いのプロ棋士に頼んで研究会に入れてもらった。その研究会にはプロ棋士が3人、現役奨励会が3人いる。安住と土屋はそこで将棋の新しい戦法を学び、対局を重ねることで力を伸ばしていった。
アマ竜皇戦の全国大会が始まった。この大会の決勝トーナメントでベスト4に入るとプロの竜皇戦への出場資格が得られる。そして、プロの竜皇戦で好成績を残すと晴れてプロ棋士への道が開ける。そのため、アマ竜皇戦の全国大会はプロを目指すアマ棋士にとって重要な大会だ。安住と土屋は苦戦しながらも勝ち進んでいった。そして、決勝トーナメントの準々決勝で二人は対局することになった。土屋は基本守りのスタイルで、安住の強い攻めの踏み込みに対して守りすぎて負けるパターンがあり相性が良くない。しかし、プロになるために「俺のすべてをかけてぶっ潰す」というこの一戦にかける土屋の気持ちが強気の手になって表れ、土屋が押していく。安住も負けじと今局一番の勝負手を放って応戦する。大熱戦の末、安住が勝ちベスト4に入った。これで安住のプロの竜皇戦への出場が確定した。
安住は準決勝も順当に勝ち、決勝戦で中学生の川井正和(かわい まさかず)と対局をする。川井はこの大会に出場するまで人と直接対局したことがなく、将棋アプリやオンライン対局のみで将棋の力を身に付けていた。そのため、棋風が独特で既存の手筋に捉われない強さがある。川井が勝つと優勝の最年少記録を塗り替えるので、注目を集める対局となった。川井は定跡にとらわれずに自由に伸び伸びと指しリードを広げていく。一方の安住も川井の指し方に合わせるように、「固定観念を捨て、もっと自由に」指すことを意識してイーブンまで戻す。終盤、経験の浅さとメンタルの弱さで川井にミスが出てしまい、安住が長時間の死闘を制した。この年のアマ竜皇は安住に決まった。
挫折
アマ王匠戦の東京予選が始まった。この大会もプロ棋士への道が開かれており土屋や片桐は出場するが、安住は弟の結婚の用事があって出場を取りやめた。安住が不在の中、土屋が決勝戦で片桐を破りアマ王匠戦の東京予選を優勝する。またプロの竜皇戦も始まった。安住の初戦は安住の師匠であった伊達啓司(だて けいじ)七段である。3年ぶりに再会した師弟は大熱戦を演じ、千日手が成立して指し直しとなる。指し直し局でも熱戦が明け方まで続き、最後は安住が師弟対決の勝利をもぎ取った。アマ王匠戦の全国大会が始まり、土屋と片桐が決勝戦に勝ち上がった。決勝戦では土屋が片桐に勝ち、アマ棋戦の初優勝を土屋が飾る。
竜皇戦で師匠の伊達七段に勝った安住はさらにプロ相手に連勝し、また研究会でも全勝するほど絶好調の状態にあった。しかし竜皇戦において、次の相手である高校生の五十嵐律(いがらし りつ)四段にあっさりと負けてしまう。安住はプロに3勝はしたが、五十嵐に負けたことでプロ棋戦への出場をいったん終えることとなった。安住と対局した当時、五十嵐は未だ高校生プロとしてプロ棋士になったばかりである。その後は連勝街道を歩み続け、プロになってわずか1年足らずで将棋のタイトルを獲得する。段位も四段から七段まで上がり、五十嵐は天才棋士として将棋界の新たなスターとなった。一方、安住は五十嵐に負けたショックから立ち直れないでいた。さらに久しぶりに会った森からは恋人と結婚をすると告げられ呆然となってしまう。しかし、実家に帰省した際に、「後悔だけはするなよ」という父からの言葉がきっかけとなり、徐々に立ち直り改めてプロ棋士への再挑戦を決意した。
五十嵐との対局
アマ聖竜杯が開催され、そこで安住は全国優勝を成し遂げた。この結果により、プロ棋戦への出場資格を再び得ることができた。プロの聖竜杯において、安住は明星にも勝ち二連勝をしたので、聖竜杯本選トーナメントに進むことができた。本選トーナメント1回戦の相手は五十嵐である。この対局は五十嵐にとっては前人未到の新記録30連勝がかかっており、安住にとってはプロ編入試験の挑戦権がかかっている。公開で行われたこの対局で、大勢の将棋ファンとともに土屋や安住の家族が見守る中、安住は五十嵐と熾烈な戦いを繰り広げていく。しかし、安住はもう一歩のところで五十嵐に勝つことができなかった。これで、プロ棋戦への出場はまたもいったん終了となった。次のアマ棋戦に出場するスタートラインに戻ることとなったが、安住や土屋はあと少しでプロ編入試験の受験資格が取れるところまで来ている。安住は希望を捨てずにアマ名人戦に出場し、プロ棋士への再挑戦を続けていく。
『リボーンの棋士』の登場人物・キャラクター
主人公
安住浩一(あずみ こういち)
本作の主人公。29歳で元奨励会員。小学生時代、日本一になり天才棋士ともてはやされ、プロ棋士を目指すこととなり奨励会に入会した。しかしプロ棋士になかなかなれず、年齢制限によって奨励会を退会する。奨励会を退会してブランクが3年あったが、森との交流によって再び将棋を指すようになった。カラオケやコンビニでアルバイトをしながらプロを目指している。明るい性格で前向きに将棋に取り組んでおり、あと少しでプロ棋士になれるところまで来ている。
アマチュア棋士
森麻衣(もり まい)
安住と同じカラオケ屋でアルバイトをしていた。26歳。将棋が趣味でスマホでよく対局をしている。役者になりたくて劇団に入っていた。安住が元奨励会員であることを知って将棋界に戻るよう説得をした。安住の才能に惚れ込んでいたが、夢をつかむのに邁進している安住とは距離を取るようになり他の男性との結婚を選んだ。結婚を機に役者の道をあきらめた。一貫して棋士安住の大ファンである。
土屋貴志(つちや たかし)
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目次 - Contents
- 『リボーンの棋士』の概要
- 『リボーンの棋士』のあらすじ・ストーリー
- 将棋まつり
- リボーン
- アマ竜皇戦
- 挫折
- 五十嵐との対局
- 『リボーンの棋士』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- 安住浩一(あずみ こういち)
- アマチュア棋士
- 森麻衣(もり まい)
- 土屋貴志(つちや たかし)
- 片桐豊(かたぎり ゆたか)
- 大津新(おおつ あらた)
- 川井正和(かわい まさかず)
- 南(みなみ)
- 高木(たかぎ)
- プロ棋士、奨励会員
- 明星陸(あけぼし)六段
- 堺(さかい)三段
- 高橋(たかはし)三段
- 宇野(うの)三段
- 五十嵐律(いがらし りつ)棋竜
- 加治(かじ)竜皇・玉座
- 望月(もちづき)王匠
- 古賀実(こが みのる)七段
- 小関忠夫(おぜき ただお)六段
- 澤(さわ)六段
- 泉(いずみ)七段
- 保科(ほしな)七段
- 伊達啓司(だて けいじ)七段
- 中島(なかじま)
- その他
- 安住の父親
- 安住慎二(あずみ しんじ)
- 川井の父親
- マスター
- 田村(たむら)
- 『リボーンの棋士』の用語
- 将棋のタイトル
- 将棋の専門用語
- 奨励会
- 三段リーグ
- ありません
- 平手
- 研究会
- 女性プロ棋士
- プロ編入
- 千日手
- 『リボーンの棋士』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 森麻衣「棋士が世界で一番かっこいいと思ってます。」
- 安住浩一「プロを目指すよ、俺も。」
- 森麻衣「将棋に選ばれた特別な人だと思いますよ。」
- 安住浩一「将棋を続けてきて、よかった。」
- 『リボーンの棋士』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 将棋界のスター明星のタレント活動
- 現代将棋らしいインターネットの活用
- 安住の生活圏は謎