アノネ、(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『アノネ、』とは、今日マチ子によって秋田書店の『Eleganceイブ』の2011年4月号から2013年6月号にかけて連載された戦争漫画である。単行本は上巻が2012年12月に、下巻が2013年7月に、それぞれ秋田書店より刊行された。
『アンネの日記』から着想を得て描かれた物語。アンネフランクをモチーフとする少女・花子と、アドルフヒトラーをモチーフとする青年が不思議な四角い部屋で出会い恋をするというフィクションならではの展開と、2人が巻き込まれていく戦争の悲惨さが見どころである。

太郎の母 (たろうのはは)

太郎の母。太郎の回想シーンに登場する。
父の生前は表立って太郎の夢に反対はしていなかったが、父親の収入を失い、自身は持病を抱えていることから、太郎に絵は趣味として続けてはどうかと提案する。母からも画家の夢を否定された太郎は激昂し、さらには総統にそそのかされたことで、「死にかけてるならさっさと行けよ。てめえの治療費がなけりゃ学費にまわせるだろ」と吐き捨てる。その直後、母の容態は急変し、帰らぬ人となった。

その他

総統 (そうとう)

新制帝国を築き上げた独裁者。ナチス・ドイツ総統であるアドルフヒトラーをモチーフとした人物である。もう1人の太郎として描かれ、紅茶の入ったカップを通して、太郎と花子の様子を観察することができる。
輪郭のはっきりとしない白い影のような姿で描かれるが、白い影のような服を脱ぐと、軍服を着た太郎が現れる。敗戦後、首都陥落の報を聞いて拳銃で自殺した。

恵麻(えま)

総統のフィアンセ。花子と瓜二つである。選挙区の悪化に伴い感情的になっていく総統を支え続けたが、最終的には総統と心中する形で殺されてしまう。

『アノネ、』の用語

東方系(とうほうけい)

新制帝国において迫害の対象とされる民族。第2次世界大戦期におけるユダヤ系民族がモチーフとなっており、作中では花子たち浅田家・浩たち藤原家・原麗子・フミ子などが東方系の出身である。
新制帝国内の有力企業の大半を東方系が占めていたことから、国内では東方系に対する不満が大きくなっていた。総統は、東方系住民を絶滅させるための政策を掲げ、東方系は目印となるよう左胸に黄色い星のワッペンを付けたり、他民族とは別の東方系のみの学校に通ったりしなければならなかった。
戦争が激化すると、東方系住民は強制収容所に連行されるようになり、持ち物はすべて没収され、劣悪な環境の中で過酷な労働に従事させられるようになる。

新制帝国 (しんせいていこく)

独裁者としての太郎(総統)が築き上げた国家。周囲の国々に戦争を仕掛け、自国の領土拡大を図っている。東方系を迫害の対象と定め、東方系の人々を強制収容所に送り込み、厳しい労働を強いたり虐殺したりしている。

邦照国 (ね-でるらんど)

浅田家が現在居住している国。もともとは自由な国だったため、東方系の人々が亡命してくることが多かったが、新制帝国に占領されたことから、国内の東方系を強制収容所に送るようになった。

強制収容所(きょうせいしゅうようじょ)

花子たち東方系の人々が強制的に送り込まれた収容所。年齢や性別、健康状態で振り分けられ、劣悪な環境の中で様々な労働に従事させられた。規律が厳しく、脱走やルール違反を犯したものは見せしめとして殺害された。
第2次世界大戦時のユダヤ人強制収容所がモデルとなっており、作者の今日マチ子は実際にアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所を取材で訪れている。

『アノネ、』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

浅田真子「花子がずっと夢をみつづけていられますように」

死の間際、妹の幸せを願う真子

体調を崩した真子が死の間際、幼かった頃の日々を回想しながら、花子の幸せを願った言葉。
真子は花子が生まれる前、母親に「赤ちゃんのこと守ってあげるのよ。それがお姉ちゃんの仕事よ」と言われ、「うん!」と答えていた。それ以来、真子は花子の面倒をよく見て、いつも自分よりちやほやされる花子に苛立ちを覚えながらも、ずっと一緒に生きてきたのだった。花子に嫉妬の感情を向けるシーンが描かれることが多かった真子であったが、「花子がずっと夢をみつづけていられますように」と祈るこの言葉によって、真子が本当は妹想いの優しい姉であったことが分かるシーンとなっている。

浅田花子「わたし、主人公じゃなかったの?」

自身の死を予感する花子(画像右)

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