東京怪童(望月ミネタロウ)のネタバレ解説・考察まとめ

『東京怪童』とは、望月ミネタロウが​​2009年から2010年に講談社が発行する男性向けコミック誌『モーニング』にて連載した漫画作品。​​講談社モーニングKC全3巻。本作から、作者・望月峯太郎はペンネームを望月ミネタロウに改名している。
脳に疾患を抱える少年少女たちが、互いに反発したり、交わったりしながら入院生活をおくる中で成長する物語。差別や偏見の対象となるマイノリティをテーマに、人間の精神世界の神秘や芸術的創造性にも焦点を当てている。

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2巻に登場した玉木健一郎の心の声。
玉木は入院患者の少年に手を出していまいそうな自分が、患者を診ることはこれ以上できないと病院から姿を消す。
夜遅くに病院を出る時、星空を見ながら絶望と希望を感じながら心の中で思ったのが「降るような星を見ると 人間の脳細胞の数は今見ている無数の星より多いという事を思う 捉えどころのないような世界 ああ でもこの曖昧な世界に きっとそれさえも全て包容するような美しい世界があるんじゃないか」。

山田花「だって彼 不安でしょ はぐれたら」

3巻に登場した山田花のセリフ。
ハシは、花が「だって彼 不安でしょはぐれたら」と言いながら健忘症の手を握る姿を見て、自分も花にふれたいと思った。
花にふれるために頭に残る破片を取り除く手術を受けようと決意する。

ハシ「あんたの 性癖も愛したい…」

3巻に登場したハシのセリフ。
意識が目覚めたまま脳の異物を取り除くための手術を受けるハシは、手術中の意識の状態を確認する質問を玉木にしてもらっていた。
玉木の質問に答えながらハシは、自分を愛してもらいたいのに、人を傷つけてしか生きれないのはあんまりだと言う。さらに、遠のく意識の中で両親を理解したいし、入院患者の仲間たちや病院の人々も玉木も愛したいと言う。その時に発せられた言葉が「あんたの 性癖も愛したい…」だった。

山田花「人って「自分を認めてくれる人がいるか」で違うと思う…」

3巻に登場した山田花のセリフ。
ハシがなくなった後、花はDYSTOPIA出版のヤングブラック漫画賞にハシが描いていたマンガを送る。
花はゴッホの画集の中の『黒い鳥のいる麦畑』を見ながら「人って「自分を認めてくれる人がいるか」で違うと思う…」と、ハシを思いながら健忘症に言う。

シュチュワート英雄「それまで ずっと いっつも いっつも あそびにくるよ ひとりぼっちになんてぜったいさせないから」

3巻に登場するシュチュワート英雄のセリフ。
人の顔を認識できないマリの症状が徐々に悪化し、視界の左半分を認識しなくなった上に、動くものも認識できなくなってきていた。
今まで人の顔が認識出来なくても寂しくはなかったマリが強い孤独を感じるようになる。そんなマリが心配な英雄は、ハシのマンガのなかで霊媒師の少女がハシを助けたように、自分もマリを助けにマリの世界へ行こうとする。マリの孤独な世界に行った英雄は、マリを元気づけようと「それまで ずっと いっつも いっつも あそびにくるよ ひとりぼっちになんてぜったいさせないから」と伝える。

『東京怪童』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

作中に登場するゴッホの作品

『星月夜』(ほしづきよ)

題名『星月夜』作者:フィンセント・ファン・ゴッホ

『東京怪童』1巻のChapter1の『星月夜』という題名は、フィンセント・ファン・ゴッホが描いた『星月夜』のオマージュになっている。
『星月夜』は、ゴッホがフランスのサンポール・ド・モゾール修道院の精神病院で療養中に描かれた作品。
この作品はゴッホの個人的な感情や精神状態を反映していると考えられている。渦巻く星空や糸杉は彼の内面の葛藤や死生観、明るい星や月は希望が込められていると解釈されている。これらのことが、クリスチャニア医院に入院治療するハシ達の内面と共通している。

『糸杉』(いとすぎ)

作品名『二本の糸杉』作者:フィンセント・ファン・ゴッホ

クリスチャニア医院の裏庭には広い草原の向こうに糸杉の林が広がっている。ハシは糸杉が燃えるように曲がりくねり、もがいて上へ生える姿が嫌いだと玉木に話している。
地中海地方では糸杉は、伝統的に墓地に植えられ「死」や「永遠」を象徴する木とされていて、ゴッホの生と死、苦悩と希望、天への憧れといった複雑な感情を投影するモチーフにもなっていた。『東京怪童』では背景の木にも意味が込められている。

『黒い鳥のいる麦畑』(くろいとりのいるむぎばたけ)

作品名『黒い鳥のいる麦畑』作者:フィンセント・ファン・ゴッホ

3巻のChapter名にもなっている『黒い鳥のいる麦畑』も、フィンセント・ファン・ゴッホが亡くなる前に描いた絵の作品名からつけられている。花の不安で孤独な心象風景を描くシーンとしてと、ハシのマンガを出版社に送った後に花が開いているゴッホの画集は『黒い鳥のいる麦畑』の絵のページだ。ゴッホが描いた『黒い鳥のいる麦畑』は、荒れ狂うような空、麦畑、そして黒いカラスの群れが、不安や孤独、そして死を暗示していると解釈されることが多い。または、絶望や孤独だけでなく、自然への愛も同時に表現していると解釈されることもある。麦畑は聖書において死の象徴として語られることから死のイメージを重ねていたという解釈もある。

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