『偽物協会』とは、2017年から2022年にかけて「サンデーうぇぶり」で連載されていた白井もも吉による漫画作品である。不安になると体が毛布になってしまうという不思議な症状に悩まされている主人公・包見綿子が、「偽物協会」の個性的な仲間達と出会い心癒されていく様子を描く。ゆるい雰囲気のギャグと優しさに溢れたストーリーが魅力的な、心温まる作品となっている。白井もも吉の代表的な作品として、連載終了後も高い評価を得ている。
『偽物協会』の概要
『偽物協会』とは白井もも吉が2017年7月~2022年10月にかけて「サンデーうぇぶり」で約5年間連載していた漫画作品である。コミックスは全3巻で小学館から発売されており全15話からなる。
作者の白井もも吉は、高校1年生の時に『フェレット未飼育日記』で現役女子高生漫画家としてデビュー。フェレットを飼うことを夢見る姉妹のやりとりをコメディタッチに描いた。2017年『猫の夢』で第72回ちばてつや賞を受賞。高校2~3年生の時に週刊少年マガジンにて初の連載作品『みつあみこ』を描き、単行本『みつあみこ』を2019年に刊行している。『みつあみこ』には、白井もも吉が中学3年生の時に初めて描いた漫画『弁当びより』も収録されており、白井もも吉のルーツがわかる1冊となっている。白井もも吉自身も『みつあみこ』のあとがきにてこの本を読んだ読者は「白井もも吉マスター」であると書いており、『みつあみこ』以前の作品はすべて網羅されているコミックスとなっている。その後週刊少年サンデーにて2020年に読み切り『極小ビキニ睡眠ラボ』を掲載、同じく週刊少年サンデーにて『偽物協会』を連載している。『偽物協会』はSNSでも多くの反響があり、大手Webメディアでも紹介される等、連載終了後も反響の輪が広がっている。『偽物協会』の連載終了後は週刊少年サンデーで定期的に読み切りを連載、2024年には月間ガンガンJOKERに初登場し読み切り『うさななじみ』を掲載している。白井もも吉は月刊誌や週刊誌に掲載する他、コミティアやBOOTHでも作品を販売しており個人での活動も積極的に行っている。コミティアやBOOTHでの購入でしか読むことができない作品も多く『わすれもの』『白井を探してる』『夏の引力』等など、いくつかの作品は個人販売限定となっている。
『偽物協会』の主人公は18歳の少女「包見 綿子(つつみ わたこ)」だ。綿子は、どんな物事も人並みにできない不器用な自分に不安を感じながら生きていた。それと同時に、子供の頃から不安になると体の一部が毛布になってしまうという不思議な症状に悩まされていた。「普通」ではない自分に悩む綿子はある日、「偽物協会」の会長と出会い個性的な「偽物」達の存在を知る。「偽物」とは既存の生き物の枠からはみ出してしまった生き物達のことだという。綿子は「偽物協会」のメンバーと交流する中で、少しずつ癒され自分自身を受け入れていく。本作の魅力は、可愛らしいキャラクター達が織りなすコメディタッチでゆるい雰囲気、そして「普通」になれないと思い悩む全ての人へ向けた深い優しさのあるストーリーだ。登場するキャラクターのすべてが、自分自身の普通ではない部分に対して密かに悩みを抱えながら生きている。そんなキャラクター同士が受け入れあうことで、コミックスを読んでいる読者も癒されるという不思議な感覚を味わうことができる作品である。
『偽物協会』のあらすじ・ストーリー
偽物協会との出会い
包見 綿子(つつみ わたこ)は18歳の大学一年生。綿子は入ったばかりの大学で心細さや不安を感じていた。彼女には不安になると体が毛布に変わってしまう不思議な症状がある。大学での不安がピークに達した瞬間、綿子の体は毛布に変わり風に乗って空に飛ばされてしまう。風に飛ばされてしまった綿子を受け止めてくれたのは偽物協会の会長「五島 絵空(ごとう えそら)」だった。彼のもとには「石の偽物」「サボテンの偽物」「イヤフォンの偽物」等、既存の生き物の枠からはみ出してしまった個性的な「偽物」が集まっており、彼とともに偽物協会でのびのびと暮らしていた。会長は、体が毛布になってしまう綿子に人間の偽物として偽物協会に加わってほしいと提案する。綿子はその提案に、前々から感じていた自分が普通ではないということを痛感し思わず涙を流してしまう。会長はそんな綿子に共鳴するように涙を流し、綿子に新たな提案をする。それは会長の毛布として時給1200円で雇われるということである。会長の勢いに乗せられた綿子は承諾してしまい、その晩からさっそく会長の毛布として過ごすことになる。その晩綿子は会長の上で毛布になりながら、会長がなぜ偽物の存在を知ったかを教えてもらう。一晩過ごし、毛布として雇用されるのも悪くないと感じた綿子は偽物協会に所属することになったのだった。こうして、ちゃんとした物がひとつもない偽物だらけの偽物協会での日々が始まった。
偽物協会と大学
偽物協会に所属することになった綿子だが本業は大学生だ。しかし大学に登校する直前に綿子は体が毛布に変わってしまう。そんな綿子が大学に行くために、偽物協会の会長が協力してくれることになる。会長の頭の上に毛布の綿子をのせ2人で1人の人間のように変装をするという風変わりな姿でなんとか大学へ登校するが、大学では教授から不思議な目で見られヒヤヒヤすることの連続だった。いつもは空き教室でひとりで昼食をとる綿子だが、その日は会長と一緒なだけでどこか違う場所のようにあたたかい気持ちで過ごせることに気づく。そして帰宅した綿子は、今日感じたあたたかい気持ちをいつか返せるようになりたいと思い眠りについたのだった。
夜の遊園地と綿子の誕生日
綿子は偽物協会で日々を過ごしながら様々な偽物達とふれあい彼らの望みに耳を傾けていく。そんなある日、家のポストに手紙が入っていた。手紙は21時に遊園地へ来てほしいとの内容だった。綿子は、その夜閉園後の遊園地へ向かう。そこにいたのは偽物協会の会長と偽物達だった。夜の遊園地は、昼の遊園地とはまったく異なるものだった。すべてのアトラクションが「遊園地の偽物」になって適当に過ごしているのだという。昼間の遊園地とは違い、無理に楽しむ必要のない気の抜けた雰囲気の中、綿子は自然と遊園地を楽しめることに気づく。ずっと楽しみたくても楽しめなかった遊園地というものを、やっと楽しめている自分を発見したのだった。そして偽物たちにお祝いの言葉をもらい、綿子は今日が19回目の誕生日だったことを思い出す。綿子を遊園地に呼んだのは、誕生日のお祝いの為だったのだ。綿子は今までに感じたことのないような嬉しさを感じ、会長や偽物達がとても大切な存在であると感じたのだった。
五島 世迷との出会い
偽物協会に少しづつ馴染んできた綿子の前に会長の弟と名乗る人物・五島 世迷(ごとう まよい)が現れる。世迷は偽物協会の経理を担当していると綿子に自己紹介をしたのだった。偽物協会の出費を管理する世迷は、偽物協会の最近の出費がやけに多いことを会長に言及する。会長は理由をはぐらかそうとするが、出費の原因は犬BOX君という金を食べるのが大好きな偽物だとばれてしまう。世迷は偽物協会の経費のために、犬BOX君を縄で縛って金を食べれないようにする。一時は犬BOX君の件でもめてしまう偽物協会のメンバー達だったが、最終的に世迷が犬BOX君が食べる用のおもちゃのお札を用意していたことがわかり一件落着となった。冷たい物言いをしがちな世迷だが、本当は偽物達のことを考えてあげる優しい一面もあることがわかるストーリーとなっていた。
本物協会の扉の向こう
偽物協会の会長・偽物達・世迷と共に日々を過ごしながらも、相変わらず様々な物事が上手くいかない綿子。そんな時、綿子は街角で偶然「本物協会」と書いた扉を見つける。「本物になりたい方中へどうぞ」と書かれた扉を開けて中へ入ると、中には椅子に座って編み物をしている男性がいた。男性は綿子に、本物になりたいかと問いかける。今の自分は全部捨てることになるという条件を聞いた綿子は困惑し、一度本物協会を後にしたのだった。その後、綿子は偽物協会のメンバーに先ほど見たものを話す。賛否両論あり本物協会に行くことを止める偽物もいる中で、綿子は改めて本物協会へいくことを決めたのだった。そんな綿子に会長は、困った時は開くようにと小さなメモ紙を渡す。綿子は再度本物協会へ行き、本物になりたいという気持ちを編み物をしている男性に話す。男性は綿子の決意を聞くと、綿子が本物の自分になった際の心地良い夢を見せたのだった。綿子は、猫を飼っている自分や普通の家庭を持っている自分の夢を見て眠りながら嬉し涙を流す。夢から覚めて本物になりたい決意を固めた綿子は、男性に本物になる方法を尋ねる。男性は自身が編んでいる編み物の糸を引っ張るように綿子に言う。綿子が糸を引っ張り続けていると、その糸は綿子が一番絶望していた頃の高校生の自分の首元へと繋がっているのだった。綿子は本当に糸を引っ張ってもいいか迷い、本物になるとは偽物協会の仲間達が認めてくれた自分も消してしまうことなのではないかと思い悩む。そんな時、会長がくれたメモ紙の存在を思い出し開くと、そこには「でも好きだよ」と書かれていた。綿子は、その言葉を聞くために生まれてきたのかもしれないと感じ、今の自分のまま偽物協会の仲間達の元へ帰ろうと思ったのだった。その後、本物協会から帰ってきた綿子を偽物協会の仲間達は温かく迎え入れる。仲間達に囲まれ、綿子は「誰かの居場所になりたい」と希望を語るのだった。
『偽物協会』の登場人物・キャラクター
主要人物
包見 綿子(つつみ わたこ)
偽物協会に所属することになった18歳の大学1年生の女の子。ボブヘアで首に黒いリボンを巻いている。たまにサイドを結んでリボンをつけていることもある。流されやすく気が弱いところがあるが、優しい性格で偽物達とはすぐに打ち解ける。6歳の頃から不安になると体が毛布になってしまう不思議な症状に悩まされている。また、ちゃんとできることが1つもないという不器用な自分に対する不安も感じている。ずっと「普通の人間らしくなりたい」という気持ちを抱えており、ちゃんとした仕事に就き猫を飼えるような普通の人間になりたいと思っている。大学ではいつも1人で過ごしており、昼食も空き教室で1人で食べていた。楽しまなければと気負いすぎてしまう為、遊園地が苦手。唯一得意なことは、ノートに渦巻き模様を描くこと。ファッションセンスは会長と似て少しずれており、会長から変なキャラクターがプリントされた洋服を渡された際には「かわいい」と言って喜んでいる。
五島 絵空(ごとう えそら)
偽物協会の会長をしている。偽物協会を体現したような人物でスーツのようなそうではない服、革靴のようなプラスチックの靴を履いている。髪の毛で隠れているほうの耳には沢山のピアスをしている。身に着けているアクセサリーやほくろもすべて偽物。「パジャマスーツ」「とげスーツ」等、いろいろな種類の変わったスーツを持っている。発言が常人と少しずれていることがあり綿子に突っ込まれることも多々ある。5歳の時に周りの子供たちが言う「絵空くんは面白い」という言葉が、理解できない人間を遠ざけるためのオブラートであると気づき、その後は趣味に没頭するようになる。自分のことが何者かよくわからずにいた時、意志があるように見える不思議なビニール袋の群れと出会う。絵空にとって自分以外の「理解されないもの」が救いになり偽物にのめりこんでいくようになった。作中で車を運転しているシーンがあるため、意外にも運転免許を持っている。偽物との付き合い方はよくわかっているが女性との付き合い方はよくわからないらしい。
五島 世迷(ごとう よまい)
五島 絵空の弟でセミロングの長い髪をしている。高校2年生。絵空と違い勉強ができ、偽物協会の経理を担当している。歯に衣着せぬ物言いだが、偽物たちにとても好かれる性質。あまりにも偽物に好かれすぎるので、世迷自身は偽物たちを敬遠している。絵を描くこともでき、うご絵具が登場する回では様々な絵を描いていた。可愛らしい洋服を着ることが嫌いではない。偽制服を引き取った際には最終的には世迷が着ており、少し嬉しそうな様子だった。絵空に対して密かに憧れに近い感情を持っているように見えるが、作中で深く言及はされていない。
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目次 - Contents
- 『偽物協会』の概要
- 『偽物協会』のあらすじ・ストーリー
- 偽物協会との出会い
- 偽物協会と大学
- 夜の遊園地と綿子の誕生日
- 五島 世迷との出会い
- 本物協会の扉の向こう
- 『偽物協会』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 包見 綿子(つつみ わたこ)
- 五島 絵空(ごとう えそら)
- 五島 世迷(ごとう よまい)
- 偽物達
- サボテンの偽物・サボまっする君
- 貯金箱の偽物・犬BOX君
- 絵の具の偽物・うご絵の具君
- 紙の偽物・美しき紙の一族
- 制服の偽物・偽制服君
- 『偽物協会』の用語
- 偽物(にせもの)
- 偽物協会(にせものきょうかい)
- 白井ランド(しらいランド)
- 私立白井百合学園(しりつしらいゆりがくえん)
- 本物協会
- 『偽物協会』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 包見 綿子「猫をなでる時、人間の心は猫になでられているのかもしれない。」
- 五島 世迷「そんなに自分がイヤならあんたの上に上書きすりゃいいよ なりたい姿の絵を。」
- 五島 絵空「でも好きだよ。」
- 『偽物協会』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 初期設定では様々な案があった綿子の髪型
- 会長の初期設定時の名前は「五島 絵空」ではなく「八王子 八(はちおうじ はち)」
- 世迷は最初のほうから出したい気持ちがあったキャラクター
![RENOTE [リノート]](/assets/logo-5688eb3a2f68a41587a2fb8689fbbe2895080c67a7a472e9e76c994871d89e83.png)